不整形地の相続税評価|使いにくい土地は、その分だけ安くなります

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日


【結論】形がいびつな土地は、路線価より安く評価できます

「うちの土地は変な形だから、使いにくくて困っている」

相続税では、その「使いにくさ」がそのまま評価額の引き下げになります。

同じ面積・同じ路線価でも、四角い土地といびつな土地では評価額が違います。
いびつな土地のほうが、安く評価されます。

これを不整形地補正といいます。

問題は、この補正が使われないまま申告されている土地が、かなりあることです。
形の悪さは、図面を測って初めて数字になります。測らなければ、補正はゼロのままです。


不整形地とは、どんな土地か

正方形・長方形ではない宅地のことです。

よくある形内容
旗竿地(はたざおち)細い通路の奥に敷地が広がる、旗のような形
三角地道路が斜めに走っていて、三角形に近い形
L字型・台形隣地の境界が斜めになっている
間口が狭く奥に長い昔の短冊状の区画がそのまま残っている
一部が欠けている隣地に一部を売った、道路に削られた

新宿区のように、戦前からの区画が残る地域では珍しくありません。
きれいな長方形の土地のほうが、むしろ少ないくらいです。


どのくらいいびつかは「かげ地割合」で測ります

不整形地の評価は、どれだけ形が悪いかを数字にするところから始まります。
そのための指標がかげ地割合です。

想定整形地を描きます

まず、その土地の全体を囲む長方形(または正方形)を描きます。
これを想定整形地といいます。

その長方形のうち、実際の土地ではない部分(かげ地)がどれだけあるか、を測ります。

かげ地割合 =(想定整形地の地積 − 不整形地の地積)÷ 想定整形地の地積

計算してみます

実際の土地が150㎡、それを囲む想定整形地が200㎡だった場合。

項目数値
想定整形地の地積200㎡
不整形地(実際の土地)の地積150㎡
かげ地の面積50㎡
かげ地割合50㎡ ÷ 200㎡ = 25%

かげ地割合が大きいほど、形が悪く、減額も大きくなります。

補正率は「表」で決まります

不整形地補正率は、次の3つの組み合わせで決まります。

要素内容
かげ地割合上で計算した割合
地区区分ビル街地区、普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区など
地積区分地積の大小によるA・B・Cの区分

国税庁の通達には、こう定められています。

不整形地の価額は、(奥行価格補正などにより計算した価額に)
その不整形の程度、位置及び地積の大小に応じて
地区区分及び地積区分に応じた不整形地補正率表に定める補正率を乗じて計算した価額により評価します。

この表は細かく分かれているため、ここでは数値を載せません。
同じかげ地割合でも、住宅地か商業地か、土地が大きいか小さいかで補正率は変わります。


評価の方法は4つあります。どれを選ぶかで金額が変わります

ここが、不整形地の評価でいちばん差が出るところです。

国税庁は、不整形地の評価方法として次の4つを認めています。

方法どんなときに使うか
① 区分した整形地を基として評価する方法複数の長方形に分けられる形のとき
② 計算上の奥行距離を基として評価する方法地積 ÷ 間口で奥行を求める、最も一般的な方法
③ 近似整形地を基として評価する方法実際の形に近い長方形を当てはめられるとき
④ 差引き計算により評価する方法全体から余分な部分を差し引いて求めるとき

「どれを使わなければならない」という決まりはありません。

つまり、同じ土地でも、担当する税理士が選ぶ方法によって評価額が変わります。

これは手抜きや脱法ではなく、通達が複数の方法を認めているためです。
ただし、どの方法でも計算してみるという手間をかけるかどうかは、事務所によります。

土地の相続税評価は税理士によって差が出る?その理由と、見直せる10の減額要素


評価は、この順番で進みます

実際の作業は、次のように進みます。

手順やること
1路線価図で、正面路線・地区区分・借地権割合を確認する
2公図・測量図・現地で、土地の形と間口・奥行を把握する
3想定整形地(全体を囲む長方形)を描く
4かげ地割合を計算する
5地区区分と地積区分から、不整形地補正率を表で求める
6奥行価格補正・間口狭小・奥行長大の補正も確認する
74つの評価方法をそれぞれ試し、最も適切な方法を選ぶ
8セットバック・がけ地・私道などの減額を重ねる
9小規模宅地等の特例を適用する

手間がかかるのは、3・4・7です。

ここを省略して「路線価 × 面積」で終わらせても、申告書は形式上は作れてしまいます。
だからこそ、差が出ます。


道路に接していない土地(無道路地)

不整形地の延長にある論点です。

建築基準法上の道路に接していない土地は、家を建てられません。
そのため、通路を開設する費用を考慮して評価額を下げます。

状況扱い
まったく道路に接していない無道路地として評価します
接しているが、間口が2m未満実質的に建て替えられないため、無道路地に準じて扱うことがあります
旗竿地で、竿の部分が狭い間口狭小・奥行長大の補正が効きます

新宿区の古い路地の奥にある土地は、ここに該当することがあります。
「建て替えできないと言われた土地」は、評価でも下がる可能性が高いということです。


間口が狭い・奥に長い土地は、さらに下がります

不整形地の補正とは別に、次の補正もあります。

補正どんな土地か
間口狭小補正道路に接している幅が狭い土地
奥行長大補正間口に対して奥行が長い、細長い土地
奥行価格補正奥行が極端に短い、または極端に長い土地

旗竿地は、不整形地補正・間口狭小補正・奥行長大補正のすべてが関係する典型です。

なお、これらの補正には併用のルールがあります。
単純にすべてを掛け合わせるわけではなく、有利な組み合わせを選ぶ決まりになっています。

ここは実務上の判断が入るところなので、必ず専門家にご確認ください。


不整形地に重なりやすい、ほかの減額要因

形の悪い土地は、ほかの問題も抱えていることが多いです。

重なりやすい要因内容減額
セットバック幅4m未満の道路に接している後退部分が70%減額
がけ地敷地内に傾斜があるがけ地補正率で減額
私道行き止まりの路地に面している私道部分の評価が下がる
無道路地道路に接していない通路開設費用を考慮して減額

古い区画は、これらが同時に当てはまることがよくあります。

セットバックが必要な土地の相続税評価|70%減額の計算
がけ地補正率とは?相続税評価での計算方法


減額を取りこぼさないために必要なもの

不整形地の補正を使うには、土地の形が分かる資料が要ります。

資料どこで手に入るか
地積測量図法務局(ない土地も多くあります)
公図法務局
建物図面・配置図法務局、または建築時の資料
固定資産税の課税明細毎年4〜6月に届きます
現地の写真・実測実際に見ないと分からないことがあります

地積測量図がない土地は、新宿区の古い区画では珍しくありません。
その場合は、公図と現地の状況から想定整形地を組み立てていきます。

「測量しないと評価できない」ということはありません。
ただし、資料が薄いほど現地を見る必要が出てきます。


申告書の、どこを見れば分かるか

「前回の申告で補正が使われていたか」は、ご自身でも確かめられます。

申告書に添付する 「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」 を見てください。
第1表に、次の欄があります。

何が書いてあるか
間口距離・奥行距離測った数値が入っているか
不整形地補正率数値が入っているか、空欄か
間口狭小補正率・奥行長大補正率同上
がけ地補正率同上
想定整形地の地積・かげ地割合計算した形跡があるか

これらが軒並み空欄で、「路線価 × 地積」だけで金額が出ていれば、見直しの余地があります。

逆に、数値がきちんと埋まっていれば、しっかり評価されています。

評価明細書は、相続人であれば手元の控えで確認できます。
控えが見当たらない場合は、税務署で申告書の閲覧を請求できる場合があります。


実務でよくある見落とし

見落とし内容
公図だけで判断する公図は正確ではありません。現地と大きく違うことがあります
建物の形で判断する建物が四角くても、敷地は不整形ということがよくあります
1つの方法しか試さない4つの方法で計算すると、結果が変わることがあります
評価単位を誤る自宅部分と貸地部分は別々に評価します。まとめると形が変わります
私道部分を含めて測る私道は別に評価します
セットバック部分を忘れる不整形地補正とは別に、さらに減額できます

とくに「評価単位」は、結果を大きく左右します。
同じ土地でも、1つとして見るか2つに分けて見るかで、かげ地割合が変わるためです。


すでに申告してしまった場合

不整形地の補正を使わずに申告していた場合、後から取り戻せることがあります。

相続税を払いすぎていたときは、更正の請求という手続きで還付を受けられます。
期限は原則として、申告期限から5年です。

「土地の評価は路線価×面積でした」という内容の申告書であれば、
見直す価値があります。

相続税を払いすぎた?更正の請求で還付を受ける方法と期限


「減額しすぎて、税務調査で否認されないか」

よくいただくご質問です。

通達に定められた補正を使うことは、節税ではなく「正しい評価」です。
使えるものを使わないほうが、むしろ本来と違う金額を申告していることになります。

ただし、次の点は押さえておいてください。

押さえること理由
根拠となる資料を残す公図、測量図、現地写真、想定整形地を描いた図
評価明細書にきちんと記載する計算過程を示すことで、判断の根拠が伝わります
書面添付を活用するどう検討したかを税理士が書面で示せます

当センターは、税理士法第33条の2の添付書面の作成を基本報酬の中で行っています。
土地の評価をどう検討したかを書面で示すことで、調査の前に税理士への意見聴取が行われるようになります。

相続税の税務調査はどのくらい来る?令和6事務年度のデータと指摘されやすい5項目


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

新宿区は、不整形地が非常に多い地域です。

理由は、区画の成り立ちにあります。

背景結果
戦前からの区画がそのまま残っている短冊状・三角形の土地が多い
幅の狭い路地が入り組んでいる旗竿地・無道路地に近い形が生まれる
坂が多い敷地内に高低差があり、がけ地補正も絡む
相続のたびに分筆されてきたさらに細く、いびつになっていく

当センターの新宿区の相続税のページでも、
「不整形地・間口狭小 … 該当しやすさ:高(古い区画が多い)」と整理しています。

路線価に面積をかけただけの評価では、新宿区の土地は正しく評価できません。

当センターは土地の評価による報酬の加算を設けていません。
手のかかる土地でも料金は変わりませんので、形の悪さを遠慮なくお伝えください。

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)


よくある質問

Q1. 少し歪んでいる程度でも、補正は使えますか

かげ地割合が一定以上ないと補正率は適用されません。
わずかな歪みでは対象外になることもありますが、測ってみないと分かりません。
「少しだから」と最初からあきらめないでください。

Q2. 旗竿地は、どのくらい安くなりますか

一概には言えません。かげ地割合・地区区分・地積区分の組み合わせで決まり、
さらに間口狭小・奥行長大の補正も関係します。実際の図面がないと計算できません。

Q3. 想定整形地は、どうやって決めるのですか

その土地の全体を囲む、正面路線に面した長方形(または正方形)を描きます。
道路が曲がっている場合(屈折路)など、取り方に決まりがあるケースもあります。

Q4. 評価方法が4つもあるのは、なぜですか

土地の形は千差万別で、1つの方法ではうまく評価できないためです。
どの方法を使うかは決められていませんが、その土地に合った方法を選ぶ必要があります。

Q5. 測量が必要ですか。費用がかかりますか

多くの場合、測量までは不要です。 公図・建物図面・現地の確認で対応できます。
ただし、境界が争われている場合など、測量が必要になることもあります。

Q6. 地積測量図がありません

古い土地ではよくあります。公図と現地の状況から想定整形地を組み立てます。
資料が少ないケースほど、早めにご相談いただくと時間が取れます。

Q7. 不整形地でも、小規模宅地等の特例は使えますか

使えます。 不整形地の補正で評価額を下げたうえで、さらに特例で最大80%減額できます。
両方を使うことができます。

Q8. 補正を使わずに申告してしまいました

更正の請求で取り戻せる可能性があります。 期限は原則として申告期限から5年です。
申告書と土地の資料をお持ちください。見直せるかどうかを確認します。


まとめ

  • 形がいびつな土地は、その使いにくさの分だけ評価額が下がります
  • どれだけいびつかはかげ地割合で測ります

(=(想定整形地の地積 − 不整形地の地積)÷ 想定整形地の地積)

  • 補正率はかげ地割合・地区区分・地積区分の組み合わせで決まります
  • 評価の方法は4つあり、どれを選ぶかで評価額が変わります
  • 間口狭小・奥行長大の補正も関係し、併用にはルールがあります
  • セットバック・がけ地・私道が重なっていることが多くあります
  • 補正を使わずに申告していても、申告期限から5年以内なら更正の請求ができます
  • 新宿区は戦前からの区画が残り、不整形地が非常に多い地域です

監修者

天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員

相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」(登録者4.2万人)で、相続の実務を発信しています。


出典

  • 国税庁 財産評価基本通達20「不整形地の評価」

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/03.htm

  • 国税庁 質疑応答事例「不整形地の評価――区分した整形地を基として評価する場合」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/13.htm

  • 国税庁 質疑応答事例「不整形地の評価――計算上の奥行距離を基として評価する場合」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/14.htm

  • 国税庁 質疑応答事例「不整形地の評価――近似整形地を基として評価する場合」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/15.htm

  • 国税庁 質疑応答事例「不整形地の評価――差引き計算により評価する場合」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/16.htm

  • 国税庁 質疑応答事例「屈折路に面する不整形地の想定整形地のとり方」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/12.htm


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