お墓・仏壇は誰が継ぐのか|祭祀承継者は、遺産分割では決まりません

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日


【結論】お墓は遺産ではありません。分けるものでもありません

「お墓と仏壇は、誰が引き継ぐことになりますか」

ご相談の場で、必ず出てくる質問です。

答えは、こうです。

お墓・仏壇・位牌・家系図などは「祭祀財産」といい、
遺産分割の対象になりません(民法897条)。
1人の「祭祀承継者」が、まとめて引き継ぎます。

預貯金や不動産のように、話し合って分けるものではありません。
そして、法定相続分も関係ありません。

別のルールで、別の人が決まる。 ここが理解されていないと、話がかみ合いません。


祭祀財産とは

含まれるもの補足
墳墓(お墓、墓石、墓地の使用権)墓地は多くの場合「所有」ではなく「使用権」です
祭具(仏壇、仏具、位牌、神棚)
系譜(家系図、過去帳)

遺骨そのものは、判例上、祭祀承継者に帰属するとされています。

一方、次のものは祭祀財産ではありません

含まれないもの扱い
骨董的価値のある仏像通常の相続財産。相続税もかかります
投資目的で持っていた金の仏具同上
お墓の購入資金(現金)通常の相続財産です

誰が継ぐかは、この順番で決まります

民法897条は、3段階で定めています。

決め方内容
被相続人の指定遺言書、口頭、生前の書面など。方式は問われません
慣習その地域・その家のならわし
家庭裁判所の審判①②で決まらないとき

いちばん強いのは、亡くなった方の指定です。

遺言書に書いておけば、それで決まります。
口頭でも有効ですが、後で「言った・言わない」になります。書面に残してください。

相続人でなくても、祭祀承継者になれます

ここが、あまり知られていません。

祭祀承継者になれるか
長男なれます
長女・次男なれます
内縁のパートナーなれます
親族以外の友人なれます
相続放棄をした人なれます

祭祀財産は遺産ではないため、相続放棄をしても承継できます。
逆に、祭祀承継者になったからといって、借金を引き継ぐわけでもありません。

「長男が継ぐもの」という決まりは、法律上ありません。


相続税はかかりません

お墓・仏壇・位牌などの祭祀財産には、相続税がかかりません。

ただし、いつ買ったかで結論が変わります。

状況扱い
生前にお墓を買っていた非課税財産。 相続税はかかりません
亡くなった後に相続人が買った買うのに使った現金に相続税がかかります
お墓の未払金が残っていた債務控除できません(非課税財産に係る債務のため)

「生前に買うかどうか」だけで、課税される財産が変わります。

お墓を建てる予定があるなら、お元気なうちにというのは、この意味です。

相続税がかからない財産とは?非課税になる7つと、間違えやすい境界

⚠️ ただし、骨董的価値のあるもの、投資目的のものは非課税になりません。
「純金の仏具」といった極端な形は、否認されるおそれがあります。


継いだ人には、負担が続きます

祭祀承継者になると、費用と手間を引き受けることになります。

続くもの内容
管理料霊園・寺院に毎年支払います
お布施・寄付寺院墓地では、行事のたびに求められることがあります
法要の主宰一周忌、三回忌などの手配
修繕墓石の傷み、地震による倒壊
遠方の場合の交通費お参りのたびに発生します

そして、法律上はこれらを他の親族に請求できません。

祭祀承継者に扶養義務のような分担のしくみはないためです。
話し合いで決めるしかありません。

だからこそ、「誰が継ぐか」だけでなく「費用をどうするか」も、
生前に決めておくことをおすすめします。

現金を別に残しておく、あるいは遺言書で管理費用のための財産を指定するという方法があります。

遺言書の種類と選び方|自筆証書と公正証書のどちらにすべきか


継ぐ人がいない場合

おひとりさま、お子さんがいないご家庭で、最も多いご相談です。

選択肢は、いくつかあります。

方法内容
永代供養墓寺院・霊園が管理と供養を続けてくれます
合祀(ごうし)墓他の方と一緒に納骨します。費用は抑えられます
樹木葬樹木を墓標とするもの
納骨堂屋内の施設。都心に多くあります
散骨節度をもって行う必要があります
墓じまい(改葬)既存のお墓を片付け、別の形に移します

墓じまいには、手続きがあります

勝手に遺骨を移すことはできません。

やること
1新しい納骨先を決め、受入証明書をもらう
2現在の墓地の管理者から、埋葬証明書をもらう
3現在の墓地がある市区町村に改葬許可を申請する
4改葬許可証を受け取る
5閉眼供養をして、遺骨を取り出す
6墓石を撤去し、更地にして返す
7新しい納骨先に改葬許可証を提出して納骨する

3の改葬許可が必要という点が、いちばん見落とされます。

費用は、墓地の場所・墓石の大きさ・寺院との関係によって大きく変わります。
「いくらかかるか」は、必ず複数の石材店に見積もりを取ってください。

寺院墓地では、離檀料を求められることがあります。
法律上の支払義務があるものではありませんが、トラブルになりやすい部分です。
早い段階で、住職に相談することをおすすめします。


祭祀承継者が決まらないとき

放置されるお墓が、実際に増えています。

決まらない場合、家庭裁判所に祭祀承継者の指定を申し立てることになります。

裁判所は、次のような事情を見て判断するとされています。

見られること
亡くなった方との身分関係・生活関係
これまで祭祀を主宰してきたか
本人の意思(引き受ける気があるか)
墓地との距離、管理の現実的な可能性
他の親族の意向

「長男だから」という理由だけで決まるわけではありません。

引き受ける人がいないなら、無理に決めるより、
永代供養に移して区切りをつけるほうが現実的なこともあります。


費用は誰が負担するのか

祭祀承継者が引き受けます。 ここに法律上の分担の仕組みはありません。

だからこそ、生前に決めておく価値があります。

決めておくこと方法
誰が継ぐか遺言書で指定します
費用をどうするか継ぐ人に、管理費用相当の財産を多めに残します
将来どうするか「継ぐ人がいなくなったら永代供養に」と書き添えます
家族に伝えるエンディングノートで希望を共有します

「継ぐ人にだけ負担が集中する」形は、後々もめます。

遺言書で、「墓地の管理のために、長男に◯◯円を相続させる」と書いておけば、
他のきょうだいも納得しやすくなります。


死後のことを託しておく方法

お墓のことは、亡くなった後の話です。
ご自身では手続きできません。

おひとりさまの場合、次の仕組みを組み合わせて備えます。

仕組み何をしてもらうか
死後事務委任契約葬儀、納骨、行政手続き、遺品整理
遺言書財産の行き先、祭祀承継者の指定
喪主代行葬儀を主宰する人がいない場合
エンディングノート希望を伝える(法的効力はありません

祭祀承継者の指定は、遺言書に書けます。
「誰に頼むか」を決めて、その人に伝えておいてください。

死後事務委任契約とは?費用・内容・依頼先
おひとりさまが生前に準備すべき5つの契約【チェックリスト付き】


葬儀費用は、相続税から引けます

お墓とは別に、葬儀費用は債務控除の対象です。

引けるもの引けないもの
通夜・葬式・火葬・埋葬の費用香典返しの費用
お布施・読経料・戒名料墓地・墓石の購入費用
遺体の運搬費用法要の費用(初七日・四十九日など)
捜索・遺体の運搬にかかった費用医学上・裁判上の特別な処置にかかった費用

ここでも、お墓は別扱いです。

葬儀費用は引けるのに、墓石の代金は引けません。
非課税財産に係る費用だからです。

だからこそ「生前に買う」ことに意味があります。
生前に買えば、その分だけ課税される現金が減り、買ったお墓は非課税財産になります。
亡くなってから買えば、現金にも課税され、費用も引けません。

相続税がかからない財産とは?非課税になる7つと、間違えやすい境界


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

都心では、お墓をめぐる事情が独特です。

事情影響
お墓が地方にある管理もお参りも負担が大きく、墓じまいの相談が多くなります
子が継がない・継げない遠方に住んでいる、家族がいない
区内の墓地は限られる新しく求めるなら、納骨堂や樹木葬が現実的です
寺院との付き合いが薄い離檀の話がこじれやすくなります

ご相談では、「新宿の自宅は片付いたが、故郷のお墓が残っている」という形が目立ちます。

土地そのものを手放す方法もあわせて検討することになります。

相続土地国庫帰属制度|いらない土地を国に引き取ってもらえるのか

当センターは相続税の申告と生前対策だけを扱っています。
祭祀承継の手続きそのものは専門外ですが、
「生前に買うか、後にするか」という税金の判断と、遺言書での指定はお手伝いできます。

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)


遺骨をめぐって争いになったら

「遺骨を渡してもらえない」というご相談があります。

遺骨は、判例上、祭祀承継者に帰属するとされています。
つまり、誰が祭祀承継者かが決まらないと、遺骨の行き先も決まりません。

状況対応
祭祀承継者が決まっていない家庭裁判所に祭祀承継者の指定を申し立てます
決まっているが、渡してもらえない引渡しを求めることになります
分骨したい分骨証明書が必要です(墓地の管理者や火葬場が発行します)

再婚家庭、内縁関係、疎遠だった家族の間で起きやすい争いです。

生前に遺言書で祭祀承継者を指定しておけば、この争いは起きません。


生前にやっておくと、家族が助かること

やること効果
お墓の場所・管理者の連絡先を書き出す家族が探さずに済みます
年間の管理料と支払い方法を伝える滞納で無縁墓にならずに済みます
永代使用権の証書のありかを伝える手続きに必要です
祭祀承継者を遺言書で指定するもめません
管理費用のための財産を残す継ぐ人の負担が減ります
「継ぐ人がいなくなったら」の希望を書く判断の材料になります

費用も手間も、引き受ける人に集中します。
だからこそ、決めておくことが思いやりになります。

エンディングノートと遺言書の違い|法的効力があるのはどちらか


よくある質問

Q1. お墓は長男が継ぐものですか

そのような決まりはありません。 ①被相続人の指定、②慣習、③家庭裁判所の審判の順で決まります。
長女でも、内縁の方でも、親族以外でもなれます。

Q2. お墓は遺産分割の対象になりますか

なりません。 祭祀財産は遺産とは別に扱われ、1人の祭祀承継者がまとめて承継します(民法897条)。

Q3. 相続放棄をしたら、お墓も継げませんか

継げます。 祭祀財産は遺産ではないため、相続放棄をしても承継できます。

Q4. お墓に相続税はかかりますか

かかりません。 ただし、亡くなった後に相続人が買った場合は、その現金に相続税がかかります。
また、お墓の未払金は債務控除できません。

Q5. 管理料を、きょうだいで分担してもらえますか

法律上は請求できません。 話し合いで決めることになります。
だからこそ、生前に費用の手当てまで決めておくことをおすすめします。

Q6. 墓じまいには、どんな手続きが必要ですか

新しい納骨先の受入証明書、現在の墓地の埋葬証明書を用意し、
市区町村から改葬許可を受ける必要があります。勝手に遺骨を移すことはできません。

Q7. 離檀料は払わなければいけませんか

法律上の支払義務があるものではありません。 ただし、こじれやすい部分です。
早い段階で住職に相談し、円満に進めることをおすすめします。

Q8. 継ぐ人がいません

永代供養墓・合祀墓・樹木葬・納骨堂などの選択肢があります。
あわせて、死後事務委任契約で納骨までを託しておくと確実です。


まとめ

  • お墓・仏壇・位牌などは祭祀財産で、遺産分割の対象になりません(民法897条)
  • 承継者は①被相続人の指定 → ②慣習 → ③家庭裁判所の審判の順で決まります
  • 相続人でなくても、相続放棄をしていても、祭祀承継者になれます
  • 相続税はかかりません。ただし生前に買った場合に限ります
  • お墓の未払金は債務控除できません
  • 管理料などの負担は続きますが、他の親族に請求する法的な手段はありません
  • 墓じまいには、市区町村の改葬許可が必要です
  • 継ぐ人がいない場合は、永代供養・死後事務委任契約などで備えます

相続のご相談は、新宿の相続専門税理士へ

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監修者

天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員

相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」(登録者4.2万人)で、相続の実務を発信しています。


出典

  • e-Gov法令検索「民法」第897条(祭祀に関する権利の承継)

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

  • 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130181.html

  • e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(改葬許可)

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048

  • 国税庁タックスアンサー No.4108「相続税がかからない財産」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm


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