寄与分とは?介護や家業の貢献で取り分を増やせる条件と、嫁が使える特別寄与料
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月12日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】認められる範囲は、思っているより狭いです
寄与分は、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人が、その分だけ多く受け取れる制度です。介護をした、家業を手伝った、生活費を援助した——こうした貢献が対象になります。ただし率直に申し上げると、認められる範囲は多くの方が思っているより狭いものです。必要なのは「特別の寄与」であり、親子や夫婦として通常期待される範囲の世話では認められません。週末に様子を見に行っていた、時々買い物を手伝っていた——これらは対象外です。そして2019年7月1日から、相続人でない親族にも「特別寄与料」を請求する道が開かれました。長男の妻が義父を介護したようなケースです。ただしこちらには1年・6か月という短い期限があります。
| 項目 | 寄与分 | 特別寄与料 |
|---|---|---|
| 誰が請求できるか | 相続人のみ | 相続人以外の親族(長男の妻など) |
| 根拠 | 民法904条の2 | 民法1050条(2019年7月1日から) |
| 対象になる貢献 | 労務の提供、財産上の給付、療養看護など | 無償の療養看護その他の労務の提供 |
| 誰に請求するか | 遺産分割の中で主張 | 相続人に対して金銭を請求 |
| 期限 | 遺産分割が終わるまで | 知った時から6か月/相続開始から1年 |
| 相続税 | 取得財産が増える | 遺贈とみなされ、2割加算の対象 |
寄与分が認められる5つの類型
民法は「特別の寄与」としか定めていませんが、実務では次の5つに整理されます。
| 類型 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 家事従事型 | 被相続人の事業に従事した | 家業の農業・商店を無償で手伝った |
| 金銭等出資型 | 財産上の給付をした | 自宅の購入資金を出した、借金を肩代わりした |
| 療養看護型 | 病気の看護をした | 仕事を辞めて自宅で介護した |
| 扶養型 | 生活費を負担した | 同居して生活費をすべて負担した |
| 財産管理型 | 財産の管理をした | 賃貸物件の管理を無償で行った |
いずれも共通して必要なのが、次の4つです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 特別の寄与であること | 親族として通常期待される範囲を超えていること |
| 無償性 | 対価を受け取っていないこと |
| 継続性 | 一定期間、継続していること |
| 因果関係 | その貢献によって財産が維持または増加したこと |
【重要】通常の親孝行では認められません
ここが最も誤解されている点です。
夫婦には協力扶助義務、直系血族と兄弟姉妹には扶養義務があります(民法752条・877条)。
その範囲でやったことは「特別の寄与」にあたりません。
| よくある主張 | 寄与分 |
|---|---|
| 週末ごとに様子を見に行っていた | 認められにくい |
| 買い物や通院の付き添いをしていた | 認められにくい |
| 同居していた(家賃を払わずに) | 認められにくい(むしろ利益を受けています) |
| 他の兄弟より多く面倒を見た | それだけでは足りません |
| 毎月お小遣いを渡していた | 認められにくい |
| 仕事を辞めて、数年間つきっきりで介護した | 認められる可能性があります |
| 本来ヘルパーを雇うべき状態を、無償で担った | 認められる可能性があります |
| 家業を無給で長年手伝った | 認められる可能性があります |
| 自宅の購入資金を出した | 認められる可能性があります |
判断の目安は「あなたがやらなければ、お金を払って誰かに頼む必要があったか」です。
療養看護型では、被相続人が要介護2以上であったことが
ひとつの目安とされることが多くあります(絶対の基準ではありません)。
いくら認められるか
法律に計算式の定めはありません。 実務では類型ごとに次のように考えます。
療養看護型
介護報酬基準額 × 日数 × 裁量割合(0.5〜0.9程度)
プロのヘルパーに頼んだ場合の費用を基準に、
親族であることを踏まえて割り引きます。
家事従事型
その人が得られたはずの給与額 × 期間 ×(1 − 生活費控除割合)
金銭等出資型
出資した金額(不動産の場合は相続開始時の価額に引き直すことがあります)
扶養型
負担した金額 − 本来の扶養義務の範囲
いずれも最終的には、遺産の総額・他の相続人との公平・
貢献の程度を総合して、裁判所が裁量で決めます。
上記はあくまで実務上の考え方で、この計算どおりになる保証はありません。
計算例
【前提】 遺産6,000万円、相続人は長男・次男。長男に寄与分1,000万円が認められた場合
| 順序 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 1 | 遺産から寄与分を引く | 6,000万 − 1,000万 = 5,000万円 |
| 2 | 残りを法定相続分で分ける | 各 2,500万円 |
| 3 | 長男に寄与分を足す | 2,500万 + 1,000万 = 3,500万円 |
| 最終的な取り分 | 長男 3,500万円 / 次男 2,500万円 |
寄与分は「遺産から先に取り分ける」という順序です。
法定相続分の早見表|誰がいくら相続するのか、全パターンを一覧で
特別寄与料 — 相続人でない親族のための制度
2019年7月1日から始まりました。
それまでは、長男の妻がどれだけ義父を介護しても、
相続人でないため一切請求できませんでした。 この不公平を是正する制度です。
誰が請求できるか
被相続人の親族で、相続人・相続放棄をした人・欠格・廃除された人を除く方です。
| 立場 | 特別寄与料 |
|---|---|
| 長男の妻(義理の娘) | 請求できます |
| 孫(子が健在で相続人でない場合) | 請求できます |
| 甥・姪(相続人でない場合) | 請求できます |
| 内縁のパートナー | できません(親族ではないため) |
| 同性パートナー | できません(同上) |
| 友人・知人 | できません |
⚠️ 内縁・同性のパートナーは、どれだけ献身的に介護しても
特別寄与料を請求できません。 遺言書で遺贈するしかありません。
対象になる貢献
無償で療養看護その他の労務を提供したことに限られます。
金銭を援助しただけでは対象になりません。 ここが寄与分と違う点です。
期限が非常に短い
| 期限 | 起算点 |
|---|---|
| 6か月 | 相続の開始および相続人を知った時から |
| 1年 | 相続開始の時から |
どちらか早いほうで権利が消えます。
相続税の申告期限(10か月)より短いため、
気づいたときには過ぎているということが起こります。
請求の流れ
- 相続人と協議(当事者間で合意できれば、それが最も早く安価です)
- まとまらなければ、家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分」の調停・審判を申し立て
交渉・調停の代理は、弁護士の業務です。税理士は行えません。
当センターでは提携する弁護士をご紹介し、財産の評価と相続税の計算を担当します。
相続税ではどうなるか
寄与分の場合
寄与分は遺産分割の中での調整です。 相続税の総額は変わりません。
取得した財産が増えるため、その方の負担する税額が増えます。
特別寄与料の場合
扱いが特殊です。
| 立場 | 相続税の扱い |
|---|---|
| 特別寄与料を受け取った人 | 被相続人から遺贈により取得したものとみなされます |
| → 相続税額の2割加算の対象(一親等の血族ではないため) | |
| → 申告期限は額が確定したことを知った日の翌日から10か月 | |
| 支払った相続人 | 支払った額を課税価格から控除できます |
| → すでに申告済みなら更正の請求(確定を知った日の翌日から4か月以内) |
長男の妻が受け取る場合、2割加算がかかります。
税負担まで含めて金額を考える必要があります。
生前にできる、もっと確実な備え
寄与分も特別寄与料も、認められるかどうかが不確実で、
しかも争いになりやすい制度です。
貢献に報いたいなら、生前に手を打つほうが確実です。
| 方法 | 効果 |
|---|---|
| 遺言書で多めに配分する | 最も確実。 争いを避けられます |
| 遺言書で遺贈する(長男の妻・内縁のパートナーへ) | 相続人以外にも渡せます |
| 生命保険の受取人にする | 遺産分割の対象外。確実に渡ります |
| 生前贈与する | 7年ルールに注意 |
| 付言事項で理由を書く | 法的効力はありませんが、納得を得やすくなります |
特に「長男の妻に報いたい」という場合、遺言書で遺贈するのが確実です。
特別寄与料は期限が短く、しかも相続人との交渉が必要になります。
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証拠を残しておいてください
寄与分・特別寄与料は、主張する側が立証します。
記憶だけでは認められません。
| 残すもの | 何を示すか |
|---|---|
| 介護日誌・記録 | いつ、どのような介護をしたか |
| 要介護認定の通知書 | 被相続人の状態 |
| ケアプラン・介護サービスの利用票 | 公的サービスとの分担 |
| 領収書・レシート | 立て替えた費用 |
| 通帳の記録 | 金銭の援助 |
| 診断書・入通院の記録 | 被相続人の状態 |
| 退職を証明する書類 | 介護のために仕事を辞めたこと |
| 写真・メール・LINE | 実際の関わりの記録 |
介護日誌は、日付・時間・内容を簡潔に書くだけで十分です。
後から作ることはできません。いま始めてください。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
この3区では、寄与分が「自宅を巡る争い」として表面化します。
【よくある形】
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自宅(世田谷区・長男夫婦と同居) | 7,000万円 |
| 預貯金 | 500万円 |
| 合計 | 7,500万円 |
相続人は長男・次男。長男の妻が10年間、義父を介護していました。
次男は「法定相続分どおり半分ずつ」を主張。
長男は「妻が10年介護した」と主張。
ここで問題になるのが2つです。
1. 同居していたことが、むしろ不利に働くことがあります
家賃を払わずに住んでいた場合、被相続人から利益を受けていたと評価され、
寄与分が減額されることがあります。
2. 介護したのは妻であって、長男ではありません
長男自身の寄与分としては主張しにくく、妻の特別寄与料は6か月・1年で消えます。
結果として「自宅を売って半分ずつ」になりかねません。
東京では、これが住まいを失うことに直結します。
対策は生前の遺言書です。 「自宅は長男に」と書き、
付言事項で妻の介護に触れておくだけで、争いの温度が変わります。
次男の遺留分(1/4)の支払原資を生命保険で用意しておけば、自宅を守れます。
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よくある質問
Q1. 親の介護をしていました。寄与分は認められますか。
A. 通常の親孝行の範囲では認められません。 必要なのは「特別の寄与」です。
目安は「あなたがやらなければ、お金を払って誰かに頼む必要があったか」。
仕事を辞めて数年つきっきりで介護した、といった程度が必要です。
療養看護型では、要介護2以上がひとつの目安とされることが多くあります。
Q2. 長男の妻ですが、義父を介護しました。請求できますか。
A. 2019年7月1日から、特別寄与料を請求できます。 ただし
相続開始と相続人を知った時から6か月、相続開始から1年という短い期限があります。
相続税の申告期限(10か月)より短いのでご注意ください。
Q3. 内縁の夫を介護しました。請求できますか。
A. できません。 特別寄与料を請求できるのは親族に限られ、
内縁・同性のパートナーは含まれません。遺言書で遺贈を受けるしかありません。
生前に遺言書を作成しておく必要があります。
Q4. いくらくらい認められますか。
A. 法律に計算式の定めはありません。 療養看護型では
介護報酬基準額 × 日数 × 裁量割合(0.5〜0.9程度)で考えるのが実務ですが、
遺産の総額・他の相続人との公平・貢献の程度を総合して裁判所が決めます。
この計算どおりになる保証はありません。
Q5. 同居して面倒を見ていました。有利になりますか。
A. 必ずしも有利とは限りません。 家賃を払わずに住んでいた場合、
被相続人から利益を受けていたと評価され、寄与分が減額されることがあります。
同居していたこと自体は、寄与分の根拠になりません。
Q6. 証拠は何を残せばよいですか。
A. 介護日誌が最も有効です。 日付・時間・内容を簡潔に書くだけで構いません。
加えて要介護認定の通知書、ケアプラン、領収書、通帳の記録、
退職を証明する書類など。後から作ることはできません。いま始めてください。
Q7. 特別寄与料に相続税はかかりますか。
A. かかります。 被相続人から遺贈により取得したものとみなされ、
さらに相続税額の2割加算の対象です(一親等の血族ではないため)。
申告期限は額が確定したことを知った日の翌日から10か月。
支払った相続人は、その額を課税価格から控除できます。
Q8. 誰に相談すればよいですか。
A. 寄与分・特別寄与料をめぐる交渉・調停の代理は、弁護士の業務です。
税理士は行えません。 当センターでは提携する弁護士をご紹介し、
財産の評価と相続税の計算を担当します。生前の備え(遺言書・生命保険)の
ご相談は、税額の試算とあわせて承ります。
まとめ
- 寄与分は、財産の維持・増加に「特別の貢献」をした相続人が多く受け取れる制度です
- 通常の親孝行では認められません。 扶養義務の範囲を超える必要があります
- 5つの類型(家事従事・金銭等出資・療養看護・扶養・財産管理)で整理されます
- 目安は「あなたがやらなければ、お金を払って誰かに頼む必要があったか」
- 計算は遺産から寄与分を先に引き、残りを法定相続分で分け、最後に足し戻す
- 特別寄与料(2019年7月1日〜)で、相続人でない親族も請求できるようになりました
- ただし内縁・同性のパートナーは対象外です
- 期限は6か月/1年と短く、相続税の申告期限より先に来ます
- 特別寄与料は遺贈とみなされ、2割加算の対象です
- 同居していたことは、むしろ不利に働くことがあります
- 確実なのは生前の遺言書・遺贈・生命保険です
- 証拠は後から作れません。 介護日誌を今日から始めてください
- 交渉・調停の代理は弁護士の業務です
ご相談のご案内
「貢献に報いたい」というご相談は、生前のほうが確実に実現できます。
遺言書での配分、長男の妻への遺贈、生命保険の受取人指定——
それぞれ税額がどうなるかを試算したうえで、組み合わせをご提案します。
すでに相続が始まっている場合も、まずご連絡ください。
特別寄与料は6か月で消えます。 弁護士のご紹介と併せて対応します。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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出典
- e-Gov 民法
- 法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
- 裁判所 相続に関する調停
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。寄与分・特別寄与料の金額は
個別の事情により大きく異なります。記事中の計算の考え方は実務上の目安であり、
この計算どおりになることを保証するものではありません。

