再婚家庭の相続|前妻の子・連れ子の相続権はどうなるか
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
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公開日:2026年9月11日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】前妻の子には相続権があり、連れ子にはありません
再婚家庭の相続で、最も誤解が多いのがこの2点です。離婚しても、親子関係は切れません。前妻との間の子は、いまの家族と一度も会ったことがなくても、法定相続人です。一方、再婚相手の連れ子には相続権がありません。何十年一緒に暮らし、実の親子同然に育てても、養子縁組をしていなければ一切相続できません。前妻自身には相続権がありません。離婚により配偶者ではなくなるためです。この3つが、多くのご家庭で逆に理解されています。そして遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。前妻の子を欠いた協議は無効です。
| 立場 | 相続権 |
|---|---|
| 前妻・前夫 | ありません(離婚により配偶者でなくなるため) |
| 前妻(前夫)との間の子 | あります(離婚しても親子関係は切れません) |
| 現在の配偶者 | あります |
| 現在の配偶者との間の子 | あります |
| 再婚相手の連れ子 | ありません(養子縁組をすれば あります) |
| 認知した婚外子 | あります(嫡出子と同じ割合) |
前妻の子には、必ず相続権があります
離婚によって切れるのは夫婦の関係であって、親子の関係ではありません。
次のような事情があっても、相続権は変わりません。
| 事情 | 相続権 |
|---|---|
| 離婚後、一度も会っていない | あります |
| 前妻が親権者になった | あります |
| 養育費を払っていない/もらっていない | あります |
| 前妻が再婚し、新しい夫と養子縁組した | あります(普通養子縁組なら実親との関係は残ります) |
| 相手が「相続はいらない」と言っている | あります(生前の放棄はできません) |
| 何十年も連絡が取れない | あります |
唯一の例外が、特別養子縁組です。
特別養子縁組が成立すると、実親との法律上の親族関係が終了します。この場合に限り、実親の相続権を失います。ただし特別養子縁組は原則15歳未満が対象で、家庭裁判所の審判が必要な、例外的な制度です。
連れ子には、相続権がありません
再婚相手の子は、自分の子ではありません。
一緒に暮らしていても、生活費を出していても、実の親子同然でも——養子縁組をしていなければ、相続権はありません。
養子縁組をすれば、実子と同じになります
普通養子縁組をすると、連れ子は法定相続人になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続き | 市区町村へ養子縁組届を提出 |
| 費用 | かかりません |
| 未成年の子の場合 | 家庭裁判所の許可が必要(ただし配偶者の連れ子を養子にする場合は許可不要) |
| 15歳未満の場合 | 法定代理人(親権者)が本人に代わって承諾します |
| 実親との関係 | 残ります(普通養子縁組の場合。実親からも相続できます) |
| 相続分 | 実子とまったく同じ |
配偶者の連れ子を養子にする場合、家庭裁判所の許可は不要です。届出だけで成立します。
相続税では、養子の数に上限があります
民法上は何人でも養子にできますが、相続税の計算では人数に制限があります。
| 状況 | 数に含められる養子 |
|---|---|
| 実子がいる場合 | 1人まで |
| 実子がいない場合 | 2人まで |
この上限は、基礎控除・生命保険の非課税枠・死亡退職金の非課税枠・相続税の総額の計算に影響します。
ただし次の場合は、実子として扱われます(上限の対象外)。
- 特別養子縁組による養子
- 配偶者の実子で、被相続人の養子となった人(=配偶者の連れ子を養子にした場合)
- 代襲相続人である孫
つまり、連れ子を養子にした場合は「実子扱い」となり、養子の人数制限を受けません。
ここは実務上、非常に重要な点です。
法定相続分の計算例
【例1】夫が死亡。相続人は現在の妻、前妻との子1人、現在の妻との子1人
| 相続人 | 法定相続分 |
|---|---|
| 現在の妻 | 1/2 |
| 前妻との子 | 1/4 |
| 現在の妻との子 | 1/4 |
前妻との子も、現在の妻との子も、まったく同じ割合です。
【例2】上記に加え、連れ子1人(養子縁組なし)
| 相続人 | 法定相続分 |
|---|---|
| 現在の妻 | 1/2 |
| 前妻との子 | 1/4 |
| 現在の妻との子 | 1/4 |
| 連れ子 | 0(相続人ではありません) |
【例3】連れ子と養子縁組をした場合
| 相続人 | 法定相続分 |
|---|---|
| 現在の妻 | 1/2 |
| 前妻との子 | 1/6 |
| 現在の妻との子 | 1/6 |
| 連れ子(養子) | 1/6 |
養子縁組をすると、他の子の取り分が減ります。 ここが争いの火種になることがあります。
実務で起きる4つの問題
問題1 遺産分割協議が進みません
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。
前妻の子を欠いた協議は無効です。 1人でも欠けていれば、預貯金の解約も相続登記もできません。
しかし現実には、こうなります。
- どこに住んでいるか分からない
- 連絡しても返事がない
- 感情的な対立があり、話し合いにならない
住所が分からない場合は、戸籍の附票をたどります。 相続人であれば、他の相続人の戸籍・附票を職務上または利害関係人として取得できます。
それでも所在が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるという手続きがあります。時間も費用もかかります。
問題2 戸籍を集めて、初めて分かることがあります
「父に前妻との子がいた」という事実が、戸籍を集めて初めて判明する——決して珍しくありません。
出生から死亡までの連続した戸籍をたどらなければ、認知した子や過去の婚姻歴は見えません。
問題3 申告期限に間に合いません
相続税の申告期限は10か月です。
連絡が取れない相続人がいると、この期間では分割がまとまりません。
分割が終わっていないと、小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も使えません。 東京では、これで税額が数百万円単位で変わります。
救済策があります。 期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告しておけば、3年以内に分割がまとまった時点で更正の請求ができます。
この見込書を出し忘れると、後から特例を使えません。
問題4 遺留分を請求されます
遺言書で「全財産を現在の妻に」と書いても、前妻の子には遺留分があります。
子の遺留分は、法定相続分の2分の1です。
【例1】の場合、前妻の子の遺留分は 1/4 × 1/2 = 1/8。財産が8,000万円なら1,000万円を請求できます。
請求されたときに現金がなければ、自宅を売ることになります。
遺留分侵害額請求とは?1年の時効と、2019年の改正で変わったこと
生前にできる備え
1. 遺言書を書く(最も効果があります)
遺言書があれば、遺産分割協議が不要になります。
連絡が取れない相続人がいても、遺言執行者がいれば手続きを進められます。 これが最大の利点です。
再婚家庭では、公正証書遺言をおすすめします。 家庭裁判所の検認が不要で、原本が公証役場に保管されるためです。
遺言執行者を必ず指定してください。
2. 遺留分を織り込んで配分する
遺留分を侵害しない配分にしておけば、請求は起きません。
前妻の子にも遺留分相当額を残す設計にします。「一切渡さない」は、結局争いを生みます。
3. 生命保険を使う
保険金は受取人固有の財産で、遺産分割の対象になりません。
現在の妻や連れ子を受取人にすれば、確実に渡せます。
遺留分を請求されたときの支払原資としても使えます。
ただし——連れ子は相続人ではないため、500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えず、相続税額が2割加算されます。養子縁組をしていれば、どちらも解消します。
4. 連れ子と養子縁組をするか、判断する
| 養子縁組をする | しない | |
|---|---|---|
| 連れ子の相続権 | あります | ありません |
| 生命保険の非課税枠 | 使えます | 使えません |
| 2割加算 | ありません | あります |
| 他の子の取り分 | 減ります | 変わりません |
| 相続税の基礎控除 | 増えます(実子扱いのため人数制限なし) | 変わりません |
税務上は養子縁組が有利ですが、他の子の取り分が減るため、事前に伝えておくことをおすすめします。 相続が始まってから知ると、争いになります。
5. 付言事項で理由を書く
法的効力はありませんが、実務では効きます。 なぜこの配分にしたのかを書いておくと、請求を思いとどまることがあります。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
この3区では、再婚家庭の相続が「自宅を売るしかない」という形で行き詰まります。
理由は、財産に占める自宅の割合が高いことです。
【よくある形】
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自宅(中野区・現在の妻と同居) | 7,000万円 |
| 預貯金 | 500万円 |
| 合計 | 7,500万円 |
相続人は、現在の妻、前妻との子1人、現在の妻との子1人。
遺言書がない場合 → 遺産分割協議に前妻の子の合意が必要。連絡が取れなければ、預貯金も解約できず、相続登記もできません。
「全財産を妻に」という遺言書がある場合 → 前妻の子の遺留分は 1/4 × 1/2 = 1/8 = 約940万円。現金は500万円しかありません。自宅を売るか、妻が自分の資金で払うことになります。
東京では、この「払えない」が現実の問題になります。
対策は、生命保険で支払原資を用意しておくことです。 940万円の保険金を用意しておけば、自宅を守れます。
あわせて、小規模宅地等の特例が使えるかもご確認ください。 分割が決まらないと使えず、税額まで変わります。
よくある質問
Q1. 離婚した前妻に相続権はありますか。
A. ありません。 離婚により配偶者ではなくなるためです。ただし前妻との間の子には相続権があります。 ここを混同される方が非常に多いのでご注意ください。
Q2. 前妻の子とは20年以上会っていません。それでも相続人ですか。
A. 相続人です。 離婚しても親子関係は切れません。会っていない期間、養育費の有無、前妻が再婚したかどうか——いずれも関係ありません。遺産分割協議には、その方の合意が必要です。
Q3. 妻の連れ子に相続させたいのですが。
A. 養子縁組をするか、遺言書で遺贈するかの2つです。 養子縁組をすれば実子と同じ相続権を持ち、生命保険の非課税枠も使え、2割加算もありません。 遺言書での遺贈でも渡せますが、非課税枠は使えず、相続税額が2割加算されます。
Q4. 連れ子を養子にすると、家庭裁判所の許可が必要ですか。
A. 配偶者の連れ子を養子にする場合は、許可は不要です。市区町村への届出だけで成立します。15歳未満の場合は、法定代理人(親権者)が本人に代わって承諾します。
Q5. 養子縁組をすると、相続税の基礎控除は増えますか。
A. 配偶者の連れ子を養子にした場合は、実子として扱われるため人数制限を受けず、その分だけ増えます。 一般の養子は、実子がいれば1人まで、いなければ2人までという上限があります。
Q6. 前妻の子が「相続はいらない」と言っています。書面にすれば大丈夫ですか。
A. 生前に相続を放棄することはできません。 「相続放棄」ができるのは相続開始後で、家庭裁判所への申述が必要です。生前の念書には法的な効力がありません。確実にするなら、遺言書を作成してください。 ただし遺留分は残ります。
Q7. 前妻の子の住所が分かりません。
A. 戸籍の附票をたどります。 相続人であれば取得できます。それでも所在が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。時間も費用もかかりますので、遺言書での備えを強くおすすめします。
Q8. 誰に相談すればよいですか。
A. 相続人の調査は司法書士・弁護士・行政書士、遺産分割の交渉・調停の代理は弁護士の業務です。税理士は行えません。 当センターでは提携する専門家をご紹介し、相続税の試算と、遺言書の内容が税額にどう影響するかの検討を担当します。
まとめ
- 前妻・前夫に相続権はありません(離婚により配偶者でなくなるため)
- 前妻との間の子には、必ず相続権があります。 離婚しても親子関係は切れません
- 再婚相手の連れ子には相続権がありません(養子縁組をしない限り)
- 唯一の例外は特別養子縁組(実親との親族関係が終了します)
- 養子縁組は市区町村への届出で成立。配偶者の連れ子なら家庭裁判所の許可は不要です
- 相続税では養子の数に上限(実子ありなら1人、なしなら2人)がありますが、
配偶者の連れ子を養子にした場合は実子扱いで、制限を受けません
- 遺産分割協議は相続人全員の合意が必要。 前妻の子を欠いた協議は無効です
- 遺言書があれば協議が不要になります。 再婚家庭では公正証書遺言と遺言執行者の指定を
- 遺留分は残ります。 子の遺留分は法定相続分の2分の1です
- 生命保険で、遺留分の支払原資を用意しておいてください
- 生前に相続を放棄させることはできません
ご相談のご案内
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すでに相続が始まっていて、連絡が取れない相続人がいる場合もご相談ください。 提携する弁護士・司法書士をご紹介します。
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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出典
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 裁判所 不在者財産管理人選任
- e-Gov 民法
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。

