生前にできる相続対策一覧|効果と注意点を10種類まとめて比較

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月10日 最終更新日:2026年9月12日


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これ知らないと損します!絶対にやっておくべき二次相続対策
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【結論】対策は「10種類」あります。順番を間違えると効きません

生前の相続対策は、大きく「①財産を減らす」「②評価を下げる」「③非課税枠を使う」「④揉めないようにする」「⑤判断能力を失ったときに備える」の5つの目的に分かれます。世の中でよく語られるのは①と②ですが、実際にご相談を受けていて効果が大きいのは③と④です。そして最も見落とされるのが⑤です。順番としては、まず「相続税がいくらかかるか」を試算し、そのうえで効く対策を選びます。試算せずに贈与から始めると、たいてい空振りします。

目的対策効果の大きさ始めやすさ
①財産を減らす暦年贈与中(7年ルールで縮小)
①財産を減らす相続時精算課税(年110万円)
①財産を減らす教育資金・結婚子育て資金の一括贈与小〜中
②評価を下げる小規模宅地等の特例
②評価を下げる不動産の組み替え
③非課税枠を使う生命保険の非課税枠中〜大
③非課税枠を使う配偶者の税額軽減大(ただし二次相続に注意)
④揉めないようにする遺言書
④揉めないようにする配偶者居住権
⑤判断能力に備える任意後見・家族信託大(税額ではなく凍結防止)

何より先に、税額を試算してください

「相続対策をしたい」というご相談で、最初にお聞きするのは財産の内訳です。

理由は単純で、相続税がかからない方に節税対策は不要だからです。基礎控除は次の式で計算します。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円

財産の合計がこの金額以下なら、相続税はかかりません。 この場合に必要なのは節税ではなく、④揉めないようにする⑤判断能力に備えるの2つです。

一方、東京23区に持ち家がある方は、土地だけで基礎控除を超えることが珍しくありません。まず試算してください。

相続税はいくらからかかる?基礎控除の考え方


①財産を減らす

暦年贈与

年110万円までの贈与には贈与税がかかりません。 ただし令和6年1月1日以後の贈与から、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるようになりました(改正前は3年)。

加算されるのは、相続や遺贈で財産を取得した人への贈与だけです。 財産を受け取らない孫や子の配偶者への贈与は、原則として加算されません。ここが実務上いちばん大きなポイントです。

延長された4年分(4〜7年前)については、合計100万円まで加算されません。

生前贈与の7年ルール|令和6年からの生前贈与加算

相続時精算課税

令和6年1月1日以後の贈与から、年110万円の基礎控除が新設されました。 この110万円分は、相続財産に加算されません。

暦年課税の110万円は7年以内なら加算されますが、精算課税の110万円は加算されない——この差は年々効いてきます。

ただし一度選ぶと暦年課税には戻せません。 また贈与した宅地には小規模宅地等の特例が使えません。 自宅の土地を贈与する判断は慎重に行ってください。

相続時精算課税とは?2024年からの年110万円控除

教育資金・結婚子育て資金の一括贈与

30歳未満の子や孫へ教育資金を一括贈与する場合、1,500万円まで非課税にできる制度があります(結婚・子育て資金は1,000万円)。

ただし使い切れなかった残額には贈与税や相続税がかかります。 また金融機関に専用口座を開き、領収書を提出し続ける手間があります。そもそも扶養義務者からの教育費の都度払いは、贈与税の対象になりません。 一括で渡す必要が本当にあるかを先にご検討ください。


②評価を下げる

小規模宅地等の特例(効果が最も大きい)

自宅の土地について、330㎡までの部分の評価額が80%減額されます。

東京の場合、これが使えるかどうかで税額が数百万円から一千万円以上変わります。 相続対策の中で最も効果が大きい制度です。

ただし要件が細かく、「誰が取得するか」で使えるかどうかが変わります。 遺産分割の内容が結論を左右するため、遺言書を書く前に必ず確認してください。

小規模宅地等の特例|自宅の土地が80%減額

不動産の組み替え

現預金を賃貸不動産に換えると、貸家建付地・貸家の評価減により相続税評価額が下がります。

ただし2つ注意があります。

  1. 空室リスク・値下がりリスクを負います。 税額が下がっても資産が減れば意味がありません
  2. 令和8年度税制改正大綱に、貸付用不動産の「5年ルール」が盛り込まれています

大綱の内容は、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産について、評価の取扱いを見直すというものです。令和9年1月1日以後の相続等が対象とされています。

これは大綱の段階であり、法律として確定した内容ではありません。 ただ「亡くなる直前に不動産を買う」という手法は、今後は通用しにくくなると考えておいてください。


③非課税枠を使う

生命保険の非課税枠(始めやすさで最優先)

500万円 × 法定相続人の数までの死亡保険金が非課税になります。

法定相続人非課税枠
1人500万円
2人1,000万円
3人1,500万円

現預金で1,500万円を持っているとそのまま課税されますが、保険金として受け取れば非課税——これが枠を使うということです。

さらに保険金は遺産分割協議を経ずに受取人が直接受け取れるため、納税資金や葬儀費用をすぐ用意できます。 効果と手軽さの両面で、優先度の高い対策です。

生命保険金は相続税の対象?500万円×法定相続人の非課税枠

配偶者の税額軽減

配偶者が取得した財産は、1億6,000万円か法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。

ただしこれは「使えば得」とは限りません。 一次相続で配偶者に寄せすぎると、二次相続で税額が跳ね上がります。

配偶者の税額軽減とは?1億6,000万円まで非課税
二次相続とは?配偶者が全部相続すると損する理由


④揉めないようにする

遺言書

遺言書は「節税」の道具ではありませんが、結果として税額に効きます。

理由は、小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も、申告期限までに遺産分割が終わっていることが原則条件だからです。揉めて分割が決まらないと、これらの特例が使えないまま申告することになります。

分割が決まらないことによる増税は、生前贈与で節約できる額より大きくなることがあります。

遺言書の種類と選び方|自筆証書と公正証書のどちらにすべきか

配偶者居住権

配偶者が自宅に住み続ける権利と、所有権とを分けて相続させる制度です(令和2年4月1日施行)。

配偶者は住まいを確保しつつ、預貯金も相続しやすくなります。 また配偶者居住権は配偶者の死亡で消滅するため、二次相続で課税されません。


⑤判断能力を失ったときに備える(最も見落とされます)

認知症などで判断能力が低下すると、次のことができなくなります。

  • 預貯金の解約・引き出し
  • 自宅の売却
  • 生前贈与
  • 遺言書の作成
  • 保険契約の変更

つまり、ここまで挙げた対策のすべてが止まります。

任意後見契約は、判断能力があるうちに「将来支援してくれる人」を自分で選んでおく契約です。公正証書で作成する必要があります。

家族信託は、財産の管理・処分の権限をあらかじめ家族に託しておく仕組みです。自宅の売却まで想定するなら選択肢になります。

任意後見契約・家族信託の設計と契約書作成は、司法書士・弁護士の業務です。
当センターでは提携する専門家をご紹介し、税務面の検討と窓口の一本化を担当します。


対策を始める順番

1. 相続税がいくらかかるかを試算する
 → かからないなら、④と⑤だけで十分です

2. 小規模宅地等の特例が使えるかを確認する
 → 効果が最も大きく、遺産分割の内容に左右されます

3. 生命保険の非課税枠が空いていないか確認する
 → 空いているなら、まずここを埋めます

4. 遺言書を作る
 → 分割が決まらないことによる増税を防ぎます

5. 判断能力に備える契約を検討する
 → 対策そのものが止まらないようにします

6. そのうえで、まだ財産が多ければ贈与を検討する

多くの方が6番から始めます。 そして「7年ルールがあるから意味がなかった」となります。順番を逆にしてください。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

東京では②の効果が突出して大きくなります。

新宿区・中野区・世田谷区の宅地は路線価が高く、小規模宅地等の特例の80%減額は、そのまま数千万円の評価減になります。年110万円の贈与を10年続けた1,100万円とは、桁が違います。

一方で、東京の土地は分けにくいという問題があります。1つの土地を複数の相続人で分けようとして揉め、申告期限までに分割が決まらず特例を落とす——これが最も多い失敗です。

東京の場合、優先すべきは「②評価を下げる」と「④揉めないようにする」です。

新宿区の相続税|土地評価が難しい街で損をしないために


よくある質問

Q1. 相続対策は何歳から始めるべきですか。

A. 年齢よりも「判断能力があるうち」が基準です。 贈与も遺言も任意後見契約も、判断能力がなければできません。70代・80代の方から「もっと早く相談すればよかった」と言われることが多いのは、そのためです。60代で一度試算しておくと、その後の選択肢が広がります。

Q2. いちばん効果が大きい対策は何ですか。

A. 前提によって変わりますが、東京に持ち家がある方では小規模宅地等の特例です。 330㎡まで80%減額されるため、効果が桁違いです。ただし「対策」というより「要件を落とさないようにする」という性質のものです。誰が取得するかで使えるかどうかが変わるため、遺産分割の設計とセットで考えます。

Q3. 生前贈与はもう意味がないのですか。

A. そんなことはありません。 7年ルールで加算されるのは、相続や遺贈で財産を取得した人への贈与だけです。財産を受け取らない孫や子の配偶者への贈与は、原則として加算されません。また相続時精算課税の年110万円は加算されません。「誰に贈与するか」で結論が変わります。

Q4. 不動産を買えば相続税は下がりますか。

A. 下がることが多いですが、確実ではありません。 空室や値下がりのリスクを負いますし、令和8年度税制改正大綱には貸付用不動産の5年ルール(相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産の評価の見直し。令和9年1月1日以後の相続等が対象とされています)が盛り込まれています。大綱の段階ですが、直前の購入は今後通用しにくくなるとお考えください。

Q5. 生命保険はどんな契約にすればよいですか。

A. 非課税枠を使うには、契約者(保険料負担者)と被保険者が被相続人、受取人が相続人という形が必要です。 受取人が相続人でない場合や、相続放棄をした人が受け取る場合には非課税枠が使えません。契約形態によっては所得税や贈与税の対象になります。加入前にご確認ください。

Q6. 家族信託と任意後見は、どちらがよいですか。

A. 目的が違います。 任意後見は「生活・療養看護と財産管理を任せる」もの、家族信託は「特定の財産の管理・処分の権限を託す」ものです。自宅の売却まで想定するなら家族信託、生活全般の支援を含めるなら任意後見が基本の考え方です。併用もできます。いずれも司法書士・弁護士の業務ですので、提携先をご紹介します。

Q7. 対策をすると、税務署に目をつけられませんか。

A. 制度に沿って行う限り、問題になりません。 指摘を受けるのは、贈与の実態がないもの(名義預金)や、申告から除外したものです。贈与するなら、贈与契約書を残し、受け取る人の口座へ振り込み、その口座の通帳と印鑑を受け取る人が管理する——ここまでやってください。

Q8. 対策の相談は、どこにすればよいですか。

A. 税額に関わる部分は税理士、契約書の作成は司法書士・弁護士、登記は司法書士です。当センターでは税務面の検討を担当し、他の専門家への窓口を一本化しています。ばらばらに依頼すると、対策同士が矛盾することがあります。


まとめ

  • 生前対策は①減らす②評価を下げる③非課税枠④揉めない⑤判断能力の5つの目的に分かれます
  • まず相続税の試算から。 かからないなら④と⑤だけで十分です
  • 効果が最も大きいのは小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減額)
  • 始めやすさでは生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)
  • 遺言書は節税の道具ではありませんが、特例を落とさないために効きます
  • 判断能力を失うと、対策そのものが全部止まります
  • 暦年贈与は7年ルールで縮小。ただし加算対象は財産を取得した人への贈与だけです
  • 不動産の組み替えは、令和8年度税制改正大綱の5年ルール(大綱の段階)に注意してください

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

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出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令および令和8年度税制改正大綱に基づいています。大綱の内容は法律として確定したものではありません。



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