共有名義の不動産を相続したら|共有のまま放置すると起きること
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日
【結論】共有は「先送り」であって、解決ではありません
「とりあえず兄弟3人の共有にしておこう」
遺産分割でまとまらないとき、いちばん選ばれやすい結論です。
その場は平等に見えますし、誰も損をしないように思えます。
ですが、共有は問題を解決したのではなく、次の世代に送っただけです。
共有にすると、売るにも建て替えるにも、全員の同意が必要になります。
そして次の相続が起きるたび、同意を集める相手が増えていきます。
兄弟3人の共有が、それぞれに子が2人いれば、次は6人の共有になります。
さらにその次は、顔も知らない親戚との共有です。
共有のまま置いておいて、事態がよくなることはありません。
共有になってしまう入口は、3つあります
ご相談を受けていると、共有になる経緯はほぼこの3つです。
① 相続登記を「法定相続分」で入れてしまった
相続登記は保存行為なので、相続人の1人が単独で申請できます。
このとき、遺産分割が済んでいなくても、法定相続分での登記はできてしまいます。
「期限が来るから、とりあえず登記だけ」と入れた結果、共有になります。
登記の義務化に対応するだけなら、相続人申告登記という簡易な方法もあります。
先に司法書士へご相談ください。
② 話し合いがまとまらず「とりあえず」共有にした
いちばん多い入口です。
決めきれないので、法定相続分どおりに持ち合うという結論にします。
その場は平等ですが、決めていないだけです。
③ 二世帯住宅を、親子の共有で建てた
建築資金を親子で出し合ったため、持分も分け合った形です。
このときは合理的でも、親が亡くなった後に問題が表面化します。
親の持分が複数の相続人に分かれ、同居していた子と、他のきょうだいの共有になるためです。
共有だと、何ができて何ができないのか
共有物に対して何かをするとき、必要な同意は行為の重さで変わります(民法251条・252条)。
| 行為 | 例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 変更(軽微でないもの) | 売却、建物の取り壊し、増改築、抵当権の設定 | 共有者全員 |
| 管理 | 賃貸借契約(短期)、リフォーム、軽微な変更 | 持分の価格の過半数 |
| 保存 | 修繕、不法占拠者への明渡し請求、相続登記 | 各自が単独でできる |
ここで見落とされやすいのが、「過半数」は人数ではなく持分の割合だという点です。
3人で3分の1ずつ持っているなら、2人が賛成すれば管理行為はできます。
しかし売却は、1人でも反対すればできません。
共有者の1人が住んでいる場合
共有者の1人が、その家に無償で住んでいる。
これもよくある形です。
共有物を使っている共有者は、他の共有者に対して使用の対価を償還する義務があります(別段の合意がある場合を除きます)。
ただ、現実には請求しにくく、不満だけが溜まっていくことが多い形です。
【重要】相続開始から10年で、分け方のルールが変わります
2023年(令和5年)4月1日から、遺産分割に期限のような仕組みができました。
法務省の資料には、こう書かれています。
【原則】 相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、
具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)による。(新民法904条の3)
具体的相続分とは、生前贈与(特別受益)や介護の貢献(寄与分)を加味した、その人に見合った取り分のことです。
10年を過ぎると、これらを主張できなくなります。
| 10年以内 | 10年経過後 | |
|---|---|---|
| 生前に多額の援助を受けた人がいる | 特別受益として調整できる | 調整できません |
| 介護を一手に引き受けた人がいる | 寄与分を主張できる | 主張できません |
| 分ける基準 | 具体的相続分 | 法定相続分 |
介護をしてきた方にとっては、10年の放置が取り分の減少に直結します。
例外は2つだけです
法務省の資料では、次の場合は引き続き具体的相続分で分割できるとされています。
① 10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
② 10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができない
やむを得ない事由が相続人にあった場合において、
当該事由消滅時から6か月経過前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
また、相続人全員が合意すれば、10年経過後でも具体的相続分による分割は可能です。
逆に言えば、1人でも「法定相続分で」と言えば、それに従うことになります。
なお、この制度が始まる前に開始した相続については経過措置があります。
古い相続でまだ分割が終わっていない場合は、期限が迫っている可能性があります。
心当たりがあれば、お早めにご確認ください。
特別受益と寄与分については、それぞれこちらをご覧ください。
寄与分とは?介護や家業の貢献で取り分を増やせる条件と、嫁が使える特別寄与料
相続税の計算では、共有でも変わりません
「共有にすれば相続税が安くなる」ということはありません。
不動産の評価額を出し、それに持分割合をかけるだけです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自宅の評価額 | 6,000万円 |
| 長男の持分 | 3分の1 |
| 長男の課税価格 | 2,000万円 |
ただし、小規模宅地等の特例の判定は、取得する人ごとに行います。
同じ自宅を共有で相続しても、
- 同居していた長男の持分 → 特例を使える可能性があります
- 別居していて持ち家のある次男の持分 → 使えません
誰がどの割合で取得するかによって、相続税の総額が変わります。
「平等に3分の1ずつ」が、税額としては最も不利になることもあります。
共有のまま放置すると起きること
① 売れません
買い手は、共有者全員の同意がなければ買えません。
1人でも「売りたくない」「連絡が取れない」となれば、話はそこで止まります。
自分の持分だけを売ることは法律上できますが、
持分だけを買う第三者はほとんどいません。 買い取り業者に安く買われるのが現実です。
② 建て替えも、大規模なリフォームもできません
建物の取り壊しや増改築は「変更」にあたり、全員の同意が必要です。
老朽化しても手が付けられず、そのまま空き家になっていきます。
③ 相続のたびに、共有者が増えます
これが最も深刻です。
| 世代 | 共有者の数 |
|---|---|
| 1代目(兄弟3人) | 3人 |
| 2代目(それぞれに子2人) | 6人 |
| 3代目 | 12人以上 |
面識のない親戚12人から実印をもらうという作業になります。
このとき、誰か1人でも所在が分からなければ、手続きは進みません。
④ 固定資産税は連帯して負担します
共有者は固定資産税を連帯納付する関係にあります。
1人が払わなければ、他の共有者に請求が来ます。
⑤ 相続登記をしないと、過料の対象になります
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が義務になりました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、過料の対象になります。
相続登記の義務化|2027年3月31日の期限が近づいています
共有を解消する方法
① 話し合いで分ける(共有物分割協議)
いちばん穏やかな方法です。分け方は3通りあります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 現物分割 | 土地を分筆して、それぞれの単独所有にする |
| 代償分割(価格賠償) | 1人が全部を取得し、他の人に金銭を払う |
| 換価分割 | 売却して、代金を持分に応じて分ける |
土地に十分な広さがなければ、現物分割は現実的ではありません。
新宿区のように1区画が狭い地域では、代償分割か換価分割になることがほとんどです。
代償分割とは?自宅を分けられないときの現実的な解決策と、税金の注意点
② 持分を他の共有者に売る・贈与する
自分の持分を、他の共有者に買い取ってもらう方法です。
贈与にすると贈与税がかかります。 売買にする場合は譲渡所得税の対象になります。
③ 裁判所に共有物分割を求める
話し合いがまとまらなければ、共有物分割訴訟を起こすことになります。
裁判所は現物分割・賠償分割・競売分割のいずれかを命じます。
競売になれば、市場価格を下回ることが多いです。
「裁判に持ち込めば解決する」というより、全員が損をする終わり方になりがちです。
④ 持分を放棄する
共有者の1人が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。
ただし、税金がかかります。
放棄によって持分を得た人には、贈与を受けたものとして贈与税がかかります。
「いらないから放棄する」で済む話ではありません。 必ず税額を確かめてから判断してください。
⑤ 所在が分からない共有者がいる場合
2023年4月1日の民法改正で、所在等不明共有者がいる場合の制度が新しくできました。
- 裁判所の決定により、所在等不明共有者の持分を取得する
- 裁判所の決定により、所在等不明共有者の持分を含めて第三者へ譲渡する
- 所在等不明共有者以外の共有者で、変更・管理を決められるようにする
いずれも裁判所の手続きが必要で、所在不明であることの調査と、供託が求められます。
時間も費用もかかりますが、以前は完全に手詰まりだったケースに道ができました。
共有にしないための、3つの決め方
「では、どう分ければよかったのか」というご質問をよくいただきます。
現実的なのは、次の3つです。
① 代償分割にして、代償金の原資を先に用意しておく
自宅を1人が取得し、他の相続人には現金を渡す方法です。
問題は、その現金をどう用意するかです。
| 原資 | 内容 |
|---|---|
| 生命保険金 | 受取人固有の財産なので、遺産分割の対象外。代償金にそのまま使えます |
| 取得した人の自己資金 | 手元にあれば最も簡単です |
| 不動産を担保にした借入れ | 返済の負担が残ります |
| 分割払いの約束 | 後々もめる原因になります。おすすめしません |
生前にできる最も効果的な準備は、自宅を継ぐ人を受取人にした生命保険です。
② 換価分割にして、売ってから分ける
誰も住まない自宅であれば、売って現金で分けるのがいちばん揉めません。
ただし、次の点にご注意ください。
- 売却には相続登記が先に必要です
- 譲渡所得税がかかります
- 相続開始から3年10か月以内に売れば、相続税の一部を取得費に加算できる特例があります
③ 遺言書で、あらかじめ決めておく
いちばん確実なのは、亡くなる方が決めておくことです。
「自宅は長男に。ただし長男は次男に1,000万円を支払うこと」
このように書いておけば、遺産分割協議そのものが不要になります。
ただし、遺留分には配慮してください。 配慮のない遺言は、別の争いを生みます。
共有を放置した家族に、実際に起きること
時系列で見ると、深刻さが分かります。
| 時期 | 状態 |
|---|---|
| 相続直後 | 兄弟3人の共有。全員が健在で、連絡も取れる |
| 5年後 | 建物が老朽化。建て替えたいが、1人が反対して進まない |
| 10年後 | 特別受益・寄与分を主張できなくなる(民法904条の3) |
| 15年後 | 長男が死亡。長男の妻と子2人が持分を引き継ぎ、共有者は5人 |
| 25年後 | 次男も死亡。共有者は8人。半数とは面識がない |
| 35年後 | 三男も死亡。共有者は12人以上。全員の実印を集めるのは事実上不可能 |
どの時点でも、決めようと思えば決められました。
それでも決まらなかったのは、決めなくても困らない状態が続いたからです。
困ったときには、もう決められなくなっています。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
新宿区では、共有はとくに扱いにくくなります。
理由は3つあります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 1区画が狭い | 分筆して現物分割できる土地が少なく、代償か換価しか選べません |
| 地価が高い | 代償分割で払う金額が大きく、現金を用意できないことがあります |
| 借地が残っている | 借地権の共有は、建て替えに地主の承諾も必要になります |
さらに、共有にすると小規模宅地等の特例を最大限に使えないことがあり、
相続税でも不利になります。
当センターは西新宿駅から徒歩約5分、受付は9時から19時まで、土日祝も承っています。
「共有にするしかないと言われた」という段階でご相談ください。 他の方法が残っていることがあります。
よくある質問
Q1. とりあえず共有にしておいて、後で分けてはいけませんか
おすすめしません。 後で分けるには、そのときの共有者全員の同意が必要です。
相続が重なれば共有者は増え、合意はどんどん難しくなります。
また、相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を主張できなくなります。
Q2. 共有にすると相続税は変わりますか
評価額は持分割合で按分するだけで、有利にも不利にもなりません。
ただし小規模宅地等の特例は取得者ごとに判定するため、誰がどの割合で取得するかで税額は変わります。
Q3. 自分の持分だけを売ることはできますか
法律上はできますが、買う第三者はほとんどいません。
買い取り業者に相場より低い価格で売ることになり、残った共有者との関係も悪化します。
Q4. 共有者の1人が連絡に応じません
まず内容証明などで意思を確認します。所在自体が分からない場合は、
2023年4月から始まった所在等不明共有者の持分取得・譲渡の制度が使える可能性があります。裁判所の手続きが必要です。
Q5. 共有者の1人が無償で住んでいます。家賃をもらえますか
共有物を使用している共有者は、他の共有者に使用の対価を償還する義務があります(別段の合意がある場合を除きます)。
ただし現実には請求しづらく、共有を解消するほうが根本的な解決になります。
Q6. 相続開始から10年を過ぎたらどうなりますか
原則として、法定相続分(または指定相続分)で分けることになります。
特別受益や寄与分の主張はできなくなります。ただし、相続人全員が合意すれば具体的相続分での分割は可能です。
Q7. 相続登記をしないとどうなりますか
2024年4月1日から義務化されており、取得を知った日から3年以内に登記しなければ過料の対象になります。
共有の場合でも同じです。なお相続登記は「保存行為」として、共有者の1人が単独で申請できます。
Q8. 共有を解消するのに、いくらくらいかかりますか
方法によって大きく変わります。話し合いで代償分割をするなら、代償金のほかに登記費用と、場合によっては譲渡所得税がかかります。
訴訟になると時間も費用も膨らみます。 まずは税金面を含めた試算をおすすめします。
まとめ
- 共有は解決ではなく、先送りです。次の相続で共有者が倍に増えます
- 売却・建て替えは全員の同意、管理は持分の過半数、保存は各自単独
- 相続開始から10年を過ぎると、特別受益・寄与分を主張できなくなります(民法904条の3)
- 相続税の評価は持分で按分するだけですが、小規模宅地等の特例は取得者ごとに判定されます
- 解消の方法は、話し合い・持分の売買・共有物分割訴訟・所在等不明共有者の制度
- 競売になると、全員が損をします
- 新宿区は狭小な区画が多く、現物分割がほぼ使えません
ご相談のご案内
新宿相続・生前贈与相談センター(税理士法人Ambitious)
「共有にするしかない」と言われた時点で、まだ選択肢は残っていることがほとんどです。
代償分割の資金をどう作るか、小規模宅地等の特例をどう最大化するか、
税金まで含めて計算してから分け方を決めてください。
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)
監修者
天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員
相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」(登録者4.2万人)で、相続の実務を発信しています。
出典
- 法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」
https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf
- 法務省「具体的相続分による遺産分割の時的限界」(民法904条の3)
https://www.moj.go.jp/content/001372212.pdf
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

