生命保険金は相続税の対象?500万円×法定相続人の非課税枠
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月10日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】「1人500万円まで非課税」ではありません
被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税の対象です。ただし相続人が受け取った場合には「500万円 × 法定相続人の数」までが非課税になります。ここでよくある誤解が「1人あたり500万円まで非課税」というものです。正しくは、その金額が全体の枠であり、相続人が何人で分けても枠は増えません。また相続放棄をした人は「法定相続人の数」には含めますが、その人が受け取った保険金には非課税枠を使えません。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 税目 | 相続税(保険料負担者=被保険者=被相続人の場合) |
| 非課税限度額 | 500万円 × 法定相続人の数 |
| 誰に使えるか | 相続人が受け取った分のみ |
| 相続放棄した人 | 人数には含める/その人の保険金には使えない |
| 相続人以外(孫・兄弟など) | 非課税枠なし+2割加算の対象 |
| 遺産分割 | 不要(受取人固有の財産。協議を経ずに受け取れます) |
| 死亡退職金 | 別枠で500万円 × 法定相続人の数 |
非課税枠の正しい計算
枠はいくらか
500万円 × 法定相続人の数
| 法定相続人 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 1人 | 500万円 |
| 2人 | 1,000万円 |
| 3人 | 1,500万円 |
| 4人 | 2,000万円 |
「相続人3人が500万円ずつ、合計1,500万円まで非課税」ではありません。 全体で1,500万円という意味です。
誰がいくら使えるか
複数の相続人が保険金を受け取った場合、非課税額はもらった割合で按分します。
その人の非課税額 = 非課税限度額 × その人が受け取った保険金 ÷ 相続人全員が受け取った保険金の合計
【計算例】法定相続人が3人(配偶者・長男・長女)
保険金:配偶者2,000万円/長男1,000万円/長女0円 合計3,000万円
非課税限度額:500万円 × 3人 = 1,500万円
| 受取人 | 保険金 | 非課税額 | 課税される額 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | 2,000万円 | 1,500万円×2,000/3,000=1,000万円 | 1,000万円 |
| 長男 | 1,000万円 | 1,500万円×1,000/3,000=500万円 | 500万円 |
| 長女 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 合計 | 3,000万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |
長女が受け取っていなくても、法定相続人の数には入ります。 そのため枠は1,500万円のままです。
「法定相続人の数」の数え方
非課税枠の計算に使う「法定相続人の数」には、独自のルールがあります。
相続放棄した人も含めます
相続を放棄した人がいても、その人はいなかったものとして数えます。 つまり放棄があっても枠は減りません(相続税法15条2項)。
ただし——放棄した人が受け取った保険金には、非課税枠を使えません。
保険金は受取人固有の財産なので、放棄をしても受け取れます。しかし放棄した人は「相続人」ではなくなるため、非課税の対象から外れます。人数には入れるが、本人は使えない——ここが混乱しやすい点です。
養子は人数に上限があります
| 状況 | 数に含められる養子 |
|---|---|
| 実子がいる場合 | 1人まで |
| 実子がいない場合 | 2人まで |
特別養子縁組による養子、配偶者の連れ子を養子にした場合などは、実子として扱われます(上限の対象外)。
相続人以外が受け取ると、税額が大きく変わります
受取人を孫や兄弟姉妹にしているケースがあります。この場合、次の2つが同時に起こります。
- 非課税枠が使えません(相続人ではないため)
- 相続税額が2割加算されます(一親等の血族と配偶者以外のため)
【比較】保険金1,000万円を受け取る場合
| 受取人 | 非課税枠 | 2割加算 |
|---|---|---|
| 配偶者・子 | 使える | なし |
| 代襲相続人でない孫 | 使えない | あり |
| 兄弟姉妹 | 使えない | あり |
| 子の配偶者 | 使えない | あり |
「孫に直接渡したい」という理由で受取人を孫にすると、税負担が重くなることがあります。 加入時・受取人変更時にご確認ください。
なお代襲相続人である孫(子が先に亡くなっている場合の孫)は相続人ですので、非課税枠を使え、2割加算もありません。
契約の形で、かかる税金が変わります
同じ「死亡保険金」でも、誰が保険料を払っていたかで税目が変わります。
| 保険料を払った人 | 被保険者 | 受取人 | かかる税金 |
|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 子 | 相続税(非課税枠あり) |
| 子 | 父 | 子 | 所得税(一時所得) |
| 母 | 父 | 子 | 贈与税 |
非課税枠が使えるのは、いちばん上のパターンだけです。
「保険料は子が払っているが、実際の資金は父から出ている」というケースでは、実質的な負担者が誰かで判断されます。 名義だけ整えても意味がありません。
保険金の3つの実務的な利点
節税以外にも、生命保険には相続実務上の利点があります。
1. 遺産分割を待たずに受け取れます
保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象になりません。協議が長引いても、受取人はすぐに請求できます。
亡くなった直後は口座が凍結され、葬儀費用の工面に困ることがあります。保険金はその備えになります。
2. 納税資金になります
相続税は原則として現金一括納付です。 財産の大半が不動産という方は、納税資金が足りなくなります。保険金はそのまま納税に充てられます。
3. 特定の人に確実に渡せます
受取人を指定すれば、その人に渡ります。 遺言書と同じ効果を、より確実に得られます。
ただし——受取人に偏りがあると、他の相続人との間で不公平感が生まれます。 保険金が遺産全体に比べて極端に大きい場合、特別受益に準じて持ち戻しの対象とされた裁判例があります。「保険なら何をしても大丈夫」ではありません。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
東京では「納税資金」の観点が特に重要です。
新宿区・中野区・世田谷区は、財産に占める自宅の割合が高くなりがちです。土地で数千万円の評価がついても、現金がなければ納税できません。
実際にご相談で多いのが、次の形です。
- 財産:自宅(土地・建物)8,000万円、預貯金500万円
- 相続税:数百万円
- 手元の現金が足りず、自宅を売るか延納するかの選択に
非課税枠が空いているなら、そこを埋めておくだけで選択肢が増えます。 500万円×法定相続人の数は、多くのご家庭でそのまま納税資金の目安になります。
よくある質問
Q1. 非課税枠は1人500万円までですか。
A. 違います。 「500万円 × 法定相続人の数」が全体の枠です。法定相続人が3人なら1,500万円で、これを受け取った金額の割合で按分します。「相続人1人につき500万円ずつ非課税」ではありません。ここは最も多い誤解です。
Q2. 相続放棄をしても保険金は受け取れますか。
A. 受け取れます。 保険金は受取人固有の財産で、相続財産ではないためです。ただし非課税枠は使えません。 一方、非課税枠の計算に使う「法定相続人の数」には、放棄した人も含めて数えます。枠は減らないが、放棄した本人は使えないという関係です。
Q3. 受取人が先に亡くなっている場合はどうなりますか。
A. 受取人の相続人全員が受け取ります。 ただし約款により取扱いが異なることがあります。受取人が亡くなったら、受取人変更の手続きをしてください。 変更しないままだと、想定外の人が受け取ることになります。
Q4. 保険金は遺産分割の対象になりますか。
A. 原則として対象になりません。 受取人固有の財産だからです。ただし保険金の額が遺産全体に比べて著しく高額な場合、特別受益に準じて持ち戻しの対象とされた裁判例があります。他の相続人との公平感には配慮してください。
Q5. 保険金にも遺留分は関係しますか。
A. 原則として遺留分の対象になりません。 保険金は相続財産ではないためです。ただしQ4と同様、著しく不公平な場合には例外的に考慮されることがあります。
Q6. 死亡退職金にも非課税枠がありますか。
A. あります。 死亡退職金にも500万円 × 法定相続人の数の非課税枠があります。生命保険金の枠とは別枠ですので、両方受け取る場合はそれぞれで計算します。
Q7. 入院給付金は相続税の対象ですか。
A. 被相続人が受取人の入院給付金は、相続財産(未収金)として相続税の対象になります。 死亡保険金ではないため、500万円の非課税枠は使えません。 ここは分けて考えてください。
Q8. 保険金を受け取ったら確定申告は必要ですか。
A. 相続税の対象となる死亡保険金であれば、所得税の確定申告は不要です。 一方、保険料を自分で払っていた場合は一時所得となり、所得税の対象です。この場合は確定申告が必要になることがあります。契約形態をご確認ください。
まとめ
- 被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税の対象です
- 非課税限度額は500万円 × 法定相続人の数。「1人500万円」ではありません
- 使えるのは相続人が受け取った分のみ。相続人以外は非課税枠なし+2割加算
- 相続放棄した人は人数に含めるが、その人の保険金には枠を使えません
- 養子は実子がいれば1人、いなければ2人まで
- 契約の形(誰が保険料を払ったか)で、相続税・所得税・贈与税に分かれます
- 保険金は遺産分割を待たずに受け取れ、納税資金になります
- 死亡退職金にも別枠で500万円×法定相続人の数の非課税枠があります
ご相談のご案内
「非課税枠がいくら空いているか」は、財産の内訳が分かればすぐに計算できます。 加入を検討する前に、まず枠の残りをご確認ください。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- e-Gov 相続税法
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。

