喪主代行とは?頼れる親族がいない場合の葬儀の進め方
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月10日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】喪主に資格はいりません。問題は「誰も名乗り出ないこと」です
喪主は法律上の資格ではありません。慣習として遺族の代表が務めるだけで、親族でなくても、法律上の相続人でなくてもなれます。つまり「喪主がいないから葬儀ができない」ということは、制度上はありません。実際に困るのは別のところです。誰が葬儀社と契約するのか、費用を誰が立て替えるのか、火葬許可の手続きを誰が進めるのか、お骨を誰が引き取るのか——この一つひとつに、決める人と支払う人が必要です。頼れる親族がいない場合、これらをあらかじめ契約で決めておく方法があります。それが死後事務委任契約です。「喪主代行」という名称のサービスも、実質はこの契約であることがほとんどです。
| 論点 | 実際のところ |
|---|---|
| 喪主の資格 | 法律上の資格ではありません。誰でもなれます |
| 喪主がいないと葬儀ができないか | できないわけではありません |
| 実際に困ること | 契約者・支払者・手続きを進める人が決まらないこと |
| 頼れる親族がいない場合の備え | 死後事務委任契約 |
| 「喪主代行」サービスの実質 | 死後事務委任契約であることがほとんどです |
| 費用の出どころ | 預託金、生命保険、預貯金の仮払い制度 |
| 相続税 | 葬式費用は債務控除できます(範囲に制限あり) |
喪主は誰がなってもよい
「喪主は長男がやるもの」という慣習はありますが、法律上の決まりではありません。
配偶者でも、次男でも、姪でも、内縁のパートナーでも、友人でもなれます。
祭祀主宰者(お墓や仏壇を承継する人)については民法897条に定めがありますが、喪主については民法に規定がありません。
つまり——喪主を立てられないから葬儀ができない、ということはないのです。
では、実際に何が困るのか
ご相談を受けていて、実務上つまずくのは次の6点です。
1. 誰が葬儀社と契約するか
葬儀社は契約者を求めます。 契約者は費用の支払義務を負います。親族でない方が契約する場合、後で相続人から異議が出ることがあります。
2. 誰が費用を立て替えるか
葬儀費用は、葬儀後まもなく請求されます。 一方、被相続人の口座は凍結されています。
立て替えた方は、後から遺産分割で精算することになりますが、その保証はありません。
3. 死亡届・火葬許可の手続きは誰がするか
死亡届の届出人になれる人は、戸籍法で定められています。
| 届出人になれる方 |
|---|
| 同居の親族 |
| その他の同居者 |
| 家主、地主、家屋管理人、土地管理人 |
| 同居していない親族 |
| 後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者 |
届出は死亡の事実を知った日から7日以内です。火葬許可証は、この届出と併せて交付されます。
なお、届出の書類を実際に役所へ持参するのは、葬儀社などの使者でも構いません。
4. 誰がお骨を引き取るか
火葬後、遺骨を引き取る人が必要です。 引き取り手がなければ、自治体が保管したうえで、最終的に無縁納骨堂などへ納められることになります。
5. 誰が病院・施設の費用を精算するか
未払いの入院費・施設利用料は、亡くなった後に請求されます。
6. 誰が親族・知人に連絡するか
連絡先が分からないという問題です。 エンディングノートに連絡先リストを残しておくことで解決します。
死後事務委任契約という方法
上記のすべてを、生前に契約で委任しておくことができます。
死後事務委任契約は、ご自身が亡くなった後の事務を、あらかじめ第三者に委任しておく契約です。
委任できる主な事務
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 葬送に関すること | 葬儀・火葬の手配、喪主に相当する役割、納骨、永代供養 |
| 届出 | 死亡届の提出、健康保険・年金の資格喪失届 |
| 精算 | 病院・施設の費用、未払いの公共料金、家賃 |
| 解約 | 賃貸住宅、携帯電話、サブスクリプション、公共料金 |
| 片付け | 家財の整理・処分、遺品の引渡し |
| その他 | 関係者への連絡、SNSアカウントの削除 |
「喪主代行」として提供されているサービスの中身は、多くがこれです。
遺言書では代われません
ここは誤解が多い点です。
遺言書に「葬儀は家族葬で」と書いても、法的な効力はありません(付言事項にとどまります)。
遺言執行者は「遺言の内容を実現する人」であって、葬儀を手配する立場ではありません。
さらに実務上の問題として——遺言書が開封されるのは、たいてい葬儀の後です。 葬儀の希望を遺言書に書いても、間に合いません。
費用をどう用意するか
死後事務委任契約を結んでも、費用の出どころがなければ実行できません。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 預託金 | 契約時に費用相当額を預けておく。最も確実ですが、事業者の管理体制の確認が必要です |
| 生命保険 | 受取人を受任者に指定。遺産分割を待たずに受け取れます |
| 信託 | 信託銀行等に預け、死亡時に支払われる仕組み |
| 預貯金の仮払い制度 | 相続人が1金融機関あたり最大150万円まで引き出せます |
おひとりさまの場合、相続人がいないか、いても疎遠なことが多くあります。 その場合、預託金か生命保険が現実的です。
事業者を選ぶときの確認事項
国は令和6年6月、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を公表しました(内閣官房・内閣府・金融庁・消費者庁・総務省)。
消費者庁は、利用にあたっての注意点とチェックリストを示しています。 契約前に、少なくとも次を確認してください。
| 確認事項 |
|---|
| 契約の内容と費用の内訳が、書面で明らかになっているか |
| 預託金がどのように管理されるか(分別管理されているか、第三者の監査があるか) |
| 契約を解除したときに、預託金がどう返還されるか |
| 事業者が倒産した場合の取扱い |
| 実際に事務を行う人が誰か(担当者の交代時の引継ぎ) |
| 履行状況を確認する第三者(監督人)がいるか |
| 推定相続人がいる場合、その了解を得ているか |
特定の事業者を批判する意図はありません。 誠実に運営されている事業者も多くあります。
ただし契約の期間が非常に長く、履行を確認するのが本人ではないという性質上、
契約前の確認が他のサービスより重要になります。
相続税の扱い
葬式費用は、相続財産から控除できます(債務控除)。
ただし範囲が決まっています。
| 控除できるもの | 控除できないもの |
|---|---|
| 通夜・本葬(葬式・葬送)に要した費用 | 香典返しの費用 |
| 火葬・埋葬・納骨の費用 | 墓碑・墓地の購入費、墓地の借入料 |
| お布施・読経料・戒名料 | 初七日・四十九日など法会に要する費用 |
| 遺体・遺骨の運搬にかかった費用 | 医学上・裁判上の特別の処置に要した費用 |
| 死体の捜索、遺体・遺骨の運搬に要した費用 | — |
「領収書のないお布施は控除できない」というのは誤解です。 支払先・日付・金額をメモに残しておけば控除できます。
なお、死後事務委任契約の報酬のうち、葬儀に関する部分は葬式費用として控除できる余地がありますが、生前の見守りや事務手数料に相当する部分は控除できません。 契約書で内訳が分かれているかをご確認ください。
また、香典は相続財産ではありません。 受け取った香典に相続税はかかりません(社会通念上相当な範囲であれば贈与税もかかりません)。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
新宿区・中野区は、単身世帯の割合が高い地域です。
ご相談で実際にうかがう状況を挙げます。
- 配偶者に先立たれ、子はおらず、兄弟も高齢
- 甥・姪はいるが、遠方で疎遠。頼みにくい
- 賃貸住宅に長く住んでいる。退去と家財の整理が必要
- お墓がない。納骨先から決めなければならない
特に賃貸住宅の場合、事態が急を要します。
亡くなった後も家賃は発生し続けます。 解約と家財の撤去を進める人がいなければ、その分だけ費用が積み上がります。 相続人が決まるのを待っていては間に合いません。
この点でも、死後事務委任契約が効きます。 賃貸借契約の解除と原状回復まで、あらかじめ委任しておけます。
なお当センターは、葬儀を執り行う事業者ではありません。 ご希望に応じて、死後事務委任契約を扱う提携先をご紹介し、契約内容の税務面の確認と、相続税申告までの窓口の一本化を担当します。
よくある質問
Q1. 喪主は親族でなければなれませんか。
A. そんなことはありません。 喪主は法律上の資格ではなく、慣習上の役割です。親族でない方、法律上の相続人でない方でも務められます。 内縁のパートナー、友人、死後事務の受任者でも構いません。
Q2. 誰も喪主を引き受けてくれない場合、葬儀はどうなりますか。
A. 葬儀社と契約する人がいれば、葬儀自体は行えます。 ただし費用の支払義務を負う人が必要です。引き取り手がまったくいない場合は、墓地埋葬法に基づき市区町村が火葬・埋葬を行います。 ご本人の希望に沿った形にはなりませんので、備えておくことをおすすめします。
Q3. 死亡届は誰が出せますか。
A. 同居の親族、その他の同居者、家主・地主・家屋管理人・土地管理人、同居していない親族、後見人・保佐人・補助人・任意後見人・任意後見受任者です。届出は死亡の事実を知った日から7日以内です。書類を役所へ持参するのは葬儀社などの使者でも構いません。
Q4. 「喪主代行」と「死後事務委任契約」は違うものですか。
A. 「喪主代行」は法律上の用語ではなく、サービスの名称です。 中身は死後事務委任契約であることがほとんどです。名称ではなく、契約書に書かれた事務の範囲を確認してください。 葬儀だけなのか、精算・解約・家財整理まで含むのかで、費用も内容も変わります。
Q5. 葬儀費用は相続税から控除できますか。
A. 控除できます。 ただし範囲があり、香典返しの費用、墓碑・墓地の購入費、初七日など法会の費用は控除できません。 通夜・本葬の費用、火葬・埋葬・納骨、お布施・読経料・戒名料は控除できます。領収書のないお布施も、メモを残せば控除できます。
Q6. 受け取った香典に税金はかかりますか。
A. かかりません。 香典は相続財産ではなく、社会通念上相当と認められる範囲であれば贈与税もかかりません。ただし香典返しの費用は葬式費用として控除できません。
Q7. 契約はいつ結べばよいですか。
A. 判断能力があるうちです。 死後事務委任契約は本人と受任者の契約ですので、判断能力が低下した後では結べません。 認知症の診断を受けてからでは間に合わないことがあります。
Q8. 相続人がいる場合でも、死後事務委任契約は必要ですか。
A. 状況によります。 相続人が近くにいて協力が得られるなら、必ずしも必要ではありません。一方、相続人が遠方・高齢・疎遠という場合は有効です。 ただし推定相続人との間で後日トラブルにならないよう、契約の存在をあらかじめ伝えておくことをおすすめします。
まとめ
- 喪主は法律上の資格ではありません。 誰でもなれます
- 実際に困るのは契約者・支払者・手続きを進める人が決まらないことです
- 死後事務委任契約で、葬儀の手配から精算・解約・家財整理まで委任できます
- 「喪主代行」サービスの実質は、多くが死後事務委任契約です
- 遺言書では代われません。 遺言書が開封されるのは葬儀の後です
- 遺言執行者は、葬儀を手配する立場ではありません
- 費用は預託金・生命保険・信託・預貯金の仮払い制度で用意します
- 事業者選びでは、費用の内訳、預託金の管理、解除時の返還、倒産時の取扱いを確認してください
- 令和6年6月の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が判断の基準になります
- 葬式費用は債務控除できます。 ただし香典返し・墓地の購入費・法会の費用は対象外です
- 契約は判断能力があるうちにしか結べません
ご相談のご案内
「頼れる家族がいない」というご相談は、決して珍しくありません。 死後事務委任契約を扱う提携先のご紹介と、契約内容の税務面の確認、相続税申告までの窓口の一本化を承ります。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
- 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
- 消費者庁 高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドラインについて
- 消費者庁 いわゆる「高齢者等終身サポート事業」の利用に関する注意点
- 厚生労働省 身寄りのない方への対応について
- e-Gov 戸籍法
- e-Gov 民法
※本記事の内容は2026年9月時点の法令および令和6年6月の高齢者等終身サポート事業者ガイドラインに基づいています。

