遺言書の検認とは?自筆証書遺言が見つかったときの手続きと、開封してはいけない理由
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月12日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】封がしてある遺言書は、絶対にその場で開けないでください
遺品整理中に、封筒に入った遺言書が出てきた。
このとき、最もやってはいけないのが「その場で開ける」ことです。
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人の立会いのもとでなければ開封できません(民法1004条3項)。
これに反して開封すると、5万円以下の過料という制裁があります(民法1005条)。
ただし、ここは正確にお伝えしておきます。
開封してしまっても、遺言書そのものが無効になるわけではありません。
過料という行政上の制裁を受ける可能性があるだけで、遺言の効力は別の問題です。
「開けてしまったから、もうこの遺言書は使えない」と誤解して、
遺言書を処分してしまう方がいます。これが最悪の結果です。
すでに開けてしまった場合も、遺言書はそのまま保管し、検認の申立てをしてください。
他の相続人には正直に伝えてください。隠すと、後で必ず揉めます。
検認とは何をする手続きか
検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認して記録に残す手続きです。
目的は、遺言書の偽造・変造を防ぎ、その時点の状態を公に確定させることです。
| 検認でやること | 検認でやらないこと |
|---|---|
| 遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名を確認する | 遺言が有効か無効かの判断 |
| 相続人に遺言書の存在を知らせる | 遺言の内容の正しさの判断 |
| その時点の内容を記録に残す | 筆跡が本人のものかの判断 |
ここを誤解される方がとても多いので、強調しておきます。
検認を受けても、「有効な遺言書」のお墨付きはもらえません
検認が済んだ遺言書でも、後から無効を主張されることがあります。
たとえば次のような場合です。
- 日付が「令和7年3月吉日」のように特定できない(日付の記載がないものとして無効)
- 本文がパソコンで作成されている(自筆証書遺言は全文自筆が必要。財産目録のみ例外)
- 押印がない
- 遺言時に判断能力がなかった疑いがある
検認は「内容を記録する手続き」にすぎません。
有効かどうかは、最終的に裁判で争われます。
だからこそ、遺言書は作る段階で形式を確認しておくことが決定的に重要です。
検認が必要な遺言書・不要な遺言書
すべての遺言書に検認が必要なわけではありません。
| 遺言書の種類 | 検認 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言(自宅・貸金庫などで保管) | 必要 | 民法1004条1項 |
| 秘密証書遺言 | 必要 | 民法1004条1項 |
| 公正証書遺言 | 不要 | 民法1004条2項 |
| 自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用) | 不要 | 遺言書保管法11条 |
法務局の保管制度を使えば、検認が省けます
2020年7月に始まった自筆証書遺言書保管制度を使って法務局に預けた遺言書は、
検認が不要です。
これは、残されたご家族にとって非常に大きな違いになります。
| 自宅で保管 | 法務局で保管 | |
|---|---|---|
| 検認 | 必要(1〜2か月) | 不要 |
| 紛失・改ざんのおそれ | あり | なし |
| 形式の不備 | 気づかれない | 外形のチェックあり |
| 相続人への通知 | なし | 指定者に通知が届く仕組みあり |
| 費用 | 0円 | 保管申請 3,900円 |
3,900円で、ご家族の1〜2か月と手間が省けます。
ただし、法務局がチェックするのは外形(日付・署名・押印・様式)だけです。
内容の妥当性や、相続税がどうなるかは見てもらえません。
検認の手続き
① 申立てをする裁判所
遺言者(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続人の住所地ではありません。
新宿区にお住まいだった方なら、東京家庭裁判所(霞が関)です。
遠方の場合、申立て自体は郵送でできます。
ただし検認期日には出席が望ましいため、そこは調整が必要になります。
② 申立てができる人
- 遺言書の保管者(預かっていた人)
- 遺言書を発見した相続人
相続人全員でする必要はありません。1人で申立てできます。
③ 費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入印紙(遺言書1通につき) | 800円 |
| 連絡用の郵便切手 | 裁判所により異なります(数百円〜2,000円程度) |
| 検認済証明書の申請(遺言書1通につき) | 150円 |
実費は1,000円台で済みます。
ただし、戸籍を集める費用が別にかかります。
これが意外に大きく、ご家族が多い場合は数千円〜1万円を超えることもあります。
④ 必要書類
- 申立書(裁判所の書式)
- 遺言者の出生から死亡までの連続したすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の子で亡くなっている方がいる場合、その方の出生から死亡までの戸籍
- 相続人が兄弟姉妹の場合、遺言者の父母の出生から死亡までの戸籍
この「出生から死亡まで連続した戸籍」が、最も時間のかかる作業です。
2024年3月から戸籍の広域交付制度が始まり、
最寄りの市区町村の窓口で、本籍地以外の戸籍もまとめて請求できるようになりました。
⑤ 検認期日
申立てから1〜2か月後に、検認期日が指定されます。
裁判所から相続人全員に期日の通知が届きます。
これによって、相続人全員が遺言書の存在を知ることになります。
期日には、申立人は出席が必要です。
他の相続人は出席しなくても手続きは進みます。
当日は、裁判官が遺言書を開封し、相続人の前で形状・内容を確認します。
所要時間は10〜20分程度です。
⑥ 検認済証明書をもらう
検認が終わったら、その場で検認済証明書の申請をしてください。
これを忘れると、手続きが進みません。
| 手続き | 検認済証明書 |
|---|---|
| 不動産の相続登記 | 必要 |
| 金融機関の預金の払い戻し・名義変更 | 必要 |
| 証券口座の移管 | 必要 |
遺言書に検認済証明書が合綴されて、初めて使える書類になります。
【要注意】検認に1〜2か月かかることが、相続税に影響します
相続税の申告期限は、亡くなった日の翌日から10か月です。
この期限は、検認が終わっていなくても動きません。
実際のスケジュールを並べてみます。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 0か月 | 相続開始 |
| 1か月 | 遺言書を発見。戸籍の収集を開始 |
| 2〜3か月 | 戸籍が揃い、検認を申立て |
| 3〜5か月 | 検認期日。ここで初めて内容が確定 |
| 5〜9か月 | 財産の評価、遺留分の検討、申告書の作成 |
| 10か月 | 申告期限 |
残り5か月しかありません。
しかも相続放棄の期限は3か月です。
遺言書の内容が分からないまま、この期限が来ることがあります。
対処の順番はこうです。
- 遺言書の検認を待たずに、財産の調査を始める
検認は内容の確認であって、財産調査とは別の作業です
- 相続放棄を考えるなら、期間の伸長を家庭裁判所に申立てる
3か月以内に申立てれば、延ばしてもらえることがあります
- 遺産分割協議書が必要かどうかを、早めに見極める
遺言書で全財産の分け方が決まっていれば、協議は不要です
遺言書が出てきた後に起きやすい3つの問題
問題① すでに遺産分割協議をしてしまっていた
遺言書の存在を知らずに、相続人全員で分け方を決めてしまった。
その後に遺言書が出てきた、というケースです。
原則として、遺言書の内容が優先されます。
ただし、相続人全員(受遺者を含む)が合意すれば、遺言と異なる分け方も可能です。
すでにした協議をそのまま生かせることもあります。
やってはいけないのは、遺言書を見なかったことにすることです。
後で発覚すれば、協議のやり直しどころか、信頼関係が完全に壊れます。
問題② 遺言書の内容が、一部の相続人に極端に不利だった
「全財産を長男に相続させる」という内容が出てくることは、珍しくありません。
このとき、他の相続人には遺留分侵害額請求という権利があります。
| 相続人 | 遺留分の割合 |
|---|---|
| 配偶者のみ/子のみ | 財産の1/2 |
| 配偶者と子 | 財産の1/2(これを法定相続分で分けます) |
| 父母のみ | 財産の1/3 |
| 兄弟姉妹 | ありません |
期限は、相続の開始と遺留分侵害を知った時から1年です。
検認に時間がかかっていると、この1年が進んでいきます。
遺言書の内容を知った日が起算点になりますので、検認期日からの1年と考えておいてください。
問題③ 遺言書が2通以上見つかった
日付の新しいものが優先されます(民法1023条)。
ただし、抵触する部分だけが撤回されたものとみなされます。
古い遺言書の、新しい遺言書と矛盾しない部分は、そのまま効力を持ちます。
検認は、見つかったすべての遺言書について必要です。
1通800円ですので、2通なら1,600円です。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
この3区では、検認の遅れが税額に直接響きます。
理由は、この地域の相続では「遺言書があるかどうか」で使える特例が変わるからです。
具体的には、小規模宅地等の特例です。
この特例は、申告期限までに誰が取得するかが決まっていることが前提になります。
分け方が決まらないまま申告期限が来ると、いったん特例なしで申告することになります。
新宿・中野・世田谷の自宅であれば、330㎡まで80%評価減という効果は非常に大きく、
7,000万円の土地なら5,600万円の減額になります。
| 特例あり | 特例なし | |
|---|---|---|
| 自宅の評価額 | 1,400万円 | 7,000万円 |
| 差 | — | 5,600万円 |
検認に2か月かかると、残り時間が一気に減ります。
申告期限に間に合わない場合の救済手段はあります。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、
後から分割が決まったときに特例を適用して更正の請求ができます。
この一枚を出し忘れると、救済が受けられません。
小規模宅地等の特例|330㎡まで80%減額される条件
新宿区の相続税|土地評価が難しい街で損をしないために
よくある質問
Q1. 遺言書を開けてしまいました。遺言書は無効になりますか。
A. 無効にはなりません。
封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封すると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。
ただしこれは行政上の制裁であって、遺言の効力とは別の問題です。
遺言書はそのまま保管し、検認の申立てをしてください。
他の相続人には、開けてしまった事実を正直に伝えてください。隠すと必ず問題になります。
Q2. 封がされていない遺言書なら、読んでも問題ありませんか。
A. 封印がなければ、開封の過料の対象にはなりません。
ただし検認は必要です。検認を経ないで遺言を執行した場合も、5万円以下の過料の対象になります。
読んだこと自体は問題ありませんが、内容を他の相続人に隠さないでください。
Q3. 検認には相続人全員が出席しなければなりませんか。
A. いいえ。申立人が出席すれば手続きは進みます。
裁判所から相続人全員に期日の通知が届きますが、出席は義務ではありません。
欠席した相続人も、後から検認調書の謄本を取得して内容を確認できます。
Q4. 検認にかかる費用はいくらですか。
A. 収入印紙800円(遺言書1通につき)と、連絡用の郵便切手です。
検認済証明書の申請に、別途150円かかります。
実費は合計1,000〜3,000円程度です。
ただし、戸籍謄本の取得費用が別にかかります。
相続人の数や本籍地の移動が多い場合、数千円〜1万円を超えることもあります。
Q5. 検認を申立てないとどうなりますか。
A. 不動産登記や預金の払い戻しができません。
法務局も金融機関も、検認済証明書のない自筆証書遺言では手続きに応じません。
また、検認を経ないで遺言を執行すると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。
Q6. 公正証書遺言でも検認は必要ですか。
A. 不要です(民法1004条2項)。
公証人が関与して作成され、原本が公証役場に保管されているため、
偽造・変造のおそれがないからです。
法務局の保管制度を使った自筆証書遺言も、検認は不要です(遺言書保管法11条)。
Q7. 遺言書があると、相続税の申告は楽になりますか。
A. 手続きは楽になりますが、税額が下がるわけではありません。
遺言書で分け方が決まっていれば、遺産分割協議が不要になり、
申告期限までに分割が確定している状態をつくりやすくなります。
その結果、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使いやすくなります。
一方で、分け方によって税額は大きく変わります。
「全財産を長男に」という遺言は、配偶者の税額軽減を使えず、かえって税額が上がることがあります。
Q8. 遺言書が見つからない場合、どうやって探せばよいですか。
A. 3か所を確認してください。
① 公証役場:全国どこの公証役場でも、公正証書遺言の有無を検索できます(相続人であることの証明が必要)
② 法務局:自筆証書遺言書保管制度の「遺言書保管事実証明書」を請求できます
③ 自宅・貸金庫:仏壇、金庫、通帳と一緒の場所、貸金庫が多い場所です
貸金庫は、相続人全員の同意がないと開けられない金融機関が多いため、早めに確認してください。
まとめ
- 封印のある遺言書は、家庭裁判所で開封します(民法1004条3項)
- 勝手に開けると5万円以下の過料ですが、遺言書は無効になりません
- 検認は有効・無効を判断する手続きではありません。 内容を記録するだけです
- 公正証書遺言と、法務局の保管制度を使った遺言は検認不要です
- 申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所。費用は印紙800円+証明書150円
- 申立てから検認期日まで1〜2か月。 相続税の申告期限10か月は待ってくれません
- 不動産登記・預金の手続きには、検認済証明書が必須です
- 分け方が決まらないまま期限が来そうなら、「申告期限後3年以内の分割見込書」を忘れずに
ご相談のご案内
「遺言書が出てきたが、どう進めればいいか分からない」というご相談を多くいただきます。
検認の申立ては裁判所の手続きですが、相続税の観点からは、検認を待っている時間がありません。
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当センターでは、検認の進行と並行して、
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
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※遺言書の検認の申立て、遺産分割協議書の作成は、弁護士・司法書士・行政書士の業務です。
当センターは相続税の申告と試算を担当し、必要に応じて提携する専門家をご紹介します。
出典
- e-Gov 民法(第1004条・第1005条・第1023条)
- e-Gov 法務局における遺言書の保管等に関する法律
- 裁判所 遺言書の検認
- 法務省 自筆証書遺言書保管制度
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 法務省 戸籍証明書等の広域交付
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。記事中の金額は説明のための例です。

