おひとりさまが生前に準備すべき5つの契約【チェックリスト付き】
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月10日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】人生の「4つの段階」に、それぞれ備えが要ります
おひとりさまの備えは、5つの契約で組み立てます。①見守り契約 ②財産管理等委任契約 ③任意後見契約 ④死後事務委任契約 ⑤遺言書です。この5つは、健康なうち・体が弱ったとき・判断能力を失ったとき・亡くなった後という4つの段階に対応しています。どれか1つでは足りません。たとえば遺言書があっても、葬儀の手配や賃貸住宅の解約はできません。任意後見契約があっても、亡くなった時点で終了します。段階ごとに切れ目なくつなぐことが必要です。そして5つすべてに共通する条件が1つあります。判断能力があるうちでなければ、契約できません。
| 段階 | 状態 | 必要な備え |
|---|---|---|
| 第1段階 | 元気だが、独居 | ① 見守り契約 |
| 第2段階 | 体が弱ってきた(判断能力はある) | ② 財産管理等委任契約/身元保証 |
| 第3段階 | 判断能力が低下した | ③ 任意後見契約 |
| 第4段階 | 亡くなった後 | ④ 死後事務委任契約/⑤ 遺言書 |
5つすべてに共通する条件:判断能力があるうちでなければ契約できません。
認知症の診断を受けた後では、間に合わないことがあります。
① 見守り契約
定期的に連絡を取り、状況を確認してもらう契約です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何をするか | 月1回程度の電話・訪問、健康状態の確認 |
| いつから | 今すぐ |
| なぜ必要か | 判断能力の低下に、誰かが気づくため |
これは「見守ってもらうこと」自体が目的ではありません。
任意後見契約を結んでいても、判断能力が低下したことに誰も気づかなければ、発動しません。 見守り契約は、③任意後見契約を実際に動かすためのスイッチです。
単独で結ぶより、③とセットにするのが一般的です。
② 財産管理等委任契約
判断能力はあるが、体が不自由になったときに、財産管理や事務手続きを代わってもらう契約です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何を頼めるか | 預貯金の入出金、公共料金の支払い、行政手続き、施設の入居手続き |
| いつ効力が生じるか | 契約で定めたとき(すぐでも、必要になったときでも) |
| 公正証書 | 必須ではありません(ただし作成をおすすめします) |
任意後見契約との違いは、判断能力があるかどうかです。
- 判断能力はあるが、体が動かない → ②財産管理等委任契約
- 判断能力が低下した → ③任意後見契約
入院や施設入居のとき、②とあわせて身元保証が必要になります。
厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関が入院を拒否することは適当でないとしています。 ただし実務では求められるのが現実です。
③ 任意後見契約(最も重要です)
判断能力が低下したときに、あらかじめ自分で選んだ人に支援してもらう契約です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 形式 | 公正証書で作成する必要があります(必須) |
| 効力が生じるとき | 家庭裁判所が任意後見監督人を選任したとき |
| 登記 | 公証人が東京法務局へ嘱託し、後見登記がされます |
| 何を頼めるか | 財産の管理、施設入居契約、介護サービスの契約、医療費の支払い |
| 終了するとき | 本人が亡くなったとき |
法定後見との違い
判断能力が低下してから家庭裁判所に申し立てるのが「法定後見」です。
| 項目 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|
| 誰が支援者を決めるか | 自分で決めます | 家庭裁判所が決めます |
| いつ準備するか | 判断能力があるうち | 低下した後 |
| 支援の内容 | 契約で決められます | 法律で定まっています |
| 監督 | 任意後見監督人 | 家庭裁判所(または後見監督人) |
おひとりさまにとって、この差は決定的です。
法定後見では、家族以外の第三者(弁護士・司法書士など)が選任されることが多くあります。 誰が選ばれるかは、自分では決められません。
任意後見なら、信頼できる人をご自身で選べます。
注意点
任意後見契約は、結んだだけでは効力が生じません。
判断能力が低下した後、任意後見受任者などが家庭裁判所へ申し立て、任意後見監督人が選任されて初めて動き出します。
この申立てをする人が必要です。 だから①見守り契約とセットにします。
任意後見契約の設計と公正証書の作成支援は、弁護士・司法書士の業務です。
当センターでは提携する専門家をご紹介し、税務面の検討と窓口の一本化を担当します。
④ 死後事務委任契約
任意後見契約は、本人が亡くなった時点で終了します。
その後の手続きを担う人が、別に必要です。
| 委任できる主な事務 |
|---|
| 葬儀・火葬の手配、喪主に相当する役割 |
| 納骨、永代供養 |
| 死亡届の提出、健康保険・年金の資格喪失届 |
| 病院・施設の未払い費用の精算 |
| 賃貸住宅の解約と原状回復 |
| 公共料金・携帯電話・サブスクリプションの解約 |
| 家財の整理・処分 |
| 関係者への連絡、SNSアカウントの削除 |
遺言書では代われません。
遺言執行者は「遺言の内容を実現する人」であって、葬儀を手配する立場ではありません。 また遺言書が開封されるのは、たいてい葬儀の後です。
死後事務委任契約とは?
喪主代行とは?頼れる親族がいない場合の葬儀の進め方
⑤ 遺言書
財産を誰に渡すかを、法的に決められるのは遺言書だけです。
おひとりさまに遺言書が効く理由
相続人がいない場合、財産は最終的に国庫に帰属します。
相続人が兄弟姉妹の場合、兄弟姉妹には遺留分がありません。 つまり遺言書に書いたとおりに渡せます。
| 状況 | 遺言書がないと | 遺言書があると |
|---|---|---|
| 相続人がいない | 相続財産清算人の選任手続きを経て、最終的に国庫へ | 指定した人・団体へ渡せます |
| 相続人が兄弟姉妹だけ | 兄弟姉妹(甥・姪)が法定相続分で取得 | 遺留分がないため、遺言のとおりに渡せます |
| 内縁のパートナーがいる | 相続権がないため、何も渡りません | 遺贈により渡せます |
相続人がいない場合、財産はどうなる?特別縁故者と国庫帰属
独身・子どもがいない人の相続|遺産は誰が受け取るのか
自筆証書か、公正証書か
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 作成 | ご自身で全文を自書 | 公証人が作成 |
| 費用 | 0円〜(保管制度は1通3,900円) | 財産額に応じた手数料 |
| 証人 | 不要 | 2人必要 |
| 検認 | 必要(法務局の保管制度を使えば不要) | 不要 |
| 確実性 | 方式の誤りで無効になることがあります | 高い |
おひとりさまの場合、公正証書遺言をおすすめします。
理由は遺言書を発見してもらいにくいためです。公正証書なら原本が公証役場に保管され、遺言検索システムで全国から照会できます。
自筆証書を選ぶ場合は、法務局の保管制度を併用してください。 死亡時の通知制度により、あらかじめ指定した方(3名まで)へ通知が届きます。
遺言執行者を必ず指定してください
遺言執行者がいないと、実際の手続きを誰も進められません。
おひとりさまの場合、手続きを担う相続人がいないか、いても疎遠なことが多くあります。 遺言書の中で執行者を指定しておいてください。
準備チェックリスト
上から順に進めてください。
情報の整理
- [ ] 財産の一覧を作った(金融機関、証券、保険、不動産、借入れ)
- [ ] ネット銀行・ネット証券・暗号資産を書き出した
- [ ] スマートフォン・パソコンのパスワードを残した
- [ ] 連絡してほしい人のリストを作った
- [ ] エンディングノートに医療・介護の希望を書いた
- [ ] 相続税がかかるかどうかを試算した
契約
- [ ] ① 見守り契約を結んだ
- [ ] ② 財産管理等委任契約を結んだ
- [ ] ③ 任意後見契約を公正証書で結んだ
- [ ] 身元保証の手当てをした(入院・施設入居のため)
- [ ] ④ 死後事務委任契約を結んだ
- [ ] ⑤ 遺言書を作成した(遺言執行者を指定した)
費用の手当て
- [ ] 死後事務の費用の出どころを決めた(預託金・生命保険・信託)
- [ ] 生命保険の受取人を確認した
- [ ] 納骨先・永代供養を決めた
定期的な見直し
- [ ] 年に1回、内容を見直す日を決めた(誕生日など)
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
新宿区・中野区は、単身世帯の割合が高い地域です。 ご相談で多いのは次の状況です。
1. 賃貸住宅にお住まいの方
亡くなった後も家賃は発生し続けます。 解約と家財の撤去を進める人がいなければ、その分だけ費用が積み上がります。
さらに、保証人がいないと入居審査が通らないという問題もあります。②の段階で、保証会社や身元保証サービスの手当てが必要です。
④死後事務委任契約で、賃貸借契約の解除と原状回復まで委任できます。
2. 分譲マンションにお住まいの方
管理費・修繕積立金の引き落としが止まります。 滞納が続くと、管理組合から請求を受けることになります。
3. 出身地を離れて長い方
お墓が地方にある、あるいはお墓がない——このどちらかであることが多くあります。
納骨先が決まっていないと、④の受任者が困ります。 永代供養、樹木葬、散骨——生前に決めて、費用も手当てしておいてください。
4. 甥・姪が相続人になる方
兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、甥・姪が代襲相続人になります。 遠方で疎遠なことが多く、手続きの負担を強いることになります。
遺言書で執行者を指定し、④で死後事務を委任しておけば、甥・姪の負担はほぼなくなります。
よくある質問
Q1. 5つ全部が必要ですか。
A. ご状況によります。 ただし③任意後見契約、④死後事務委任契約、⑤遺言書の3つは、おひとりさまにはほぼ必須とお考えください。この3つで、判断能力の低下・死後の手続き・財産の承継という3つの問題に対応できます。①と②は、③④を確実に動かすための補助と位置づけられます。
Q2. いつから準備すればよいですか。
A. 判断能力があるうちです。 年齢ではありません。認知症の診断を受けた後では、契約できないことがあります。 60代のうちに一度検討されることをおすすめします。「まだ早い」と思っているうちが、実は最も適した時期です。
Q3. 任意後見契約は、結べばすぐ効力が生じますか。
A. 生じません。 判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに効力が生じます。 そのため、判断能力の低下に気づいて申し立てる人が必要です。①見守り契約とセットにするのは、このためです。
Q4. 誰に頼めばよいですか。
A. 信頼できる親族がいれば、その方でも構いません。 いない場合は、弁護士・司法書士などの専門職、または法人(社会福祉協議会、NPO、民間事業者)に依頼します。長期にわたる関係になりますので、費用の内訳、担当者が交代したときの引継ぎ、履行を確認する第三者がいるかを確認してください。
Q5. 費用はどのくらいかかりますか。
A. 契約の種類・範囲・依頼先によって大きく異なります。 一般に、③任意後見契約には公正証書の作成費用と、効力発生後の後見人・監督人の報酬がかかります。④死後事務委任契約には、契約時の報酬と、実際の葬儀・整理費用の預託が必要になることが多くあります。契約前に、費用の総額と内訳を書面でご確認ください。
Q6. 契約を途中でやめられますか。
A. やめられます。 ただし任意後見契約は、効力が生じる前は公証人の認証を受けた書面によって、効力発生後は正当な事由があるときに家庭裁判所の許可を得て解除する必要があります。預託金がある場合、解除時にどう返還されるかを契約前に確認しておいてください。
Q7. 財産を寄付したい場合はどうすればよいですか。
A. 遺言書で遺贈します。 ただし受け取る側の団体が受け入れ可能かを、生前に確認してください。不動産の遺贈は受け入れないという団体もあります。また、相続人がいない場合でも、特別縁故者への財産分与の手続きが先に行われることがあります。
Q8. 相続税はかかりますか。
A. 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えれば、かかります。 おひとりさまの場合、法定相続人が少ないため基礎控除も小さくなります。 相続人がまったくいない場合、基礎控除は3,000万円です。東京に持ち家があれば、超える可能性は十分にあります。 また相続人以外への遺贈には、相続税額の2割加算が適用されます。
まとめ
- おひとりさまの備えは、①見守り ②財産管理等委任 ③任意後見 ④死後事務委任 ⑤遺言書の5つです
- これらは健康なうち・体が弱ったとき・判断能力を失ったとき・亡くなった後の4段階に対応します
- ③④⑤の3つは、ほぼ必須とお考えください
- 任意後見契約は公正証書で作成する必要があり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに効力が生じます
- 任意後見は本人の死亡で終了します。その後は④死後事務委任契約が引き継ぎます
- 遺言書では葬儀の手配や賃貸住宅の解約はできません
- 兄弟姉妹には遺留分がありません。 遺言書に書いたとおりに渡せます
- おひとりさまには公正証書遺言をおすすめします(発見されやすく、遺言検索システムで照会できます)
- 遺言執行者を必ず指定してください
- 5つすべて、判断能力があるうちでなければ契約できません
- 契約書の作成は弁護士・司法書士・行政書士の業務です
ご相談のご案内
「何から手をつければよいか分からない」という段階からご相談いただけます。 財産の一覧づくりと相続税の試算を起点に、必要な契約を段階ごとに整理してお示しします。契約書の作成は、提携する専門家をご紹介します。
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 法務省 成年後見制度・成年後見登記制度
- 法務省 自筆証書遺言書保管制度について
- 法務省 高齢者等終身サポート事業者ガイドラインについて
- 厚生労働省 身寄りのない方への対応について
- 消費者庁 いわゆる「高齢者等終身サポート事業」の利用に関する注意点
- 裁判所 相続財産清算人の選任
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- e-Gov 任意後見契約に関する法律
※本記事の内容は2026年9月時点の法令および令和6年6月の高齢者等終身サポート事業者ガイドラインに基づいています。

