東京の空き家を相続したら|税金・管理・売却の判断
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
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公開日:2026年9月6日 最終更新日:2026年9月6日
【結論】売るなら期限があります。3年を過ぎると3,000万円の控除を失います
相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を差し引ける特例があります。ただし期限が2つあります。ひとつは「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売ること。もうひとつは制度そのものの適用期限で、令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。さらに2024年1月1日以後の譲渡では、その家屋と土地を相続した相続人が3人以上の場合、控除額は2,000万円に下がります。放置している間に、この枠を失う方が実際にいます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 控除額 | 譲渡所得から最高3,000万円 |
| 相続人が3人以上のとき | 2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡) |
| 売却の期限 | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 制度の適用期限 | 令和9年(2027年)12月31日までの譲渡 |
| 建物の要件 | 昭和56年5月31日以前に建築/区分所有建物でない |
| 譲渡対価 | 1億円以下 |
| ほかに必要な期限 | 相続登記は3年以内(2024年4月から義務化) |
空き家を相続したら、まず3つを確認してください
1. 建物はいつ建てられたか
昭和56年(1981年)5月31日以前の建築であることが、空き家特例の要件です。いわゆる旧耐震基準の建物が対象になります。
登記事項証明書か、建築確認済証で確認できます。
2. 相続税がかかるか
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかです。東京の土地であれば、超えることは珍しくありません。
3. 持ち続けるのか、売るのか
この判断で、使える特例がまったく変わります。 ここが最も重要です。
持ち続ける場合 ── 小規模宅地等の特例
同居していた親族や、いわゆる「家なき子」が要件を満たせば、330㎡まで評価額が80%減額されます。
ただし空き家の場合、この特例は使いにくくなります。
| 取得する人 | 適用の可否 |
|---|---|
| 配偶者 | 無条件で適用できます |
| 同居していた親族 | 申告期限まで居住・保有を継続すれば適用 |
| 別居の親族(家なき子) | 持ち家がないなど、厳しい要件があります |
| 持ち家のある子 | 適用できません |
「実家が空き家になっている」ということは、同居していた人がいないということです。 多くの場合、家なき子の要件を満たすかどうかが焦点になります。
売る場合 ── 空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売ったときに、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例です。
主な要件
| # | 要件 |
|---|---|
| 1 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること |
| 2 | 区分所有建物登記がされている建物でないこと(分譲マンションは対象外) |
| 3 | 相続開始の直前に、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと |
| 4 | 相続時から譲渡時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないこと |
| 5 | 譲渡対価が1億円以下であること |
| 6 | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること |
| 7 | 一定の耐震基準を満たすか、家屋を取り壊して売ること |
2024年からの2つの変更
① 相続人が3人以上なら、控除額は2,000万円に
令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋と土地を相続した相続人が3人以上の場合、控除額の上限は2,000万円になります。
② 買主が改修・除却してもよくなりました
従来は「売る前に」耐震改修または取り壊しをしておく必要がありました。令和6年1月1日以後の譲渡では、買主が譲渡日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または除却をした場合も対象になります。
売主が先に費用を負担しなくてよくなったという点で、実務上は大きな緩和です。
老人ホームに入っていた場合
被相続人が老人ホーム等に入所していたために、相続開始の直前に居住していなかった場合でも、一定の要件を満たせば対象になります。
被相続人が老人ホーム等に入所していた場合(国税庁 No.3307)
もうひとつの選択肢 ── 取得費加算の特例
相続税を納めた方が、相続財産を売却する場合の特例です。
納めた相続税のうち、その土地等に対応する部分を取得費に加算できます。取得費が増えれば、譲渡所得が減り、譲渡税も減ります。
| 期限 | |
|---|---|
| 取得費加算の特例 | 相続税の申告期限の翌日から3年以内(=相続開始から3年10か月以内) |
⚠️ 空き家の3,000万円特別控除と、取得費加算の特例は、選択適用です。 どちらか有利なほうを選びます。両方は使えません。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁 No.3267)
放置すると、どうなるか
「とりあえず置いておく」がいちばん損をします。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 3,000万円控除を失う | 相続開始から3年を過ぎると使えません |
| 取得費加算も失う | 3年10か月を過ぎると使えません |
| 相続登記の義務違反 | 3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象 |
| 固定資産税が上がることがある | 管理不全・特定空家に指定されると、住宅用地の特例が外れます |
| 建物の劣化 | 売却価格が下がり、解体費用も上がります |
| 近隣とのトラブル | 草木・害虫・防犯・倒壊のリスク |
特定空家等に指定され、勧告を受けると、住宅用地の特例(固定資産税が最大6分の1になる措置)が適用されなくなります。 税額が数倍になることがあります。
「管理不全空家等」に指定された場合も、勧告を受ければ同様の扱いになります。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
東京の空き家は、地方とは異なる論点があります。
| 状況 | 東京特有の論点 |
|---|---|
| 土地の価値が高い | 建物より土地。解体して更地で売る判断になりやすい |
| 前面道路が4m未満 | セットバックが必要。有効面積が減り、評価も売却価格も下がります |
| 再建築不可 | 接道義務を満たさない土地は、売却価格が大きく下がります |
| 借地の上の建物 | 底地の所有者との交渉が必要。単独では売れません |
| 私道の持分 | 持分が漏れていると、売却時に必ず止まります |
| 高低差・擁壁がある | がけ地補正の対象。工事費用も発生します |
新宿区の神楽坂・市谷・若松町、中野区の木造密集地域には、幅4m未満の道路に面した宅地が数多くあります。
「更地にすれば売れる」と考えて解体したものの、再建築不可で買い手がつかなかった——こうした失敗は実際に起きます。
解体する前に、必ず役所で道路の種別と幅員を確認してください。
判断の順番
- 建物の建築年月日を確認(昭和56年5月31日以前か)
- 相続税がかかるかを試算
- 道路と接道の状況を役所で確認(再建築できるか)
- 持ち続けるか、売るかを決める
- 売るなら、3,000万円控除と取得費加算のどちらが有利かを比較
- 相続登記を済ませる(3年以内。売却には必須です)
「5」の比較は、必ず試算してから決めてください。 譲渡所得の額によって、有利なほうが変わります。
よくある質問
Q1. 相続した空き家を売ると、3,000万円が控除されるのですか。
A. 要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。 ただし昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物でないこと、相続開始の直前に被相続人以外が住んでいなかったことなど、複数の要件があります。令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋と土地を相続した相続人が3人以上の場合は2,000万円になります。
Q2. いつまでに売ればよいですか。
A. 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。あわせて制度自体の適用期限が令和9年(2027年)12月31日までの譲渡とされています。どちらか早いほうが実質的な期限になります。
Q3. 分譲マンションでも使えますか。
A. 使えません。 区分所有建物登記がされている建物は対象外です。この特例は、一戸建ての空き家を想定した制度です。
Q4. 建物を壊してから売る必要がありますか。
A. 令和6年1月1日以後の譲渡では、買主が譲渡日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または除却をした場合も対象になりました。売主が先に費用を負担しなくてよくなっています。ただし契約でその旨を取り決めておく必要があります。
Q5. 父が老人ホームに入っていました。使えますか。
A. 一定の要件を満たせば使えます。 老人ホーム等に入所したために相続開始の直前に居住していなかった場合の特例が設けられています。要介護認定を受けていたこと、入所後も家屋が事業・貸付け・他の人の居住の用に供されていないことなどが条件です。
Q6. 小規模宅地等の特例と、両方使えますか。
A. 同じ土地について、両方の効果をそのまま受けられるわけではありません。 小規模宅地等の特例は「持ち続ける(相続税を下げる)」ための制度、空き家特例は「売る(譲渡税を下げる)」ための制度です。どちらが有利かは、相続税額と譲渡所得の両方を試算しないと判断できません。
Q7. 空き家のまま置いておくと、固定資産税は上がりますか。
A. 上がることがあります。 特定空家等に指定されて勧告を受けると、住宅用地の特例(固定資産税が最大6分の1になる措置)が適用されなくなります。管理不全空家等に指定された場合も、勧告を受ければ同様です。 税額が数倍になることがあります。
Q8. 相続登記をしていません。売れますか。
A. 売れません。 名義が亡くなった方のままでは、売買による所有権移転登記ができません。2024年4月から相続登記は義務化されており、3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。売却を考えるなら、まず登記です。
まとめ
- 空き家の3,000万円特別控除は、要件を満たせば譲渡所得から差し引けます
- 相続人が3人以上なら2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡)
- 期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日、かつ令和9年12月31日まで
- 建物は昭和56年5月31日以前の建築で、区分所有建物でないことが必要です
- 令和6年から、買主が改修・除却する場合も対象になりました
- 取得費加算の特例(3年10か月以内)とは選択適用です。両方は使えません
- 放置すると、控除も、特例も、住宅用地の軽減も失います
- 東京では、解体前に道路と接道の確認を。再建築不可の土地があります
- 売却には相続登記が必須です(2024年4月から義務化・3年以内)
ご相談のご案内
「実家をどうするか決めていない」という段階でご相談ください。 持ち続ける場合と売る場合で、使える特例がまったく変わります。どちらが有利かは、試算しないと分かりません。
固定資産税の課税明細書と、建物の登記事項証明書があれば、判断材料をお出しできます。
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 国税庁 No.3223 譲渡所得の特別控除の種類
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例
- 国税庁 No.4602 土地家屋の評価
- 法務省 相続登記の申請義務化特設ページ
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。特例の適用期限や要件は改正されることがありますので、実行前に必ず税理士にご相談ください。

