死後事務委任契約とは?費用・内容・依頼先を税理士が解説

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超/税務調査率1%未満。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年8月9日 最終更新日:2026年8月15日


【結論】死後事務委任契約は、亡くなった後の手続きを生前に頼んでおく契約です

死後事務委任契約とは、ご自身が亡くなった後に必要になる手続き——死亡届の提出、葬儀、納骨、部屋の片づけ、公共料金やスマートフォンの解約など——を、生前に第三者へ委任しておく契約です。

遺言書は「財産を誰に渡すか」を決めるものです。手続きそのものを誰がやるかは、遺言書では決められません。 ここを埋めるのが死後事務委任契約です。

ご家族がいれば、こうした手続きは自然と誰かが担います。しかし頼れる方がいない場合、手続きは自動的には始まりません。

ポイント内容
何を決める契約か亡くなった後の手続きを誰がやるか
遺言書との違い遺言書=財産の行き先/死後事務委任契約=手続きの担い手
契約できる時期ご本人に判断能力があるうちだけ。認知症の診断後は難しくなります
効力が生じるときご本人が亡くなった時点から
費用の構成契約書の作成費用+公正証書の手数料+預託金+執行報酬
預託金の扱い返還条件と保全方法を必ず契約書で確認。ここが最大の注意点です
相性のよい制度遺言書・任意後見契約・身元保証。4つはセットで考えます

契約できるのは、ご本人がご存命で、判断能力があるうちだけです。
亡くなった後はもちろん、判断能力が失われた後も新たに結ぶことはできません。


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死後事務委任契約とは?

死後事務委任契約とは、委任者(ご本人)が受任者(依頼を受ける人・法人)に対し、自分の死後に必要となる事務手続きを委任する契約です。

通常、委任契約は当事者の一方が亡くなると終了します。死後事務委任契約は、死亡後も契約が続くことを当事者間で合意しておく点に特徴があります。

契約は書面で結びます。公正証書にしておくと、金融機関や役所、葬儀社に対して権限を示しやすくなります。

遺言書では代われません

遺言書に「葬儀は家族葬で」と書いても、それを実行する義務を負う人はいません。

遺言書で法的な効力が認められるのは、相続分の指定、遺贈、認知、遺言執行者の指定など、法律で定められた事項に限られます。 葬儀の方法や納骨先の希望を書いても、それは付言事項——つまり「お願い」であって、強制力はありません。

さらに、遺言書は亡くなった直後には読まれないことが多いという実務上の問題があります。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要で、そこに至るまでに数週間かかることも珍しくありません。葬儀はその前に終わってしまいます。

死後事務委任契約は、亡くなった直後から動ける点で、遺言書とは役割が異なります。


死後事務委任契約で頼めることは?

契約で定める範囲は当事者の合意によりますが、実務でよく含まれるのは次のような事務です。

分類具体的な内容
亡くなった直後病院・施設への駆けつけ、遺体の搬送手配、死亡届の提出、火葬許可の取得
葬儀・埋葬葬儀社との打ち合わせ、喪主の代行、火葬・収骨、納骨、永代供養の手配
住まいの片づけ賃貸物件の明け渡し、遺品の整理・処分、家財の搬出
契約の終了手続き電気・ガス・水道・電話・インターネット・スマートフォンの解約
各種届出健康保険・介護保険の資格喪失届、年金の受給停止手続き
その他関係者への連絡、SNSやサブスクリプションの停止、ペットの引き渡し

死後事務委任契約では決められないこと

財産を誰に渡すかは、死後事務委任契約では決められません。 これは遺言書の役割です。

また、相続税の申告や相続登記そのものは死後事務の範囲外です。これらは相続人(または遺言執行者)が行う手続きで、別の枠組みになります。


死後事務委任契約の費用はいくら?

費用は、契約書の作成費用と、実際の手続きにかかる実費(預託金)に分かれます。ここを混同すると、総額の見通しを誤ります。

費目内容
契約書作成・専門家報酬打ち合わせ、契約書の作成、公正証書化のサポート
公正証書の作成手数料公証役場に納める費用
預託金(実費の前払い)葬儀費用、納骨費用、部屋の片づけ費用など
死後事務の執行報酬実際に手続きを行ったときの報酬

預託金は、事務手続きの内容で大きく変わります。 葬儀の規模、納骨先が決まっているか、賃貸か持ち家か、遺品の量——これらによって必要額が違うためです。

見積もりを取るときは、この4つを分けて出してもらってください。 総額だけを提示されると、何にいくらかかるのかが見えません。

【最重要】預託金の保全を必ず確認してください

死後事務委任契約でいちばん注意が必要なのは、預けたお金の管理方法です。

死後事務は、性質上、費用を先に預けておく形をとることがほとんどです。ご本人が亡くなった後に支払いが発生するため、その原資を確保しておく必要があるからです。

問題は、預けた先が預託金を持ったまま経営破綻した場合です。 これは実際に起きています。

契約前に、次の点を必ず確認してください。

  1. 預託金はどこに、どう保管されるか(事業者の運転資金と分けて管理されているか)
  2. 契約を解除したとき、いくら戻るか(返還の条件と計算方法が契約書に書かれているか)
  3. 受任者が先に破綻・廃業した場合どうなるか
  4. 想定より費用が少なく済んだとき、残額は誰に渡るか

「安心してください」という口頭の説明ではなく、契約書の条文で確認してください。 ここを曖昧にしたまま契約するのは危険です。

預けすぎていないかも確認してください

預託金は、多く預ければ安心というものではありません。

預けた分だけ手元の資金は減ります。ご本人の生活資金が足りなくなっては本末転倒です。また、預託金の額によっては相続税の計算にも影響します。

「いくら預けるか」は、財産全体と、想定される相続税を見たうえで決めるべき金額です。事業者の言い値をそのまま受け入れる前に、一度立ち止まって全体を確認してください。


死後事務委任契約は誰に頼むべき?

依頼先には、それぞれ得意な領域があります。

依頼先特徴向いている方
司法書士登記が絡む手続きに強い。死後事務を扱う事務所が比較的多い不動産をお持ちで、名義変更まで見据えたい方
行政書士契約書の作成に対応手続き中心で、財産関係が単純な方
弁護士紛争性がある場合に対応できる親族間で対立が予想される方
民間の身元保証会社サービスの幅が広く、入院・入居の保証まで一括で頼める保証人の確保もあわせて必要な方
社会福祉協議会など地域によっては公的・準公的な支援制度があるまず費用を抑えて相談したい方

依頼先を選ぶときの確認事項

肩書きよりも、契約書の中身と事業者の継続性を見てください。

  • 預託金の分別管理がされているか
  • 解約時の返還条件が明記されているか
  • 受任者が個人の場合、その方が先に亡くなったらどうなるか(法人であれば継続性は比較的高くなります)
  • 実際の執行実績があるか
  • 見積もりが費目ごとに分かれている

お住まいの自治体や社会福祉協議会に、高齢者向けの支援制度がある場合があります。
民間サービスを検討する前に、一度お住まいの区市町村にお問い合わせいただくことをおすすめします。


死後事務委任契約と一緒に考える3つの契約

死後事務委任契約は、単独ではなく4点セットで考えます。 カバーする時期が違うためです。

契約いつ効力を持つか何をカバーするか
任意後見契約判断能力が低下したとき財産管理・介護施設の契約など生前
身元保証入院・入居のとき保証人の署名、緊急連絡先
死後事務委任契約亡くなったとき葬儀・納骨・片づけ・解約など死後の手続き
遺言書亡くなったとき財産の行き先

この4つで、判断能力の低下から死後の財産承継まで、切れ目なくカバーできます。 どれか1つだけでは必ず穴が空きます。

身元保証は、お金があっても足りません

入院や施設入居の際には、保証人の署名を求められます。 これは資力の問題ではありません。お金があっても、署名する人がいなければ入れないということが現実に起きています。

身元保証を依頼する場合も、預託金の保全と、事業者の継続性を必ず確認してください。 保証会社が預り金を持ったまま破綻する事例があります。


相続税の視点から見た死後事務委任契約

当センターは税理士法人です。 ここでは、税理士の立場から見て見落とされやすい点をお伝えします。

1. 預託金は相続財産に含まれる可能性があります

預託金として渡したお金が、亡くなった時点でどのような性質になっているか。 ここは契約の内容によって変わります。

使われずに残っている預託金は、返還請求権として相続財産に含まれると扱われる場合があります。「もう払ったから財産ではない」と考えていると、申告の際に食い違いが生じます。

契約時に、預託金の法的な性質を確認しておいてください。

2. 法定相続人が少ないと、相続税は不利になります

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。 法定相続人が少ない、あるいはいない場合、この枠が小さくなります。

さらに、兄弟姉妹や甥姪が相続する場合は、相続税額が2割加算されます。配偶者の税額軽減も使えません。

「財産は自宅だけ」という方でも、相続税の対象になることがあります。 とくに地価の高い地域では珍しくありません。

3. 「いくら預けるか」は財産全体から逆算する

死後事務にいくら確保しておくかは、財産全体と相続税の見通しから決めるべき金額です。

生活資金、想定される相続税、遺したい相手がいる場合はその金額——これらを並べて初めて、預託金として妥当な額が見えてきます。

死後事務の契約そのものは各専門家・事業者にご依頼いただくものですが、「財産全体をどう配分するか」は税理士の領域です。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

当センターは新宿区西新宿にあり、新宿区・中野区・世田谷区を中心に相続税のご相談をお受けしています。

この地域には、死後事務を考えるうえで固有の事情があります。

  • 単身世帯の割合が高い地域です。 新宿区は都内でも単身世帯の比率が高く、ご近所づきあいが希薄になりやすい環境です。発見が遅れると、原状回復の費用が大きくなります。
  • 賃貸住宅にお住まいの方が多い地域です。 賃貸の場合、明け渡しの期限があります。 相続人がいない、あるいは連絡がつかないと、家財がそのまま残り、賃料が発生し続けます。死後事務委任契約で明け渡しまで定めておく意味が大きい地域です。
  • 墓地が近隣にない方が多くいらっしゃいます。 郷里にお墓があるものの継ぐ方がいない、というご相談は少なくありません。墓じまいと納骨先の確保を、生前に決めておく必要があります。
  • 地価が高く、ご自宅だけで基礎控除を超えることがあります。 「うちは資産家ではない」という方でも、新宿区では相続税の対象になり得ます。詳しくは 新宿区の相続税 をご覧ください。

よくある質問

Q1. 死後事務委任契約と遺言書は、どちらか一方でよいですか?

A. 両方必要です。 遺言書は財産の行き先を決めるもの、死後事務委任契約は手続きの担い手を決めるものです。役割が違うため、片方だけでは穴が空きます。遺言書に葬儀の希望を書いても、それを実行する義務を負う人はいません。

Q2. 死後事務委任契約はいつまでに結べばよいですか?

A. ご本人に判断能力があるうちだけです。 認知症の診断を受けた後は、契約を結ぶことが難しくなります。期限が決まっているわけではありませんが、元気なうちに準備しておくことが唯一の条件です。

Q3. 費用はいくらかかりますか?

A. 契約書の作成費用、公正証書の手数料、預託金、執行報酬の4つに分かれます。 金額は依頼先と契約内容によって大きく異なります。見積もりは必ず費目ごとに分けて出してもらってください。 総額だけの提示では、何にいくらかかるのか判断できません。

Q4. 預けたお金は、途中でやめたら戻ってきますか?

A. 契約書の定めによります。 だからこそ、契約前に返還条件を必ず確認してください。「どういう場合に、いくら戻るのか」が契約書に明記されているか。口頭の説明ではなく条文で確認することが重要です。

Q5. 依頼先が先に倒産したらどうなりますか?

A. これが最大のリスクです。 預託金を持ったまま事業者が破綻した事例が実際にあります。預託金が事業者の運転資金と分けて管理されているか、破綻時にどうなるかを、契約前に必ず確認してください。

Q6. 相続人がいる場合でも、死後事務委任契約は必要ですか?

A. 状況によっては必要です。 ご親族が遠方にお住まい、高齢である、関係が疎遠、といった場合、実際に動けないことがあります。また、ご親族に負担をかけたくないというご希望から契約される方もいらっしゃいます。

Q7. 相続人がまったくいない場合、財産はどうなりますか?

A. 最終的に国庫に入ります。 家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、債権者への支払いなどを経て、残った財産は国のものになります。特別縁故者が認められる場合を除きます。

Q8. 預託金は相続財産に含まれますか?

A. 契約の内容によります。 使われずに残っている預託金は、返還請求権として相続財産に含まれると扱われる場合があります。「支払い済みだから財産ではない」と考えていると、相続税の申告で食い違いが生じることがあります。契約時に預託金の法的な性質を確認しておいてください。

Q9. 死後事務委任契約について、税理士に相談できることは何ですか?

A. 「いくら確保しておくか」の判断です。 契約そのものは各専門家・事業者にご依頼いただくものですが、預託金としていくら渡すか、それが生活資金や相続税にどう影響するかは、財産全体を見ないと決められません。当センターでは、財産の全体像と相続税の見通しについてご相談をお受けしています。


まとめ

  • 死後事務委任契約とは、亡くなった後の手続きを生前に第三者へ委任しておく契約です
  • 遺言書では代われません。 遺言書は財産の行き先、死後事務委任契約は手続きの担い手を決めるものです
  • 頼める内容は、死亡届・葬儀・納骨・部屋の片づけ・各種解約など幅広く設定できます
  • 費用は契約書作成費用・公正証書手数料・預託金・執行報酬の4つに分かれます。 見積もりは費目ごとに
  • 最大の注意点は預託金の保全です。 返還条件、分別管理、破綻時の扱いを契約書の条文で確認してください
  • 預けすぎにも注意が必要です。 生活資金と相続税を見たうえで金額を決めてください
  • 契約できるのは、ご本人に判断能力があるうちだけです
  • 任意後見契約・身元保証・遺言書と4点セットで考えると、切れ目なくカバーできます
  • お住まいの区市町村や社会福祉協議会にも支援制度がある場合があります

ご相談のご案内

死後事務にいくら確保しておくかは、財産の全体像と、想定される相続税を見て決める必要があります。生活資金を圧迫していないか、相続税の見通しと整合しているか——ここは税理士がお手伝いできる部分です。

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

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