取得費加算の特例|期限は3年10か月。相続税を納めた人だけが使えます

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.5万人)。

公開日:2026年11月2日


【結論】相続税を納めた人が、3年10か月以内に売ったときだけです

相続した財産を売ると、相続税を納めたうえに、譲渡所得にも課税されます。
この重さをやわらげる制度が、取得費加算の特例です。

納めた相続税のうち、売った財産に対応する分を取得費に足せます。取得費が増えれば、譲渡所得が減ります。

条件は3つだけで、空き家の3,000万円控除のように細かくありません。ただし、最初の1つで多くの方が外れます。

要件
①相続や遺贈により財産を取得した者であること
②その財産を取得した人に相続税が課税されていること
③その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

②が関門です。
遺産が基礎控除以下で相続税を納めていない方は、使えません。加算する相続税がないからです。配偶者の税額軽減を使って納税額が0円になった方も、同じく使えません。

相続税を納めていないなら、空き家の3,000万円控除のほうを検討してください。


期限は「3年10か月」。ただし起算点に気をつけてください

条文の表現はこうです。

その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
── 国税庁 No.3267

相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月。その翌日から3年なので、合わせておよそ3年10か月です。

相続開始(亡くなった日)相続税の申告期限取得費加算の期限
2024年3月15日2025年1月15日2028年1月15日
2025年6月1日2026年4月1日2029年4月1日
2026年1月20日2026年11月20日2029年11月20日

「3年10か月」は目安です。正確には申告期限から数えるので、ご自分の期限は申告書の控えで確かめてください。

期限は「譲渡の日」で判定します。引渡しの日か契約の日かを選べますが、どちらを選ぶかで期限内に収まるかが変わることがあります。ぎりぎりのときはご相談ください。


いくら加算できるのか

計算式はこうです。

その人の相続税額 ×
(その人の相続税の課税価格の計算の基礎とされた、売った財産の相続税評価額)
÷(その人の取得財産の価額 + 相続時精算課税適用財産の価額 + 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産の価額)

かみくだくと、自分が納めた相続税を、自分が取得した財産の中で「売ったものの割合」で按分するということです。

実例

父が死去。相続人は子2人。長男が取得した財産は2億円(うち売った土地の相続税評価額が8,000万円)。長男が納めた相続税は3,000万円。この土地を1億円で売った。取得費は不明で概算(5%=500万円)、譲渡費用300万円。

特例なし特例あり
売った金額1億円1億円
取得費(概算5%)500万円500万円
取得費加算額—1,200万円(3,000万円×8,000万円÷2億円)
譲渡費用300万円300万円
譲渡所得9,200万円8,000万円
税額(長期20.315%)約1,869万円約1,625万円

差は約244万円です。

空き家の3,000万円控除ほどの効果はありません。ただし、空き家特例が使えない物件(マンション、昭和56年6月以降の建築、同居家族がいた、1億円超)では、こちらが唯一の手段になります。

2つのきまり

譲渡益が上限です加算額が譲渡益を超えるときは、譲渡益相当額までになります。赤字をつくることはできません
財産ごとに計算します土地を2筆売ったなら、それぞれ別に計算します。まとめて1回ではありません

不動産だけの制度ではありません

相続した上場株式や投資信託を売ったときにも使えます。これは見落とされがちです。

売ったもの使えるか
土地・建物使えます
上場株式・投資信託使えます
非上場株式使えます
ゴルフ会員権、書画骨とう品など使えます(譲渡所得になるもの)
株式等の譲渡による事業所得・雑所得使えません

相続した株を売るときに証券会社は何も教えてくれません。源泉徴収ありの特定口座で売ると税金が引かれて終わりますが、この特例を使って確定申告すれば戻ってくることがあります。


相続時精算課税で生前にもらった財産も対象です

ここは誤解されやすいところです。

相続時精算課税を使って生前に贈与を受けた財産は、取得の原因が贈与です。そのため空き家の3,000万円控除は使えません。

しかし、取得費加算のほうは使えます。

相続時精算課税の財産は、贈与者が亡くなったときに相続税の課税価格に含めて計算されます。相続税を負担している以上、調整の対象になるという考え方です。国税庁(東京国税局)のチェックシートにも、はっきり書かれています。

譲渡資産に相続時精算課税の適用を受けた贈与により取得した財産(中略)を含みます。
── 東京国税局「相続税額の取得費加算の特例チェックシート」

計算式の分母にも、「その人の相続時精算課税適用財産の価額」が明記されています。

精算課税でもらった実家を、親の死後に売る
取得費・所有期間贈与者のものを引き継ぎます
空き家の3,000万円控除使えません
取得費加算の特例使えます
期限の起算点贈与を受けた日ではなく、贈与者が亡くなった日です

期限の起算点を間違えないでください。10年前に贈与を受けていても、期限は贈与者の相続開始から3年10か月です。

なお、令和6年1月1日以後に特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額は、贈与により取得した財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除額(年110万円)を控除した残額になります。


空き家の3,000万円控除と、どちらを選ぶか

この2つは選択適用です。両方は使えません。

空き家の3,000万円控除取得費加算
効果最高3,000万円を控除(相続人3人以上なら1人2,000万円)納めた相続税のうち対応分を取得費に加算
相続税を納めていない人使えます使えません
マンション使えません使えます
昭和56年6月以降の建築使えません使えます
同居家族がいた使えません使えます
譲渡対価1億円超使えません使えます
相続後に貸した使えません使えます
親族に売った使えません使えます
相続時精算課税で取得使えません使えます
期限相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日(かつ令和9年12月31日まで)相続開始から約3年10か月
土地建物以外使えません使えます(株式など)

要件を満たすなら、多くの場合は空き家控除のほうが大きいです。譲渡益が3,000万円以下なら、空き家控除で税額が0円になります。

取得費加算が上回るのは、相続税を多く納めていて、かつ譲渡益が非常に大きい場合です。相続税額が1億円、売った財産がそのうち半分を占めるといった規模になると、加算額が3,000万円を超えてきます。

実際には「空き家控除が使えないから取得費加算」という場面のほうが多いです。上の表の×印が、そのまま取得費加算の出番です。


申告に必要なもの

書類
相続税の申告書の控えこれがないと計算できません。第1表・第11表が要ります
相続税額の取得費加算額の計算明細書申告書に添付します
売ったときの売買契約書
譲渡費用の領収書仲介手数料、印紙税など
取得費が分かる資料亡くなった方が買ったときの契約書

相続税の申告を他の税理士に頼んだ場合も、控えがあれば計算できます。当センターで申告していなくても構いません。


取りこぼしやすい3つのこと

① 相続税の申告が終わったあとに、金額が変わった場合

税務調査や更正の請求で相続税額が変わると、取得費加算の額も変わります。譲渡所得の申告をやり直す必要が出てきます。

② 代償金を支払った場合

代償分割で他の相続人に代償金を払った場合、取得した財産の価額の計算に影響します。計算式の分子・分母の両方に関わるため、単純ではありません。この形になったときは、必ず個別に計算してください。

③ 期限後の申告

譲渡の期限(3年10か月)に間に合っていれば、申告そのものが期限後になっても適用できます。ただし無申告加算税と延滞税はかかります。気づいた時点ですぐに申告してください。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

この3区では、取得費加算の出番が多いです。

理由は2つあります。ひとつは、相続税を納める方の割合が高いこと。東京都の課税割合は全国平均のおよそ2倍で、土地の評価額だけで基礎控除を超えるためです。取得費加算は相続税を納めた人だけの制度なので、この地域では使える方が多くなります。

もうひとつは、空き家特例が使いにくいこと。マンションが多く、土地が高くて1億円を超えやすく、二世帯住宅で同居していたケースも多い。空き家控除の要件から外れたとき、残るのが取得費加算です。

当センターは西新宿駅から徒歩約5分です。この3区を中心に、東京23区全域とZoomで全国に対応しています。


当センターでできること

取得費加算額の計算できます。他の税理士が申告した案件でも承ります
空き家控除とどちらが有利かの試算できます
譲渡所得の確定申告165,000円から(税込)
相続した株式を売った場合の申告できます
相続税の申告できます(料金表)

よくある質問

取得費加算の特例は、誰が使えますか。

相続や遺贈で財産を取得し、相続税を納めた人です。相続税が0円だった方は使えません。

相続税が0円でした。使えますか。

使えません。加算する相続税がないためです。基礎控除以下だった場合も、配偶者の税額軽減で0円になった場合も同じです。

期限はいつまでですか。

相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。申告期限が相続を知った日の翌日から10か月なので、合わせておよそ3年10か月になります。

不動産以外にも使えますか。

使えます。相続した上場株式、投資信託、非上場株式、ゴルフ会員権など、譲渡所得になるものが対象です。ただし株式等の譲渡による事業所得・雑所得には使えません。

空き家の3,000万円控除と、両方使えますか。

使えません。選択適用です。要件を満たすなら空き家控除のほうが大きいことが多いですが、空き家控除が使えない物件では取得費加算が唯一の手段になります。

相続時精算課税でもらった不動産を売る場合も使えますか。

使えます。相続時精算課税の財産は贈与者の相続税の課税価格に含まれるためです。期限の起算点は、贈与を受けた日ではなく贈与者が亡くなった日です。

相続税の申告を他の税理士に頼みました。計算してもらえますか。

できます。相続税の申告書の控え(第1表・第11表)があれば計算できます。当センターで申告していなくても構いません。

加算できる金額に上限はありますか。

譲渡益が上限です。加算額が譲渡益を超えるときは、譲渡益相当額までになります。この特例で赤字をつくることはできません。

土地を2つ売りました。まとめて計算しますか。

財産ごとに計算します。それぞれについて加算額を出します。

申告を忘れていました。いまからでも使えますか。

売った時点で3年10か月の期限内なら、使えます。ただし無申告加算税と延滞税はかかります。気づいた時点ですぐに申告してください。


まとめ

  • 納めた相続税のうち、売った財産に対応する分を取得費に加算できます
  • 相続税を納めた人だけが使えます。0円だった方は使えません
  • 期限は相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(およそ3年10か月)
  • 譲渡益が上限です。赤字はつくれません
  • 財産ごとに計算します
  • 不動産だけでなく、株式や投資信託にも使えます
  • 相続時精算課税でもらった財産も対象です。ただし起算点は贈与者が亡くなった日
  • 空き家の3,000万円控除とは選択適用。両方は使えません
  • マンション、昭和56年6月以降の建築、同居家族あり、1億円超、親族に売却──空き家控除が使えない場面でこそ出番です
  • 計算には相続税の申告書の控えが要ります

ご相談のご案内

取得費加算は、知らなければ使われないまま終わります。 証券会社も不動産会社も教えてくれません。相続税を納めた方が3年10か月以内に売っているなら、まず確かめる価値があります。

当センターでは、他の税理士が申告した案件でも計算をお受けしています。相続税の申告書の控えをお持ちください。譲渡所得の確定申告は165,000円からです。

📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
オンライン面談に対応しています。ご来所が難しい方は 全国対応のオンライン相談 をご覧ください。

料金は 料金表 をご覧ください。


監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者45,000人・動画329本(2026年10月時点)。


出典

※本ページの内容は2026年11月2日時点の情報です。制度は改正されることがあります。

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