相続人がいない場合、財産はどうなる?特別縁故者と国庫帰属

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月6日 最終更新日:2026年9月6日


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【結論】最終的に国のものになります。ただし手続きを踏む必要があります

相続人が誰もいない場合、財産は自動的に国のものになるわけではありません。家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、債権者への支払いや、相続人を探す公告を経て、それでも引き取り手がなければ最終的に国庫へ帰属します。この過程で、生前に故人と特別の縁故があった人が家庭裁判所に申し立てれば、財産の全部または一部を受け取れる場合があります。これを特別縁故者といいます。ただし認められるかどうかは裁判所の判断です。確実に渡したい相手がいるなら、遺言書を書いてください。

ポイント内容
自動的に国のものになるかなりません。手続きが必要です
手続き家庭裁判所が相続財産清算人を選任
誰が申し立てるか利害関係人(債権者・特別縁故者になりうる人など)または検察官
期間1年以上かかるのが通常です
特別縁故者認められれば財産を受け取れます(保証はありません
最終的に国庫に帰属します
確実な方法遺言書を書くこと。これに勝る手段はありません


「相続人がいない」とは、どういう状態か

思っているより、当てはまる方は多くいます。

ケース状況
もともと相続人がいない配偶者も子もなく、父母も他界し、兄弟姉妹もいない(または全員他界し甥姪もいない)
全員が相続放棄した借金があり、相続人全員が放棄した
相続人が行方不明生死不明で、失踪宣告も出ていない
相続人の資格を失った相続欠格・廃除

2番目が意外に多くあります。 負債を理由に子・父母・兄弟姉妹が順に放棄していくと、最終的に相続人が誰もいない状態になります。


手続きの流れ

自動的に国のものになるのではなく、家庭裁判所を通した手続きが必要です。

  1. 相続財産清算人の選任申立て(利害関係人または検察官が、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ)
  2. 選任と公告(清算人が選ばれ、相続人を探す公告と、債権者・受遺者への請求申出の公告が行われます)
  3. 債権者・受遺者への支払い(財産を換価し、支払います)
  4. 相続人の捜索の公告(一定期間、相続人が現れるかを待ちます)
  5. 特別縁故者からの申立て(相続人不存在が確定してから3か月以内
  6. 残った財産は国庫へ帰属

全体で1年以上かかるのが通常です。

⚠️ 令和5年(2023年)4月1日から、制度が変わりました。
以前は「相続財産管理人」と呼ばれ、公告を3回に分けて行う必要がありました。
改正により「相続財産清算人」という名称になり、公告が同時にできるようになったため、
手続きにかかる期間が短縮されました。古い記事では旧名称のままのものがあります。


特別縁故者とは

相続人ではないけれど、故人と特別の縁故があった人が、財産を受け取れる制度です。

認められうる人

類型
生計を同じくしていた人内縁の配偶者、事実上の養子、同居していた親族
療養看護に努めた人長年介護をしていた親族、知人
その他特別の縁故があった人個別に判断されます

申立ての期限

相続人不存在が確定してから3か月以内です。この期限を過ぎると申し立てられません。

⚠️ 認められる保証はありません

「長年お世話をした」というだけでは足りない場合があります。 裁判所が個別に判断し、財産の全部が認められることも、一部だけのことも、認められないこともあります。

確実に渡したいなら、遺言書を書いてください。 これに勝る方法はありません。


特別受益や共有持分の扱い

不動産に共有者がいる場合は、扱いが異なります。

共有していた不動産の持分は、特別縁故者への分与がされなかったときに、他の共有者に帰属します。国庫へ行く前に、この段階が入ります。


費用は誰が払うのか

申立てをする人が、まず負担します。

  • 申立ての手数料・郵便切手代
  • 予納金(清算人の報酬などに充てるため、数十万円から100万円程度を裁判所に納めるよう求められることがあります)

予納金は、財産から支払えた場合には返ってくることがあります。 ただし財産が少なければ戻りません。

「放置されている財産があるが、誰も動かない」という状態が生じるのは、この費用の問題が大きく関係しています。


確実な方法は、遺言書です

ここまで読んでいただければ分かるとおり、相続人がいない場合の手続きは長く、費用がかかり、結果も確実ではありません。

遺言書があれば、この過程はほぼ不要になります。

遺言書がない遺言書がある
手続き清算人の選任から1年以上遺言のとおりに執行
費用予納金が必要な場合あり遺言執行者の報酬
結果不確実(特別縁故者が認められるとは限らない)確実
渡せる相手特別縁故者と認められた人のみ誰にでも(法人・団体への遺贈も可能)

お世話になった方、支援したい団体、菩提寺。渡したい先があるなら、遺言書で指定してください。

さらに、遺言書だけでは葬儀も納骨も進みません。 死後事務委任契約もあわせてご検討ください。


税理士が関われること・関われないこと

相続財産清算人の選任申立ての代理は、弁護士・司法書士の業務です。 税理士は行えません。

当センターが行えるのは次のことです。

  • 財産の全体像の把握と評価
  • 相続税の申告が必要かどうかの判断(特別縁故者が財産を取得した場合、相続税の課税対象になります
  • 生前のご相談(遺言・死後事務委任・身元保証の設計)
  • 窓口の一本化と進行の管理

なお特別縁故者として財産を取得した場合、その人は相続人ではないため、相続税額が2割加算されます。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

単身世帯の多い都市部では、この問題が特に起きやすくなります。

  • 賃貸住宅にお住まいで、残置物の処理を誰も引き受けられない
  • 分譲マンションの管理費が滞納したまま、所有者不明になる
  • 借地の上の建物で、地主が対応に困る
  • 遠方の親族が、費用を理由に清算人の申立てをしない

「誰も困らない」ということはありません。 大家さん、管理組合、地主、隣地の所有者、そして最終的には自治体が対応することになります。

ご自身が生前にできることは、遺言書と死後事務委任契約です。 どちらも判断能力があるうちでなければ結べません。

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よくある質問

Q1. 相続人がいないと、財産は自動的に国のものになりますか。

A. 自動的にはなりません。 家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、債権者への支払い、相続人を探す公告、特別縁故者からの申立ての受付を経て、それでも残った財産が国庫へ帰属します。全体で1年以上かかるのが通常です。

Q2. 内縁の配偶者は相続できますか。

A. 相続人にはなれません。 ただし特別縁故者として家庭裁判所に申し立て、認められれば財産を受け取れる可能性があります。ただし保証はありません。 確実に渡したいなら、遺言書を書いてください。

Q3. 特別縁故者の申立てに期限はありますか。

A. あります。相続人不存在が確定してから3か月以内です。この期限を過ぎると申し立てられません。

Q4. 長年介護をしてきました。認められますか。

A. 療養看護に努めた人は特別縁故者の類型に含まれますが、認められるかどうかは家庭裁判所が個別に判断します。 全部が認められることも、一部だけのことも、認められないこともあります。介護の記録を残しておくことが、判断材料になります。

Q5. 手続きの費用は誰が払いますか。

A. 申立てをする人がまず負担します。 手数料や郵便切手代のほか、予納金として数十万円から100万円程度を求められることがあります。財産から支払えた場合には返ってくることもありますが、財産が少なければ戻りません。

Q6. 特別縁故者が財産を受け取ると、税金はかかりますか。

A. 相続税の課税対象になります。 さらに相続人ではないため、相続税額が2割加算されます。 財産を受け取れることが決まった段階で、申告が必要かどうかを確認してください。

Q7. 相続人全員が放棄した場合も、この手続きになりますか。

A. なります。 子・父母・兄弟姉妹が順に全員放棄すると、相続人が誰もいない状態になります。この場合も相続財産清算人の選任が必要です。放棄した方には、財産を管理する義務が残る場合がありますので、放置しないでください。

Q8. 生前にできることは何ですか。

A. 遺言書を書くことです。 これに勝る方法はありません。渡したい相手がいるなら遺言で指定してください。法人や団体への遺贈もできます。あわせて、葬儀や納骨、解約手続きを誰に任せるかを決める死後事務委任契約もご検討ください。どちらも判断能力があるうちでなければ結べません。


まとめ

  • 相続人がいなくても、財産は自動的に国のものにはなりません
  • 家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、1年以上かけて手続きが進みます
  • 令和5年4月1日から「相続財産管理人」→「相続財産清算人」に変わり、期間が短縮されました
  • 特別縁故者として認められれば財産を受け取れます。申立ては相続人不存在の確定から3か月以内
  • 認められる保証はありません。確実に渡したいなら遺言書です
  • 特別縁故者が取得した財産は相続税の対象で、2割加算されます
  • 相続財産清算人の申立ては弁護士・司法書士の業務です

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

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出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。実際の判断は個別の事情により異なりますので、必ず専門家にご相談ください。



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