小規模宅地等の特例とは?330㎡まで80%減額の条件
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超/税務調査率1%未満。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年8月9日 最終更新日:2026年8月15日
【結論】自宅の土地は、330㎡まで評価額を80%減らせます
小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた自宅の土地について、330㎡まで相続税の評価額を80%減額できる制度です。
評価額5,000万円の土地であれば、1,000万円として計算できます。 4,000万円の減額です。相続税の特例の中で、金額の影響が最も大きいもののひとつです。
ただし、この特例を使って相続税が0円になる場合でも、申告は必要です。 申告しなければ特例そのものが適用されません。ここを知らずに申告しなかったために、本来かからなかった税金がかかった、という事例は実際にあります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 自宅の土地(特定居住用宅地等) | 330㎡まで80%減額 |
| 事業用の土地(特定事業用宅地等) | 400㎡まで80%減額 |
| 貸付用の土地(貸付事業用宅地等) | 200㎡まで50%減額 |
| 配偶者が取得する場合 | 居住や保有を続けなくても適用できます |
| 同居していた親族が取得する場合 | 申告期限まで住み続け、かつ保有し続けること |
| 別居の親族(家なき子) | 要件が細かく、2018年に厳格化されています |
| 申告 | 税額が0円でも申告が必要。申告して初めて適用されます |
| 前提 | 原則として申告期限までに遺産分割が済んでいること |
小規模宅地等の特例とは?
小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった方)が住んでいた、または事業に使っていた土地について、一定の面積まで相続税の評価額を大きく減額できる制度です。
正式名称は「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」といいます。
なぜこの制度があるのか
自宅の土地に高い相続税がかかると、住み続けられなくなるためです。
遺された家族が相続税を払うために自宅を売らなければならない——そうした事態を避けるために設けられた制度です。事業用の土地も同じ趣旨で、事業の継続を守るためのものです。
減額の効果
評価額が80%減るというのは、非常に大きな効果です。
| 土地の評価額 | 特例適用後 | 減額される金額 |
|---|---|---|
| 3,000万円 | 600万円 | 2,400万円 |
| 5,000万円 | 1,000万円 | 4,000万円 |
| 8,000万円 | 1,600万円 | 6,400万円 |
| 1億円 | 2,000万円 | 8,000万円 |
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と組み合わせると、この特例だけで相続税が0円になることも珍しくありません。
対象になる土地は3種類
小規模宅地等の特例は、土地の使われ方によって、限度面積と減額割合が変わります。
| 種類 | どんな土地か | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 被相続人等が住んでいた土地 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 被相続人等が事業に使っていた土地 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 人に貸していた土地(アパート・駐車場など) | 200㎡ | 50% |
最も多く使われるのは、自宅の土地に適用する「特定居住用宅地等」です。
330㎡はどのくらいの広さか
330㎡は約100坪です。
一般的な戸建住宅の敷地は100〜200㎡程度ですから、多くのご家庭では、自宅の土地全体に80%減額が適用できます。
限度面積を超える場合は、超えた部分だけが通常の評価になります。全部が使えなくなるわけではありません。
誰が相続すれば適用できる?
自宅の土地(特定居住用宅地等)については、取得する人によって要件が変わります。 ここが最も間違えやすい部分です。
| 取得する人 | 要件 |
|---|---|
| ① 配偶者 | 要件なし。居住や保有を続けなくても適用できます |
| ② 同居していた親族 | 申告期限まで住み続け、かつ保有し続けること |
| ③ 別居の親族(家なき子) | 後述の細かい要件をすべて満たすこと |
① 配偶者は無条件
配偶者が自宅の土地を取得する場合、追加の要件はありません。 相続後すぐに売却しても、他所に住んでいても適用できます。
最も確実に適用できるのは配偶者です。
ただし、配偶者がすべてを相続すると二次相続で税額が増えることがあります。詳しくは 二次相続 と 配偶者の税額軽減 をご覧ください。
② 同居していた親族は「申告期限まで」
同居していた親族が取得する場合、相続税の申告期限(10か月)まで、その家に住み続け、かつ土地を保有し続ける必要があります。
申告期限前に売却したり、引っ越したりすると適用できません。 「相続したのですぐ売った」というケースで、あとから特例が使えないと分かることがあります。
③ 別居の親族(家なき子特例)
被相続人と同居していなかった親族でも、一定の要件を満たせば適用できます。 これが通称「家なき子特例」です。
【要確認】家なき子特例は2018年(平成30年)の改正で要件が厳格化されました。
おおむね次のような要件ですが、細部は必ず国税庁のタックスアンサーと租税特別措置法で
ご確認のうえ、記述を確定してください。
※この黄色いブロックは公開前に必ず削除してください。
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 被相続人と同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に、自己または配偶者、三親等内の親族、特別の関係がある法人が所有する家屋に住んでいないこと
- 相続開始時に住んでいる家屋を、過去に所有していたことがないこと
- 申告期限まで土地を保有し続けること
改正前は、親族の持ち家に住民票だけ移すといった方法で適用を受ける例がありました。 現在はそうした形では使えません。
見落とされやすい3つのケース
1. 二世帯住宅
二世帯住宅にお住まいの場合、建物の登記の仕方によって結論が変わることがあります。
内部で行き来できない構造であっても、建物全体が被相続人または親族の名義で登記されていれば、同居として扱われるのが原則です。
ただし、区分所有登記(親の部分と子の部分を別々に登記)をしている場合は、扱いが変わります。登記事項証明書を確認しないと判断できません。
2. 老人ホームに入居していた場合
被相続人が亡くなる前に老人ホームへ入居していた場合でも、一定の要件を満たせば特例を適用できます。
【要確認】おおむね次の要件です。細部は国税庁のタックスアンサーでご確認ください。
※この黄色いブロックは公開前に必ず削除してください。
- 被相続人が要介護認定または要支援認定等を受けていたこと
- 一定の施設(認定を受けた有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など)に入居していたこと
- 入居後、その家を事業用や新たな賃貸用に使っていないこと
「老人ホームに移ったから自宅ではなくなった」と早合点しないでください。 適用できるケースは多くあります。
3. 相続税が0円でも申告が必要
この特例を使って相続税が0円になる場合、申告しなければ特例は適用されません。
「税金がかからないなら何もしなくていい」と考えて申告しないと、特例が使えず、本来かからなかった税金がかかります。 そして、これは後から取り返せません。
複数の土地がある場合は併用できる?
自宅の土地(330㎡)と事業用の土地(400㎡)は、それぞれの限度面積まで完全に併用できます。 合計730㎡まで80%減額が可能です。
ただし、貸付用の土地(200㎡・50%減額)がある場合は、限度面積を調整する計算が必要になります。
【要確認】限度面積の調整計算式は複雑です。
貸付事業用宅地等を併用する場合の計算方法を、国税庁のタックスアンサーでご確認のうえ、
記述を追加するかご判断ください。どの土地に適用するかで税額が変わるため、
有利判定は税理士にご相談いただくのが確実です。
※この黄色いブロックは公開前に必ず削除してください。
複数の土地がある場合、どの土地にこの特例を使うかで税額が変わります。 単純に面積が広い土地を選べばよいわけではなく、1㎡あたりの評価額が高い土地に使うほうが有利になるのが原則です。
適用を受けるための手続き
この特例を受けるには、相続税の申告書に必要な書類を添付して提出します。
| 必要になる主なもの | 内容 |
|---|---|
| 相続税の申告書 | 第11・11の2表の付表など、特例用の明細書を添付します |
| 遺産分割協議書の写し | 申告期限までに分割が済んでいることが原則です |
| 戸籍謄本等 | 相続人を確定するため |
| 住民票の写し | 居住していたことを示すため |
| 登記事項証明書 | 土地・建物の状況を示すため |
分割が間に合わない場合
申告期限までに遺産分割がまとまらないと、原則としてこの特例は使えません。
ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付しておけば、後日分割が成立した時点で特例を適用し、更正の請求ができます。
この書類を出し忘れると、あとから分割してもこの特例は使えません。 揉めそうな場合は、必ず提出しておいてください。
手続き全体の流れは 相続手続きの流れ をご覧ください。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
東京都の相続税の課税割合は20.0%(令和6年分)で、都道府県別で最も高い水準です。 その多くは、自宅の土地の評価額が高いために基礎控除を超えたケースです。
つまりこの地域では、小規模宅地等の特例が使えるかどうかで、相続税の有無そのものが変わります。
- 330㎡(約100坪)を超える宅地は、この地域では多くありません。 そのため、自宅の土地の全体に80%減額が効くケースが大半です。裏を返せば、適用できるかどうかで税額が数百万円から数千万円変わります。
- 二世帯住宅が多い地域です。 敷地が限られるため、二世帯住宅を建てられているご家庭が多くあります。区分所有登記かどうかで結論が変わるため、登記事項証明書の確認が欠かせません。
- 土地の形が整っていない敷地が多い地域です。 この特例とは別に、不整形地・セットバック・がけ地などの補正も併用できます。詳しくは セットバックが必要な土地の相続税評価 と がけ地補正率 をご覧ください。
当センターがこれまでに手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満です。 適用要件を申告前に一つずつ確認し、根拠を書面添付制度で示しているためです。
地域ごとの詳細は 新宿区の相続税 と 東京の相続税 をご覧ください。
よくある質問
Q1. 小規模宅地等の特例とは何ですか?
A. 被相続人が住んでいた自宅の土地について、330㎡まで相続税の評価額を80%減額できる制度です。 評価額5,000万円の土地なら1,000万円として計算できます。事業用の土地は400㎡まで80%、貸付用の土地は200㎡まで50%の減額です。
Q2. 330㎡を超えたら、まったく使えないのですか?
A. 超えた部分だけが通常の評価になります。 330㎡までの部分には80%減額が適用されます。全体が使えなくなるわけではありません。なお330㎡は約100坪で、一般的な戸建住宅の敷地であれば全体に適用できることが多くあります。
Q3. 配偶者が相続する場合、条件はありますか?
A. 配偶者が取得する場合、追加の要件はありません。 居住を続けなくても、保有を続けなくても適用できます。最も確実に適用できるのは配偶者です。
Q4. 同居していた子が相続する場合の条件は?
A. 相続税の申告期限(10か月)まで、その家に住み続け、かつ土地を保有し続ける必要があります。 申告期限前に売却したり引っ越したりすると適用できません。
Q5. 別居している子でも使えますか?
A. 一定の要件を満たせば使えます。 通称「家なき子特例」です。被相続人に配偶者がいないこと、同居していた相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自己や配偶者等が所有する家屋に住んでいないことなどが要件です。2018年に厳格化されているため、個別の確認が必要です。
Q6. 老人ホームに入居していた場合はどうなりますか?
A. 一定の要件を満たせば適用できます。 要介護認定等を受けていたこと、一定の施設に入居していたこと、入居後にその家を事業用や新たな賃貸用に使っていないことなどが要件です。「老人ホームに移ったから対象外」と早合点しないでください。
Q7. 二世帯住宅でも適用できますか?
A. 建物の登記の仕方によります。 内部で行き来できない構造でも、建物全体が被相続人または親族の名義で登記されていれば同居として扱われるのが原則です。ただし区分所有登記をしている場合は扱いが変わります。 登記事項証明書の確認が必要です。
Q8. この特例で相続税が0円になれば、申告は不要ですか?
A. 申告が必要です。 この特例は、申告して初めて適用されます。申告しなければ特例が使えず、本来かからなかった税金がかかります。税額が0円でも必ず申告してください。
Q9. 遺産分割がまとまらない場合はどうなりますか?
A. 原則として適用できませんが、救済措置があります。「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付しておけば、後日分割が成立した時点で特例を適用し、更正の請求ができます。この書類を出し忘れると、あとから分割しても使えません。
まとめ
- 小規模宅地等の特例は、自宅の土地を330㎡まで80%減額できる制度です
- 事業用の土地は400㎡まで80%、貸付用の土地は200㎡まで50%の減額です
- 配偶者が取得する場合は要件がありません。最も確実に適用できます
- 同居していた親族は、申告期限まで居住と保有を続ける必要があります
- 別居の親族(家なき子)は要件が細かく、2018年に厳格化されています
- 二世帯住宅は区分所有登記かどうかで結論が変わります
- 老人ホーム入居中でも、要件を満たせば適用できます
- 税額が0円でも申告が必要です。申告して初めて適用されます
- 遺産分割が間に合わない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付してください
ご相談のご案内
小規模宅地等の特例は、要件の一つひとつを確認しないと適用の可否が判断できません。 二世帯住宅の登記、老人ホーム入居の経緯、同居の実態——ここを丁寧に見るかどうかで、税額が大きく変わります。
また、複数の土地がある場合は、どの土地に適用するかで税額が変わります。 有利判定が必要です。
当センターでは、相続税の申告と、適用できる特例の洗い出しをお受けしています。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- 国税庁 No.4161 配偶者の税額の軽減
- e-Gov法令検索 租税特別措置法 第69条の4

