未成年の相続人がいる場合|親が代わりに署名すると、協議は無効になります
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日
【結論】母親が子の代わりに署名しても、その協議は通りません
夫が亡くなり、相続人は妻と未成年の子。
このとき、母親が子の分もまとめて署名するという進め方をされる方がいます。
その遺産分割協議は、無効です。
母と子は、同じ遺産を取り合う関係にあります。
母が子の代理人になると、自分に有利に決められてしまいます。
これを「利益相反」といい、法律は認めていません。
必要なのは、家庭裁判所に特別代理人を選んでもらうことです。
法務局も金融機関も、ここを必ず確認します。
特別代理人の選任審判書がなければ、登記も名義変更も進みません。
未成年は18歳未満です
2022年4月1日から、成年年齢は18歳になりました。
| 内容 | |
|---|---|
| 成年年齢 | 18歳(2022年4月1日から) |
| 遺産分割協議に単独で参加できるか | 18歳以上なら参加できます |
| 未成年者控除の計算 | 18歳になるまでの年数で計算します |
「20歳まで」という説明は古い情報です。 古い記事にご注意ください。
特別代理人とは

その遺産分割協議のためだけに、子の代理をする人です。
子が2人いれば、特別代理人も2人必要です
ここが見落とされます。
子どうしも、同じ遺産を分け合う関係です。
1人の特別代理人が2人の子を代理すると、また利益相反になります。
子の人数だけ、別々の特別代理人が必要です。
選任の申立てには、分割案を添えます
申立ての際、どう分けるつもりかを示す遺産分割協議書の案を提出します。
家庭裁判所は、その案が子にとって不利でないかを見ます。
「子の取り分をゼロにする」という案は、認められないことがほとんどです。
最低でも法定相続分は確保する案が基本になります。
法定相続分の早見表|誰がいくら相続するのか、全パターンを一覧で
特別代理人が要らない場合もあります
いつも必要なわけではありません。
| 状況 | 特別代理人 |
|---|---|
| 親権者と子が、ともに相続人 | 必要です |
| 親権者が相続人でない(例:離婚した元配偶者が親権者) | 不要な場合があります |
| 親権者が相続放棄をしていて、子だけが相続人 | 不要な場合があります |
| 遺言書があり、遺産分割協議が不要 | 不要です |
| 法定相続分どおりに登記するだけ(協議をしない) | 不要な場合があります |
いちばん確実なのは、遺言書を残しておくことです。
遺言で分け方が決まっていれば、そもそも遺産分割協議をしません。
特別代理人の選任も、1〜2か月の待ち時間も不要になります。
相続税では、未成年者控除が使えます
未成年の相続人には、未成年者控除があります。
未成年者控除 = 18歳になるまでの年数 × 10万円10歳のお子さんなら、8年 × 10万円 = 80万円が税額から引かれます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 差し引くもの | 課税価格ではなく、税額から引きます |
| 1年未満の端数 | 切り上げます(1年として計算します) |
| 引ききれないとき | 扶養義務者の税額から差し引けます |
| 対象 | 法定相続人であることなどの要件があります |
「税額から直接引ける」控除は効果が大きいものです。忘れずに適用してください。
相続税が0円でも申告が必要なケース|特例は「申告して初めて使える」
進め方(時系列)
期限は10か月。特別代理人の選任に1〜2か月かかります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 〜2か月 | 相続人の確定(戸籍収集)、財産の把握 |
| 〜4か月 | 分割案を作る(子の取り分を法定相続分以上で設計) |
| 〜5か月 | 特別代理人の選任を申し立てる(子の人数分) |
| 〜7か月 | 選任の審判が出る |
| 〜8か月 | 遺産分割協議書に、特別代理人が署名・押印 |
| 〜10か月 | 相続税の申告・納付、登記・名義変更 |
逆算すると、分割案は4か月目までに固める必要があります。
申立てが遅れると、未分割のまま申告期限を迎えることになります。
未分割のまま申告期限を迎えたら|「3年以内の分割見込書」で特例を残せます
よくある失敗
① 母親が子の分も署名してしまった
協議は無効です。 法務局や金融機関で止まり、やり直しになります。
すでに登記まで済んでいた場合は、より大きな問題になります。
② 子2人に1人の特別代理人を立てた
子どうしも利益相反です。 子の人数だけ必要になります。
③ 子の取り分をゼロにする案を出した
家庭裁判所で認められないことがほとんどです。
「母が全部相続して、子が成人したら渡す」という合意も、協議書としては通りません。
④ 二次相続を考えずに、母に集中させた
母に全部集中させると、母が亡くなったときの相続税が重くなります。
配偶者の税額軽減で一次相続はゼロでも、合計では損をすることがあります。
⑤ 未成年者控除を使わなかった
税額から直接引ける控除です。使い忘れは、そのまま納めすぎになります。
申立てに必要な書類
そろえるものは、それほど多くありません。
| 書類 | 補足 |
|---|---|
| 申立書 | 裁判所の様式があります |
| 未成年者の戸籍謄本 | — |
| 親権者(特別代理人の候補者)の戸籍謄本 | — |
| 利益相反に関する資料 | 遺産分割協議書の案がこれにあたります |
| 遺産に関する資料 | 不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、残高証明書の写しなど |
| 収入印紙・郵便切手 | 子1人につき収入印紙800円 |
いちばん時間がかかるのは、遺産分割協議書の案づくりです。
財産の全体像が分からなければ案は作れず、案がなければ申し立てられません。
財産調査を先に終わらせることが、結局いちばんの近道です。
18歳になるまで待つ、という選択
「あと1年で18歳になるので、それまで待てばいいのでは」
これは、条件によっては現実的な選択です。
| 待つ場合 | 特別代理人を立てる場合 | |
|---|---|---|
| 手続き | 不要になります | 申立てが必要(1〜2か月) |
| 費用 | かかりません | 収入印紙・郵便切手 |
| 申告期限 | 間に合わない可能性があります | 間に合わせやすい |
| 取り分 | 自由に決められます | 法定相続分以上が基本 |
判断の分かれ目は、申告期限10か月に間に合うかどうかです。
間に合わない場合は、未分割で申告して分割見込書を添付し、
18歳になってから協議をまとめる、という進め方もできます。
どちらが有利かは、お子さんの年齢と財産の内容で変わります。
親が先に亡くなり、子だけが相続人の場合
祖父母の相続で、親(子)がすでに亡くなっている。
このとき、孫が代襲相続人になります。
孫が未成年であれば、親権者は生き残っているほうの親です。
| 状況 | 利益相反 |
|---|---|
| 親権者(母)も相続人 | あります。特別代理人が必要 |
| 親権者(母)が相続人でない(父方の祖父の相続など) | ないことがあります |
母が父方の祖父の相続人でなければ、母が子を代理できる場合があります。
ただし、子が複数いる場合は、子どうしの利益相反が残ります。
その場合、1人を除いて特別代理人を立てるという形になります。
代襲相続はどこまで続く?発生する3つのケースと、起きないケース
未成年後見人が必要になる場合
親権者がいない場合は、そもそも代理する人がいません。
| 状況 | 必要なもの |
|---|---|
| 両親とも亡くなっている | 未成年後見人の選任(家庭裁判所) |
| 親権者が行方不明 | 同上、または不在者財産管理人 |
| 親権者が判断できない状態 | 状況に応じた対応が必要です |
未成年後見人の選任にも、家庭裁判所の手続きと時間がかかります。
両親を続けて亡くされたご家庭では、この手続きから始まることになります。
早めに司法書士・弁護士にご相談ください。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
都心では、この論点がとくに重くなります。
| 事情 | 影響 |
|---|---|
| 自宅の評価が高い | 子の法定相続分を確保しようとすると、自宅を分けることになります |
| 現金が少ない | 代償金を用意できません |
| 配偶者が若い | 二次相続まで時間があり、設計の幅は広いはずです |
| 申告期限が迫りやすい | 特別代理人の選任に1〜2か月かかるため |
「母が自宅、子が預貯金」で法定相続分に届かないというケースは、実際によくあります。
このとき、配偶者居住権を使うと、母の住まいを守りながら、子の取り分を確保できる場合があります。
配偶者居住権とは?自宅に住み続けながら二次相続の税負担を減らす
当センターは相続税の申告と生前対策だけを扱っています。
特別代理人の選任は司法書士や弁護士の分野ですが、分割案の設計と税額の比較はお手伝いできます。
順番としては、税額を試算してから申し立てるのが確実です。
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未成年の子が「相続放棄」をする場合
借金のほうが多いときは、相続放棄を検討します。
このときも、親権者が代理できるかどうかが問題になります。
| 状況 | 特別代理人 |
|---|---|
| 親権者も一緒に相続放棄する | 利益相反にならず、不要な場合があります |
| 親権者は放棄せず、子だけ放棄する | 利益相反。必要です |
| 子が複数いて、一部だけ放棄する | 必要です |
「親子で一緒に放棄する」なら手続きが軽くなるということです。
なお、相続放棄の期限は3か月です。特別代理人の選任に1〜2か月かかることを考えると、
ほとんど余裕がありません。
借金の可能性がある場合は、すぐに動いてください。
子が受け取った財産は、誰が管理するか
未成年の子が相続した預貯金や不動産は、親権者が管理します。
ただし、子の財産であって、親のものではありません。
| やってはいけないこと |
|---|
| 親の生活費に使う |
| 親の借金の返済にあてる |
| 無断で名義を親に変える |
子が成人したときに、きちんと引き渡せる形にしておいてください。
子名義の口座に入れたまま親が使ってしまうと、
後から「名義預金」として問題になることもあります。
よくある質問
Q1. 母親が子の代わりに署名してはいけませんか
いけません。 母と子は同じ遺産を分け合う関係(利益相反)にあるためです。
家庭裁判所に特別代理人を選んでもらう必要があります。
Q2. 何歳から自分で協議に参加できますか
18歳以上です。2022年4月1日から成年年齢が18歳になりました。「20歳」は古い情報です。
Q3. 子が2人います。特別代理人は1人でいいですか
子の人数だけ必要です。 子どうしも利益相反の関係にあります。
Q4. 申立てから、どのくらいかかりますか
1〜2か月かかることがあります。申告期限10か月から逆算して動いてください。
Q5. 子の取り分をゼロにできますか
認められないことがほとんどです。 最低でも法定相続分を確保する案が基本になります。
Q6. 特別代理人には誰がなれますか
相続人ではない親族(祖父母、おじ・おばなど)や、弁護士・司法書士です。
申立ての際に候補者を挙げます。
Q7. 未成年者控除はいくらですか
18歳になるまでの年数 × 10万円です。1年未満の端数は切り上げます。
引ききれない分は、扶養義務者の税額から差し引けます。
Q8. 特別代理人を立てずに済む方法はありますか
遺言書があれば、遺産分割協議そのものが不要になります。
お子さんが小さいご家庭では、遺言書を残しておく価値が非常に大きくなります。
まとめ
- 親権者と子がともに相続人なら、親が子を代理できません(利益相反)
- 家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます
- 子の人数だけ、別々の特別代理人が必要です
- 申立てには分割案を添え、子の取り分は法定相続分以上が基本です
- 選任まで1〜2か月。申告期限10か月から逆算してください
- 成年年齢は18歳。未成年者控除も18歳までで計算します
- 未成年者控除 = 18歳になるまでの年数 × 10万円(税額から直接引きます)
- 遺言書があれば、特別代理人は不要になります
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監修者
天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
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出典
- 国税庁タックスアンサー No.4164「未成年者の税額控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4164.htm
- 裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html
- 裁判所「特別代理人選任の申立書(遺産分割協議)」
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_11/index.html
- 法務省「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html
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