土地の相続税評価は税理士によって差が出る?その理由と、見直せる10の減額要素

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月10日 最終更新日:2026年9月12日


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【税理士が解説】土地の評価で相続税はここまで変わる|最大80%減の評価テク8選
土地の評価で税額がどこまで変わるかを解説しています。
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【結論】差が出るのは、評価が「計算」ではなく「判断」だからです

同じ土地でも、担当する税理士によって相続税評価額が変わることがあります。これは誰かが間違っているという話ではありません。土地の評価は、路線価に面積を掛けるだけの計算ではなく、その土地の形・道路との関係・法令上の制限を見て、どの補正を適用するかを判断する作業だからです。判断の元になる情報は、現地を見て、役所で調べ、測量図を確認して初めて分かります。そこにかける手間の差が、そのまま評価額の差になります。そして相続税は、土地の評価額に税率を掛けて計算します。評価額が下がれば、税額もそのまま下がります。

差が生まれる場面内容
現地を見たか高低差、接道の状況、私道、越境、傾斜
役所で調べたか都市計画道路の予定地、道路の種別、セットバックの要否、土砂災害警戒区域
図面を確認したか実測面積と登記面積の差、間口、奥行、形状
どの補正を選んだか不整形地、無道路地、地積規模の大きな宅地など
特例の要件を検討したか小規模宅地等の特例、貸家建付地

そもそも、なぜ判断が入るのか

土地の相続税評価は、国税庁の「財産評価基本通達」に沿って行います。

基本の考え方は次のとおりです。

路線価 × 各種の補正率 × 地積(面積)

この「各種の補正率」の部分に、判断が入ります。

通達には多くの補正が定められていますが、「この土地にどれを当てはめるか」までは書かれていません。 その土地の状況を調べ、要件に当てはまるかどうかを判断するのは、申告する側です。

そして——調べなければ、そもそも適用できません。

現地に行かず、路線価図と登記簿だけで評価すれば、多くの補正が漏れます。 評価額は高くなり、相続税も高くなります。それでも申告としては成立します。 税務署は「安すぎる」ことは指摘しますが、「高すぎる」ことは指摘してくれません。

ここが、他の税目と決定的に違う点です。


見直せる10の減額要素

以下はいずれも、要件を満たす場合に限り適用できるものです。

1. セットバックが必要な土地

建築基準法42条2項の道路(幅員4m未満)に接している場合、道路の中心線から2m下がった部分は建築できません。

この部分は、評価額の70%が減額されます。

新宿区・中野区には、この道路が非常に多くあります。 現地を見ずに評価すると、まず落とします。

セットバックが必要な土地の相続税評価

2. がけ地・高低差のある土地

通常の用途に使えない斜面部分がある場合、がけ地補正率を適用します。

がけ地の割合と方位により、最大47%の減額(補正率0.53)となります。

世田谷区の国分寺崖線沿いなど、高低差のある宅地は東京にも多くあります。

がけ地補正率とは?

3. 不整形な土地

三角形、旗竿地、L字型など、整形でない土地は「不整形地補正率」で減額します。

地区区分・地積区分・かげ地割合に応じて、最大40%の減額です。

「少し歪んでいる程度」でも適用できることがあります。 測量図で確認してください。

4. 間口が狭い・奥行が長い土地

  • 間口狭小補正率:間口が狭い土地
  • 奥行長大補正率:間口に対して奥行が長い土地
  • 奥行価格補正率:奥行が標準より長い、または短い土地

これらは併用できる場合があります。

5. 無道路地

道路に接していない土地は、通路開設費用を控除するなどして評価します。

接道義務を満たさない土地(間口2m未満)も、実質的に建て替えができないため、評価に反映されます。

6. 地積規模の大きな宅地

三大都市圏では500㎡以上、それ以外では1,000㎡以上の宅地で、一定の要件を満たすものは、規模格差補正率により大きく減額されます。

東京23区は三大都市圏です。500㎡から対象になります。

ただし市街化調整区域、工業専用地域、指定容積率が400%以上の地域などは対象外です。

7. 都市計画道路の予定地

都市計画道路の区域内にある宅地は、地区区分・容積率・地積割合に応じて減額されます。

これは役所の都市計画課で調べないと分かりません。 登記簿にも路線価図にも載っていません。

8. 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)

特別警戒区域内にある宅地は、その地積の割合に応じて減額されます。

がけ地補正と併用できますが、下限は0.50です。

9. 貸家建付地・貸宅地

アパートや貸家の敷地は、借家人の権利があるため減額されます。

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

賃貸割合の判定(空室をどう扱うか)に判断が入ります。

賃貸不動産の相続税評価|貸家建付地と貸家の計算

10. 小規模宅地等の特例(効果が最大)

自宅の土地は330㎡まで80%減額、事業用は400㎡まで80%減額、貸付事業用は200㎡まで50%減額。

これは補正ではなく特例ですが、効果は他のすべてを上回ります。

要件が細かく、「誰が取得したか」「いつまで保有・居住したか」で結論が変わります。

小規模宅地等の特例|自宅の土地が80%減額


実際にどのくらい変わるのか

【例】新宿区内の宅地(路線価60万円/㎡・300㎡)

段階評価額
路線価 × 面積のみ60万円 × 300㎡ = 1億8,000万円
+ 不整形地補正(0.94)1億6,920万円
+ セットバック(30㎡分の70%減額)1億5,660万円
+ 小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減)3,132万円

同じ土地で、1億8,000万円と3,132万円。

この例は補正率を仮に置いた説明用のものです。 実際の補正率は土地ごとに異なり、この数値がそのまま当てはまるわけではありません。 ただ、調べるか調べないかで桁が変わり得るということはご理解いただけると思います。


「安く評価すれば得」ではありません

誤解のないように申し添えます。

根拠なく評価額を下げれば、税務調査で否認されます。 過少申告加算税や延滞税が課され、結果として高くつきます。

必要なのは「下げること」ではなく「正しく評価すること」です。

  • 減額要素があるのに適用していない → 払いすぎ
  • 要件を満たさないのに適用している → 否認される

どちらも避けるために、現地・役所・図面の3つを確認します。 手間はかかりますが、その手間が評価額の差になります。


すでに申告済みでも、見直せます

「もう申告してしまった」という方へ。

申告期限から原則5年以内であれば、更正の請求により還付を受けられる可能性があります。

見直しの対象になりやすいのは、次のような土地です。

  • 前面道路が4m未満(セットバック)
  • 高低差がある(がけ地補正)
  • 形が整っていない(不整形地補正)
  • 500㎡以上(地積規模の大きな宅地)
  • 都市計画道路の予定地に入っている
  • 私道の持分がある

相続税を払いすぎた?更正の請求で還付を受ける方法と期限
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【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

この3区は、減額要素が特に多い地域です。

多い減額要素
新宿区私道の持分、幅員4m未満の道路(セットバック)、細長い間口の宅地、都市計画道路の予定地
中野区狭あい道路が非常に多く、セットバックの対象が広い。旗竿地・不整形地も多数
世田谷区国分寺崖線沿いの高低差(がけ地補正)、500㎡以上の宅地(地積規模の大きな宅地)、擁壁のある宅地

そして3区に共通するのが、路線価の高さです。

路線価が高いということは、補正率1%の差がそのまま大きな金額になるということです。路線価60万円/㎡・300㎡の土地なら、補正率が0.01変わるだけで180万円の差が出ます。

地方の土地なら誤差の範囲でも、東京では税額に直結します。

新宿区の相続税|土地評価が難しい街で損をしないために
東京の路線価と相続税評価額|見方と、毎年7月の更新


よくある質問

Q1. 税理士によって評価額が変わるのは、おかしくないですか。

A. 土地の評価に判断が入る以上、幅が出るのは制度上避けられません。 財産評価基本通達には多くの補正が定められていますが、「この土地にどれを適用するか」までは書かれていません。 現地・役所・図面を調べたうえで判断します。調べる範囲が違えば、結論も変わります。

Q2. どの税理士に頼んでも同じではないのですか。

A. 相続税の申告は、税理士全体で見れば件数の少ない業務です。 法人税や所得税を主に扱う事務所では、土地の評価を年に数件しか行わないこともあります。経験の差がそのまま判断の差になります。 依頼先を選ぶ際は、年間の相続税申告件数と、土地の評価をどこまで調べるかをお尋ねください。

Q3. 現地に行かない税理士もいるのですか。

A. 申告としては、行かなくても成立します。 ただし高低差、接道の状況、越境、私道の有無は、現地に行かなければ分かりません。 依頼前に「現地調査を行うか」「役所調査を行うか」をご確認ください。

Q4. 評価を下げると、税務調査が来やすくなりませんか。

A. 根拠があれば問題ありません。 指摘を受けるのは、要件を満たさないのに適用した場合です。逆に、判断の理由を書面で残しておけば、調査の場で説明できます。書面添付制度を使えば、調査の前に税理士への意見聴取が行われます。

Q5. 申告済みですが、見直してもらえますか。

A. 申告期限から原則5年以内であれば、更正の請求ができます。 申告書と評価明細書を拝見すれば、見直せる余地があるかどうかは比較的短時間で判断できます。 前の税理士に不利益が及ぶことはありません。

Q6. 減額要素があれば、必ず税額が下がりますか。

A. 必ずとは言えません。 ①要件を満たしている必要があります ②基礎控除の範囲内であれば、もともと相続税がかかりません ③配偶者の税額軽減により税額がゼロの場合、評価が下がっても納税額は変わりません。ただし二次相続では効いてきます。

Q7. 縄伸びとは何ですか。

A. 登記簿の面積と、実際に測量した面積が違うことです。古い土地では珍しくありません。実測面積のほうが大きければ、その分だけ評価額が上がります。 逆に小さければ下がります。測量図があるかどうかを、まずご確認ください。

Q8. 評価の見直しには、どのくらい時間がかかりますか。

A. 役所調査と現地調査を含めて、通常は数週間から1〜2か月です。測量が必要な場合はさらにかかります。更正の請求の期限(申告期限から原則5年)が迫っている場合は、早めにご相談ください。


まとめ

  • 土地の評価は「計算」ではなく「判断」です。だから税理士によって差が出ます
  • 基本は路線価 × 各種の補正率 × 地積。判断が入るのは補正率の部分です
  • 税務署は「安すぎる」は指摘しますが、「高すぎる」は指摘しません
  • 見直せる主な要素はセットバック・がけ地・不整形地・間口/奥行・無道路地・地積規模の大きな宅地・都市計画道路予定地・土砂災害特別警戒区域・貸家建付地・小規模宅地等の特例
  • いずれも要件を満たす場合に限り適用できます
  • 根拠なく下げれば否認されます。 目的は「下げること」ではなく「正しく評価すること」です
  • 申告期限から原則5年以内なら、更正の請求で見直せます
  • 新宿区は私道と狭い道路、中野区は狭あい道路と旗竿地、世田谷区は高低差と広い宅地が要点です
  • 路線価が高い東京では、補正率1%の差が数百万円になります

ご相談のご案内

申告前でも、申告後でも承ります。 申告後の場合は、申告書と土地及び土地の上に存する権利の評価明細書をお持ちください。見直せる余地があるかどうかを、その場でお伝えします。

📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

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出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令および財産評価基本通達に基づいています。補正率は毎年の財産評価基準書で確認してください。記事中の計算例は説明のための仮の数値であり、実際の評価額を示すものではありません。



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