借地権・底地の相続税評価|借りている土地にも相続税はかかります

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日


【結論】借りている土地にも相続税はかかります。ただし地主の承諾は要りません

「土地は借りているだけだから、相続税には関係ない」

これは、ご相談のなかで最も多い誤解のひとつです。

借地権は、相続税の課税対象になる財産です。
しかも、都心では建物より借地権のほうが高く評価されることがあります。

一方で、こちらもよく心配されます。

「相続したら、地主さんに承諾料を払わないといけないのでは?」
いいえ。相続で借地権を引き継ぐのに、地主の承諾は要りません。

相続は「譲渡」ではなく、亡くなった方の権利義務をそのまま引き継ぐこと(包括承継)だからです。
承諾料や名義書換料を求められても、支払う法的な義務はありません。

この2つ、課税はされるが承諾は要らないが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。


借地権とは何か

建物を建てるために土地を借りる権利のことです。

国税庁は、借地権を次のように説明しています。

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいいます(借地借家法2条1号)。
借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります。

ここで大事なのは、「建物の所有を目的とする」という部分です。

目的借地権になるか
家を建てて住むために借りているなります
アパートを建てて貸すために借りているなります
資材置場・青空駐車場として借りているなりません(建物がないため)
地主から無償で借りている(親子間など)なりません(後述します)

駐車場として借りているだけなら、相続税のかかる借地権は発生しません。

借地権は5種類あります

国税庁は、借地権を次の5つに分けています。

種類根拠評価の区分
借地権(旧借地法・借地借家法)「借地権」として評価
定期借地権借地借家法22条「定期借地権等」として評価
事業用定期借地権等同23条同上
建物譲渡特約付借地権同24条同上
一時使用目的の借地権同25条同上

ご自宅の敷地であれば、ほとんどが1番目の「借地権」です。
以下、とくに断らない限りこの「借地権」の話をします。

旧法か新法かで、更新のしやすさが違います

平成4年8月1日より前に結ばれた契約は、旧借地法が適用されます。

旧法の借地権は更新に対する保護が強く、地主側から簡単に終わらせることができません。
新宿区のように戦前からの借地が残る地域では、いまも旧法の借地権が多く残っています。

相続税の評価そのものは旧法・新法で変わりませんが、
その借地権が将来どれだけ続くのかという点で、実務上の意味は大きく違います。


借地権の評価は、路線価に「割合」をかけるだけです

計算式は、とても単純です。

借地権の評価額 = 自用地としての価額 × 借地権割合

「自用地としての価額」とは、誰の権利もついていない更地としての評価額のことです。

借地権割合は、路線価図のアルファベットで決まります

路線価図を見ると、数字の右隣に A から G のアルファベットが付いています。
これが借地権割合です。

記号借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

たとえば路線価図に 「215D」 と書かれていれば、
1㎡あたり215,000円、借地権割合は60%という意味です。

一般に、商業地ほど記号は前のほう(割合が高い)住宅地ほど後ろのほう(割合が低い)になります。
ご自宅の土地がどれに当たるかは、国税庁の路線価図で確認できます。

路線価図の見方は、こちらで詳しく説明しています。

東京の路線価と相続税評価額|見方と、毎年7月の更新

計算してみます

自用地としての価額が6,000万円、借地権割合が70%(C)の土地を借りていた場合。

項目金額
自用地としての価額6,000万円
借地権割合70%
借地権の評価額4,200万円

土地は1㎡も持っていないのに、4,200万円の財産を相続したことになります。

ここに建物の評価額(固定資産税評価額)が加わります。
借地だからといって、相続税が軽くなるわけではありません。


底地(貸宅地)の評価は、その裏返しです

今度は、土地を貸している側の話です。
借地権の目的となっている土地を、相続税では貸宅地、実務では底地(そこち)と呼びます。

貸宅地(底地)の評価額 = 自用地としての価額 − (自用地としての価額 × 借地権割合)

つまり、更地の評価額から借地権の分を差し引いた残りです。

さきほどと同じ土地(自用地6,000万円・借地権割合70%)なら、

立場評価額
借りている人(借地権)4,200万円
貸している人(底地)1,800万円
合計6,000万円

借地権と底地を足すと、更地の評価額になります。

借地権の取引慣行がない地域では、20%で計算します

地方などで借地権が売買される慣行がない地域もあります。
その場合、国税庁は次のように扱うとしています。

借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地の価額を評価する場合には、
借地権割合を20パーセントとして計算します。

つまり底地の評価は自用地の80%になります。
ただし東京23区でこれに当たることは、まずありません。


底地を相続した方が直面する問題

底地の評価額は更地より下がります。ところが、それが救いにならないことがあります。

起きること内容
地代が安すぎる昔からの契約のまま、固定資産税の数倍程度しか入らないことがあります
売りにくい借地人が付いた土地を買う第三者は限られ、評価額を下回る価格でしか売れないことも
納税資金にならない評価額では相続税がかかるのに、換金できない
相続人が分けにくい現物で分けると、地代の管理が複雑になります

「評価額は1,800万円、でも現金化できない」という状態は、実際によくあります。

打てる手はいくつかあります。

  • 借地人に底地を買い取ってもらう(借地人にとっては完全な所有権になる利点があります)
  • 借地権と底地を等価交換し、土地を分ける
  • 借地権と底地を同時に第三者へ売る(合わせれば更地に近い価格になります)
  • 物納を検討する(ただし境界確定や契約書の整備など、要件が厳しめです)

物納については、こちらをご覧ください。

相続税は分割払いできる?延納・物納の条件と、その前にやるべきこと

どれも、亡くなってから10か月では間に合わないことが多い手続きです。
底地をお持ちであれば、お元気なうちに方針を決めておくことを強くおすすめします。


【最も多い誤解】親子間の「使用貸借」は借地権ではありません

親の土地に、子が家を建てて住んでいる。地代は払っていない。

このケースは非常に多いのですが、借地権は発生しません。

国税庁は、はっきりこう書いています。

使用貸借により土地を使用する権利の価額はゼロとして取り扱われていますので、
この場合、子供が借地権相当額の贈与を受けたとして贈与税が課税されることはありません。

(相続のときは)貸宅地としての評価額でなく自用地としての評価額になります。

整理すると、こうなります。

時点扱い
子が家を建てたとき贈与税はかかりません(借地権をもらったことにならない)
親が亡くなったときその土地は 自用地(更地)として満額で評価されます

「地代を払っていないから評価が下がる」ということはありません。
むしろ逆で、何の減額もない満額評価になります。

では、地代を払えば借地権になるのか

固定資産税程度の金額では、使用貸借のままです。

借地権が発生するには、通常の権利金の授受や、相応の地代が必要になります。
「節税のために親子で地代のやり取りを始める」という方法は、
かえって複雑な問題を生むことがあります。必ず事前にご相談ください。

なお、使用貸借の土地でも、小規模宅地等の特例が使える場合があります。
そちらのほうが効果は大きいことが多いです。

小規模宅地等の特例とは?330㎡まで80%減額の条件


借りた土地にアパートを建てている場合

借地の上に賃貸アパートを建てているなら、さらに評価が下がります(貸家建付借地権)。

貸家建付借地権 = 借地権の価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は全国一律30%です。満室(賃貸割合100%)なら、借地権の70%になります。

さきほどの借地権4,200万円で満室なら、

項目金額
借地権4,200万円
× (1 − 30% × 100%)× 70%
貸家建付借地権2,940万円

逆に、自分の土地にアパートを建てて貸している場合は貸家建付地になります。

貸家建付地 = 自用地価額 −(自用地価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

賃貸不動産の評価は、こちらで詳しく扱っています。

賃貸不動産の相続税評価|2027年から「5年ルール」が始まります


定期借地権は、計算の考え方がまったく違います

定期借地権は、期限が来たら必ず終わる借地権です。更新がありません。

そのため「自用地価額 × 借地権割合」では計算せず、
残りの期間にどれだけの経済的な利益があるかを基に評価します。

底地側については、簡便な方法が定められています。

借地権割合の記号CDEFG
借地権割合70%60%50%40%30%
設定時の底地割合55%60%65%70%75%

A地域・B地域および借地権の取引慣行のない地域については、この表は使いません。
また、借地人が親族や同族法人である場合は「課税上弊害がある場合」として、この方法によりません。

定期借地権が絡む場合は、評価明細書を使った個別計算が必要です。
ご自身での計算はおすすめしません。


同族会社に土地を貸している場合

ご自身の会社に、個人名義の土地を貸している。
中小企業のオーナーによくある形です。

この場合、「土地の無償返還に関する届出書」が税務署に出ているかどうかで、結論が変わります。

届出が出ている(または相当の地代を払っている)場合、昭和60年の通達により次のように扱われます。

対象評価
借地権(会社側)ゼロ
貸宅地(個人側)自用地としての価額の80%
同族会社の株式評価自用地としての価額の20%を純資産価額に算入

つまり、20%が消えるわけではありません。 会社の株式の評価額に移るだけです。

そして実務でいちばん多い問題が、これです。

届出書を出したつもりで、出ていない。

届出書がないと、この取扱いは使えません。
まず、税務署に提出した控えがあるかを確認してください。

この論点は、非上場株式の評価とセットで考える必要があります。
該当する方は、個別にご相談ください。


相続のときに気をつけること

① 地主の承諾は要りません

冒頭にも書きましたが、大事なところなので繰り返します。

相続による借地権の承継に、地主の承諾は不要です。
名義書換料・承諾料を求められても、応じる義務はありません。

ただし、次の場合は承諾が必要です。混同しないでください。

場面地主の承諾
相続で引き継ぐ不要
借地権を売る・贈与する必要(承諾料が発生します)
建物を建て替える必要なことが多い(建替承諾料)
遺贈で相続人以外に渡す必要(相続ではなく譲渡と同じ扱い)

遺言で「相続人ではない人」に借地権を渡す場合は、承諾が必要になります。
ここは見落とされがちです。

② 地主への連絡は、しておいてください

法律上の義務はありませんが、引き継いだことは伝えておくべきです。
地代の振込先や連絡先が分からないまま滞納になると、契約解除の理由にされかねません。

③ 契約書が見つからないことがあります

戦前・戦後すぐからの借地では、契約書そのものが残っていないことがよくあります。

その場合は、次のもので契約の内容を推定していきます。

  • 地代の領収書、振込の記録
  • 固定資産税の課税明細(土地が課税されていなければ借地です)
  • 過去の更新料・承諾料のやり取りの記録
  • 建物の登記簿(建築時期から契約時期が推定できます)

「書類がないから評価できない」ということはありません。 資料が薄い場合ほど、早めにご相談ください。

④ 小規模宅地等の特例は、借地権にも使えます

借地権も「土地の上に存する権利」として、小規模宅地等の特例の対象です。

ご自宅の敷地が借地でも、要件を満たせば330㎡まで80%減額できます。
借地権4,200万円なら、840万円まで下がる計算です。

借地だからといって、あきらめないでください。

⑤ 分けにくい財産です

借地権も底地も、現物で分けると後々もめやすい財産です。
共有にすると、建て替えにも売却にも全員の同意が必要になります。

ひとりが取得し、他の相続人には現金を渡す方法(代償分割)が現実的な場合が多いです。

代償分割とは?自宅を分けられないときの現実的な解決策と、税金の注意点


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

新宿区は、借地の論点が出やすい地域です。

当センターの新宿区の相続税のページでも触れていますが、
新宿区には戦前からの借地が今も残っています。 神楽坂、牛込、早稲田、落合のあたりに多く見られます。

さらに、借地の土地には他の減額要因が重なっていることが少なくありません。

重なりやすい論点内容
セットバック古い借地は幅4m未満の道路に接していることが多い
不整形地・間口狭小戦前の区画がそのまま残っている
がけ地目白台・落合など、高低差のある土地
私道行き止まりの路地に面していることが多い

借地権割合をかけるだけで終わらせると、本来引ける減額を取りこぼします。

セットバックが必要な土地の相続税評価|70%減額の計算
土地の相続税評価は税理士によって差が出る?その理由と、見直せる10の減額要素

当センターは西新宿駅から徒歩約5分、受付は9時から19時まで、土日祝も承っています。
借地の資料が揃っていない段階でも構いません。 まずはお話をお聞かせください。


よくある質問

Q1. 土地を借りているだけでも、相続税はかかりますか

かかります。 借地権は相続税の課税対象です。
自用地としての価額に借地権割合をかけた金額が、財産として計上されます。
都心では、建物より借地権のほうが高くなることも珍しくありません。

Q2. 相続したとき、地主に承諾料を払う必要はありますか

ありません。 相続は譲渡ではなく、権利をそのまま引き継ぐものだからです。
地主の承諾も不要です。ただし、借地権を売る・贈与する・相続人以外に遺贈する場合は承諾が必要で、承諾料が発生します。

Q3. 借地権割合は、どこで調べられますか

国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価の数字の右隣にある A〜G の記号が借地権割合です(A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%)。

Q4. 親の土地に、地代を払わずに家を建てています。借地権はありますか

ありません。 使用貸借にあたり、権利の価額はゼロとして扱われます。
そのため家を建てた時点で贈与税はかかりませんが、相続のときは自用地(更地)として満額で評価されます。減額はありません。

Q5. 底地を相続しましたが、地代が安く、売ることもできません

よくあるご相談です。借地人への売却、等価交換による分割、借地権者と共同での第三者売却、物納などの方法があります。
いずれも時間がかかるため、相続が起きる前に方針を決めておくのが理想です。

Q6. 借地に建てた自宅でも、小規模宅地等の特例は使えますか

使えます。 借地権も「土地の上に存する権利」として特例の対象です。
要件を満たせば、330㎡まで80%減額できます。

Q7. 借地の契約書が見つかりません。評価できませんか

評価できます。 地代の領収書や振込記録、固定資産税の課税明細、建物の登記簿などから契約内容を推定します。
資料が少ないケースほど、早めにご相談いただくと選択肢が残ります。

Q8. 会社に土地を貸しています。評価はどうなりますか

「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合、貸宅地は自用地としての価額の80%で評価し、借地権はゼロとして扱われます。
そのうえで、自用地としての価額の20%が同族会社の株式の純資産価額に算入されます。
まず、届出書が実際に提出されているかを確認してください。


まとめ

  • 借地権は相続税の課税対象です。「借りているだけ」ではありません
  • 借地権の評価額 = 自用地としての価額 × 借地権割合(路線価図のA〜G)
  • 底地(貸宅地)の評価額 = 自用地としての価額 − 借地権の価額
  • 相続による承継に、地主の承諾は不要。承諾料・名義書換料を払う義務もありません
  • ただし売却・贈与・相続人以外への遺贈には承諾が必要です
  • 親子間の使用貸借に借地権はなく、自用地として満額評価されます
  • 借地権にも小規模宅地等の特例は使えます
  • 底地は評価額が出るのに換金しにくい財産です。生前に方針を決めてください
  • 新宿区は戦前からの借地が残り、セットバック・不整形地・がけ地が重なりやすい地域です

ご相談のご案内

新宿相続・生前贈与相談センター(税理士法人Ambitious)

借地権・底地の評価は、路線価に割合をかけて終わりにできるものではありません。
契約の経緯、他の減額要因、小規模宅地等の特例の適用まで含めて、はじめて結論が出ます。

当センターは相続税の申告と生前対策だけを扱っており、土地の評価による報酬の加算は設けていません。
どれだけ手のかかる土地でも、料金は変わりません。

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)


監修者

天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員

相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」(登録者4.2万人)で、相続の実務を発信しています。


出典

  • 国税庁タックスアンサー No.4611「借地権の評価」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4611.htm

  • 国税庁タックスアンサー No.4613「貸宅地の評価」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4613.htm

  • 国税庁タックスアンサー No.4614「貸家建付地の評価」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm

  • 国税庁タックスアンサー No.4612「一般定期借地権の目的となっている宅地の評価」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4612.htm

  • 国税庁タックスアンサー No.4552「親の土地に子供が家を建てたとき」(昭48直資2-189)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4552.htm

  • 国税庁「路線価図の説明」(借地権割合A〜G)

https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm

  • 国税庁「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭60直資2-58)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm


menu