自筆証書遺言書保管制度とは?法務局に預ける5つのメリット
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月6日 最終更新日:2026年9月6日
【結論】3,900円で、紛失と検認の手間がなくなります
自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた遺言書を法務局が預かってくれる制度です。2020年(令和2年)7月10日に始まりました。手数料は1通3,900円。預けておけば紛失や改ざんの心配がなく、亡くなった後の家庭裁判所の検認も不要になります。ただし法務局が確認するのは日付や署名押印といった外形的な形式までで、内容が有効かどうかまでは見てもらえません。「預けたから安心」ではなく、「紛失と検認の問題が解決した」と理解してください。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 開始 | 令和2年(2020年)7月10日 |
| 手数料 | 1通3,900円(保管申請1件あたり) |
| どこへ | 全国の遺言書保管所(法務局の本局・支局) |
| 誰が申請するか | 遺言者本人が出頭(代理・郵送は不可) |
| 検認 | 不要になります |
| 保管期間 | 原本は死亡の日から50年、画像データは150年 |
| 確認されること | 日付・署名押印などの外形的な形式 |
| 確認されないこと | 内容が有効かどうか、遺留分を侵害していないか |
この制度が解決する5つの問題
自筆証書遺言には、昔から4つの弱点がありました。この制度は、そのうち大半を解決します。
1. 紛失しない
自宅の金庫や引き出しに保管していると、火災・水害・引っ越しで失われることがあります。法務局が原本を保管するため、この心配がなくなります。
2. 改ざん・隠匿されない
相続人にとって不利な内容の遺言書が、発見者によって処分されるという事態が現実にあります。法務局が保管していれば起こりません。
3. 見つけてもらえる
書いたことを誰も知らないまま、遺品整理で捨てられる——これが最も多い失敗です。
この制度では、次の仕組みがあります。
- 死亡時の通知:あらかじめ指定した方(3名まで)に、法務局から遺言書を保管している旨が通知されます
- 関係遺言書保管通知:相続人の1人が閲覧等をすると、他の相続人全員にも通知が届きます
4. 家庭裁判所の検認が不要になる
通常、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認を経なければ手続きに使えません。申立てから期日まで1〜2か月かかります。
この制度を使えば、検認は不要です。 相続開始後すぐに手続きへ進めます。
5. 形式の不備を、ある程度は防げる
保管の申請時に、日付・署名押印・様式が確認されます。明らかな形式不備であれば、その場で指摘を受けられます。
⚠️ ただし、これは形式の確認だけです。
⚠️ この制度が解決しないこと
ここを誤解したまま利用される方が、非常に多くいらっしゃいます。
| 解決すること | 解決しないこと |
|---|---|
| 紛失・改ざん | 内容が有効かどうか |
| 発見されない | 遺留分を侵害していないか |
| 検認の手間 | 財産の特定が曖昧でないか |
| 明らかな形式不備 | 書いた後に増えた財産の扱い |
| 遺言執行者を決めているか | |
| その分け方で相続税がいくらになるか |
法務局は、内容の相談には応じません。 「この書き方で大丈夫ですか」と聞いても、答えは返ってきません。
「預けたから安心」ではありません。 中身の設計は、別途ご自身で考えるか、専門家に相談する必要があります。
手続きの流れ
1. 遺言書を作る
法務省令で定められた様式に従って作成します。
- A4サイズ
- 余白が必要(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上)
- 片面のみに記載
- 各ページにページ番号
- ホチキス等で綴じない
全文自筆・日付・氏名・押印という自筆証書遺言の要件は、当然に必要です。財産目録はパソコンで作成できます(各ページに署名押印)。
2. 保管所を決める
次のいずれかを管轄する遺言書保管所へ申請します。
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産の所在地
3. 予約する
事前予約が必要です。法務局手続案内予約サービスから予約します。
4. 本人が出頭する
⚠️ 遺言者本人が、必ず出頭しなければなりません。 代理人による申請も、郵送での申請もできません。
持参するもの:
- 遺言書(封をしない)
- 保管申請書
- 本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写しなど
- 本人確認書類(顔写真つきのもの)
- 手数料 3,900円(収入印紙)
5. 保管証を受け取る
手続きが済むと、保管番号が記載された保管証が交付されます。この保管証は、相続人が後で照会する際の手がかりになります。 大切に保管し、ご家族に存在を伝えておいてください。
亡くなった後、どうなるか
相続人などは、次の手続きができます。
| 手続き | 内容 | 手数料 |
|---|---|---|
| 遺言書保管事実証明書の交付請求 | 自分が関係する遺言書が預けられているかを確認できます | 1通800円 |
| 遺言書情報証明書の交付請求 | 遺言書の内容の証明書。これで各種手続きができます | 1通1,400円 |
| モニターによる閲覧 | 画像を閲覧 | 1回1,400円 |
| 原本の閲覧 | 保管している保管所でのみ | 1回1,700円 |
遺言書情報証明書があれば、検認を経ずに、金融機関の手続きや相続登記に進めます。
そして、相続人の1人が閲覧や証明書の交付を受けると、法務局から他の相続人全員へ通知が届きます。 一部の相続人だけで手続きが進むことを防ぐ仕組みです。
公正証書遺言と、どちらを選ぶか
| 保管制度つき自筆証書 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 費用 | 3,900円 | 財産額に応じた手数料 |
| 内容のチェック | なし(形式のみ) | 公証人が関与 |
| 証人 | 不要 | 2人以上必要 |
| 出頭 | 本人が必ず出頭 | 出張も可能 |
| 字が書けない場合 | 利用できません | 作成できます |
| 判断能力への疑義 | 後から争われる余地あり | 公証人が意思を確認 |
| 検認 | 不要 | 不要 |
費用を抑えたい、内容がシンプル → 保管制度つき自筆証書
確実さを重視、財産が複雑、判断能力に不安 → 公正証書
詳しくは 遺言書の種類と選び方 をご覧ください。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
東京の遺言では、財産の特定が特に重要になります。
- 借地の上の建物(土地は借地権、建物は所有権)
- 私道の持分(記載漏れが多い)
- 分譲マンションの敷地権
- 共有名義の不動産
「自宅を長男に」という書き方では足りません。 登記事項証明書のとおりに、地番・家屋番号・持分まで特定する必要があります。
法務局は、この特定が十分かどうかは見てくれません。 形式が整っていれば保管されます。
保管制度を使う場合ほど、書く前の準備が重要です。
よくある質問
Q1. 手数料はいくらですか。
A. 保管の申請1件につき3,900円です。収入印紙で納めます。保管期間中の費用はかかりません。亡くなった後、相続人が証明書を請求する際には別途手数料(1通1,400円など)がかかります。
Q2. 代理人に頼めますか。
A. できません。遺言者本人が遺言書保管所へ出頭する必要があります。 郵送での申請もできません。事前予約のうえ、ご本人がお越しください。
Q3. 法務局で内容を見てもらえますか。
A. 見てもらえません。 確認されるのは日付・署名押印・様式といった外形的な形式までです。内容が有効か、遺留分を侵害していないか、財産の特定が十分かは、一切チェックされません。 法務局は内容の相談にも応じません。
Q4. 預ければ、その遺言書は必ず有効になりますか。
A. なりません。 形式が整っていても、内容に問題があれば争いになります。「預けたから安心」ではなく、「紛失と検認の問題が解決した」とお考えください。
Q5. 家族に知らせておく必要はありますか。
A. お勧めします。 死亡時の通知制度(あらかじめ3名まで指定可)を利用できますし、保管証をご家族に見せておけば確実です。相続人は「遺言書保管事実証明書」で預けられているかを確認できますが、そもそも探そうと思わなければ調べません。
Q6. 書き直したくなったら、どうしますか。
A. 保管の撤回ができます。撤回書を提出して遺言書を返してもらい、書き直して改めて申請します。撤回に手数料はかかりません。 新しい遺言書の保管申請には、あらためて3,900円がかかります。
Q7. 検認が不要になるのは、この制度だけですか。
A. 公正証書遺言も検認不要です。 検認が必要なのは、法務局に預けていない自筆証書遺言と、秘密証書遺言です。
Q8. どこの法務局でもよいですか。
A. 遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所に限られます。すべての法務局が保管所になっているわけではありませんので、事前にご確認ください。
まとめ
- 自筆証書遺言書保管制度は、2020年7月10日に始まりました
- 手数料は1通3,900円。原本は死亡から50年、画像データは150年保管されます
- 紛失・改ざん・発見されないリスクがなくなります
- 家庭裁判所の検認が不要になります
- 遺言者本人が出頭する必要があります(代理・郵送は不可)
- 形式の確認はありますが、内容の有効性は保証されません
- 遺留分・財産の特定・遺言執行者・税額への影響は、別途ご自身で確認が必要です
- 費用を抑えるなら保管制度つき自筆証書、確実さを重視するなら公正証書
ご相談のご案内
遺言書を書く前に、財産の全体像と相続税の試算をしておくことをお勧めします。 「誰に何を渡すか」で税額が変わるためです。法務局は、その部分を見てくれません。
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監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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出典
※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。手数料や様式は変更されることがありますので、申請前に必ず法務省・法務局の最新情報をご確認ください。

