年末の駆け込み贈与|暦年と相続時精算課税、12月31日までにどちらで渡すか

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.5万人)。

公開日:2026年11月2日


【結論】2024年から、駆け込み贈与の答えが変わりました

年末に「今年の110万円」を子や孫に渡す。長く続いてきた相続対策です。
ところが2024年の改正で、同じ110万円でも、どの制度で渡すかによって、あとで残るかどうかが変わるようになりました。

暦年課税の110万円相続時精算課税の110万円
贈与税かかりませんかかりません
親が亡くなったとき最長7年分が相続財産に戻されます戻されません
申告不要不要。ただし最初の年に届出書が必要
あとで切り替えできますできません(その親からの贈与は、以後ずっと精算課税)

親が高齢なら、精算課税の110万円のほうが確実に残ります。
暦年の110万円は、親が数年以内に亡くなると相続財産に足し戻され、結局は相続税の対象になるからです。

そして期限は12月31日です。金融機関は12月31日から1月3日まで休業するので、振込で渡すなら実質的には12月30日まで。年末は窓口も混みます。12月中旬までに済ませてください。


年内に決めることは、3つだけです

決めること判断の軸
①誰から、誰へ父から?母から? 子へ?孫へ?
②暦年か、精算課税か渡す側の年齢と健康状態。この記事の中心です
③いくら110万円ちょうどか、超えて贈与税を払うか

②を決めるには、暦年の110万円がいつ「戻される」のかを知る必要があります。


暦年の110万円は、いつ戻されるのか

亡くなる前の一定期間に、暦年課税で受けた贈与は、相続財産に足し戻して相続税を計算します。これを生前贈与加算といいます。この期間が、2024年1月1日以後の贈与から3年→7年に延びました。延長は段階的です。

亡くなった日戻される贈与
〜2026年(令和8年)12月31日亡くなる前3年以内
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日から亡くなった日まで、すべて
2031年(令和13年)1月1日〜亡くなる前7年以内

2行目に注目してください。
2027年から2030年に相続が起きると、2024年以後に暦年で渡した分は、すべて戻されます。今年の年末に渡す110万円も、来年の年末に渡す110万円も、です。

延びた部分(亡くなる前3年より前の分)については、合計100万円までは戻されません。救済はそれだけです。

一方、精算課税の110万円(基礎控除)は、何年後に亡くなっても戻されません。戻されるのは、110万円を超えた部分だけです。

どれくらい違うのか

母(82歳)から長男へ、2026年から毎年12月に110万円を5年間渡したとします。母が2031年に亡くなった場合です。

暦年で渡した精算課税で渡した
渡した合計550万円550万円
贈与税0円0円
相続財産に戻される額最大450万円(550万円から100万円を控除)0円
相続税の税率が20%の家なら最大90万円の相続税0円

「非課税で渡したつもり」が、相続のときに課税されます。精算課税ならこれが起きません。

※100万円の控除は、亡くなる前3年より前の贈与が対象です。3年以内の分には使えないため、実際の戻し額は渡した時期と亡くなった日によって変わります。


親の年齢と健康で選びます

渡す側の状況向いているのは
70代後半以上、または持病がある精算課税。暦年で渡すと、戻される可能性が高いです
60代〜70代前半で、健康暦年でもよい。7年を超えて長生きすれば戻されません。110万円を超えて低い税率で渡す手も使えます
60歳未満暦年だけ。精算課税は贈与した年の1月1日に60歳以上が条件です
相続税がかからない家急ぐ必要はありません。戻されても税額が出ないためです

最後の行が、実はいちばん大事です。
遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を下回るなら、そもそも相続税がかかりません。駆け込みで渡す意味がない家もあります。先に 相続税の計算シミュレーション で概算を出してください。

精算課税を使える人

条件判定する日
渡す人60歳以上の父母・祖父母贈与した年の1月1日
受け取る人18歳以上の子・孫(推定相続人または孫)贈与を受けた年の1月1日

2026年12月に渡すなら、2026年1月1日時点の年齢で判定します。今年の誕生日で60歳になった親からは、今年は精算課税を使えません。


一番効く組み合わせ:父は精算課税、母は暦年

暦年の110万円と、精算課税の110万円は別枠です。

精算課税は渡す人ごとに選びます。父からの贈与は精算課税、母からの贈与は暦年、という組み合わせができます。

長男が1年に受け取る非課税で受け取れる合計
父も母も暦年110万円(2人分を合わせて110万円)
父も母も精算課税110万円(2人で分け合います)
父は精算課税、母は暦年220万円

2行目が落とし穴です。
「精算課税のほうが得なら、両親とも精算課税に」と考えがちですが、同じ年に2人以上から精算課税で受け取ると、110万円は2人で按分します。枠は増えません。

どちらの親を精算課税にするかは、より高齢のほう、または財産が多くて相続税がかかる見込みが高いほうを選ぶのが基本です。

孫へ渡すなら、暦年が向いています

生前贈与加算で戻されるのは、相続や遺贈で財産を受け取った人への贈与だけです。相続人でない孫は、ふつうは何も相続しないので、暦年で渡した分は戻されません。

ただし、孫が遺言で財産を受け取る、生命保険金の受取人になっているといった場合は、孫も戻される側に入ります。詳しくは 生前贈与の7年ルール をご覧ください。


精算課税を選ぶなら、届出書を忘れないでください

110万円以下なら、贈与税の申告は要りません。
ただし、最初の年は「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。申告書を出さない年でも、届出書は出します。

何を相続時精算課税選択届出書(戸籍謄本などを添付)
いつ贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日(2026年の贈与なら2027年2月1日〜3月15日)
誰が受け取った人
どこへ受け取った人の住所地の税務署

出し忘れると、精算課税にはなりません。暦年課税として扱われ、7年ルールの対象に入ります。年内に渡して安心し、3月に届出書を忘れる。駆け込みでいちばん多いのがこの失敗です。

一度選ぶと、戻れません

その親からの贈与は、以後ずっと精算課税です。暦年課税には戻せません。

年110万円を超えた部分は、累計2,500万円までは贈与税がかからず、超えると一律20%。そして110万円を超えた部分は、何年前の贈与でも、贈与したときの価額で相続財産に加えられます。制度の全体は 相続時精算課税とは にまとめています。

精算課税で渡してはいけないもの

年末だからと、実家などの不動産を精算課税で渡すのは待ってください。

不動産を精算課税で生前にもらうと
小規模宅地等の特例(自宅の土地を80%減額)使えません
相続後に売るときの空き家の3,000万円特別控除使えません(相続または遺贈で取得した家が対象のため)
登録免許税・不動産取得税相続より高くなります

駆け込みで精算課税を使うなら、渡すのは現金にしてください。


年末が期限の非課税制度が、もう1つあります

住宅取得等資金の贈与の非課税は、2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象です。

親や祖父母から、子や孫が住宅を買う・建てるための資金を受け取る場合、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外なら500万円まで贈与税がかかりません。暦年の110万円や精算課税とも併用できます。

延長されるかどうかは、まだ決まっていません。例年どおりなら12月に公表される税制改正大綱で分かります。家の購入を考えている子や孫がいるなら、延長を前提にせず、年内に間に合うかを確かめてください。要件は 住宅取得等資金の贈与の非課税 にまとめています。

なお、教育資金の一括贈与の非課税は、2026年3月31日で終了しています。延長されませんでした。いまから新たに使うことはできません。


駆け込みで失敗する5つのこと

① 子の名義の口座に入れただけ

通帳と印鑑を親が持ったままなら、それは贈与ではなく名義預金です。相続のときに親の財産として扱われます。受け取った人が自分で管理できる状態にしてください。

② 着金が年をまたいだ

12月31日に振込の手続きをしても、金融機関は休業です。着金が1月なら、翌年の贈与になります。翌年の110万円枠を先食いし、今年の枠は使わずに終わります。

③ 贈与契約書がない

贈与は「あげる」「もらう」の合意で成り立つ契約です。あとで「本当に贈与だったのか」と問われたときに示せるものが要ります。毎年、日付と金額を書いた贈与契約書を作り、双方が署名してください。

④ 精算課税の届出書を出していない

上で書いたとおりです。2027年3月15日までに、受け取った人が出します。

⑤ 親の判断能力が落ちている

贈与は契約なので、渡す人に判断能力が必要です。認知症が進んでいると、贈与そのものが成り立たないおそれがあります。家族が代わりに振り込んでも、贈与にはなりません。判断能力があるうちにしかできない対策については、任意後見や家族信託もご覧ください。


12月までのスケジュール

いつやること
11月中相続税がかかるかの見込みを確かめる。誰から誰へ、暦年か精算課税かを決める
12月上旬贈与契約書を作る。受け取る人の口座を確認する
12月中旬まで振り込む(年末は窓口・ネットとも混みます)
12月30日金融機関の年内最終営業日。ここを過ぎると翌年扱い
2027年2月1日〜3月15日精算課税を選んだ場合は届出書を提出。暦年で110万円を超えた場合は贈与税の申告と納付

【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

この3区では、「相続税はかからないと思っていた」が外れることが多いです。土地の評価額が高く、自宅の土地だけで基礎控除を超えることがあるためです。

その一方で、小規模宅地等の特例で自宅の土地を80%減額できれば、相続税がかからなくなる家も多い。どちらに転ぶかで、駆け込み贈与をすべきかどうかが正反対になります。

渡す前に、まず相続税がかかるかどうかを確かめてください。当センターは西新宿駅から徒歩約5分です。この3区を中心に、東京23区全域とZoomで全国に対応しています。


当センターでできること

暦年か精算課税かの判断単発のご相談(60分)でお受けします。33,000円、LINE公式アカウントにご登録の方は22,000円です
相続税がかかるかの試算相続税シミュレーション 330,000円(遺産総額1億円以下)
精算課税の届出書・贈与税の申告承ります
贈与契約書のひな形ご相談の際にお渡しします

ご相談のあと3年以内に相続税申告をご依頼いただいた場合、相談料は全額を申告報酬から差し引きます。料金は 料金表 をご覧ください。


よくある質問

年末の駆け込み贈与は、いつまでに渡せばよいですか。

12月31日までに、受け取る人のものになっている必要があります。金融機関は12月31日から休業なので、振込なら実質12月30日までです。余裕を持って12月中旬までに済ませてください。

暦年の110万円と精算課税の110万円は、何が違いますか。

親が亡くなったときに戻されるかどうかです。暦年の110万円は最長7年分が相続財産に戻されます。精算課税の110万円(基礎控除)は戻されません。

父と母の両方から、精算課税で110万円ずつもらえますか。

もらえますが、非課税になるのは合わせて110万円です。同じ年に2人以上から精算課税で受け取ると、110万円を按分します。父は精算課税、母は暦年にすれば、合わせて220万円まで贈与税がかかりません。

110万円以下なら、何も出さなくてよいですか。

暦年なら何も要りません。精算課税なら、最初の年に選択届出書が必要です。贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に、受け取った人が税務署へ出します。

精算課税の届出書を出し忘れたら、どうなりますか。

精算課税にはならず、暦年課税として扱われます。その結果、親が亡くなったときに戻される対象になります。

精算課税を選んだあとで、暦年に戻せますか。

戻せません。その親からの贈与は、以後ずっと精算課税です。ほかの人(たとえば母や祖父母)からの贈与は、別に選べます。

精算課税は誰でも使えますか。

渡す人が60歳以上の父母・祖父母、受け取る人が18歳以上の子・孫であることが条件です。年齢は贈与した年の1月1日で判定します。

孫に渡す場合は、どちらがよいですか。

相続人でない孫なら、暦年が向いています。孫が相続や遺贈で何も受け取らなければ、暦年で渡した分は戻されません。ただし遺言で財産を受け取る、生命保険金の受取人になっているといった場合は戻されます。

実家を精算課税で年内に渡してもよいですか。

おすすめしません。小規模宅地等の特例が使えなくなり、相続後に売るときの空き家の3,000万円特別控除も使えません。登録免許税と不動産取得税も相続より高くなります。

相続税がかからない家でも、駆け込み贈与をしたほうがよいですか。

急ぐ必要はありません。戻されても相続税額が出ないためです。先に相続税がかかるかどうかを確かめてください。

住宅資金の贈与の非課税は、いつまでですか。

2026年12月31日までの贈与が対象です。延長されるかどうかは、2026年11月時点では決まっていません。


まとめ

  • 期限は12月31日。金融機関は12月31日から休業なので、振込なら実質12月30日まで
  • 暦年の110万円は、最長7年分が相続財産に戻されます
  • 精算課税の110万円は、戻されません
  • 親が高齢なら精算課税、若くて健康なら暦年でもよい
  • 父は精算課税・母は暦年で、年220万円まで非課税
  • 両親とも精算課税にすると、110万円を2人で分け合います
  • 相続人でない孫へは暦年が向いています
  • 精算課税は最初の年に届出書(2027年2月1日〜3月15日)。出し忘れると暦年扱い
  • 精算課税は一度選ぶと戻れません
  • 不動産は精算課税で渡さない。小規模宅地等の特例と空き家の3,000万円控除を失います
  • 住宅資金の非課税は2026年12月31日まで。延長は未定
  • 相続税がかからない家は、急ぐ必要がありません。先に確かめてください

ご相談のご案内

暦年か精算課税かは、一度決めると戻せません。 そして年が明けると、今年の110万円は使えなくなります。決めるなら11月から12月上旬です。

当センターでは、相続税がかかるかどうかの見込みから、誰に・どちらで・いくら渡すかの判断まで、単発のご相談でお受けしています。LINE公式アカウントにご登録の方は22,000円(通常33,000円)です。

📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
オンライン面談に対応しています。ご来所が難しい方は 全国対応のオンライン相談 をご覧ください。

生前の対策の全体は 生前対策サービス、料金は 料金表 をご覧ください。


監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者45,000人・動画329本(2026年10月時点)。


出典

※本ページの内容は2026年11月2日時点の情報です。制度は改正されることがあります。
※住宅取得等資金の贈与の非課税は、2026年12月に公表される税制改正大綱で延長の有無が分かる見込みです。公表後に本ページを更新します。

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