相続時精算課税とは?2024年からの年110万円控除で何が変わったか

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月6日 最終更新日:2026年9月6日


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【結論】年110万円までは、相続のときに加算されなくなりました

相続時精算課税は、生前に贈与した財産を相続のときに合算して相続税を計算する制度です。長らく「相続税の節税にはならない」と言われてきましたが、2024年(令和6年)1月1日から年110万円の基礎控除が新設され、評価が変わりました。この110万円の枠内であれば、贈与税がかからないうえ、相続のときにも加算されません。暦年課税の7年ルールとは異なり、亡くなる直前の贈与でも加算されない点が大きな違いです。ただし一度選ぶと暦年課税には戻せません。

ポイント内容
制度の性質生前贈与を相続時に合算して精算する
特別控除累計2,500万円まで贈与税がかからない(超過分は一律20%)
年110万円の基礎控除令和6年1月1日以後の贈与から新設
110万円以内の扱い贈与税の申告不要。相続時にも加算されません
使える人原則、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫
最大の注意点一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません


制度のしくみ

相続時精算課税は「税金を減らす制度」ではなく、「支払いを先送りする制度」です。

  1. 生前に贈与する(累計2,500万円まで贈与税がかからない)
  2. 2,500万円を超えた分には一律20%の贈与税がかかる
  3. 相続が起きたとき、贈与した財産を相続財産に合算して相続税を計算する
  4. すでに納めた贈与税は相続税から差し引く(納めすぎていれば還付されます)

この「3」があるため、長らく節税にならないと言われてきました。


2024年に何が変わったのか

年110万円の基礎控除が新設されました。

変更前2024年(令和6年)1月1日以後
年110万円の枠なしあり
110万円以内の贈与税かかる(2,500万円枠を消費)かからない(枠も消費しません)
110万円以内の申告必要不要
相続時の加算全額加算110万円以内の分は加算されません

ここが決定的です。 暦年課税では、亡くなる前7年以内の贈与が相続財産に戻されます。一方、相続時精算課税の年110万円の枠は、亡くなる直前の贈与でも戻されません。


暦年課税とどちらが有利か

答えは「人による」です。断定はできません。 判断の軸は次のとおりです。

暦年課税相続時精算課税
年110万円まで贈与税なし贈与税なし
相続時の加算7年以内は加算(延長分は総額100万円控除)110万円以内は加算されません
110万円超の部分累進課税(最高55%)累計2,500万円まで無税、超過分は一律20%
相手誰でも(孫・子の配偶者・他人も可)原則60歳以上→18歳以上の子・孫に限られる
制度の変更いつでも可戻せません

相続時精算課税が向きやすい場面

  • ご高齢で、7年より長く生きられるか読みにくい(暦年課税だと加算されてしまう)
  • 毎年110万円ずつ渡していく前提
  • 将来値上がりしそうな財産を、いまの評価で移しておきたい
  • 収益物件を移して、家賃収入を子の側に付け替えたい

暦年課税が向きやすい場面

  • まだお若く、7年より先まで時間がある
  • 相続人でない孫へ渡したい(加算の対象外にできます)
  • 相手が複数いる(贈与できる相手の制限がありません)
  • 年110万円を超える額を、柔軟に動かしたい

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選ぶ前に知っておくべき5つの注意点

1. 戻せません

最大の注意点です。 一度この制度を選ぶと、その贈与者(父・母など)からの贈与については、二度と暦年課税に戻せません。

父からの贈与を精算課税にしても、母からの贈与は暦年課税のまま選べます。贈与者ごとに選択します。

2. 小規模宅地等の特例が使えなくなります

贈与で取得した宅地には、小規模宅地等の特例は適用できません。

自宅の土地を精算課税で贈与してしまうと、330㎡まで80%減額という大きな特例を捨てることになります。 東京の土地では、この影響が非常に大きくなります。

3. 値下がりすると損をします

相続時に合算されるのは贈与時の評価額です。贈与後に値下がりしても、高かったときの価額で計算されます。値上がりが見込める財産には向きますが、逆は不利になります。

4. 不動産取得税と登録免許税が高くなります

不動産を生前贈与すると、不動産取得税がかかり、登録免許税も相続(0.4%)より高い税率(2%)になります。相続で取得する場合との差額を、必ず試算してください。

5. 110万円以内でも、贈与の実態は必要です

通帳と印鑑を親が管理したままでは、そもそも贈与になりません。 名義預金と判断されれば、精算課税かどうか以前の問題です。

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手続き

最初の贈与を受けた年の翌年、2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を提出します。 贈与税の申告書に添付して、受贈者の住所地の所轄税務署へ提出します。

この届出を出さないと、精算課税は適用されません。

2年目以降、年110万円以内であれば申告は不要です。110万円を超えた年は申告が必要になります。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

東京では「自宅の土地を贈与すべきかどうか」が最大の判断になります。

新宿区の路線価を考えると、ご自宅の土地だけで数千万円になることは珍しくありません。精算課税の2,500万円枠なら贈与税はかかりません。

ただし、それをやると小規模宅地等の特例が使えなくなります。

自宅の土地5,000万円の場合
精算課税で生前贈与贈与税0円(2,500万円超の部分は20%)/相続時に5,000万円で加算/特例使えず
相続で取得特例適用で1,000万円として評価(330㎡まで80%減額)

多くの場合、相続で取得したほうが有利です。 自宅の土地を安易に贈与しないでください。

一方、賃貸物件や、将来値上がりが見込める土地であれば、精算課税が効く場面があります。ただし賃貸不動産には5年ルールの改正も控えています。

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よくある質問

Q1. 相続時精算課税は節税になりますか。

A. 制度そのものは、税金を減らすものではありません。 支払いを相続時まで先送りする制度です。ただし2024年から新設された年110万円の基礎控除は、相続時にも加算されないため、実質的な節税効果があります。また値上がりが見込める財産を、いまの評価で移せる点にも意味があります。

Q2. 一度選ぶと本当に戻せないのですか。

A. 戻せません。 ただし贈与者ごとに選択します。 父からの贈与を精算課税にしても、母からの贈与は暦年課税のまま選べます。選ぶ前に、その贈与者から今後どう財産を移すかを決めておく必要があります。

Q3. 年110万円の基礎控除は、いつからの贈与に使えますか。

A. 令和6年(2024年)1月1日以後の贈与からです。それより前に精算課税を選んでいた方も、2024年以降の贈与には110万円の基礎控除が使えます。

Q4. 110万円以内なら、申告は不要ですか。

A. 不要です。 ただし最初に精算課税を選ぶ年は、届出書の提出が必要です。「相続時精算課税選択届出書」を、贈与を受けた年の翌年3月15日までに提出してください。

Q5. 自宅の土地を贈与してもよいですか。

A. 慎重にご検討ください。 贈与で取得した宅地には小規模宅地等の特例が使えません。330㎡まで80%減額という大きな特例を失うことになります。東京の土地では、相続で取得したほうが有利になる場合がほとんどです。

Q6. 孫にも使えますか。

A. 18歳以上のお孫さんであれば使えます(贈与者は60歳以上の祖父母)。ただし相続人でない孫への贈与は、暦年課税なら加算の対象外になります。どちらが有利かは状況によります。

Q7. 不動産を贈与すると、税金は他にかかりますか。

A. かかります。 不動産取得税と、登録免許税がかかります。登録免許税は相続なら0.4%ですが、贈与では2%です。相続で取得する場合との差額を必ず試算してください。

Q8. すでに暦年課税で贈与しています。途中から変えられますか。

A. 変えられます。 届出書を提出すれば、その年の贈与から精算課税が適用されます。ただしそれ以降は暦年課税に戻せません。 また過去の暦年贈与は、7年ルールの加算対象として残ります。


まとめ

  • 相続時精算課税は、贈与財産を相続時に合算して精算する制度です
  • 特別控除は累計2,500万円。超過分は一律20%の贈与税
  • 2024年から年110万円の基礎控除が新設され、この枠は相続時に加算されません
  • 暦年課税の7年ルールと違い、直前の贈与でも加算されない点が最大の違いです
  • 一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません
  • 贈与した宅地には小規模宅地等の特例が使えません。自宅の土地は慎重に
  • 値下がりする財産には不利です(贈与時の評価で加算されるため)
  • 不動産の贈与には不動産取得税と、相続より高い登録免許税がかかります

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どちらが有利かは、財産の額・ご年齢・想定される相続時期によって変わります。 選ぶ前に試算してください。一度選ぶと戻せない制度です。

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

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出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。実際の判断は個別の事情により異なりますので、必ず税理士にご相談ください。



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