相続税申告のセカンドオピニオン|見直すべき5つのサイン
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月6日 最終更新日:2026年9月6日
【結論】土地があった申告なら、見直す価値があります
相続税の申告で税理士によって結果が変わるのは、土地と非上場株式だけです。預貯金や上場株式は評価の方法が定まっているため、誰が計算しても同じ金額になります。したがって「見直すべきか」の判断は単純で、相続財産に土地が含まれていたかどうかです。含まれていて、かつ申告書に補正の記載がなければ、確認する価値があります。期限は法定申告期限から5年です。
| 判断のポイント | 見るところ |
|---|---|
| 1. 土地があったか | 預貯金だけなら差は出ません |
| 2. 現地を見に行ったか | 見なければ拾えない減額要因があります |
| 3. 申告書に補正の記載があるか | 不整形地・間口狭小・セットバック・がけ地など |
| 4. 二次相続まで検討されたか | 分け方の提案があったか |
| 5. 書面添付があったか | 事務所の姿勢が出る部分です |
| 期限 | 法定申告期限から5年(相続開始から約5年10か月) |
「必ず戻る」ものではありません。 見直した結果「適正でした」となることもあります。当センターでは、その場合はそのままお伝えします。
なぜ差が出るのか
まず差が出ないものをはっきりさせます。
| 財産 | 税理士による差 |
|---|---|
| 預貯金 | 出ません(残高証明書の金額) |
| 上場株式 | 出ません(定められた算定方法) |
| 生命保険金 | 出ません(支払通知書の金額) |
| 土地 | 大きく出ます |
| 非上場株式 | 出ます |
土地の評価は、現地を見なくても、役所で調べなくても、申告書は完成します。 路線価に面積を掛ければ数字は出るからです。
しかし実際の土地には価値を下げる事情があります。それを拾ったかどうかで評価額が変わり、拾わなくても申告書は受理されます。
前の税理士が悪いわけではありません
日本の税理士の多くは、会社を顧客とする法人税の申告を主な業務にしています。 相続税の申告をほとんど経験しないまま実務を続けている税理士も、決して少なくありません。
土地の減額要因は、知らなければ拾えません。 手を抜いたのではなく、経験と知識の問題です。
医療のセカンドオピニオンと同じで、最初の判断を否定するためではなく、別の目で確認するための手続きだとお考えください。
見直すべき5つのサイン
サイン1:相続財産に土地があった
これが大前提です。 預貯金と上場株式だけの申告であれば、見直しても結果は変わりません。
サイン2:申告書に「補正」の記載がない
土地の評価明細書をご覧ください。次のような記載が1つもない場合、拾えていない可能性があります。
- 不整形地補正
- 間口狭小補正・奥行長大補正
- セットバック(前面道路が4m未満)
- がけ地補正(高低差がある)
- 私道の評価
- 利用価値が著しく低下している宅地としての減額
サイン3:現地に行っていない
「現地は見ましたか」と聞けば分かります。 間口、接道、高低差、周辺環境。これらは登記簿と路線価図だけでは判断できません。
サイン4:二次相続の話が出なかった
「配偶者が全部相続すれば税金はかかりません」で終わっていた場合、二次相続で税額が跳ね上がっている可能性があります。すでに一次相続が終わっていても、二次相続に向けた対策はまだできます。
サイン5:書面添付がなかった
書面添付制度(税理士法第33条の2)を使うと、税務署は調査の前に税理士へ意見を聴きます。手間がかかるため、付けない事務所もあります。
見直しやすい土地の特徴
| 状況 | 検討する補正 |
|---|---|
| 形がいびつ(三角地・旗竿地・L字) | 不整形地補正 |
| 前面道路の幅が4m未満 | セットバック(該当部分70%減額) |
| 敷地に高低差・擁壁がある | がけ地補正 |
| 私道に面している/私道の持分がある | 私道の評価減、または評価しない扱い |
| 高圧線が上を通っている | 建築制限に応じた減額 |
| 線路沿い・墓地隣接・騒音がある | 利用価値が著しく低下している宅地(10%減額) |
| 面積が大きい(三大都市圏で500㎡以上など) | 地積規模の大きな宅地の評価 |
| 人に貸している建物が建っている | 貸家建付地 |
見直しても取り返せないもの
正直にお伝えします。すべてが取り戻せるわけではありません。
小規模宅地等の特例は、後から追加できません
小規模宅地等の特例は、当初の申告で適用する土地を選んで申告することが要件です。
- ❌ 申告時に使っていなかった土地へ、後から適用する
- ❌ 適用する土地を、あとから有利なほうへ選び直す
使えたのに使わなかった時点で終わりです。
(未分割で申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出していた場合は例外です)
評価に絶対の正解はありません
土地の評価には判断が入ります。こちらが正しいと考えても、税務署が認めないことはあります。
進め方
- 申告書の控えと、土地の評価明細書をご用意ください(これがないと検証できません)
- 評価内容を精査します(補正の適用漏れ、特例の可否)
- 現地を確認します
- 役所で法規制を調査します(道路の種別と幅員、建築制限)
- 還付の見込みをお伝えします(ここで進める/進めないをご判断いただけます)
2〜5の段階で「見直しても変わりません」と判断されることもあります。 その場合はそのままお伝えします。
手続きの詳細(期限の3種類、認められないケース)は、別の記事にまとめています。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
新宿区は、東京のなかでも土地の評価が難しい区です。そして評価が難しい土地ほど、見直しの余地があります。
| エリア | 見落とされやすい論点 |
|---|---|
| 西新宿・歌舞伎町・新宿三丁目 | 商業地。用途と容積率が入り組み、貸家建付地も多い |
| 落合・中井・下落合 | 高低差・擁壁(がけ地補正の検討対象) |
| 神楽坂・市谷・若松町 | 4m未満の道路(セットバック) |
| 区内各所 | 戦前から続く借地・私道 |
中野区は区画が細かく狭あい道路が多く、世田谷区は宅地面積が大きく国分寺崖線沿いの高低差があります。いずれも現地を見ないと判断できません。
よくある質問
Q1. セカンドオピニオンを頼むと、前の税理士に知られますか。
A. 知られません。 当センターから前の税理士へ連絡することはありません。必要な資料は、お客様がお持ちの申告書の控えです。
Q2. どのくらい前の申告まで見直せますか。
A. 法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求ができます。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月ですので、実質的には相続開始から約5年10か月が期限です。
Q3. 何を用意すればよいですか。
A. 相続税の申告書の控えと、土地の評価明細書です。この2つがあれば、おおよその見当がつきます。登記簿や固定資産税の課税明細書があれば、さらに正確に判断できます。
Q4. 見直しても変わらなかった場合、費用はどうなりますか。
A. 当センターでは、まず申告書を拝見して見込みをお伝えし、そのうえで進めるかどうかをご判断いただく形をとっています。見込みが薄い場合は、その旨を正直に申し上げます。料金は料金表をご覧ください。
Q5. 更正の請求をすると、税務調査が来ませんか。
A. 請求そのものが調査の引き金になるわけではありません。 ただし税務署は請求内容を審査しますので、根拠資料を揃えて提出することが重要です。根拠が曖昧なまま請求すると、認められないだけでなく他の論点にも目が向きます。
Q6. 預貯金だけの相続でした。見直す意味はありますか。
A. ほとんどありません。 預貯金は残高証明書の金額で確定し、税理士による差が出ないためです。ただし名義預金の判断や、債務控除・葬式費用の計上漏れがあった場合は、結果が変わることがあります。
Q7. 相続税が0円でした。関係ありますか。
A. 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って0円になった場合、二次相続で大きな負担が生じることがあります。 還付は生じませんが、次の相続に向けた見直しには意味があります。
Q8. 相続人が複数います。全員の同意が必要ですか。
A. 更正の請求は各相続人がそれぞれ行う手続きです。 ただし土地の評価が変われば全員の税額に影響しますので、実務上は皆さまにご説明したうえで、まとめて進めるのが通常です。
まとめ
- 税理士によって結果が変わるのは土地と非上場株式だけです
- 見直すべきサインは ①土地があった ②補正の記載がない ③現地に行っていない ④二次相続の話がない ⑤書面添付がない
- 期限は法定申告期限から5年(相続開始から約5年10か月)
- 前の税理士が悪いわけではありません。経験と知識の差です
- 小規模宅地等の特例は、後から追加適用できません
- 「必ず戻る」ものではありません。適正だったという結論もあります
ご相談のご案内
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 No.4602 土地家屋の評価
- 国税庁 No.4604 路線価方式による宅地の評価
- 国税庁 No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
- e-Gov 国税通則法(第23条 更正の請求)
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。実際の判断は個別の事情により異なりますので、必ず税理士にご相談ください。

