相続させたくない相続人がいる|廃除・欠格・遺言でできること
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
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公開日:2026年9月11日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】完全に外すのは、かなり難しい制度です
「この子には相続させたくない」というご相談は、決して珍しくありません。方法は3つあります。廃除、欠格、そして遺言書です。ただし率直に申し上げると、廃除で完全に外すのは簡単ではありません。家庭裁判所が認めるのは、虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合に限られ、「疎遠だから」「介護をしてくれなかったから」では認められません。そして見落とされやすい落とし穴があります。廃除が認められても、その人の子(孫)が代襲相続します。つまり家系から財産が出ていくことを防げるわけではありません。現実的な選択肢は、遺言書で配分を最小限にすることです。ただしこの場合も、遺留分は残ります。
| 方法 | 誰が決めるか | 難易度 | 代襲相続 |
|---|---|---|---|
| 廃除 | 家庭裁判所 | 高い | 起きます(子・孫へ) |
| 欠格 | 法律上、当然に(手続き不要) | 該当すれば自動 | 起きます |
| 遺言書で配分を減らす | 本人 | 低い | — |
| 生前の遺留分放棄 | 家庭裁判所(本人の申立て) | 高い | — |
廃除できるのは「遺留分を有する相続人」だけです。
兄弟姉妹には遺留分がないため、そもそも廃除の対象になりません。
兄弟姉妹に渡したくないなら、遺言書だけで完全に外せます。
方法1 廃除
推定相続人の廃除は、家庭裁判所の審判により相続権を失わせる制度です(民法892条・893条)。
認められる要件
次のいずれかに該当する必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人に対する虐待 | 身体的・精神的な虐待 |
| 被相続人に対する重大な侮辱 | 名誉を著しく傷つける行為 |
| その他の著しい非行 | 上記に準じる重大な行為 |
認められにくい例
ご相談で挙がる理由の多くは、これに当たりません。
| よくある理由 | 廃除 |
|---|---|
| 何年も連絡がない、疎遠である | 認められにくい |
| 介護を手伝ってくれなかった | 認められにくい |
| 結婚に反対したのに従わなかった | 認められにくい |
| 性格が合わない、折り合いが悪い | 認められにくい |
| 一度だけ暴言を吐かれた | 認められにくい |
| 長年にわたる暴力・暴言 | 認められる可能性があります |
| 多額の財産を無断で持ち出した | 認められる可能性があります |
| 繰り返し借金を肩代わりさせた | 認められる可能性があります |
判断の基準は「家族としての関係が破壊されたと言えるか」です。 一時的な感情の対立では足りません。
そして——認められる件数自体が多くありません。 「申し立てれば通る」制度ではないとお考えください。
2つの方法
① 生前に申し立てる
被相続人が生きている間に、自ら家庭裁判所へ申し立てます。
利点は、結果を自分で確認できることです。認められなければ、遺言書での対応に切り替えられます。
② 遺言書で意思表示する
遺言書に「〇〇を廃除する」と書いておく方法です。
相続開始後、遺言執行者が家庭裁判所へ申し立てます。 そのため遺言執行者の指定が必須です。
この方法の弱点は、認められるかどうかが分からないまま亡くなることです。認められなければ、その人は相続人のままです。
取消しもできます
廃除は、いつでも取り消せます(民法894条)。関係が修復した場合は、家庭裁判所へ取消しを申し立てます。
【重要】廃除しても、代襲相続が起きます
ここが最大の落とし穴です。
廃除された人に子がいれば、その子が代襲相続します(民法887条2項)。
長男を廃除した → 長男の子(孫)が長男に代わって相続する
つまり、財産がその家系から出ていくことを防げるわけではありません。
しかも——廃除された長男が、実質的にその財産を管理することになりかねません。 孫が未成年なら、親権者である長男が管理します。
「相続させたくない」という目的が、達成できないことになります。
同じことが欠格にも当てはまります。
代襲相続まで防ぎたい場合は、遺言書で他の人へ配分するしかありません。
方法2 欠格
相続欠格は、一定の重大な事由に該当すれば、手続きなしに当然に相続権を失う制度です(民法891条)。
| 欠格事由 |
|---|
| 被相続人や先順位・同順位の相続人を故意に死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた |
| 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発・告訴しなかった(一定の例外あり) |
| 詐欺・強迫により、被相続人の遺言を妨げた |
| 詐欺・強迫により、被相続人に遺言をさせ、撤回・取消し・変更させた |
| 遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した |
該当すれば、家庭裁判所の手続きは不要です。 当然に相続権を失います。
実務で問題になるのは、最後の「遺言書の破棄・隠匿」です。 自分に不利な遺言書を隠した、捨てた——これが立証されれば欠格になります。
欠格でも、代襲相続は起きます。
方法3 遺言書(最も現実的です)
廃除が認められる見込みが低い以上、実務では遺言書が中心になります。
やり方
「〇〇に全財産を相続させる」と書けば、他の相続人の取り分は0になります。
ただし——遺留分が残ります。
| 相続人 | 遺留分 |
|---|---|
| 配偶者 | あります |
| 子・孫 | あります |
| 父母・祖父母 | あります |
| 兄弟姉妹・甥姪 | ありません |
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書だけで完全に外せます。
お子さんがいないご夫婦で「全財産を妻に」と書けば、兄弟姉妹は一切請求できません。
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遺留分は残るが、大幅に減らせます
子が2人いて、そのうち1人に渡したくない場合——
| 遺言書なし | 遺言書あり | |
|---|---|---|
| その相続人の取り分 | 1/2 | 1/4(遺留分のみ) |
半分にできます。 完全に0にはできませんが、実務上の効果は大きくなります。
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付言事項を必ず書いてください
法的効力はありませんが、実務では効きます。
「なぜこの配分にしたのか」を書いておくと、遺留分の請求を思いとどまることがあります。
逆に、理由が書かれていないと「なぜ自分だけ」という感情が先に立ち、請求されやすくなります。
方法4 生前の遺留分放棄
相続開始前に、相続人本人が家庭裁判所へ申し立てて、遺留分を放棄する方法があります(民法1049条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が申し立てるか | 遺留分を放棄する本人(被相続人ではありません) |
| どこへ | 被相続人の住所地の家庭裁判所 |
| 許可の基準 | 本人の自由な意思によるか、放棄の理由に合理性があるか、代償があるか |
「本人が自分から申し立てる」という点が壁になります。 相続させたくない相手に、自分から放棄を申し立ててもらう——現実には難しいことがほとんどです。
代償を渡すことで合意が成立する場合はあります。 「生前に住宅資金を援助する代わりに、遺留分を放棄してもらう」といった形です。
注意点: 遺留分を放棄しても、相続人であることは変わりません。 遺産分割協議には参加しますし、遺言書がなければ法定相続分を主張できます。遺言書とセットでなければ意味がありません。
相続税はどうなるか
廃除・欠格があった場合の相続税の扱いです。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 基礎控除の「法定相続人の数」 | 廃除・欠格された人は含めません(ただし代襲相続人がいれば、その人を数えます) |
| 生命保険・死亡退職金の非課税枠 | 同上 |
| 相続放棄との違い | 相続放棄は「いなかったもの」として数に含めます(基礎控除は減りません) |
ここは相続放棄と扱いが逆になります。
| 法定相続人の数に含めるか | |
|---|---|
| 相続放棄 | 含めます(基礎控除は減りません) |
| 廃除・欠格 | 含めません(ただし代襲相続人がいれば、その人を数えます) |
代襲相続人がいれば結果的に人数は変わりませんが、いない場合は基礎控除が600万円減ります。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
この3区では「自宅を守れるかどうか」が争点になります。
【よくある形】
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自宅(新宿区・長女と同居) | 7,000万円 |
| 預貯金 | 500万円 |
| 合計 | 7,500万円 |
「同居して介護してくれた長女に自宅を。疎遠な長男には渡したくない」
廃除は認められません。 「疎遠」は要件に当たりません。
現実的な選択肢はこうなります。
| 対応 | 長男の取り分 |
|---|---|
| 何もしない | 3,750万円(法定相続分1/2) |
| 「全財産を長女に」という遺言書 | 1,875万円(遺留分1/4) |
遺言書を書くだけで、半分に減らせます。
ただし1,875万円をどう払うかが問題です。 預貯金は500万円しかありません。
対策は生命保険です。 長女を受取人にして2,000万円の保険に入っておけば、遺留分を保険金から払えます。自宅を売らずに済みます。
保険金は受取人固有の財産で、原則として遺留分算定の基礎財産に含まれません。 ここが効きます。
そして小規模宅地等の特例も併せてご確認ください。 同居していた長女が取得すれば、330㎡まで80%減額できます。ただし申告期限までに分割が終わっていることが条件です。争いが長引くと、特例まで失います。
よくある質問
Q1. 疎遠な子を相続人から外せますか。
A. 廃除では外せません。 廃除が認められるのは、虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合に限られます。「疎遠」「介護を手伝わない」では認められません。現実的な方法は、遺言書で配分を遺留分相当額まで減らすことです。
Q2. 廃除すれば、その家系に財産は渡りませんか。
A. 渡ります。 廃除された人に子がいれば、その子(孫)が代襲相続します。 これが最大の落とし穴です。しかも孫が未成年なら、親権者である廃除された本人が財産を管理することになります。代襲相続まで防ぎたいなら、遺言書で他の人へ配分してください。
Q3. 兄弟姉妹を廃除できますか。
A. できません。 廃除できるのは遺留分を有する相続人(配偶者・子・直系尊属)だけです。兄弟姉妹には遺留分がないため、そもそも廃除の対象外です。ただし遺留分がないということは、遺言書だけで完全に外せるということでもあります。
Q4. 遺言書に「〇〇には相続させない」と書けば足りますか。
A. 不十分です。 そう書いただけでは、遺留分の請求を止められません。 効果があるのは「〇〇に全財産を相続させる」と積極的に配分を指定することです。あわせて付言事項で理由を書いてください。請求を思いとどまることがあります。
Q5. 生前に遺留分を放棄してもらえますか。
A. 本人が家庭裁判所へ申し立てて、許可を得る必要があります。 被相続人からは申し立てできません。本人の自由な意思によるか、合理的な理由や代償があるかが審査されます。相続させたくない相手に自分から申し立ててもらうのは、現実には困難です。
Q6. 遺留分を放棄してもらえば、それで安心ですか。
A. 遺言書とセットでなければ意味がありません。 遺留分を放棄しても相続人であることは変わらず、遺言書がなければ法定相続分を主張できます。遺産分割協議にも参加します。必ず遺言書を作成してください。
Q7. 遺言書を隠した相続人がいます。
A. 遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿は、相続欠格事由に該当します。 該当すれば、家庭裁判所の手続きなしに当然に相続権を失います。ただし立証が必要です。このリスクを避けるため、公正証書遺言か、法務局の保管制度をご利用ください。
Q8. 誰に相談すればよいですか。
A. 廃除の申立て・遺留分をめぐる交渉の代理は、弁護士の業務です。遺言書の作成支援は弁護士・司法書士・行政書士です。税理士は行えません。 当センターでは提携する専門家をご紹介し、「その配分だと相続税がいくらになるか」「遺留分をいくら用意すべきか」の試算を担当します。
まとめ
- 「相続させたくない」への方法は、廃除・欠格・遺言書・生前の遺留分放棄の4つです
- 廃除は、虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合に限られます。 疎遠や介護不参加では認められません
- 廃除できるのは遺留分を有する相続人だけ。 兄弟姉妹は対象外です
- 廃除・欠格でも、代襲相続は起きます(子・孫へ)。これが最大の落とし穴です
- 欠格は手続き不要で、当然に相続権を失います(遺言書の破棄・隠匿を含む)
- 最も現実的なのは遺言書です。 取り分を法定相続分の半分(遺留分)まで減らせます
- 兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書だけで完全に外せます
- 付言事項で理由を書いてください。 請求を思いとどまることがあります
- 生前の遺留分放棄は本人が家庭裁判所へ申し立てる必要があり、現実には困難です
- 廃除・欠格は基礎控除の人数に含めません(相続放棄とは扱いが逆です)
- 東京では生命保険で遺留分の支払原資を用意しておくことが、自宅を守る鍵になります
ご相談のご案内
「相続させたくない」というご相談は、決して珍しくありません。 廃除が現実的かどうかの見立て、遺言書でどこまで減らせるか、遺留分をいくら用意すべきか——財産の内訳をお持ちいただければ、その場で試算します。
弁護士・司法書士への窓口も一本化しています。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- e-Gov 民法
- 裁判所 相続に関する調停
- 裁判所 遺留分侵害額の請求調停
- 法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
- 法務省 自筆証書遺言書保管制度について
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。

