相続させたくない相続人がいる|廃除・欠格・遺言でできること

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月11日 最終更新日:2026年9月12日


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【結論】完全に外すのは、かなり難しい制度です

「この子には相続させたくない」というご相談は、決して珍しくありません。方法は3つあります。廃除、欠格、そして遺言書です。ただし率直に申し上げると、廃除で完全に外すのは簡単ではありません。家庭裁判所が認めるのは、虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合に限られ、「疎遠だから」「介護をしてくれなかったから」では認められません。そして見落とされやすい落とし穴があります。廃除が認められても、その人の子(孫)が代襲相続します。つまり家系から財産が出ていくことを防げるわけではありません。現実的な選択肢は、遺言書で配分を最小限にすることです。ただしこの場合も、遺留分は残ります。

方法誰が決めるか難易度代襲相続
廃除家庭裁判所高い起きます(子・孫へ)
欠格法律上、当然に(手続き不要)該当すれば自動起きます
遺言書で配分を減らす本人低い
生前の遺留分放棄家庭裁判所(本人の申立て)高い

廃除できるのは「遺留分を有する相続人」だけです。
兄弟姉妹には遺留分がないため、そもそも廃除の対象になりません。
兄弟姉妹に渡したくないなら、遺言書だけで完全に外せます。


方法1 廃除

推定相続人の廃除は、家庭裁判所の審判により相続権を失わせる制度です(民法892条・893条)。

認められる要件

次のいずれかに該当する必要があります。

要件内容
被相続人に対する虐待身体的・精神的な虐待
被相続人に対する重大な侮辱名誉を著しく傷つける行為
その他の著しい非行上記に準じる重大な行為

認められにくい例

ご相談で挙がる理由の多くは、これに当たりません。

よくある理由廃除
何年も連絡がない、疎遠である認められにくい
介護を手伝ってくれなかった認められにくい
結婚に反対したのに従わなかった認められにくい
性格が合わない、折り合いが悪い認められにくい
一度だけ暴言を吐かれた認められにくい
長年にわたる暴力・暴言認められる可能性があります
多額の財産を無断で持ち出した認められる可能性があります
繰り返し借金を肩代わりさせた認められる可能性があります

判断の基準は「家族としての関係が破壊されたと言えるか」です。 一時的な感情の対立では足りません。

そして——認められる件数自体が多くありません。 「申し立てれば通る」制度ではないとお考えください。

2つの方法

① 生前に申し立てる

被相続人が生きている間に、自ら家庭裁判所へ申し立てます。

利点は、結果を自分で確認できることです。認められなければ、遺言書での対応に切り替えられます。

② 遺言書で意思表示する

遺言書に「〇〇を廃除する」と書いておく方法です。

相続開始後、遺言執行者が家庭裁判所へ申し立てます。 そのため遺言執行者の指定が必須です。

この方法の弱点は、認められるかどうかが分からないまま亡くなることです。認められなければ、その人は相続人のままです。

取消しもできます

廃除は、いつでも取り消せます(民法894条)。関係が修復した場合は、家庭裁判所へ取消しを申し立てます。


【重要】廃除しても、代襲相続が起きます

ここが最大の落とし穴です。

廃除された人に子がいれば、その子が代襲相続します(民法887条2項)。

長男を廃除した → 長男の子(孫)が長男に代わって相続する

つまり、財産がその家系から出ていくことを防げるわけではありません。

しかも——廃除された長男が、実質的にその財産を管理することになりかねません。 孫が未成年なら、親権者である長男が管理します。

「相続させたくない」という目的が、達成できないことになります。

同じことが欠格にも当てはまります。

代襲相続まで防ぎたい場合は、遺言書で他の人へ配分するしかありません。


方法2 欠格

相続欠格は、一定の重大な事由に該当すれば、手続きなしに当然に相続権を失う制度です(民法891条)。

欠格事由
被相続人や先順位・同順位の相続人を故意に死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた
被相続人が殺害されたことを知りながら、告発・告訴しなかった(一定の例外あり)
詐欺・強迫により、被相続人の遺言を妨げた
詐欺・強迫により、被相続人に遺言をさせ、撤回・取消し・変更させた
遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した

該当すれば、家庭裁判所の手続きは不要です。 当然に相続権を失います。

実務で問題になるのは、最後の「遺言書の破棄・隠匿」です。 自分に不利な遺言書を隠した、捨てた——これが立証されれば欠格になります。

欠格でも、代襲相続は起きます。


方法3 遺言書(最も現実的です)

廃除が認められる見込みが低い以上、実務では遺言書が中心になります。

やり方

「〇〇に全財産を相続させる」と書けば、他の相続人の取り分は0になります。

ただし——遺留分が残ります。

相続人遺留分
配偶者あります
子・孫あります
父母・祖父母あります
兄弟姉妹・甥姪ありません

兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書だけで完全に外せます。

お子さんがいないご夫婦で「全財産を妻に」と書けば、兄弟姉妹は一切請求できません。

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遺留分は残るが、大幅に減らせます

子が2人いて、そのうち1人に渡したくない場合——

遺言書なし遺言書あり
その相続人の取り分1/21/4(遺留分のみ)

半分にできます。 完全に0にはできませんが、実務上の効果は大きくなります。

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付言事項を必ず書いてください

法的効力はありませんが、実務では効きます。

「なぜこの配分にしたのか」を書いておくと、遺留分の請求を思いとどまることがあります。

逆に、理由が書かれていないと「なぜ自分だけ」という感情が先に立ち、請求されやすくなります。


方法4 生前の遺留分放棄

相続開始前に、相続人本人が家庭裁判所へ申し立てて、遺留分を放棄する方法があります(民法1049条)。

項目内容
誰が申し立てるか遺留分を放棄する本人(被相続人ではありません)
どこへ被相続人の住所地の家庭裁判所
許可の基準本人の自由な意思によるか、放棄の理由に合理性があるか、代償があるか

「本人が自分から申し立てる」という点が壁になります。 相続させたくない相手に、自分から放棄を申し立ててもらう——現実には難しいことがほとんどです。

代償を渡すことで合意が成立する場合はあります。 「生前に住宅資金を援助する代わりに、遺留分を放棄してもらう」といった形です。

注意点: 遺留分を放棄しても、相続人であることは変わりません。 遺産分割協議には参加しますし、遺言書がなければ法定相続分を主張できます。遺言書とセットでなければ意味がありません。


相続税はどうなるか

廃除・欠格があった場合の相続税の扱いです。

項目扱い
基礎控除の「法定相続人の数」廃除・欠格された人は含めません(ただし代襲相続人がいれば、その人を数えます
生命保険・死亡退職金の非課税枠同上
相続放棄との違い相続放棄は「いなかったもの」として数に含めます(基礎控除は減りません)

ここは相続放棄と扱いが逆になります。

法定相続人の数に含めるか
相続放棄含めます(基礎控除は減りません)
廃除・欠格含めません(ただし代襲相続人がいれば、その人を数えます)

代襲相続人がいれば結果的に人数は変わりませんが、いない場合は基礎控除が600万円減ります。

相続税はいくらからかかる?基礎控除の考え方


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

この3区では「自宅を守れるかどうか」が争点になります。

【よくある形】

項目金額
自宅(新宿区・長女と同居)7,000万円
預貯金500万円
合計7,500万円

「同居して介護してくれた長女に自宅を。疎遠な長男には渡したくない」

廃除は認められません。 「疎遠」は要件に当たりません。

現実的な選択肢はこうなります。

対応長男の取り分
何もしない3,750万円(法定相続分1/2)
「全財産を長女に」という遺言書1,875万円(遺留分1/4)

遺言書を書くだけで、半分に減らせます。

ただし1,875万円をどう払うかが問題です。 預貯金は500万円しかありません。

対策は生命保険です。 長女を受取人にして2,000万円の保険に入っておけば、遺留分を保険金から払えます。自宅を売らずに済みます。

保険金は受取人固有の財産で、原則として遺留分算定の基礎財産に含まれません。 ここが効きます。

そして小規模宅地等の特例も併せてご確認ください。 同居していた長女が取得すれば、330㎡まで80%減額できます。ただし申告期限までに分割が終わっていることが条件です。争いが長引くと、特例まで失います。

新宿区の相続税|土地評価が難しい街で損をしないために


よくある質問

Q1. 疎遠な子を相続人から外せますか。

A. 廃除では外せません。 廃除が認められるのは、虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合に限られます。「疎遠」「介護を手伝わない」では認められません。現実的な方法は、遺言書で配分を遺留分相当額まで減らすことです。

Q2. 廃除すれば、その家系に財産は渡りませんか。

A. 渡ります。 廃除された人に子がいれば、その子(孫)が代襲相続します。 これが最大の落とし穴です。しかも孫が未成年なら、親権者である廃除された本人が財産を管理することになります。代襲相続まで防ぎたいなら、遺言書で他の人へ配分してください。

Q3. 兄弟姉妹を廃除できますか。

A. できません。 廃除できるのは遺留分を有する相続人(配偶者・子・直系尊属)だけです。兄弟姉妹には遺留分がないため、そもそも廃除の対象外です。ただし遺留分がないということは、遺言書だけで完全に外せるということでもあります。

Q4. 遺言書に「〇〇には相続させない」と書けば足りますか。

A. 不十分です。 そう書いただけでは、遺留分の請求を止められません。 効果があるのは「〇〇に全財産を相続させる」と積極的に配分を指定することです。あわせて付言事項で理由を書いてください。請求を思いとどまることがあります。

Q5. 生前に遺留分を放棄してもらえますか。

A. 本人が家庭裁判所へ申し立てて、許可を得る必要があります。 被相続人からは申し立てできません。本人の自由な意思によるか、合理的な理由や代償があるかが審査されます。相続させたくない相手に自分から申し立ててもらうのは、現実には困難です。

Q6. 遺留分を放棄してもらえば、それで安心ですか。

A. 遺言書とセットでなければ意味がありません。 遺留分を放棄しても相続人であることは変わらず、遺言書がなければ法定相続分を主張できます。遺産分割協議にも参加します。必ず遺言書を作成してください。

Q7. 遺言書を隠した相続人がいます。

A. 遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿は、相続欠格事由に該当します。 該当すれば、家庭裁判所の手続きなしに当然に相続権を失います。ただし立証が必要です。このリスクを避けるため、公正証書遺言か、法務局の保管制度をご利用ください。

自筆証書遺言書保管制度とは?法務局に預ける5つのメリット

Q8. 誰に相談すればよいですか。

A. 廃除の申立て・遺留分をめぐる交渉の代理は、弁護士の業務です。遺言書の作成支援は弁護士・司法書士・行政書士です。税理士は行えません。 当センターでは提携する専門家をご紹介し、「その配分だと相続税がいくらになるか」「遺留分をいくら用意すべきか」の試算を担当します。


まとめ

  • 「相続させたくない」への方法は、廃除・欠格・遺言書・生前の遺留分放棄の4つです
  • 廃除は、虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合に限られます。 疎遠や介護不参加では認められません
  • 廃除できるのは遺留分を有する相続人だけ。 兄弟姉妹は対象外です
  • 廃除・欠格でも、代襲相続は起きます(子・孫へ)。これが最大の落とし穴です
  • 欠格は手続き不要で、当然に相続権を失います(遺言書の破棄・隠匿を含む)
  • 最も現実的なのは遺言書です。 取り分を法定相続分の半分(遺留分)まで減らせます
  • 兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書だけで完全に外せます
  • 付言事項で理由を書いてください。 請求を思いとどまることがあります
  • 生前の遺留分放棄は本人が家庭裁判所へ申し立てる必要があり、現実には困難です
  • 廃除・欠格は基礎控除の人数に含めません(相続放棄とは扱いが逆です)
  • 東京では生命保険で遺留分の支払原資を用意しておくことが、自宅を守る鍵になります

ご相談のご案内

「相続させたくない」というご相談は、決して珍しくありません。 廃除が現実的かどうかの見立て、遺言書でどこまで減らせるか、遺留分をいくら用意すべきか——財産の内訳をお持ちいただければ、その場で試算します。

弁護士・司法書士への窓口も一本化しています。

📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。


出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。



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