おひとりさまの相続|身元保証・死後事務・喪主代行まで手がけた税理士が解説
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超/税務調査率1%未満。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年8月13日 最終更新日:2026年8月13日
【結論】おひとりさまの相続で本当に困るのは、税金ではありません
お子様がいない方、生涯独身の方、配偶者に先立たれた方——いわゆる「おひとりさま」の相続では、税金より先に「手続きをする人がいない」という問題が起こります。
亡くなった後、誰が病院に駆けつけるのか。誰が死亡届を出すのか。誰が喪主を務めるのか。誰が部屋を片づけ、電気やガスを止め、携帯電話を解約するのか。
これらは自動的には行われません。 そして、ご本人が亡くなった後では、もう指示を出せません。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 最大の課題 | 税金ではなく「手続きをする人の不在」 |
| 相続人がいない場合 | 財産は最終的に国庫に入ります(家庭裁判所の手続きを経て) |
| 相続税の基礎控除 | 法定相続人が0人なら3,000万円のみ(600万円×0人) |
| 兄弟姉妹・甥姪が相続する場合 | 相続税が2割加算される |
| 生前にできる備え | 遺言・死後事務委任契約・任意後見契約・身元保証 |
| 決められるのは | ご本人がご存命で、判断能力があるうちだけ |
「おひとりさま」に当てはまる方
ご自身は当てはまらないと思っていても、次のいずれかに該当する方は同じ問題を抱えます。
- 生涯独身で、お子様がいない
- 配偶者に先立たれ、お子様がいない
- お子様はいるが、疎遠で連絡が取れない
- 兄弟姉妹はいるが、高齢または遠方で頼れない
- 甥・姪はいるが、迷惑をかけたくない
- 配偶者はいるが、二人とも高齢で、どちらが先になるか分からない
最後の項目は見落とされがちです。 ご夫婦二人暮らしの場合、どちらかが亡くなった時点で、残されたほうは「おひとりさま」になります。夫婦だからと安心はできません。
相続人がいないと、財産はどうなるのか
相続人が一人もいない場合、財産は最終的に国庫に入ります。 ただし、いきなり国のものになるわけではなく、家庭裁判所を通じた手続きを経ます。
手続きの流れ
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 利害関係人や検察官が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる | — |
| 2 | 家庭裁判所が相続財産清算人(多くは弁護士)を選任し、公告する | 選任後すぐ |
| 3 | 相続人を捜す公告(6か月以上) | 6か月〜 |
| 4 | 債権者・受遺者への請求申出の公告(2か月以上) | — |
| 5 | 特別縁故者への財産分与の申立期間(公告期間満了後3か月以内) | — |
| 6 | 残った財産が国庫に帰属 | 全体で1年以上 |
注意: 2023年4月の民法改正で「相続財産管理人」は「相続財産清算人」に名称が変わり、手続きも整理されました。
古い記事では旧称のままのものが多いのでご注意ください。
特別縁故者とは
相続人がいない場合でも、故人と特別に親しい関係にあった人は、家庭裁判所に申し立てて財産の分与を受けられることがあります。
- 内縁の配偶者
- 長年にわたり同居し、生活を共にしていた人
- 献身的に看護・介護をしていた人
ただし、これは自動的には認められません。 申立てが必要で、認められるかどうかは家庭裁判所の判断です。しかも期間が限られています。
確実にその方へ財産を渡したいのであれば、遺言を書くほうがはるかに簡単で確実です。
おひとりさまの相続税は、実は不利になります
「相続人がいないなら相続税も関係ない」と思われがちですが、そうではありません。
1. 基礎控除が小さくなる
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
| 相続人 | 基礎控除 |
|---|---|
| 配偶者と子2人(3人) | 3,000万円+1,800万円=4,800万円 |
| 兄弟姉妹2人 | 3,000万円+1,200万円=4,200万円 |
| 相続人なし(遺言で第三者へ遺贈) | 3,000万円のみ |
相続人がいないと、非課税枠は3,000万円だけです。
東京都内に自宅をお持ちであれば、それだけで超える可能性が十分にあります。
2. 2割加算の対象になる
配偶者・子・親(一親等の血族)以外の人が財産を取得すると、相続税額が2割増しになります。
つまり次の方が取得する場合は、すべて2割加算の対象です。
- 兄弟姉妹
- 甥・姪
- 内縁のパートナー
- 友人・知人
- お世話になった方
例: 相続税額が500万円と計算された場合、2割加算により 600万円 になります。
3. 配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使いにくい
配偶者がいなければ配偶者の税額軽減(1億6,000万円まで非課税)は使えません。
自宅の小規模宅地等の特例も、同居していない甥姪などが取得する場合は要件を満たさないことが大半です。
おひとりさまの相続は、使える軽減措置が最も少ない類型だとお考えください。

生前にできる4つの備え
1. 遺言書(最優先)
おひとりさまにとって、遺言は最も重要な備えです。
遺言がなければ、財産は法定相続人(兄弟姉妹・甥姪など)に渡るか、誰もいなければ国庫に入ります。
「あの人にお世話になったから渡したい」という意思は、遺言がなければ実現しません。
| 種類 | 特徴 | おひとりさまへの向き |
|---|---|---|
| 公正証書遺言 | 公証人が作成。原本は公証役場で保管 | 最適。紛失・改ざんの心配がなく、検認も不要 |
| 自筆証書遺言(法務局保管) | 自分で書き、法務局に預ける | 費用は安いが、内容の不備は自己責任 |
| 自筆証書遺言(自宅保管) | 自分で書いて自宅に置く | おすすめしません。見つけてもらえない可能性があります |
おひとりさまの場合は、公正証書遺言を強くおすすめします。
自宅で保管していても、そもそも遺言があることを誰も知らなければ意味がありません。
公正証書なら公証役場に記録が残り、検索できます。
そして遺言には必ず「遺言執行者」を指定してください。 遺言執行者がいないと、
実際に手続きを進める人がおらず、書いただけで終わってしまいます。
2. 死後事務委任契約
亡くなった後の事務手続きを、生前に誰かへ委任しておく契約です。
遺言でできるのは主に「財産を誰に渡すか」です。それ以外の実務は、遺言ではカバーできません。
死後事務委任契約でお願いできること:
- 病院・施設からのご遺体の引き取り
- 死亡届の提出
- 葬儀・火葬の手配、喪主の代行
- 納骨・埋葬
- 病院・施設の費用の精算
- 電気・ガス・水道・電話・インターネットの解約
- 健康保険・年金の資格喪失手続き
- 住居の明け渡し、遺品の整理
- 行政への各種届出
これらは「誰かがやってくれるだろう」では済みません。
実際には、身寄りのない方が亡くなると、病院や施設のスタッフ、
あるいは自治体が困り果てる、というのが現実です。
3. 任意後見契約
判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ支援者を決めておく契約です。
認知症などで判断能力が衰えると、預金の引き出し、施設の契約、不動産の売却がご自身ではできなくなります。
おひとりさまの場合、代わりに動いてくれる家族がいません。
任意後見は、判断能力があるうちにしか契約できません。 能力が低下してからでは、
家庭裁判所が選任する法定後見しか選べず、支援者をご自身で選ぶことができなくなります。
4. 身元保証
入院時・施設入居時の身元保証人です。
病院も介護施設も、入院・入居にあたって身元保証人を求めるのが一般的です。
保証人が立てられないという理由で、入居を断られることは実際にあります。
身元保証で担うのは、緊急時の連絡先、医療同意への関与、費用の支払い保証、
そして万一の際のご遺体・遺品の引き取りです。
この4つは、セットで考える必要があります
よくあるのが「遺言だけ書いて安心してしまう」というケースです。
| 備え | カバーする時期 | これだけでは足りない理由 |
|---|---|---|
| 任意後見契約 | 判断能力の低下〜死亡まで | 亡くなった後のことは何もできない |
| 身元保証 | 入院・入居のとき | 財産の承継は決められない |
| 死後事務委任契約 | 死亡直後〜手続き完了まで | 財産を誰に渡すかは決められない |
| 遺言 | 財産の承継 | 葬儀・解約・遺品整理はカバーできない |
時期も役割も違うため、どれか一つでは穴が空きます。
おひとりさまの備えは、この4つを組み合わせて初めて完成します。
当センターが、実際に手がけてきたこと
ここまでは制度の説明です。しかし、制度を知っていることと、実際にやったことがあることは違います。
当センターの代表は、開業前に在籍した士業事務所で、
身元保証と死後事務を担当してきました。
- 入院・施設入居時の身元保証人を引き受ける
- 亡くなられた後、病院へ駆けつけてご遺体を引き取る
- 喪主を務める
- 葬儀を執り行い、収骨・納骨まで行う
- 各種機関の解約手続きを進める
- 遺品を整理し、住居を明け渡す
税理士がここまで行うことは、決して一般的ではありません。
だからこそ、「死後事務委任契約を結びましょう」という提案を、
実際に何が起こるかを知ったうえで申し上げられます。
書類を作ることと、その日に実際に動くことは別です。
深夜に病院から電話が来ること、葬儀社と段取りを詰めること、
火葬場で骨を拾うこと——これらを経験しているかどうかで、
契約書に書くべき内容も、費用の見積もりも変わります。
ご相談いただくタイミング
判断能力があるうちだけです。 これに尽きます。
| 状況 | できること |
|---|---|
| お元気なうち | 遺言・死後事務委任・任意後見・身元保証のすべてが選べます |
| 判断能力が低下してから | 任意後見は契約できません。法定後見のみ。遺言も難しくなります |
| 亡くなった後 | 何も決められません。法定相続人か、いなければ国庫へ |
「まだ元気だから」と先延ばしにされる方が多いのですが、
元気なうちにしかできないというのが、この分野の本質です。
目安として、70歳を過ぎたら一度ご相談ください。 早すぎるということはありません。
よくある質問
Q1. 兄弟や甥姪がいます。それでも準備は必要ですか?
A. 必要です。 兄弟姉妹や甥姪は相続人になり得ますが、次の問題があります。
高齢または遠方で実際には動けないことが多い/相続税が2割加算される/
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言があれば別の方に渡すことも可能。
「頼れる人がいる」ことと「その人が実際に動ける」ことは違います。
Q2. 内縁のパートナーに財産を残せますか?
A. 遺言がなければ残せません。 内縁関係のパートナーには相続権がないためです。
特別縁故者として家庭裁判所に申し立てる方法はありますが、認められる保証はなく、時間もかかります。
公正証書遺言で明確にしておくことを強くおすすめします。なお、遺贈を受けた場合は相続税が2割加算されます。
Q3. 死後事務委任契約の費用はどのくらいですか?
A. 委任する内容の範囲によって変わります。葬儀・納骨まで含めるか、遺品整理まで含めるか、
住居の明け渡しまで含めるかで大きく違います。実費(葬儀費用など)と報酬は別であり、
実費相当額を生前にお預かりする方式をとるのが一般的です。ご希望をうかがったうえでお見積りします。
Q4. 遺言を書けば、死後事務委任契約は不要ですか?
A. 不要にはなりません。 遺言は主に「財産を誰に渡すか」を決めるものです。
葬儀の手配、公共料金の解約、遺品整理、住居の明け渡しといった実務は、遺言ではカバーできません。
両方を用意して、はじめて穴がなくなります。
Q5. 身寄りがないまま亡くなると、どうなりますか?
A. 病院や施設が自治体に連絡し、自治体が火葬を行うことになります(墓地埋葬法に基づく手続き)。
遺骨は自治体が一定期間保管した後、無縁塚などに埋葬されるのが一般的です。
財産は相続財産清算人の手続きを経て、最終的に国庫に入ります。
「こうしてほしい」という希望があるなら、生前に形にしておく必要があります。
Q6. お墓や供養のことも相談できますか?
A. できます。 当センターは終活・身元保証・死後事務を扱っており、
納骨先の選定、永代供養、墓じまいのご相談にも対応しています。
遠方のご実家にお墓がある場合の対応もご相談ください。
Q7. 遠方に住んでいますが依頼できますか?
A. 相続税申告や遺言のご相談は、オンラインで全国対応しています。
ただし身元保証・死後事務・喪主代行については、性質上どうしても対面が必要なため、
東京およびその近郊にお住まいの方に限らせていただいています。
遠方の方には、お住まいの地域で対応できる事業者をご案内できる場合があります。
まとめ
- おひとりさまの相続で本当に困るのは税金ではなく「手続きをする人の不在」
- 相続人がいなければ、財産は家庭裁判所の手続きを経て国庫へ(全体で1年以上)
- 内縁のパートナーや世話になった方に渡すには、遺言が必要
- 相続税は基礎控除3,000万円のみ、しかも2割加算。使える軽減措置が最も少ない類型
- 備えは遺言・死後事務委任契約・任意後見契約・身元保証の4つをセットで
- どれか一つでは穴が空く。時期も役割も違う
- 判断能力があるうちにしか決められません。70歳を過ぎたら一度ご相談を
ご相談のご案内
「何から考えればいいか分からない」という段階で構いません。
お話をうかがったうえで、いま必要な備えと、その費用をお伝えします。
当センターは、書類を作るだけの事務所ではありません。
実際に身元保証を引き受け、喪主を務め、納骨まで行ってきました。
そのうえで、何をどこまで決めておくべきかをご提案します。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
開業前に在籍した士業事務所で身元保証・死後事務を担当し、喪主・収骨・納骨まで自ら行った経験を持つ。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。

