上場株式・投資信託の相続税評価|4つの価額のうち、いちばん低いものを選べます
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日
【結論】亡くなった日の株価だけで決まるわけではありません
「亡くなった日の終値で計算するんですよね」
半分だけ正解です。実際には、4つの価額を比べます。
国税庁は、こう定めています。
原則として、課税時期の最終価格によって評価します。
ただし、その価格が次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、
その最も低い価額により評価します。イ 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
ロ 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
ハ 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
つまり、4つの中からいちばん低いものを選べます。
株価が上がっている局面で亡くなった場合、前々月の平均を使うと評価額が大きく下がることがあります。
ここを確認せずに「亡くなった日の終値」で申告すると、払わなくてよい相続税を払うことになります。
計算してみます
保有株数10,000株。課税時期(亡くなった日)の終値が1,500円だった場合。
| 価額 | 評価額(10,000株) | |
|---|---|---|
| 課税時期の最終価格 | 1,500円 | 1,500万円 |
| その月の月平均額 | 1,450円 | 1,450万円 |
| 前月の月平均額 | 1,380円 | 1,380万円 |
| 前々月の月平均額 | 1,420円 | 1,420万円 |
最も低いのは前月の1,380円。 評価額は1,380万円になります。
終値で計算した場合との差は120万円。
相続税の税率が30%なら、税額で36万円の差です。
※ 数字は説明のための例です。実際の株価でご確認ください。
月平均額は、どこで調べるのか
証券会社に残高証明書を請求するときに、
「相続税評価額の記載を含めて」とお願いすれば、4つの価額を出してもらえることが多くあります。
最初の依頼のしかたで、後の手間が変わります。
投資信託は、商品によって計算が違います
投資信託は「1口いくら」で単純に決まりません。
| 種類 | 考え方 |
|---|---|
| 日々決算型(MRF・MMFなど) | 1口あたりの基準価額 + 再投資されていない未収分配金 − 源泉徴収される所得税等 − 信託財産留保額・解約手数料 |
| 一般的な投資信託 | 課税時期に解約した場合の手取り額で評価します |
| 上場投資信託(ETF・REIT) | 上場株式と同じ方法で評価します |
ETFやREITは上場しているため、株式と同じく4つの価額を比べられます。
一方、通常の投資信託には「月平均額」の考え方がありません。
課税時期の基準価額をもとに、解約したらいくら手元に残るかで計算します。
「投資信託も安いほうを選べる」と誤解されることがありますが、選べません。
手続きは、預貯金より時間がかかります
株や投資信託は、そのまま現金で受け取ることができません。
流れ
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 証券会社に死亡を連絡する(口座が凍結されます) |
| 2 | 残高証明書を請求する(相続税評価額もあわせて依頼) |
| 3 | 遺産分割協議で、誰が取得するかを決める |
| 4 | 相続人が自分の証券口座を開く(同じ証券会社に) |
| 5 | 亡くなった方の口座から、相続人の口座へ移管する |
| 6 | 必要なら、そのあとで売却する |
4が見落とされます。
株は「移す」ことしかできません。 亡くなった方の口座から直接売ることはできず、
相続人がその証券会社に口座を持っていなければ、まず開設することになります。
口座開設だけで1〜2週間かかることもあります。
預貯金の相続手続き|口座凍結から払い戻しまでの流れと必要書類
知らないと損をする、4つのこと
① 相続したときには、所得税はかかりません
相続した時点では譲渡所得税はかかりません。
売ったときに、はじめて課税されます。
そして、取得費は亡くなった方が買ったときの価格を引き継ぎます。
相続時の評価額ではありません。
「相続税評価額で買ったことになる」というのは誤解です。
② 3年10か月以内に売ると、税金が軽くなります
相続した株を相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ると、
納めた相続税の一部を取得費に加算できます(取得費加算の特例)。
納税資金のために売るなら、この期間内が有利です。
③ NISA口座は引き継げません
NISA口座の非課税の扱いは、相続人に引き継がれません。
相続人の課税口座(特定口座・一般口座)へ移管されます。
「NISAだから非課税のまま」ということはありません。
④ 取得費が分からない株があります
何十年も前に買った株は、取得価額の記録が残っていないことがあります。
その場合、売却代金の5%を取得費とみなす方法がありますが、
実際の取得費より低くなり、譲渡所得税が増えることがほとんどです。
証券会社に取引履歴を請求し、可能な限り実際の取得費を確認してください。
株を「誰が」相続するかで、その後が変わります
株式は、分けやすい財産です。 1株単位で分けられるからです。
ただし、分け方によってその後の負担が変わります。
| 分け方 | 起きること |
|---|---|
| 銘柄ごとに分ける | それぞれが自由に売買できます。もっとも簡単です |
| 株数で按分する | 同じ銘柄を分け合います。移管手続きが人数分必要になります |
| 1人が全部取得し、代償金を払う | 売却のタイミングを1人で決められます |
| 売って現金で分ける(換価分割) | 相続人全員の証券口座が不要。分かりやすい |
| 共有のままにする | 売るのに全員の同意が必要になります。避けてください |
もっとも揉めにくいのは、換価分割です。
ただし、売却には先に誰かの口座へ移管する必要があります。
「代表者がまとめて手続きする」場合、その人の口座で売却する形になるため、
譲渡所得税を誰が負担するのかを、協議書に明記してください。
値動きと申告期限
株価は動きます。 ここが、不動産や預貯金と違うところです。
| 場面 | 注意 |
|---|---|
| 相続開始後に株価が上がった | 評価額は相続開始時のままです。得をします |
| 相続開始後に株価が下がった | 評価額は下がりません。 高い評価で課税されます |
| 納税のために売る | 売却代金が評価額を下回ることがあります |
「評価額1,000万円の株を、800万円でしか売れなかった」ということが起こり得ます。
相続税は相続開始時の評価額で計算されるため、その差は埋められません。
値動きの大きい銘柄を多く持っている場合、
納税資金は株以外で用意しておくほうが安全です。
見落とされやすい株・投資信託
| 見落とし | 内容 |
|---|---|
| ネット証券の口座 | 郵便物が来ないため、家族が気づきません |
| 単元未満株 | 証券会社ではなく、信託銀行が管理していることがあります |
| タンス株券(未電子化) | 2009年の電子化で、信託銀行の特別口座に移されています |
| 持株会 | 勤務先を通じて保有しているもの |
| 社債・国債 | 別に評価が必要です |
| 配当金の未収分 | 権利確定後、未受領のものは相続財産です |
「株はやっていなかったはず」という思い込みが、いちばん危険です。
郵便物、確定申告書の控え、通帳の入金記録(配当金)から探してください。
デジタル遺産の相続|暗号資産・電子マネー・ネット証券はどうなるか
必要な書類
証券会社に請求するものは、だいたい共通しています。
| 書類 | 誰が請求するか | 補足 |
|---|---|---|
| 残高証明書(相続開始日現在) | 相続人の1人でも請求できます | 相続税評価額の記載もあわせて依頼 |
| 取引残高報告書 | 同上 | 保有銘柄と数量が分かります |
| 取引履歴 | 同上 | 取得費の確認に使います |
| 相続手続依頼書 | 証券会社の様式 | — |
| 戸籍一式・印鑑証明書 | 相続人 | 法定相続情報一覧図があれば簡略化できます |
| 遺産分割協議書 | 相続人 | 遺言書があれば不要な場合があります |
残高証明書の請求は、1人でできます。
「全員の同意がないと財産が分からない」ということはありません。
法定相続情報一覧図とは?作り方と、戸籍の束を持ち歩かなくてよくなる仕組み
生前にできること
証券口座は、相続でいちばん手間のかかる財産のひとつです。
お元気なうちに、次のことをしておくと大きく違います。
| やること | 効果 |
|---|---|
| どの証券会社に口座があるかを書き出す | 家族が探さずに済みます |
| ネット証券のIDを、場所だけでも伝えておく | 存在に気づいてもらえます |
| 口座をまとめる | 手続きの回数が減ります |
| 取得費の分かる資料を残す | 売却時の税金が変わります |
| 遺言書で取得者を決めておく | 遺産分割協議が不要になります |
| 納税資金を現金で用意する | 値下がりの影響を受けません |
とくに「どこに口座があるか」の一覧は、効果が大きい割に手間がかかりません。
エンディングノートでも構いません。財産の一覧だけでも残してください。
エンディングノートと遺言書の違い|法的効力があるのはどちらか
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
都心では、財産に占める有価証券の割合が高くなります。
そして、次の組み合わせがよく起きます。
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 自宅の評価が高い | それだけで基礎控除を超えます |
| 株や投資信託も相応にある | 課税価格がさらに上がります |
| 納税資金は株を売って作る | 3年10か月以内かどうかで税額が変わります |
| 相続人が海外にいる | 証券口座の移管に時間がかかります |
とくに相続人が海外にお住まいの場合、証券会社によっては
非居住者の口座を維持できず、先に売却を求められることがあります。
相続人が海外にいる・海外に財産がある|相続税はどこまでかかるのか
当センターは相続税の申告と生前対策だけを扱っています。
残高証明書の取り方から、4つの価額の比較までお手伝いします。
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)
準確定申告との関係
配当や売却益があった場合、所得税の手続きも必要です。
| 手続き | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 準確定申告 | 亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得 | 相続開始を知った日の翌日から4か月以内 |
| 対象になるもの | 配当所得(総合課税を選んでいた場合)、譲渡所得、不動産所得など | — |
特定口座(源泉徴収あり)だけであれば、準確定申告が不要な場合もあります。
ただし、配当控除を受けるために申告したほうが有利なこともあります。
準確定申告とは?相続開始から4か月以内の手続きと、忘れやすい5つのケース
よくある質問
Q1. 上場株式は、亡くなった日の終値で評価しますか
原則はそうですが、それだけではありません。 その月・前月・前々月の月平均額と比べ、
最も低い価額で評価できます。
Q2. 4つの価額は、どこで調べられますか
証券会社の残高証明書で確認できます。請求するときに「相続税評価額の記載を含めて」とお伝えください。
Q3. 投資信託も、安いほうを選べますか
選べません。 月平均額の考え方があるのは上場株式などです。
通常の投資信託は、課税時期に解約した場合の手取り額で評価します。ETF・REITは上場株式と同じ方法です。
Q4. 相続した株を売ると、税金はかかりますか
売ったときに譲渡所得税がかかります。 取得費は、亡くなった方が買ったときの価格を引き継ぎます。
相続開始から3年10か月以内に売れば、相続税の一部を取得費に加算できます。
Q5. NISA口座はそのまま引き継げますか
引き継げません。 相続人の課税口座へ移管されます。非課税の扱いは続きません。
Q6. 相続人が証券口座を持っていません
開設が必要です。 亡くなった方の口座から直接売ることはできず、相続人の口座へ移管してから売ります。
口座開設に1〜2週間かかることもあります。
Q7. 古い株券が出てきました
2009年の電子化で、信託銀行の特別口座に移されている可能性があります。
発行会社の株主名簿管理人(信託銀行)に問い合わせてください。
Q8. 取得費が分かりません
証券会社に取引履歴を請求してください。どうしても分からない場合は売却代金の5%を取得費とみなす方法がありますが、
税額は増えることがほとんどです。
まとめ
- 上場株式は、4つの価額のうち最も低いもので評価できます
(課税時期の最終価格/その月・前月・前々月の月平均額)
- 比べずに終値で申告すると、払わなくてよい相続税を払うことがあります
- 月平均額は、証券会社の残高証明書で確認できます
- 投資信託は月平均額を使えません。 解約したときの手取り額で評価します
- ETF・REITは上場株式と同じ方法です
- 手続きは「移管」が原則。相続人の証券口座が必要です
- 売却時の取得費は、亡くなった方の取得価額を引き継ぎます
- 3年10か月以内に売れば、相続税の一部を取得費に加算できます
- NISAの非課税は引き継げません
相続のご相談は、新宿の相続専門税理士へ
当センターは西新宿駅から徒歩約5分。相続税の申告と生前対策だけを扱っており、土地の評価による報酬の加算は設けていません。
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監修者
天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員
相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」(登録者4.2万人)で、相続の実務を発信しています。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.4632「上場株式の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm
- 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm

