東京の相続税|課税割合は全国の2倍。土地評価で損をしないために
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超/税務調査率1%未満。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年8月9日 最終更新日:2026年8月10日
【結論】東京では5人に1人が相続税の対象。しかも多くは「現金が少ない人」です
東京都の相続税の課税割合は20.0%。全国平均10.4%のおよそ2倍で、都道府県別で最も高い水準です(令和6年分)。
そして東京で課税対象になる方の多くは、預貯金が特別多いわけではありません。自宅の土地の評価額が高いために、基礎控除を超えてしまうケースが大半です。
東京の土地は、評価の仕方によって相続税額が大きく変わる特徴を持っています。間口が狭い、形がいびつ、私道に接している、傾斜がある——こうした条件は、正しく評価すれば大幅な減額につながりますが、見落とせばそのまま税金の払いすぎになります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 東京都の課税割合 | 20.0%(全国10.4%の約2倍/令和6年分・都道府県別で最高) |
| 課税されやすい理由 | 財産の大半が自宅の土地。現金がなくても基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超える |
| 最大の論点 | 土地の評価。同じ土地でも評価方法で数百万円〜数千万円の差が出る |
| 減額できる可能性がある条件 | 不整形地/間口狭小/私道/セットバック/がけ地/地積規模の大きな宅地/貸家建付地/生産緑地 |
| 申告期限 | 相続開始を知った日の翌日から10か月以内 |
| 見落とすと | 払いすぎたまま申告が完了してしまう(ただし5年以内なら更正の請求で取り戻せる場合あり) |
東京で相続税がかかる人はどのくらい?【最新データ】
国税庁が令和7年12月に公表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、状況は次のとおりです。
| 全国 | 東京都 | |
|---|---|---|
| 課税割合 | 10.4% | 20.0% |
| 被相続人数(亡くなった方) | 1,605,378人 | — |
| 申告に係る被相続人数 | 166,730人 | — |
全国の課税割合10.4%は、昭和42年分以降で過去最高です。前年(令和5年分)の9.9%から0.5ポイント上昇しました。
背景には、高齢者が保有する資産の増加、地価の上昇、株価の高止まりがあります。
そして東京都は20.0%。都道府県別で最も高く、およそ5人に1人が相続税の申告対象という計算になります。
参考までに、東京国税局の管轄(東京・神奈川・千葉・山梨)全体では、令和6年分の
被相続人数328,773人に対し、申告に係る被相続人数は53,379人、課税割合は16.2%でした。
区によってはさらに高い
東京国税局の統計をもとにした区別の課税割合(令和5年分)は、次のとおりです。
| 区 | 課税割合 |
|---|---|
| 千代田区 | 48.4% |
| 渋谷区 | 36.5% |
| 杉並区 | 32.2% |
| 世田谷区 | 31.4% |
| 目黒区 | 30.9% |
| 文京区 | 30.9% |
| (東京都区内 平均) | 20.3% |
千代田区では、亡くなった方のおよそ2人に1人が相続税の申告対象です。
杉並区・世田谷区・目黒区・文京区といった住宅地でも3割を超えています。
「うちは資産家ではないから相続税は関係ない」——東京でこう考えている方は少なくありません。
しかし自宅の土地だけで基礎控除を超えるケースは、当センターへのご相談でも非常に多いのが実情です。
まずはご自宅の路線価を確認することをおすすめします(確認方法は次章)。
出典:国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要/東京国税局 令和6年分 相続税の申告事績の概要
ご自宅の路線価はどこで確認できる?
路線価とは、道路に面する土地1㎡あたりの評価額のことで、相続税の土地評価の基準になります。国税庁が毎年7月1日に公表します。
確認手順
- 国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表 にアクセス
- 「東京都」を選択 → 該当する区市町村を選択
- 町名から路線価図を開く
- ご自宅の前の道路に書かれた数字を確認する(単位:千円/㎡)
概算の計算方法
土地の相続税評価額 ≒ 路線価(円/㎡) × 土地の面積(㎡)たとえば路線価が55万円/㎡、土地が100㎡なら、
55万円 × 100㎡ = 5,500万円 が概算の評価額です。
相続人が配偶者と子2人(3人)なら基礎控除は4,800万円ですから、
この時点ですでに基礎控除を超えています。 東京では100㎡に満たない土地でも起こりうる話です。
⚠️ これはあくまで概算です。
実際の評価では、土地の形・向き・接道状況・傾斜・法規制などによる補正が入ります。
この補正こそが、税額を左右する最大のポイントです(次章で詳しく解説します)。
東京の土地評価で見落とされやすい8つの減額要因
ここが本記事の核心です。東京の土地には、評価額を下げられる要因が集中しています。
1. 不整形地・間口が狭い土地
きれいな長方形ではない土地、道路への間口が狭い土地は、
利用しにくい分だけ評価額を下げられます(不整形地補正・間口狭小補正)。
東京は古くからの区画がそのまま残る地域が多く、
旗竿地(道路から細い通路で奥に入る土地)や変形地が数多く存在します。
とくに山手線の外側の住宅地では珍しくありません。

2. セットバックが必要な土地
幅4m未満の道路に接する土地は、建て替え時に道路の中心線から2m後退(セットバック)する必要があります。
将来的に道路になる部分は、評価額を70%減額できます。
東京の住宅密集地には、幅4m未満の道路(いわゆる2項道路)が今も大量に残っています。
杉並区・中野区・北区・墨田区など、木造住宅密集地域を抱える区では特に多く見られます。
3. 私道・通路
自宅の敷地の一部が私道になっている場合、
不特定多数が通行する私道は評価額ゼロ、特定の人だけが使う私道は30%評価になります。
東京は狭い生活道路が入り組んだ地域が多く、私道を含む土地が数多くあります。
分譲時に道路部分を各戸で分割して持ち合っているケースも頻繁にあります。
4. がけ地・傾斜地
東京は「山の手」と呼ばれるとおり、武蔵野台地の縁に沿って高低差が連続しています。
文京区・新宿区・港区の坂、目黒区・世田谷区・大田区の国分寺崖線、
北区・板橋区の崖線など、23区内にも傾斜地は数多くあります。
傾斜のある土地や崖地を含む土地は、がけ地補正によって評価額を下げられます。
傾斜の方位と面積割合によって補正率が決まります。
この補正は、地形を知らない税理士が最も見落としやすい項目です。
図面上は平坦に見えても、現地に行けば明確な高低差があることが少なくありません。
現地を確認しないまま評価すると、減額の機会をそのまま失います。
5. 地積規模の大きな宅地の評価
三大都市圏では500㎡以上の宅地について、一定の要件を満たせば評価額を減額できます。
23区でも、成城・田園調布・松濤・白金・浜田山などの高級住宅地には
500㎡(約151坪)を超える敷地が残っています。多摩地域ではさらに一般的です。
適用すると規模に応じて評価額が2〜3割程度下がることがあります。
土地の評価額が1億円なら、数千万円の減額です。相続税額に直結します。
ただし用途地域・容積率・地区区分などの要件があり、判定を誤ると適用漏れになります。
6. 貸家建付地・借地権
アパートやマンションを建てて貸している土地は「貸家建付地」となり、
借地権割合と借家権割合の分だけ評価額が下がります。
東京は賃貸物件の比率が全国で最も高い地域です。
自宅の一部を賃貸にしている、敷地内にアパートがある、というケースは非常に多く、
この評価減を適用できるかどうかで税額が大きく変わります。
逆に、借地の上に自宅が建っている場合は「借地権」として評価します。
東京は戦前からの借地が今も残っており、権利関係の確認に手間がかかることがあります。
7. 生産緑地
練馬区・世田谷区・江戸川区・足立区などには、生産緑地の指定を受けた農地が残っています。
多摩地域ではさらに広範囲に存在します。
生産緑地は建築制限があるため、その分だけ評価額を減額できます。
また、一定の要件を満たせば農地等の納税猶予制度を使える可能性もあります。
ただし、指定の解除・特定生産緑地への移行の有無によって
評価も納税猶予の可否も大きく変わるため、個別の確認が不可欠です。
8. 小規模宅地等の特例
自宅の土地について330㎡まで評価額を80%減額できる制度です。
1億円の土地が2,000万円として評価されるため、相続税への影響は絶大です。
東京では、この特例が使えるかどうかで申告が必要かどうかすら変わります。
| 配偶者が相続する場合 | 子が相続する場合 | |
|---|---|---|
| 適用要件 | 無条件で適用可(同居も継続保有も不要) | 同居している、または「家なき子」の要件を満たす必要あり |
ここは実務で最も見落とされやすい落とし穴です。
お子様がすでに持ち家をお持ちの場合、実家を相続しても小規模宅地等の特例は使えません。
相続人の住居の状況まで含めて検討する必要があります。
土地の評価額は税理士によって差が出ます
ここまで8つの減額要因を挙げましたが、実はこれが「税理士によって相続税額が変わる」と言われる理由です。
相続税の申告のうち、預貯金や有価証券の評価に差は出ません。金額が確定しているからです。
差が出るのは土地です。土地の評価は、
- 現地を確認したか
- 役所で法規制を調査したか
- 適用できる補正を漏れなく検討したか
によって結果が変わります。そしてこれらは、やらなくても申告書は完成してしまいます。
税務署は「払いすぎです」とは教えてくれません。過大に申告しても、そのまま受理されます。
東京の土地は、減額要因が重なりやすいという特徴があります。
間口が狭い・不整形・私道あり・2項道路に接している——これらが複合すると、
適正に評価した場合とそうでない場合の差は数百万円規模になることがあります。
すでに申告を終えた方でも、申告期限から5年以内であれば「更正の請求」で還付を受けられる可能性があります。
「土地の評価に不安がある」という方は、セカンドオピニオンとしてご相談ください。
東京での相続手続きと期限
| 手続き | 窓口 | 期限 |
|---|---|---|
| 死亡届の提出 | 市区町村役場 | 死亡を知った日から7日以内 |
| 世帯主変更届 | 同上 | 14日以内 |
| 国民健康保険・後期高齢者医療の資格喪失 | 同上 | 14日以内 |
| 介護保険資格喪失 | 同上 | 14日以内 |
| 相続放棄 | 被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所 | 3か月以内 |
| 準確定申告 | 被相続人の住所地を管轄する税務署 | 4か月以内 |
| 相続税の申告・納付 | 被相続人の住所地を管轄する税務署 | 10か月以内 |
| 相続登記 | 不動産の所在地を管轄する法務局 | 取得を知った日から3年以内(義務) |
東京は税務署の管轄が細かく分かれています。
23区内だけで20以上の税務署があり、同じ区内でも住所によって管轄が異なるケースがあります
(例:世田谷区は世田谷・北沢・玉川の3署、大田区は大森・雪谷・蒲田の3署)。
申告書の提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署です。お間違えのないようご確認ください。
→ 国税庁 税務署の所在地・管轄
また、戸籍謄本は2024年3月から本籍地以外の市区町村でも取得できるようになりました(広域交付制度)。
お住まいの区役所でまとめて請求できるため、以前よりはるかに簡単になっています。
ご相談いただくタイミング
| タイミング | やるべきこと |
|---|---|
| 相続発生前(ご存命のうち) | 自宅の路線価を確認し、相続税がかかるか概算する。かかるなら二次相続まで見据えた対策を検討 |
| 相続発生〜3か月 | 相続人と財産の確定。相続放棄の判断期限(3か月)に注意 |
| 相続発生〜4か月 | ここまでにご相談いただくのが理想。土地評価とシミュレーションに時間が必要 |
| 相続発生〜10か月 | 遺産分割協議の成立と相続税の申告・納付 |
| 申告後〜5年 | 土地評価に不安があれば更正の請求で還付を受けられる可能性 |
最も多いご相談は「申告期限の2か月前」です。 しかし、この時期からでは
土地の現地確認・役所調査・二次相続シミュレーションを尽くす時間が足りません。
東京のように土地の評価が税額を左右する地域では、早くご相談いただくほど結果が変わります。
よくある質問
Q1. 東京に自宅があるだけで相続税はかかりますか?
A. 土地の面積と路線価によります。 目安として、路線価×面積が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超えるかどうかで判断します。
相続人が3人なら基礎控除は4,800万円です。東京の住宅地では、100㎡程度の土地でもこれを超えるケースがあります。
ただし小規模宅地等の特例が使えれば、自宅の土地は330㎡まで評価額が80%減額されるため、
特例を適用した結果、相続税がかからなくなる場合もあります。
Q2. 小規模宅地等の特例を使えば申告は不要ですか?
A. いいえ、申告が必要です。 小規模宅地等の特例は「申告することが適用の条件」になっています。
特例を使った結果、税額がゼロになる場合でも、申告しなければ特例は適用されません。
これは非常に見落とされやすい点です。
Q3. 分譲マンションでも相続税はかかりますか?
A. かかります。 マンションの相続税評価は、建物部分(固定資産税評価額)と
土地部分(敷地全体の評価額×持分割合)を合算して計算します。
なお、2024年1月以降に相続したマンションについては評価方法が見直され、
市場価格との乖離が大きい物件(いわゆるタワーマンション)は評価額が上がる仕組みになりました。
都心の高層マンションをお持ちの方は、以前の想定と税額が変わっている可能性があります。
Q4. 東京の実家を相続しましたが、誰も住みません。どうすればいいですか?
A. 空き家のまま放置すると固定資産税の負担が続くうえ、
管理不全と判断されて特定空家等に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が最大6倍になる可能性があります。
売却する場合は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が使える可能性がありますので、
売却前にご相談ください。売却後では使えない特例があります。
Q5. すでに他の税理士に申告を依頼して納税も済んでいます。今からできることはありますか?
A. 申告期限から5年以内であれば「更正の請求」により還付を受けられる可能性があります。
特に土地の評価に減額要因(不整形・間口狭小・私道・セットバック・がけ地など)があった場合、
見直しによって税額が下がるケースがあります。
当センターでは相続税申告のセカンドオピニオンを承っています。
Q6. 遠方の税理士に頼んでも問題ありませんか?
A. 制度上は問題ありません。ただし土地の評価では現地確認と役所調査が結果を左右します。
遠方の税理士の場合、現地に足を運ばず図面だけで評価するケースがあり、
がけ地補正や私道の評価といった現地でしか分からない減額要因を見落とすリスクがあります。
東京の地形と行政の実務を知っている事務所を選ぶことをおすすめします。
まとめ
- 東京都の相続税の課税割合は20.0%。全国10.4%の約2倍で、都道府県別で最も高い(令和6年分)
- 千代田区48.4%、渋谷区36.5%、杉並区32.2%など、区によってはさらに高い(令和5年分)
- 東京で課税される方の多くは「現金は多くないのに自宅の土地の評価額が高い」タイプ
- 相続税額を左右する最大の要因は土地の評価
- 東京の土地には不整形・間口狭小・私道・セットバック・がけ地・地積規模・貸家建付地・生産緑地という減額要因が集中している
- これらは見落としても申告書は完成してしまう。税務署は教えてくれない
- ご相談は相続発生から4か月以内が理想。申告期限直前では対策の余地が乏しい
- すでに申告済みでも、5年以内なら更正の請求で還付を受けられる可能性がある
東京の相続は、地域を知る税理士にご相談ください
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オンライン面談・出張面談にも対応しており、東京23区・多摩地域のいずれからでもご相談いただけます。
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要
- 東京国税局 令和6年分 相続税の申告事績の概要(PDF)
- 国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例
- 国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価
- 国税庁 税務署の所在地などを知りたい方(東京国税局)

