相続税は分割払いできる?延納・物納の条件と、その前にやるべきこと

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月10日 最終更新日:2026年9月12日


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相続税が払えないとどうなる?現金がない人を待つ“厳しい現実”
納税資金がない場合の現実を解説しています。
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【結論】分割払い(延納)はできます。ただし条件と期限があります

相続税は現金一括納付が原則ですが、一定の条件を満たせば分割払い(延納)ができます。それでも払えない場合には、財産そのもので納める物納という方法もあります。ただしどちらも「払えないから使える」わけではありません。金銭で納付することが困難であるという事由が必要で、しかも申請期限は申告期限と同じ10か月です。この期限を過ぎると、原則として延納も物納も使えません。実務では、延納・物納を検討する前に「売却」と「評価の見直し」を先に検討します。そのほうが有利になることが多いためです。

方法条件のきびしさ追加コスト期限
現金一括なし申告期限(10か月)
延納(分割払い)利子税申告期限までに申請
物納(財産で納付)手続きの手間・時間申告期限までに申請
売却して納付譲渡所得税・仲介手数料申告期限まで
金融機関からの借入利息

延納(分割払い)の4つの条件

次の4つをすべて満たす必要があります。

#条件
1相続税額が10万円を超えること
2金銭で納付することを困難とする事由があり、その納付を困難とする金額の範囲内であること
3延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること
4納期限(または納付すべき日)までに、延納申請書と担保提供関係書類を提出すること

条件2が最大の関門です

「手元に現金がない」だけでは足りません。 税務署は、次を見て判断します。

  • 相続で取得した現預金
  • もともと持っていた現預金(相続人自身の財産)
  • 今後の収入と生活費

つまり、相続人自身の預金も納税に充てるべきものとして計算されます。 「相続財産に現金がないから延納したい」という理由だけでは通りません。

条件3の担保は、免除されることがあります

延納税額が100万円以下、かつ延納期間が3年以下の場合は、担保の提供が不要です。

それ以外は、次のような財産を担保に出します。

  • 国債・地方債
  • 税務署長が確実と認める有価証券
  • 土地
  • 建物・立木・登記された船舶などで保険を付したもの
  • 税務署長が確実と認める保証人の保証

相続した不動産をそのまま担保にすることが多いです。


延納できる期間

原則は5年以内ですが、相続財産に占める不動産等の割合によって延びます。

不動産等の割合延納期間(不動産等に対応する税額)
75%以上最長20年
50%以上75%未満最長15年
50%未満最長10年(動産等は5年)

東京で自宅の割合が高い方は、長い期間を選べることが多くなります。


延納には利子税がかかります

分割払いにすると、その分の利子税が上乗せされます。

利子税の割合は財産の内容と延納期間によって定められており、さらに市中金利に連動した「特例割合」が適用されます。特例割合は毎年見直されるため、申請時点の割合を必ずご確認ください。

ここが重要です。 延納は「負担が軽くなる制度」ではなく、「今すぐ全額を用意できない人が、時間を買う制度」です。総額としては増えます。

金融機関から借りたほうが利率が低いケースもあります。 比較のうえ判断してください。


物納(財産で納める)は、さらに条件が厳しい

延納によっても金銭で納付することが困難な場合に限り、物納を申請できます。

物納できる財産には順位があります

順位財産
第1順位不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
第1順位(特定)上記のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位非上場株式等(および物納劣後財産に該当するもの)
第3順位動産

上位の順位の財産があるうちは、下位の財産では物納できません。

「管理処分不適格財産」は物納できません

次のような財産は、そもそも物納の対象になりません。

  • 担保権が設定されている不動産
  • 境界が明らかでない土地
  • 権利の帰属について争いがある財産
  • 他人の権原に基づき使用されている土地(賃貸借の内容が不明なものなど)
  • 借地権者が不明な底地
  • 共有物である財産(共有者全員が持分の全部を物納する場合を除く)

「売れない土地だから物納しよう」という発想は、たいてい通りません。 売れない土地は、国も引き取らないためです。

収納価額は相続税評価額です

物納した財産は、原則として相続税評価額で引き取られます。

これが有利になるのは、「相続税評価額 > 実際に売れる価格」という場合だけです。 逆に時価のほうが高い土地なら、売却して現金で納めたほうが手元に残ります。


延納・物納の前に検討すべき3つのこと

ご相談では、まずこの3つを確認します。

1. 土地の評価は正しいか

相続税額そのものが下がる可能性があります。

  • 前面道路が4m未満で、セットバックが必要な土地
  • がけ地・高低差のある土地
  • 不整形な土地
  • 地積規模の大きな宅地
  • 都市計画道路の予定地

評価を見直して税額が下がれば、延納の必要がなくなることがあります。

土地の相続税評価は税理士によって差が出る?その理由

2. 小規模宅地等の特例を使えているか

自宅の土地は330㎡まで80%減額されます。 要件を落としていないかご確認ください。効果は延納の利子税とは比べものになりません。

小規模宅地等の特例|自宅の土地が80%減額

3. 売却したほうが有利ではないか

相続した不動産を売る場合、取得費加算の特例が使えます。 相続税の申告期限の翌日から3年以内の売却であれば、支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税が軽くなります。

空き家であれば、要件を満たせば3,000万円の特別控除も検討できます。

東京の空き家を相続したら|税金・管理・売却の判断


払わずに放置するとどうなるか

延納の申請もせず、納付もしないと次のようになります。

期間何が起きるか
納期限の翌日〜2か月延滞税(低い割合)が発生
2か月経過後延滞税の割合が上がります
督促状の発付から10日経過後法律上は滞納処分(差押え)が可能になります
財産の差押え・公売

さらに相続税には「連帯納付義務」があります。 他の相続人が納めない場合、あなたに納付を求められることがあります。 自分の分を納めていても関係ありません。遺産分割の段階で、誰がどう納めるかまで決めておいてください。

相続税の申告期限10か月を過ぎたらどうなる?


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

東京は「財産はあるのに現金がない」が最も起きやすい地域です。

新宿区・中野区・世田谷区では、自宅の土地だけで数千万円から1億円を超える評価がつきます。一方で預貯金は数百万円——この組み合わせが、納税資金の不足を生みます。

ただし東京には有利な点もあります。

  • 売れます。 換金性が高いため、売却という選択肢が現実的です
  • 不動産等の割合が高くなるため、延納期間を長く取れます(最長20年)
  • 評価の減額要素が多い土地が多く、見直しで税額が下がることがあります

「延納しかない」と決める前に、評価の見直しと売却の比較をしてください。 東京の場合、この2つで解決することが多くあります。

新宿区の相続税|土地評価が難しい街で損をしないために


よくある質問

Q1. 相続税はクレジットカードで払えますか。

A. 払えます。 国税クレジットカードお支払サイトから納付できます。ただし納付額に応じた決済手数料が別途かかります。 また利用限度額の範囲内に限られるため、高額の納税には向きません。

Q2. 延納の申請期限を過ぎたら、もう分割払いはできませんか。

A. 原則としてできません。 延納申請書は納期限(申告期限)までに提出する必要があります。期限後は延滞税が発生し、滞納処分の対象になります。「あとで相談すればいい」は通用しません。

Q3. 手元に現金がなければ、必ず延納できますか。

A. できるとは限りません。 判断されるのは「金銭で納付することを困難とする金額」で、相続で取得した現預金だけでなく、相続人自身の預貯金や今後の収入も含めて計算されます。相続人に十分な資力があれば、延納は認められません。

Q4. 物納で土地を渡せば、それで終わりですか。

A. 簡単ではありません。 境界が確定していること、争いがないこと、担保権がついていないことなどが必要です。測量や境界確定に時間と費用がかかり、申請から収納まで年単位になることもあります。 また収納価額は相続税評価額のため、時価のほうが高い土地なら売却のほうが有利です。

Q5. 延納から物納へ切り替えられますか。

A. 申告期限から10年以内で、資力の状況の変化などにより延納の継続が困難になった場合に限り、特定物納制度を利用できます。 ただし収納価額はその時点の価額となるなど、通常の物納とは扱いが異なります。当初から見通しを立てておくほうが確実です。

Q6. 相続した不動産を売って納税する場合、いつまでに売ればよいですか。

A. 納期限は申告期限(10か月)ですので、それまでに決済を終える必要があります。 東京でも、売り出しから決済まで3〜6か月は見ておいてください。相続開始から動き出しても、実際には余裕がありません。

Q7. 他の相続人が相続税を払わない場合、私に請求が来ますか。

A. 来ることがあります。 相続税には連帯納付義務があり、相続で受けた利益の額を限度として、他の相続人の未納分を納める義務があります。自分の分を完納していても免れません。 遺産分割の際に納税方法まで確認してください。

Q8. 納税資金を用意する方法として、何が現実的ですか。

A. 生前であれば、生命保険の非課税枠を使うのが最も確実です。 500万円 × 法定相続人の数まで非課税で、しかも遺産分割を待たずに受け取れます。 相続が起きた後であれば、売却・借入・延納の順に検討することが多くなります。


まとめ

  • 相続税は現金一括納付が原則。分割払い(延納)には4つの条件があります
  • 条件の核心は「金銭で納付することを困難とする事由」。相続人自身の預金も判定に入ります
  • 延納税額100万円以下かつ期間3年以下なら、担保は不要です
  • 延納期間は原則5年。不動産等の割合が75%以上なら最長20年
  • 利子税がかかります。 総額は増えます。借入との比較を
  • 物納は延納でも払えない場合に限り、しかも管理処分不適格財産は不可
  • 収納価額は相続税評価額。時価が高い土地は売却のほうが有利です
  • 延納・物納の申請期限は、申告期限と同じ10か月です
  • その前に、評価の見直し・小規模宅地等の特例・売却を検討してください
  • 連帯納付義務があります。 他の相続人の未納が自分に及ぶことがあります

ご相談のご案内

「払えないかもしれない」と思った時点でご相談ください。 申告期限の10か月は、評価の見直しと売却を両方進めるには短い期間です。早いほど選択肢が残ります。

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。


出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。利子税の特例割合は毎年見直されますので、申請前に必ず国税庁の最新情報をご確認ください。



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