相続税額の2割加算とは?対象になる人・ならない人を一覧で
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月11日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】配偶者と子・父母以外は、税額が1.2倍になります
相続税額の2割加算は、財産を取得した人が「配偶者・子・父母」以外の場合に、その人の相続税額を1.2倍にする仕組みです。兄弟姉妹、甥姪、孫、内縁のパートナー、法人——これらはすべて対象です。ここで最も間違えやすいのが孫の扱いです。子がすでに亡くなっていて孫が代わりに相続する場合(代襲相続)、その孫は対象外です。一方、子が健在なのに孫を養子にした場合(孫養子)は対象になります。同じ孫でも、経緯によって結論が逆になります。そして誤解が多い点をもうひとつ。加算されるのは税額であって、財産の評価額ではありません。
| 対象になる人 | 対象にならない人 |
|---|---|
| 兄弟姉妹 | 配偶者 |
| 甥・姪 | 子(実子・養子とも) |
| 孫養子(代襲相続人である場合を除く) | 代襲相続人である孫 |
| 子の配偶者 | 父母 |
| 内縁のパートナー | 代襲相続人である甥姪…ではありません(下記参照) |
| 友人・知人・法人 | — |
加算額 = その人の相続税額 × 20%
加算するのは「税額」です。 財産の評価額を1.2倍するのではありません。
対象になるかどうかの判定
判定の基準はひとつです。
被相続人の「一親等の血族」および「配偶者」以外であれば、2割加算の対象になります。
一親等の血族とは、子と父母です。
| 続柄 | 親等 | 2割加算 |
|---|---|---|
| 配偶者 | — | なし |
| 子(実子) | 一親等 | なし |
| 子(養子) | 一親等 | なし |
| 父母 | 一親等 | なし |
| 孫(代襲相続人) | 二親等 | なし(法律上、一親等の血族とみなされます) |
| 孫(代襲相続人でない養子) | 二親等 | あり |
| 祖父母 | 二親等 | あり |
| 兄弟姉妹 | 二親等 | あり |
| 甥・姪 | 三親等 | あり |
| 子の配偶者 | 姻族一親等 | あり(血族ではありません) |
| 内縁のパートナー | — | あり |
| 友人・法人 | — | あり |
「血族」という言葉が要点です。 子の配偶者(嫁・婿)は姻族であって血族ではないため、一親等でも対象になります。
孫の扱い — ここだけは間違えないでください
同じ「孫」でも、経緯によって結論が逆になります。
ケース1 代襲相続人である孫 → 2割加算なし
祖父が亡くなる前に、父(祖父の子)が亡くなっていた
→ 孫が父に代わって相続する(代襲相続)
この孫は、法律上「一親等の血族」とみなされます。 2割加算はありません。
本来相続するはずだった親が亡くなっているだけで、世代を飛ばしたわけではないためです。
ケース2 孫養子 → 2割加算あり
子が健在だが、相続対策として孫を養子にした
→ 孫が養子として相続する
この孫は、2割加算の対象です。
理由は「世代を1つ飛ばしている」ことにあります。 通常なら「祖父 → 父 → 孫」と2回相続税がかかるところを、1回で済ませられます。その分の調整として2割加算が設けられています。
ケース3 孫養子で、かつ代襲相続人 → 2割加算なし
父(祖父の子)が亡くなっており、その孫が祖父の養子にもなっていた
代襲相続人である以上、2割加算はありません。
まとめ
| 状況 | 2割加算 |
|---|---|
| 親が先に亡くなっている(代襲相続) | なし |
| 親が健在で、孫を養子にした | あり |
| 親が健在で、孫へ遺贈した | あり |
「孫だから加算される」ではありません。「親が健在かどうか」で決まります。
孫養子は損なのか
2割加算があっても、孫養子が有利になることがあります。
有利になる点
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 基礎控除が増える | 600万円 × 1人分 |
| 生命保険の非課税枠が増える | 500万円 × 1人分 |
| 死亡退職金の非課税枠が増える | 500万円 × 1人分 |
| 相続税の総額が下がる | 法定相続人が増えると、税率の階段が下がります |
| 世代を1つ飛ばせる | 子 → 孫の相続を1回省けます |
不利になる点
| 項目 | 影響 |
|---|---|
| 2割加算 | 孫の税額が1.2倍 |
| 養子の人数制限 | 実子がいれば1人まで |
| 他の相続人の取り分が減る | 争いの原因になります |
判断は、財産の規模と家族構成によって変わります。
特に「二次相続まで通した合計額」で比較してください。 子 → 孫の相続を1回省ける効果は、長期で見ると大きくなります。
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計算の順序
2割加算は、税額計算のかなり後ろで登場します。
| 順序 | 計算 |
|---|---|
| 1 | 各人の課税価格を合計する |
| 2 | 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引く |
| 3 | 法定相続分で分けたと仮定して、各人の税額を計算する |
| 4 | 合計して相続税の総額を出す |
| 5 | 実際に取得した割合で按分する |
| 6 | ← ここで2割加算 |
| 7 | 配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などを引く |
重要なのは、2割加算が「税額控除より前」に来ることです。
加算してから控除を引きます。 順番が逆だと結果が変わりますので、ご注意ください。
計算例
【前提】 遺産1億円、相続人は子1人。子の友人へ2,000万円を遺贈した。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 課税価格の合計 | 1億円 |
| 基礎控除(相続人1人) | △3,600万円 |
| 課税遺産総額 | 6,400万円 |
| 相続税の総額 | 1,220万円 |
按分(取得割合で分けます)
| 取得者 | 取得額 | 按分後の税額 | 2割加算 | 最終的な税額 |
|---|---|---|---|---|
| 子 | 8,000万円 | 976万円 | なし | 976万円 |
| 友人 | 2,000万円 | 244万円 | +48.8万円 | 292.8万円 |
友人の負担は、48.8万円増えます。
※この計算例は説明のための簡略なものです。 実際には財産の評価、債務控除、各種の税額控除により結果が変わります。
見落とされやすい5つの場面
1. 生命保険の受取人を孫にしている
保険金は受取人固有の財産ですが、相続税の課税対象です。
受取人が相続人でない孫の場合——
- 500万円 × 法定相続人の数の非課税枠が使えません
- 2割加算の対象になります
二重に不利になります。
「孫に直接残したい」という気持ちで受取人を孫にすると、税負担が重くなります。
2. 子の配偶者(嫁・婿)に遺贈する
介護をしてくれた嫁に財産を残したい——よくあるご相談です。
子の配偶者は姻族であり血族ではないため、2割加算の対象です。
なお2019年7月1日から、相続人以外の親族が無償で療養看護を行った場合、相続人に対して金銭を請求できる制度(特別寄与料)が設けられています。この特別寄与料も、2割加算の対象です。
3. 内縁のパートナーに遺贈する
内縁のパートナーには相続権がありません。 遺言書で遺贈することになりますが、2割加算の対象です。
配偶者の税額軽減も使えません。 婚姻届を出しているかどうかで、税額が大きく変わります。
4. 兄弟姉妹・甥姪が相続する
お子さんがいないご夫婦で、ご両親も他界している場合、相続人は配偶者と兄弟姉妹です。
兄弟姉妹も甥姪も、2割加算の対象です。
5. 遺言で法人や団体に寄付する
法人への遺贈も2割加算の対象です(人格のない社団等を含みます)。
ただし、相続財産を国・地方公共団体・特定の公益法人へ、申告期限までに寄附した場合は、非課税となる特例があります。 適用要件が細かいので、事前にご確認ください。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
この3区では、2割加算の影響額が大きくなります。
理由は単純で、財産の規模が大きいためです。
【例】 世田谷区の自宅8,000万円+預貯金2,000万円、相続人は子1人。孫を養子にした場合。
2割加算は税額の20%ですから、財産が大きいほど加算額も大きくなります。地方で数十万円の差が、東京では数百万円になります。
一方で、東京だからこそ孫養子が効くこともあります。
- 基礎控除が600万円増える
- 生命保険の非課税枠が500万円増える
- 相続税の総額が下がる(法定相続人が増えると税率の階段が下がります)
- 子 → 孫の相続を1回省ける
自宅が高額な東京では、この効果も大きくなります。
つまり「2割加算があるからやめる」ではなく、「差し引きでどちらが有利か」を試算すべきということです。一度計算してから判断してください。
よくある質問
Q1. 孫は必ず2割加算の対象ですか。
A. 違います。 子がすでに亡くなっていて孫が代わりに相続する場合(代襲相続)は、対象外です。法律上、一親等の血族とみなされるためです。子が健在なのに孫を養子にした場合(孫養子)や、孫へ遺贈した場合は対象になります。「親が健在かどうか」で決まります。
Q2. 財産の評価額が1.2倍になるのですか。
A. 違います。 加算されるのは税額です。財産の評価額ではありません。按分後の各人の税額に20%を加えます。
Q3. 配偶者の税額軽減と、どちらが先ですか。
A. 2割加算が先です。 加算してから、配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除などの税額控除を引きます。順番が逆だと結果が変わります。
Q4. 孫養子は損ですか。
A. 一概には言えません。 2割加算というマイナスがある一方、基礎控除が600万円、生命保険の非課税枠が500万円増え、相続税の総額も下がります。 さらに子 → 孫の相続を1回省けます。 二次相続まで通した合計額で比較してください。財産規模によって結論が変わります。
Q5. 介護してくれた長男の嫁に財産を残したいのですが。
A. 子の配偶者は姻族であり血族ではないため、2割加算の対象です。なお2019年7月1日から特別寄与料の制度があり、相続人以外の親族が無償で療養看護をした場合、相続人へ金銭を請求できます。この特別寄与料も2割加算の対象です。
Q6. 生命保険の受取人を孫にしています。
A. 孫が相続人でない場合、二重に不利になります。①500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えません ②2割加算の対象になります。受取人を見直すか、養子縁組を検討してください(代襲相続人である孫なら、どちらの問題もありません)。
Q7. 内縁のパートナーに残したい場合は。
A. 遺言書での遺贈になります。 ただし2割加算の対象で、配偶者の税額軽減も使えません。 相続権もないため、遺言書がなければ一切渡りません。遺言書は必須とお考えください。
Q8. 寄付をすれば2割加算はありませんか。
A. 法人への遺贈も2割加算の対象です。ただし相続財産を国・地方公共団体・特定の公益法人へ、申告期限までに寄附した場合の非課税特例があります。要件が細かいので、事前にご確認ください。
まとめ
- 2割加算は、配偶者と一親等の血族(子・父母)以外が対象です
- 兄弟姉妹・甥姪・子の配偶者・内縁のパートナー・法人は、すべて対象
- 代襲相続人である孫は対象外です(一親等の血族とみなされます)
- 孫養子は対象です(代襲相続人である場合を除く)。「親が健在かどうか」で決まります
- 加算されるのは税額です。 財産の評価額ではありません
- 計算の順序は、按分 → 2割加算 → 税額控除。加算が先です
- 孫養子は、基礎控除・非課税枠が増え、世代を1つ飛ばせます。 差し引きで試算してください
- 受取人が相続人でない孫の生命保険は、非課税枠が使えず、さらに2割加算です
- 特別寄与料も2割加算の対象です
- 東京では財産規模が大きいため、加算額も、孫養子の効果も、どちらも大きくなります
ご相談のご案内
「孫養子にすべきか」は、試算しないと判断できません。 2割加算というマイナスと、基礎控除・非課税枠・世代飛ばしというプラスを、二次相続まで通して比較します。財産の内訳をお持ちいただければ、その場で概算をお出しします。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
- 国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- 国税庁 No.4155 相続税の税率
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
- e-Gov 相続税法
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。記事中の計算例は説明のための簡略なものです。

