賃貸不動産の相続税評価|2027年から「5年ルール」が始まります
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年8月9日 最終更新日:2026年9月3日
【結論】2027年から、直近5年以内に買った賃貸不動産は評価が下がらなくなります
賃貸アパートや賃貸マンションは、現金で持つより相続税評価額が下がるため、長く相続税対策に使われてきました。ところが令和8年度税制改正の大綱に、「亡くなる前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産は、通常の取引価額で評価する」という改正が盛り込まれました。令和9年(2027年)1月1日以後に発生する相続から適用される予定です。これが実施されると、直前に買った賃貸不動産の圧縮効果はほぼなくなります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 何が変わるか | 課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産を、通常の取引価額で評価 |
| 例外的な計算 | 課税上の弊害がない限り、取得価額をもとに地価変動等を考慮した価額の80%で評価可 |
| いつから | 令和9年(2027年)1月1日以後に相続等で取得する財産から(予定) |
| 基準になる日 | 取得した日ではなく、相続が発生した日です |
| 5年より前に取得したもの | 従来どおりの評価(貸家・貸家建付地) |
| 段階 | 税制改正の大綱に示された内容です。詳細は今後の通達で定められます |
「もう不動産では対策できない」という話ではありません。 5年より前から持っている賃貸不動産は従来どおりですし、対象外となるものもあります。変わるのは「直前の駆け込み」が効かなくなる、という点です。
そもそも、なぜ賃貸不動産だと評価が下がるのか
理由は2つあります。
理由1:不動産は、そもそも時価より低く評価される
相続税では、土地は路線価、建物は固定資産税評価額をもとに評価します。どちらも実際の売買価格より低く設定されているのが通常です。
現金1億円は、相続税でも1億円です。 ここが不動産との決定的な違いです。
理由2:人に貸すと、さらに下がる
貸している建物と土地は、借りている人の権利(借家権)が法律で守られているため、所有者が自由に使ったり売ったりできません。その制約を評価に反映させるため、さらに減額されます。
計算方法
建物(貸家)
貸家の評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)借家権割合は全国一律30%です。満室(賃貸割合100%)なら、固定資産税評価額の70%になります。
土地(貸家建付地)
貸家建付地の評価額 = 自用地としての評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)借地権割合は地域によって異なり、路線価図にA〜Gの記号で示されています(A=90%〜G=30%)。
例:借地権割合70%の地域で、満室のアパートの敷地
1 −(0.7 × 0.3 × 1.0)= 0.79
自用地評価額が1億円なら → 7,900万円空室があるとどうなるか
賃貸割合は、課税時期に実際に貸している部分の床面積の割合です。空室が多いほど減額幅は小さくなります。
ただし一時的な空室は、賃貸中として扱える場合があります。判断されるのは次のような点です。
- 各独立部分が課税時期の前に継続的に賃貸されてきたか
- 賃借人の退去後、速やかに新たな募集が行われているか
- 空室の期間が一時的といえる程度か
「相続が近いから空室のまま置いておく」は逆効果です。 募集を止めた時点で、一時的な空室とは扱われにくくなります。
【2027年〜】新しい「5年ルール」
ここが本題です。
大綱に示された内容
令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日 閣議決定)には、次のように示されています。
被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
ただし課税上の弊害がない限り、取得価額をもとに地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができる。
適用は令和9年(2027年)1月1日以後に相続等により取得する財産からとされています。
何が起きるか
| 従来 | 2027年〜(5年以内取得の場合) | |
|---|---|---|
| 建物 | 固定資産税評価額 ×(1−30%×賃貸割合) | 通常の取引価額(または取得価額ベースの80%) |
| 土地 | 路線価 ×(1−借地権割合×30%×賃貸割合) | 同上 |
| 圧縮効果 | 大きい | ほぼ消えます |
路線価や固定資産税評価額を使えなくなるため、「時価と評価額の差」という圧縮の源泉そのものがなくなります。
基準になるのは「相続が発生した日」です
ここを取り違えないでください。
- ❌ 2026年中に買えば、いつ相続が起きても従来どおり
- ⭕ 2027年1月1日以後に相続が発生し、その時点で取得から5年以内なら対象
つまり2022年以降に取得した賃貸不動産をお持ちで、相続が2027年以降に発生する場合は、影響を受ける可能性があります。
取得の時期にかかわらず対象になるもの
大綱では、不動産特定共同事業契約や信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、取得時期にかかわらず通常の取引価額で評価するとされています。
いわゆる不動産小口化商品を相続税対策としてお持ちの方は、特に影響が大きいと考えられます。
例外として示されているもの
大綱には、通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているもの)に新築した家屋(同日において建築中のものを含む)には適用しない、という趣旨の例外も示されています。
もともと持っていた土地にアパートを建てた場合は、扱いが異なる可能性があります。
⚠️ これは税制改正の大綱に示された内容です。 実際の適用範囲や「一定の貸付用不動産」の定義は、
今後の通達で定められます。現時点の情報で断定的な判断はできません。
小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)
賃貸不動産の敷地は、200㎡まで評価額が50%減額される場合があります。
ただし「3年縛り」があります。
相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた土地は、原則として対象外です(平成30年度改正)。相続の直前に貸付を始めて特例を受ける行為を防ぐためのものです。
例外として、相続開始まで3年を超えて「特定貸付事業」(事業的規模の貸付)を継続していた場合は、3年以内に貸付を始めた土地でも対象になります。
つまり不動産による対策には、すでに「3年」の壁があり、そこに「5年」の壁が加わることになります。
借入をして買った場合
アパートローンなどの借入金は、債務控除として遺産総額から差し引けます。
ただし借入そのものが節税になるわけではありません。 借りたお金で買った不動産が資産として残るためです。効果が出るのは「1億円の現金 → 評価7,000万円の不動産+借入1億円」というように、資産側の評価が下がるからです。
その評価が下がらなくなるのが、今回の改正です。 借入をして買う対策は、前提から見直す必要があります。
さらに、極端な節税は否認されることがあります。 財産評価基本通達には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という定め(総則6項)があり、実際に否認された事例があります。
いま、何を確認すべきか
すでに賃貸不動産をお持ちの方
取得した時期を確認してください。
| 取得時期 | 想定される影響 |
|---|---|
| 2022年より前 | 2027年時点で取得から5年超。従来どおりの評価の見込み |
| 2022年以降 | 2027年以降の相続では対象になる可能性があります |
| 不動産小口化商品 | 取得時期にかかわらず対象とされています |
これから購入を検討されている方
相続税評価額が下がることだけを理由に購入するのは、おすすめしません。 これは改正の前からお伝えしてきたことです。
- 空室のリスク
- 修繕積立金・修繕費
- 金利
- 売却時の価格
- 相続人が扱いに困る財産にならないか
相続税は下がっても、ご家族が困る財産になることがあります。
「対策になります」と勧められた方
購入時に受けた試算は、旧ルールのものである可能性があります。 前提が変わっている以上、一度確認されることをおすすめします。
当センターは保険や不動産の販売を業としていません。 そのため「このままで問題ありません」という結論も、「この対策は前提が崩れています」という結論も、そのままお伝えできます。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
東京は、賃貸不動産による対策が最も多く行われてきた地域です。 地価が高く、時価と路線価の差も大きいためです。
そして東京の賃貸不動産には、次のような論点が重なります。
| 東京に多い状況 | 評価上の論点 |
|---|---|
| 区分所有の賃貸マンション | 2024年の評価見直し(区分所有補正率)+今回の5年ルール |
| 一棟所有の賃貸アパート | 区分登記がなければ2024年改正の対象外。ただし5年ルールは別 |
| 実家の敷地に建てた賃貸併用住宅 | 居住部分と貸付部分で扱いが分かれます |
| 借地の上の賃貸物件 | 借地権の評価が重なります |
| 狭あい道路に面した敷地 | セットバックの検討も必要です |
新宿区は商業地と住宅地が入り組み、貸家建付地の割合も高い区です。 一件ごとに見ないと判断できません。
よくある質問
Q1. 2027年からは、賃貸不動産による相続税対策はできなくなるのですか。
A. できなくなるわけではありません。 対象になるのは、亡くなる前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産です。5年より前から所有しているものは、従来どおりの評価が見込まれます。変わるのは「相続が近づいてから買う」という手法が効かなくなる点です。早くから計画的に進めることの意味が、制度上さらに大きくなります。
Q2. いつ買ったかと、いつ相続が起きるか、どちらが基準ですか。
A. 相続が発生した日が基準です。 「課税時期前5年以内に取得」という条件なので、相続の発生日から5年をさかのぼって判定します。2026年中に購入しても、2027年以降に相続が発生して取得から5年以内であれば、対象になる可能性があります。
Q3. 賃貸割合とは何ですか。空室があると不利になりますか。
A. 課税時期に実際に貸し出している部分の床面積の割合です。空室が増えるほど減額幅は小さくなります。ただし賃借人の退去後すぐに募集をかけているなど、一時的な空室と認められる場合は賃貸中として扱えることがあります。相続が近いからと募集を止めるのは逆効果です。
Q4. 一棟所有の賃貸マンションも、2024年のマンション評価見直しの対象ですか。
A. 区分建物の登記がされていない一棟所有の賃貸マンションは、2024年の見直しの対象外です。ただし今回の5年ルールは別の改正ですので、取得時期によっては影響を受ける可能性があります。
Q5. 不動産小口化商品を持っています。影響はありますか。
A. 大きい可能性があります。 大綱では、不動産特定共同事業契約や信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産は、取得の時期にかかわらず通常の取引価額で評価するとされています。相続税対策として購入された方は、早めにご確認ください。
Q6. もともと持っていた土地にアパートを建てた場合はどうなりますか。
A. 扱いが異なる可能性があります。 大綱には、通達に定める日までに、5年前から所有している土地に新築した家屋(その日に建築中のものを含む)には適用しない、という趣旨の例外が示されています。ただし詳細は今後の通達によります。現時点で断定はできません。
Q7. 借入をしてアパートを建てれば、相続税は下がりますか。
A. 借入そのものが節税になるわけではありません。 借りたお金で買った資産が残るためです。効果が出るのは、資産側の評価額が下がるからです。その評価が下がらなくなるのが今回の改正です。 また極端な節税は、財産評価基本通達の総則6項により否認されることがあります。
Q8. すでに相続が終わっています。影響はありますか。
A. ありません。 適用は令和9年(2027年)1月1日以後に相続等で取得する財産からとされています。すでに発生した相続については従来どおりです。ただし土地の評価に見落としがあった場合は、法定申告期限から5年以内であれば更正の請求ができます。
まとめ
- 賃貸不動産は、貸家(借家権割合30%) と 貸家建付地 の評価により、現金より評価額が下がります
- 令和8年度税制改正の大綱に、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産を通常の取引価額で評価する改正が盛り込まれました
- 適用は令和9年(2027年)1月1日以後の相続等から。基準は取得日ではなく相続の発生日です
- 不動産小口化商品は、取得時期にかかわらず対象とされています
- 小規模宅地等の特例には、すでに「3年縛り」があります。そこに5年の壁が加わります
- 5年より前から所有している賃貸不動産は、従来どおりの評価が見込まれます
- これは大綱の段階です。詳細は今後の通達で定められます
ご相談のご案内
取得時期のわかる資料(売買契約書・登記簿)と、直近の固定資産税の課税明細書をご用意のうえ、ご連絡ください。 お持ちの賃貸不動産が影響を受けるかどうかを確認し、現状の評価額を試算します。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
オンライン面談に対応しています。
監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日 閣議決定)
- 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価
- 国税庁 No.4613 貸宅地の評価
- 国税庁 No.4611 借地権の評価
- 国税庁 No.4667 居住用の区分所有財産の評価
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例
- 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
※本記事の「5年ルール」は、令和8年度税制改正の大綱に示された内容です。実際の適用範囲は今後の通達により定められます。本記事の内容は2026年9月時点の情報に基づいており、必ず税理士にご相談ください。

