セットバックが必要な土地の相続税評価|70%減額の計算と2項道路の調べ方を税理士が解説

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超/税務調査率1%未満。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年8月13日 最終更新日:2026年9月6日


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【税理士が解説】土地の評価で相続税はここまで変わる|最大80%減の評価テク8選
セットバックが必要な土地の評価について、他の補正とあわせて解説しています。
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【結論】狭い道路に面した土地は、後退部分を70%減額できます

幅4m未満の道路に接する土地は、建て替えのときに敷地の一部を道路として提供しなければなりません。これをセットバックといいます。

そして相続税の評価では、将来道路になるこの部分について、評価額を70%減額できます(財産評価基本通達24-6)。
言い換えると、その部分は30%の価値としてしか評価しないということです。

東京の住宅地には、幅4m未満の道路(いわゆる2項道路)が今も大量に残っています。
にもかかわらず、この減額が適用されていない申告書は珍しくありません。

ポイント内容
根拠財産評価基本通達 24-6(セットバックを必要とする宅地の評価)
対象建築基準法42条2項の道路(幅員4m未満)に接する宅地
減額将来道路になる部分について 70%減額(=30%評価)
後退の基準原則、道路の中心線から水平距離2m
片側後退の場合崖・川・線路等がある側は、反対側の境界から4m
すでに後退済みの部分セットバックではなく私道として評価(通り抜けなら評価しない)
確認先市区町村の建築指導課(特定行政庁)
最大の落とし穴2項道路かどうかは、見ただけでは分からない

セットバックとは何か

建築基準法では、原則として幅4m以上の道路に2m以上接していないと建物を建てられません(接道義務)。

しかし、この規定ができる前から家が建ち並んでいた地域には、幅4m未満の道が数多く残っています。
そうした道をすべて「道路ではない」としてしまうと、建て替えができない家が大量に発生します。

そこで建築基準法42条2項は、一定の要件を満たす幅4m未満の道を「道路とみなす」こととしました。
これが2項道路(みなし道路)です。

ただし条件があります。建て替えのときに、道路の中心線から2m後退した位置まで敷地を下げること。
これがセットバックです。

後退した部分には、建物も塀も門も建てられません。
建築面積の計算からも除かれます。将来、道路になる土地だからです。
つまり、所有していても自由に使えない土地ということになります。

だからこそ、相続税の評価でも減額が認められています。


計算方法

評価額 = 通常の評価額 - 通常の評価額 × (セットバック部分の地積 ÷ 総地積)× 0.7

セットバック部分だけを70%減額するという考え方です。

セットバックの原則を示した図。幅3.6mの2項道路では道路中心線から2m下がり、後退部分0.2mが70%減額の対象になる
道路の中心線から2mまで後退します。この後退部分の相続税評価が70%減額されます。

計算例

前提

  • 総地積:150㎡
  • 前面道路の幅員:3.6m(2項道路)
  • 間口:10m
  • 補正後の1㎡あたりの価額:50万円

ステップ1 後退する幅を求める

道路の中心線から2mまで後退します。

現在の道路幅 3.6m の中心線は、道路端から 1.8m
後退が必要な幅 = 2m - 1.8m = 0.2m

ステップ2 セットバック部分の面積を出す

0.2m × 間口10m = 2㎡

ステップ3 評価額を計算する

通常の評価額 = 50万円 × 150㎡ = 7,500万円

減額 = 7,500万円 ×(2㎡ ÷ 150㎡)× 0.7
   = 7,500万円 × 0.01333… × 0.7
   = 約70万円

評価額 = 7,500万円 - 70万円 = 約7,430万円

「たった70万円か」と思われるかもしれません。
しかし、これは間口10m・後退0.2mという控えめな例です。
道路幅が2.7mなら後退は0.65m、間口が20mあれば13㎡になり、減額は約455万円になります。
道路が狭いほど、間口が広いほど、減額は大きくなります。


後退する幅の求め方

原則:道路の中心線から2m

後退する幅 = 2m -(現在の道路幅 ÷ 2)
現在の道路幅中心線からの距離後退する幅
3.8m1.9m0.1m
3.6m1.8m0.2m
3.0m1.5m0.5m
2.7m1.35m0.65m
2.0m1.0m1.0m

道路が狭いほど後退幅は大きくなります。

一方後退の図。向かいが崖・河川・線路の場合は反対側の境界から4mまで自分の側だけで後退するため、後退幅がほぼ倍になる
向かい側が下がれない場合は、自分の側だけで4mを確保します。後退幅が原則の2倍になります。

例外:一方後退(片側が崖・川・線路等の場合)

道路の反対側が崖地・河川・線路敷などで後退できない場合は、
その反対側の境界線から4mの位置まで、自分の側だけで後退します。

後退する幅 = 4m - 現在の道路幅

道路幅3.0mなら、1.0mの後退が必要になります。原則の場合(0.5m)の2倍です。

一方後退は見落とされやすい類型です。
川沿い・線路沿い・崖下の道に面した土地は、必ず確認してください。


「すでに後退済み」の部分は扱いが違います

建て替えのときにセットバックを済ませていて、その部分がすでに道路として使われている場合、
その部分はセットバック評価の対象ではありません。

この場合は私道として評価します(財産評価基本通達24)。

状態評価
これから後退する部分(まだ敷地として使っている)セットバック評価(70%減額=30%評価
すでに後退済みで、不特定多数が通行している私道として評価しない(ゼロ)
すでに後退済みだが、特定の人だけが使う行き止まり私道私道として30%評価

すでに後退済みなら、評価がゼロになる可能性があります。 セットバック評価より有利です。

現地で「この部分は道路として舗装されているのか、それともまだ庭や駐車場として使っているのか」を
確認する必要があります。ここも図面では分かりません。


2項道路かどうかの調べ方

これが実務上いちばん重要で、いちばん手間のかかる部分です。

道を見ただけでは、それが建築基準法上の何の道路なのかは分かりません。
幅が狭くても2項道路でない場合もありますし、私道のように見えて2項道路のこともあります。

確認先

市区町村の建築指導課(特定行政庁)です。

確認すること
その道が建築基準法42条何項の道路か
2項道路であれば、中心線がどこか(すでに確定しているか)
一方後退が必要な路線かどうか
すでにセットバックが済んでいる区間があるか

多くの自治体では、道路種別を地図で公開しています(「道路種別図」「建築基準法道路種別」など)。
まずはそちらを確認し、判断が難しければ窓口で照会します。

東京23区は2項道路が非常に多い地域です。
戦前からの街区がそのまま残る地域、木造住宅密集地域では特に多く、
杉並区・中野区・北区・墨田区・荒川区などでは日常的に見かけます。
新宿区の住宅地にも数多く残っています。


実務で見落とされる3つのパターン

1. そもそも道路の種別を調べていない

最も多い見落としです。

資料だけで評価を済ませる場合、公図と地積測量図は見ても、
役所で道路種別を照会しないことがあります。そうすると2項道路であることに気づけません。

道路種別の確認は、土地評価の初手であるべき作業だと考えています。

2. 一方後退を見落とす

前述のとおり、道路の反対側が崖・川・線路の場合は後退幅が倍近くになります。
原則どおり「中心線から2m」で計算してしまうと、減額が半分になります。

3. すでに後退済みの部分を、セットバックとして評価してしまう

すでに後退して道路として使われている部分は、私道として評価ゼロになる可能性があります。
セットバック評価(30%評価)より有利なのに、気づかず30%で評価しているケースがあります。

現地を見て、舗装状況と利用実態を確認する必要があります。


他の補正との関係

セットバックの減額は、他の画地補正を適用した後の価額に対して行います。

順序としては、奥行価格補正・不整形地補正・間口狭小補正などで補正後の価額を出し、
その価額に対してセットバック部分の割合と0.7を掛けて減額します。

2項道路に面する土地は、もともと間口が狭く、不整形であることが多いという特徴があります。
古い街区がそのまま残っているためです。

セットバックだけを適用して終わりにしないでください。
間口狭小補正・不整形地補正・奥行長大補正が同時に使えるケースが大半です。
これらを積み上げると、減額の合計は大きくなります。


すでに申告済みでも、間に合う可能性があります

相続税の申告期限から5年以内であれば、「更正の請求」により払いすぎた税金の還付を受けられる可能性があります。

セットバックは、役所調査をしなければ気づけない論点です。
資料だけで評価を済ませた申告書では、適用されていないことがあります。

次に当てはまる方は、一度見直しをご検討ください。

  • 相続した土地の前面道路が狭い(車のすれ違いが難しい程度)
  • 道路の反対側が崖・川・線路である
  • 敷地の一部がすでに道路のように舗装されている
  • 申告を担当した税理士が役所調査をしていない

当センターでは相続税申告のセカンドオピニオンを承っています。
申告書の控えをお送りいただければ、見直しの余地があるかを判断できます。


よくある質問

Q1. 私道に面していますが、セットバックの対象になりますか?

A. 私道であっても、建築基準法42条2項の道路に指定されていれば対象になります。
所有形態(公道か私道か)と、建築基準法上の道路種別は別の話です。
必ず役所で道路種別を確認してください。

Q2. まだ建て替える予定はありません。それでも減額できますか?

A. できます。 セットバック評価は「将来、建て替えのときに後退しなければならない」という
制約に対する減価です。実際に後退するかどうか、いつ建て替えるかは問いません。

Q3. セットバック部分の固定資産税はどうなりますか?

A. 相続税の話とは別ですが、すでに後退して道路として使用している部分は、
申請により固定資産税が非課税になる
ことがあります。
自治体によって手続きが異なりますので、資産税課にご確認ください。
後退済みなのに課税されたままというケースは実際にあります。

Q4. 幅が4mちょうどの道路ならセットバックは不要ですか?

A. 原則として不要です。 ただし道路幅は場所によって変動することがあり、
一部が4m未満であればその部分は対象になり得ます。
また4m以上でも、地域によっては条例でより広い幅員が求められる場合があります。
実測と役所の確認が必要です。

Q5. 角地でセットバックが2方向に必要な場合は?

A. それぞれの道路について後退部分を求め、合計します。
角地は隅切り(すみきり)が必要になることもあり、その部分も検討対象です。
複雑になるため、個別にご相談ください。

Q6. セットバックの減額はいくらくらいになりますか?

A. 道路の幅と間口の広さによります。 道路が狭いほど、間口が広いほど大きくなります。
道路幅3.0m・間口15mであれば後退部分は7.5㎡程度になり、
1㎡50万円の土地なら約262万円の減額です(総地積による按分計算のため実際は個別に計算します)。


まとめ

  • 幅4m未満の2項道路に面する土地は、将来道路になる部分を70%減額できる(通達24-6)
  • 後退幅は原則「2m -(道路幅÷2)」。道路が狭いほど大きくなる
  • 反対側が崖・川・線路なら一方後退(4m - 道路幅)。後退幅がほぼ倍になる
  • すでに後退済みの部分は私道として評価。通り抜けなら評価ゼロになる可能性
  • 2項道路かどうかは見ただけでは分からない。役所の建築指導課で確認が必要
  • 2項道路の土地は間口狭小・不整形であることが多い。他の補正も必ず検討する
  • 申告済みでも、5年以内なら更正の請求で還付を受けられる可能性がある

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
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