数次相続とは?手続きの途中で相続人が亡くなったときの進め方
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日
【結論】手続きが終わる前に次の相続が起きると、当事者が一気に増えます
「父の相続手続きをしている途中で、母も亡くなりました」
これを数次相続(すうじそうぞく)といいます。
父の遺産分割協議に、母の相続人(つまり子どもたち)が全員参加することになります。
当事者が増え、必要な戸籍も倍になります。
そして、いちばんの問題はここです。
父の相続の遺産分割が終わっていないと、母の相続も決められません。
2つの相続が絡み合ったまま、動かなくなります。
数次相続は、放置すればするほど手に負えなくなります。
代襲相続とは別のものです
よく混同されますが、別の制度です。分かれ目は亡くなった順番です。
| 亡くなった順番 | 呼び方 | |
|---|---|---|
| 父より先に長男が亡くなっていた | 長男 → 父 | 代襲相続 |
| 父が亡くなった後に長男が亡くなった | 父 → 長男 | 数次相続 |
代襲相続では、長男の子(孫)が長男の代わりに相続人になります。
数次相続では、長男はいったん相続人になり、その権利が長男の相続人(配偶者と子)に引き継がれます。
この違いは、誰が相続人になるかを変えます。
| 代襲相続 | 数次相続 | |
|---|---|---|
| 長男の配偶者 | 相続人になりません | 相続人になります |
| 長男の子(孫) | 相続人になります | 相続人になります |
長男の妻が相続人になるかどうか。 ここが実務でいちばん大きい違いです。
代襲相続はどこまで続く?発生する3つのケースと、起きないケース
遺産分割協議は、全員でやり直しになります
父の遺産分割協議には、母の相続人も全員参加します。
たとえば、こういう家族で考えます。
- 父が亡くなる(相続人:母・長男・次男)
- 遺産分割協議が終わらないうちに、母も亡くなる(相続人:長男・次男)
この場合、父の遺産分割協議の当事者は、長男と次男になります。
母の立場を、2人が引き継ぐ形です。
さらに、こうなるとややこしくなります。
- 父が亡くなる(相続人:母・長男・次男)
- 長男が亡くなる(相続人:長男の妻・長男の子2人)
父の遺産分割協議には、母・次男・長男の妻・長男の子2人の5人が参加します。
長男の妻は、義理の父の遺産分割に加わることになります。
関係が遠くなるほど、まとまりにくくなります。
協議書の書き方にも注意が要ります
数次相続の遺産分割協議書では、誰がどの立場で署名しているかを明記します。
「相続人 兼 亡○○の相続人 △△」
こういった書き方になります。通常の協議書をそのまま使うと、登記や金融機関で受け付けられないことがあります。
相続税の申告期限は、どうなるか
ここは救いがあります。
亡くなった相続人(上の例の母)の分について、申告期限が延びます。
| 対象 | 申告期限 |
|---|---|
| 父の相続(母以外の相続人) | 父の相続開始を知った日の翌日から10か月 |
| 父の相続のうち、母が負っていた申告義務 | 母の相続人が、母の相続の開始を知った日の翌日から10か月 |
| 母の相続 | 母の相続開始を知った日の翌日から10か月 |
母の分だけ、期限が後ろにずれます(相続税法27条2項)。
ただし、他の相続人の期限は延びません。
「全員の期限が延びる」と誤解しないでください。
未分割のまま期限が来たら
分割が終わらなくても、申告はしてください。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておけば、あとから特例を使えます。
未分割のまま申告期限を迎えたら|「3年以内の分割見込書」で特例を残せます
相次相続控除が使えます
10年以内に2回の相続があった場合、2回目の相続税から一定額を控除できます。
これを相次相続控除といいます。
短い期間に続けて課税されることへの調整です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 1回目の相続から10年以内に2回目の相続があること |
| 対象 | 2回目の相続で財産を取得した相続人(相続放棄した人・受遺者は対象外) |
| 効果 | 1回目に納めた相続税のうち、経過年数に応じた額を控除 |
経過年数が短いほど、控除できる額は大きくなります。
数次相続では、1回目と2回目の間隔が短いことがほとんどです。
忘れずに適用してください。
実際の進め方
数次相続は、順番を守れば整理できます。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 相続人を確定する — 父の相続人、母の相続人の両方を戸籍で確認 |
| 2 | 財産を確定する — 父の財産、母の財産を分けて把握する |
| 3 | 父の遺産分割協議を、現在の当事者全員で行う |
| 4 | 母の遺産分割協議を行う(母固有の財産について) |
| 5 | 相続登記・名義変更 |
| 6 | それぞれの相続税を申告する |
3と4は、同じ協議書にまとめて書くこともできます。
ただし、どの相続についての取り決めかを明確に分けて書く必要があります。
先に父の相続を決めないと、母の相続も決まりません
母が父から何を相続したかが決まらないと、母の遺産の中身が確定しません。
だから、順番が大事です。 母の相続から先に手をつけると、話が戻ってしまいます。
相次相続控除のイメージ
1回目の相続で納めた相続税のうち、経過年数に応じた分を、2回目の税額から引きます。
考え方は単純で、経過年数が短いほど控除できる額が大きくなります。
| 1回目からの経過 | 控除できる割合のイメージ |
|---|---|
| 1年以内 | 大きい |
| 5年 | おおむね半分程度 |
| 10年を超えた | 控除できません |
数次相続では、1回目と2回目の間隔が数か月ということもあります。
その場合、控除できる額はかなり大きくなります。
相次相続控除は、申告書に記載しなければ適用されません。
「10年以内に前の相続があったか」を必ず確認してください。
未分割と数次相続が重なると
最も厄介な組み合わせです。
- 父の相続が未分割のまま
- その間に母が死亡
- 父の分も母の分も、どちらも決まっていない
この場合でも、やることは変わりません。
- 父の相続について、未分割のまま申告して分割見込書を添付
- 母の相続についても、同様に対応
- 話し合いがまとまったら、それぞれ更正の請求
「複雑すぎて何もできない」と止まってしまうのが、いちばん損をします。
未分割のまま申告期限を迎えたら|「3年以内の分割見込書」で特例を残せます
相続登記は、まとめられる場合があります
数次相続では、登記も重なります。
原則としては、父 → 母 → 子と順番に登記することになります。
ただし、中間の相続が1人だけの単独相続だった場合は、
中間を飛ばして「父 → 子」と1回で登記できることがあります(中間省略登記)。
登記の回数が減れば、登録免許税も減ります。
できるかどうかは、中間の相続人が1人だったかどうかで変わります。
必ず司法書士にご確認ください。
なお、2024年4月1日から相続登記は義務です。数次相続でも同じです。
相続登記の義務化|2027年3月31日の期限が近づいています
戸籍集めが、一気に重くなります
数次相続では、すべての相続について出生から死亡までの戸籍が必要になります。
| 必要になるもの | 誰の分 |
|---|---|
| 出生から死亡までの戸籍 | 父・母(または先に亡くなった相続人) |
| 現在の戸籍 | 現在の相続人全員 |
| 住民票・戸籍の附票 | 同上 |
| 印鑑証明書 | 遺産分割協議に参加する全員 |
相続が2回重なれば、集める戸籍はおおむね倍になります。
2024年3月から始まった広域交付制度を使えば、最寄りの市区町村でまとめて取れる場合があります。
また、法定相続情報一覧図を作っておくと、金融機関や法務局での手続きが楽になります。
数次相続の場合は、相続ごとに一覧図を作ることになります。
法定相続情報一覧図とは?作り方と、戸籍の束を持ち歩かなくてよくなる仕組み
数次相続は、二次相続対策のやり直しでもあります
父が亡くなったとき、「全部母に」と決めるつもりだった。
その母が、遺産分割が終わる前に亡くなった。
この場合、まだ分け方が決まっていないため、選び直せます。
| 決め方 | 結果 |
|---|---|
| 父の遺産を全部母が相続したことにする | 父の相続では配偶者の税額軽減が効きますが、母の相続で全額が課税されます |
| 父の遺産を母と子で分けたことにする | 父の相続で一部課税されますが、母の相続の負担が減ります |
合計の税額で見て、有利なほうを選べます。
ただし注意点があります。
母がすでに亡くなっているため、母が相続する分は「そのまま母の遺産」になります。
配偶者の税額軽減を最大限使っても、次の相続でそのまま課税されるだけのことがあります。
一次と二次を合計した税額で判断してください。
数次相続は、その判断を後からできる、数少ない場面です。
誰に頼めばよいか
数次相続では、関わる専門家が増えます。
| 専門家 | 担当すること |
|---|---|
| 税理士 | 相続税の申告(それぞれの相続について)、相次相続控除、分け方の税額比較 |
| 司法書士 | 相続登記(中間省略ができるかの判断を含む) |
| 弁護士 | 相続人どうしで争いになった場合 |
| 行政書士 | 戸籍の収集、遺産分割協議書の作成 |
窓口が分かれると、情報の受け渡しで時間を失います。
当センターでは、税理士が窓口になり、必要に応じて司法書士と連携して進めます。
「どこに何を頼めばよいか分からない」という段階でご相談ください。
相続手続きは誰に頼むべき?税理士・司法書士・行政書士・弁護士の違い
放置すると、どうなるか
数次相続を放置した場合の行き先は、だいたい決まっています。
| 経過 | 起きること |
|---|---|
| 数年 | 相続人が増え、連絡が取りにくくなる |
| 10年 | 特別受益・寄与分を主張できなくなる(民法904条の3) |
| さらに放置 | 相続人が十数人になり、面識のない親戚との協議になる |
| 最終的に | 誰も動けなくなり、不動産が塩漬けになる |
「そのうち片付けよう」で済んだ例を、私は見たことがありません。
共有名義の不動産を相続したら|共有のまま放置すると起きること
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
ご高齢のご夫婦では、数次相続は珍しいことではありません。
長年連れ添った方が続けて亡くなることは、実際によくあります。
そして新宿区では、次の事情が重なります。
| 事情 | 影響 |
|---|---|
| 自宅の割合が大きい | 分けにくく、協議が長引きます |
| 地価が高い | 相続税が2回続けて発生します |
| 借地が残っている | 借地権の承継が2回重なります |
| 相続人が遠方・海外にいる | 書類のやり取りに時間がかかります |
一方で、相次相続控除や中間省略登記など、負担を減らせる制度もあります。
知らずに進めると、使えるものを使わないまま終わります。
当センターは相続税の申告と生前対策だけを扱っています。
「父の相続が終わらないうちに母も亡くなった」という段階で、ぜひご相談ください。
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)
よくある質問
Q1. 数次相続と代襲相続は、何が違いますか
亡くなった順番です。被相続人より先に亡くなっていれば代襲相続、後に亡くなれば数次相続です。
数次相続では、亡くなった相続人の配偶者も相続人になります。
Q2. 遺産分割協議は、誰が参加しますか
亡くなった相続人の相続人が、全員参加します。
長男が亡くなっていれば、長男の妻と子が参加します。
Q3. 相続税の申告期限は延びますか
亡くなった相続人の分だけ延びます。 その人の相続人が相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
他の相続人の期限は延びません。
Q4. 相続税が2回かかるのですか
かかります。 ただし、10年以内の相続であれば相次相続控除で調整されます。
経過年数が短いほど、控除額は大きくなります。
Q5. 登記は2回しなければいけませんか
原則は順番に登記します。ただし、中間の相続が1人だけの単独相続であれば、
1回にまとめられることがあります。司法書士にご確認ください。
Q6. 遺産分割協議書は、どう書きますか
それぞれの人が、どの立場で参加しているかを明記します。
「相続人 兼 亡○○の相続人」といった書き方になります。通常の書式では受け付けられないことがあります。
Q7. 何十年も放置してしまいました
相続人を確定するところから始めます。 相続開始から10年を過ぎていれば、
特別受益や寄与分の主張はできなくなっています。まず戸籍を集めて、全体像を把握してください。
Q8. 相続人の中に、連絡が取れない人がいます
まず戸籍の附票で住所をたどります。それでも分からない場合は、
不在者財産管理人の選任や、所在等不明共有者の制度を検討することになります。
まとめ
- 数次相続は、手続きが終わらないうちに相続人が亡くなり、相続が重なることです
- 代襲相続とは別物です。分かれ目は亡くなった順番です
- 数次相続では、亡くなった相続人の配偶者も遺産分割に参加します
- 相続税の申告期限は、亡くなった相続人の分だけ延びます(相続税法27条2項)
- 10年以内の相続なら、相次相続控除で2回目の税額を軽減できます
- 中間の相続が1人だけなら、登記を1回にまとめられる場合があります
- 戸籍はおおむね倍になります。広域交付制度と法定相続情報一覧図を活用してください
- 放置すると、相続人が増えて動かなくなります
監修者
天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員
相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」(登録者4.2万人)で、相続の実務を発信しています。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.4168「相次相続控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm
- 国税庁タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 法務省「具体的相続分による遺産分割の時的限界」(民法904条の3)
https://www.moj.go.jp/content/001372212.pdf

