生前贈与の7年ルールとは?2024年の改正で何が変わったか

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年8月9日 最終更新日:2026年9月3日


【結論】亡くなる前7年以内の贈与は、相続財産に戻して計算します

暦年課税による生前贈与は、これまで「亡くなる前3年以内」の分が相続財産に加算されていました。2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から、この期間が7年に延長されます。ただし延長された4年分については、合計100万円までは加算されません。また加算されるのは、相続や遺贈で財産を取得した人への贈与に限られます。孫など、財産を受け取らない人への贈与は対象外です。

ポイント内容
加算される期間相続開始前3年 → 7年
対象になる贈与2024年(令和6年)1月1日以後の贈与
延長された4年分合計100万円までは加算されません
加算されるのは誰への贈与か相続・遺贈などで財産を取得した人への贈与のみ
対象外になりやすい人相続人でない孫、子の配偶者など(財産を受け取らない場合)
二重課税は起きるか起きません。払った贈与税は相続税額から差し引きます
いつから7年になるか令和13年(2031年)1月1日以後の相続から完全に7年

「贈与が無意味になった」わけではありません。 早く始めるほど有利、という構造がはっきりしただけです。


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そもそも「生前贈与加算」とは

亡くなる直前に財産を贈与すれば、相続財産が減って相続税が下がります。これを無制限に認めると、相続税を回避できてしまいます。

そこで、亡くなる前の一定期間内に贈与された財産は、相続財産に戻して相続税を計算するという仕組みが設けられています。これが生前贈与加算(持ち戻し)です。

この「一定期間」が、3年から7年に延びました。


いつから7年になるのか

ここが最も誤解されやすいところです。「2024年から急に7年になる」わけではありません。

加算されるのは2024年(令和6年)1月1日以後の贈与に限られます。そのため、加算期間は段階的に伸びていきます。

相続が起きた時期加算される贈与
令和8年(2026年)12月31日まで従来どおり相続開始前3年以内
令和9年(2027年)1月1日〜令和12年12月31日令和6年1月1日から死亡の日までの贈与(3年超7年未満)
令和13年(2031年)1月1日以後相続開始前7年以内

つまり、いま相続が起きた場合は実質3年のままです。 影響が本格的に出るのは2027年以降で、完全に7年になるのは2031年からです。


延長された4年分は、100万円まで加算されません

7年すべてが同じ扱いではありません。

期間扱い
相続開始前3年以内全額が加算されます
相続開始前3年超7年以内(延長された4年分)合計100万円までは加算されません

注意していただきたいのは「100万円は1年あたりではない」という点です。 延長された4年分を合計して100万円です。


加算されるのは「財産を受け取った人」への贈与だけです

ここを知らないまま対策をされている方が、とても多くいらっしゃいます。

生前贈与加算の対象になるのは、相続、遺贈、または相続時精算課税による贈与によって財産を取得した人への贈与です。

贈与を受けた人加算されるか
相続人である子加算されます
遺言で財産を受け取った人加算されます
相続人でない孫(遺贈も受けていない)加算されません
子の配偶者(財産を受け取らない)加算されません

ただし、孫でも加算される場合があります

次のような場合、お孫さんは「財産を取得した人」に当たり、加算の対象になります。

  • 生命保険金の受取人になっている
  • 遺言で財産を受け取った
  • 代襲相続人になっている(お子さんが先に亡くなっている場合)
  • 孫を養子にしている

孫を養子にした場合は、相続税額が2割加算されることにも注意が必要です。


払った贈与税はどうなるのか

二重に課税されることはありません。

加算された贈与財産について贈与税を納めていた場合、その贈与税額は相続税額から差し引きます(贈与税額控除)。ただし加算税や延滞税は控除の対象外です。


相続時精算課税という選択肢

2024年(令和6年)1月1日から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されました。

暦年課税相続時精算課税
年110万円まで贈与税がかからない贈与税がかからない
相続時の加算7年以内は加算(延長分は100万円控除)年110万円以内の分は加算されません
申告110万円以下なら不要110万円以下なら不要
制度の変更一度選ぶと暦年課税に戻せません

毎年110万円ずつ渡していく前提なら、相続時精算課税のほうが有利になる場面が増えました。 直前でも加算されないためです。

ただし一度選ぶと戻せません。 財産の額、ご年齢、想定される相続時期によって答えが変わりますので、選ぶ前に試算してください。

相続時精算課税の選択(国税庁 No.4103)


贈与でつまずきやすい3つのこと

改正とは別に、そもそも贈与として認められていないケースが多くあります。

1. 名義だけ変えた預金は、贈与ではありません

通帳と印鑑を親が管理し、お子さんが贈与を受けた認識もない預金は、名義預金として相続財産に含められます。税務調査で最も多く指摘される論点です。

  • 受け取る人が口座の存在を知っている
  • 通帳と印鑑を受け取る人が管理しているか
  • 自由に使える状態

名義預金とは?税務調査で最も指摘される財産と3つの判断基準

2. 「毎年決まった額」は、まとめて課税されることがあります

毎年同じ日に同じ額を贈与し続けると、「最初からまとまった額を贈与する約束だった」(定期贈与)と判断されるおそれがあります。その場合、総額に対して贈与税がかかります。

贈与のたびに契約書を作り、金額や時期に変化をつけるといった対応が実務では行われています。

3. 記録が残っていない

現金の手渡しは、あとから証明できません。 振込の記録を残し、贈与契約書を作ってください。


もうひとつの改正:賃貸不動産の「5年ルール」

贈与だけではありません。令和8年度税制改正の大綱には、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産を通常の取引価額で評価するという改正も盛り込まれました(令和9年1月1日以後の相続等から適用予定)。

期間何が変わるか
生前贈与7年直前の贈与が相続財産に戻される
賃貸不動産5年直前に買った物件の評価が下がらなくなる

「相続が近づいてから対策する」という手法が、制度の側から次々に塞がれています。

賃貸不動産の相続税評価|2027年から「5年ルール」が始まります


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

東京では、そもそも贈与だけでは対策が足りないケースが多くあります。

新宿区の路線価を考えると、ご自宅の土地だけで基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えることは珍しくありません。年110万円の贈与を10年続けても1,100万円です。

贈与は「効く場面」と「効かない場面」がはっきり分かれます。

状況贈与の効きやすさ
財産の大半が預貯金効きやすい
財産の大半が自宅の土地贈与しにくく、小規模宅地等の特例のほうが効くことが多い
賃貸物件がある収益ごと移せるため効く場面がある。ただし5年ルールに注意
相続人が多い贈与の相手が増えるため効きやすい

まず相続税がいくらかかるかを試算し、そのうえで手段を選ぶ順番です。 試算をせずに贈与だけ始めても、必要な量に足りているかが分かりません。


よくある質問

Q1. 2024年より前の贈与も、7年さかのぼって加算されるのですか。

A. されません。 加算対象になるのは令和6年(2024年)1月1日以後の贈与です。それより前の贈与については、従来どおり相続開始前3年以内のものだけが加算されます。

Q2. いま相続が起きた場合、何年分が加算されますか。

A. 令和8年(2026年)12月31日までに相続が起きた場合は、従来どおり3年以内です。 令和9年1月1日から令和12年12月31日の間に相続が起きた場合は、令和6年1月1日以後の贈与が対象になります。完全に7年になるのは令和13年(2031年)1月1日以後の相続からです。

Q3. 孫への贈与は加算されないと聞きましたが、本当ですか。

A. 相続や遺贈で財産を取得しないお孫さんへの贈与は、加算されません。 ただし生命保険金の受取人になっている、遺言で財産を受け取る、代襲相続人である、養子になっている、といった場合は「財産を取得した人」に当たり、加算の対象になります。なお孫を養子にすると、相続税額が2割加算されます。

Q4. 100万円の控除は、毎年100万円ずつ使えるのですか。

A. 使えません。 延長された4年分(相続開始前3年超7年以内)を合計して100万円までです。1年あたり100万円ではありませんので、ご注意ください。

Q5. 贈与税を払った分は、どうなりますか。

A. 相続税額から差し引きます。 加算された贈与財産について納めた贈与税がある場合、その金額を相続税額から控除します(贈与税額控除)。二重に課税されることはありません。ただし加算税や延滞税は控除されません。

Q6. 暦年課税と相続時精算課税、どちらを選ぶべきですか。

A. 財産の額、ご年齢、想定される相続の時期によって変わります。 毎年110万円ずつ渡していく前提であれば、相続時精算課税は相続時に加算されないため有利になる場面が増えました。ただし一度選ぶと暦年課税には戻せません。 選ぶ前に必ず試算してください。

Q7. 子ども名義の口座にお金を入れています。これは贈与になりますか。

A. なっていない可能性があります。 通帳と印鑑を親が管理し、お子さんが口座の存在を知らない場合、名義預金として相続財産に含められます。贈与として成立させるには、受け取る人が口座を認識し、通帳と印鑑を管理し、自由に使える状態であることが必要です。

Q8. もう贈与しても意味がないということですか。

A. そうではありません。 加算されるのは7年以内の贈与です。7年より前の贈与は、いつまでも相続財産に戻されません。 つまり「早く始めるほど有利」という構造がはっきりしただけです。また相続人でないお孫さんへの贈与や、相続時精算課税の年110万円の枠は、加算の対象外です。やり方を選べば、いまも十分に効きます。


まとめ

  • 暦年課税の生前贈与加算が、相続開始前3年から7年に延長されました
  • 対象は令和6年(2024年)1月1日以後の贈与です。それより前の贈与は3年のままです
  • 完全に7年になるのは令和13年(2031年)1月1日以後の相続からです
  • 延長された4年分は、合計100万円まで加算されません(1年あたりではありません)
  • 加算されるのは相続・遺贈等で財産を取得した人への贈与だけです
  • 相続人でない孫への贈与は加算されません(保険金の受取人や養子である場合を除く)
  • 払った贈与税は相続税額から差し引かれます
  • 相続時精算課税の年110万円は、相続時に加算されません
  • 賃貸不動産にも5年ルールが入る予定です。直前の対策は塞がれつつあります

ご相談のご案内

まず相続税がいくらかかるかを試算し、そのうえで手段を選びます。 試算をせずに贈与だけ始めても、必要な量に足りているかが分かりません。

すでに贈与を始めている方も、一度ご確認ください。 名義預金になっていないか、定期贈与と見られないか、その贈与が加算対象かどうか。ここは実際に資料を拝見しないと判断できません。

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。


出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。実際の判断は個別の事情により異なりますので、必ず税理士にご相談ください。



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