相続税の税務調査はどのくらい来る?令和6事務年度のデータと指摘されやすい5項目

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
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公開日:2026年9月10日 最終更新日:2026年9月12日


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相続税の申告後〇年は要注意!税務署が動くタイミング
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【結論】調査に入られると、8割以上で何かが見つかっています

国税庁が公表した令和6事務年度の実績では、相続税の実地調査は9,512件行われ、そのうち82.3%にあたる7,826件で申告漏れなどの非違が見つかりました。1件あたりの申告漏れ課税価格は3,093万円、追徴税額は867万円です。さらに文書や電話による「簡易な接触」が21,969件あり、こちらでも5,796件で非違が見つかっています。重要なのは「入られたら8割見つかる」という点です。つまり税務署は、当たりをつけてから来ています。備えるべきは「来ないようにする」ことではなく、「来ても指摘されない申告にしておく」ことです。

項目(令和6事務年度)実績前年度比
実地調査件数9,512件111.2%
申告漏れ等の非違件数7,826件108.7%
非違割合82.3%▲1.9ポイント
重加算税の賦課件数1,065件109.7%
重加算税の賦課割合13.6%+0.1ポイント
申告漏れ課税価格2,942億円107.2%
1件あたり申告漏れ課税価格3,093万円96.4%
1件あたり追徴税額867万円100.9%
追徴税額の合計824億円112.2%

調査に当たる確率はどのくらいか

「何%の人に調査が来るのか」は、国税庁が直接公表していません。

申告件数と実地調査件数の年度がずれるため、正確な割合は出せませんが、おおよその規模感は次のとおりです。

相続税の申告書の提出にかかる被相続人数は、近年おおむね15万人台で推移しています。これに対して実地調査は9,512件、簡易な接触は21,969件です。

単純に割ると、実地調査は数%台、簡易な接触を含めた何らかの接触は2割前後という規模になります。

この割合は、公表されている申告件数と調査件数から当センターが概算したものです。
国税庁が「調査割合」として公表している数値ではありません。目安としてご覧ください。

ここで見るべきは割合ではなく、非違割合82.3%のほうです。

税務署は無作為に選んでいません。 資料情報から当たりをつけ、申告漏れがありそうな案件に絞って調査に入っています。だから8割で見つかります。


いつ来るのか

多いのは、申告期限から1〜2年後の秋です。

時期内容
相続開始
10か月後申告期限
申告の翌年〜翌々年の8月〜11月実地調査が最も多い時期
5年(悪質な場合は7年)更正・決定の期間制限

税務署の事務年度は7月から翌年6月までです。 新しい事務年度が始まった後、秋口から調査が本格化します。

「申告してから1年経ったから大丈夫」ではありません。むしろこれからが本番です。


指摘されやすい5項目

1. 名義預金(最も多い)

配偶者や子・孫の名義になっているが、実質的には被相続人の財産だったもの。

税務署が見るのは名義ではなく、次の4点です。

  • 原資は誰が出したか
  • 通帳と印鑑を誰が管理していたか
  • 名義人はその預金の存在を知っていたか
  • 名義人は自由に使える状態だったか

「子の名義で毎年110万円を積み立てていた」というケースが典型です。 贈与契約書がなく、通帳も親が管理していれば、贈与は成立しておらず、被相続人の財産と判断されます。

名義預金とは?税務調査で最も指摘される財産

2. 手元現金

亡くなる直前に引き出した現金は、相続財産です。

国税庁が公表した令和6事務年度の調査事例には、相続開始前に引き出した多額の現金を相続人宅で保管したうえ、その存在を関与税理士にも伝えず申告から除外した事例が挙げられています。

税務署は被相続人の口座の取引履歴を、数年分さかのぼって確認しています。 大きな出金があれば、必ず使途を聞かれます。

預貯金の相続手続き|口座凍結から払い戻しまでの流れ

3. 生前贈与の申告漏れ

相続開始前7年以内(令和6年1月1日以後の贈与から順次延長)の贈与は、相続財産に加算します。

贈与税の申告をしていた場合、税務署はその記録を持っています。 加算漏れはすぐ分かります。

4. 生命保険・死亡退職金

契約内容によって、非課税枠が使えない場合があります。

  • 相続人以外が受け取った保険金(非課税枠なし+2割加算)
  • 被相続人が保険料を負担していた、他人名義の契約(生命保険契約に関する権利として課税されます)

特に見落とされやすいのが後者です。 契約者が子、被保険者も子だが、保険料を親が払っていた——この場合、解約返戻金相当額が相続財産になります。

生命保険金は相続税の対象?500万円×法定相続人の非課税枠

5. 土地の評価

過大に評価していた場合は、逆に還付につながります。

  • 貸家建付地・貸宅地の評価誤り
  • 小規模宅地等の特例の要件誤り
  • 縄伸び(実測面積と登記面積の相違)

評価は指摘される側にも、取り戻せる側にもなり得る項目です。

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申告漏れが多い財産は何か

国税庁は、申告漏れ相続財産の金額の構成比を公表しています。令和6事務年度は次のとおりです。

区分構成比
その他43.3%
現金・預貯金等29.1%
有価証券13.6%
土地12.3%
家屋1.7%

「その他」は生命保険金、家庭用財産、未収入金、貸付金などを含む区分です。

資産の種類として特定できるものでは、現金・預貯金等が最も多くなっています。 土地・家屋を合わせても14%で、不動産より金融資産のほうが圧倒的に問題になっています。

理由は単純です。 不動産は登記されていて隠せませんが、預金の動きは申告書に書かなければ分かりません。 ——と考える方がいるからです。実際には、税務署は取引履歴を取得できます。


加算税の重さ

指摘を受けた場合、本税に加えて加算税がかかります。

種類どんなとき割合の目安
過少申告加算税申告額が少なかった10%(一定額を超える部分は15%)
無申告加算税申告しなかった15%〜(金額により段階的に加重)
重加算税仮装・隠蔽があった過少申告35%/無申告40%
延滞税納付が遅れた期間に応じて

令和6事務年度は、非違件数7,826件のうち1,065件(13.6%)に重加算税が課されています。

重加算税は「うっかり」では課されません。 意図的に隠した、書類を偽った——そう判断された場合です。7件に1件がここに当たっているという事実は、重く受け止めるべきです。

なお、税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、加算税は軽減されます。 気づいた時点で動いてください。


調査を「来なくする」ことはできません

率直に申し上げます。調査に来るかどうかを、こちらでコントロールすることはできません。

できるのは、来ても指摘されない申告にしておくことだけです。

具体的には次の3つです。

1. 通帳の取引履歴を、こちらから確認しておく

過去5〜10年分を取り寄せ、大きな入出金の理由を説明できる状態にしておきます。 税務署が見るのと同じ資料を、先に見ておくということです。

2. 名義預金になり得るものを、事前に整理する

「これは名義預金ではないか」という論点を、申告前に検討します。 該当するなら相続財産として申告します。後から指摘されるより、加算税の分だけ有利です。

3. 判断が分かれる点は、根拠を書面で残す

土地の評価、小規模宅地等の特例の適用——判断の理由を残しておけば、調査の場で説明できます。

税理士法33条の2に基づく「書面添付制度」を利用すると、税務署は調査の前に税理士へ意見を聴取します。
この段階で疑問が解消されれば、実地調査に至らないことがあります。確実ではありませんが、有効な手段です。

当センターがこれまでに手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満です。 これは「来ないようにした」のではなく、上記の準備を申告の段階で行っている結果とご理解ください。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

東京の相続は、調査対象になりやすい条件がそろっています。

理由1 財産の規模が大きい

新宿区・中野区・世田谷区では、自宅の土地だけで数千万円から1億円を超えます。申告漏れがあった場合の追徴税額が大きいため、費用対効果の面で調査対象になりやすくなります。

理由2 金融資産が多く、動きが複雑

都心では、複数の金融機関、証券口座、外貨建て資産をお持ちの方が多くいます。資金の移動が多いほど、確認すべき点が増えます。

理由3 土地の評価に判断の余地が大きい

新宿区の私道、中野区の狭あい道路、世田谷区の高低差のある宅地——評価に補正が必要な土地が多く、判断が分かれます。

この3つ目は、指摘される側にも、取り戻せる側にもなります。 過大に評価していれば、更正の請求で還付を受けられます。

東京で相続税申告に強い税理士の選び方


よくある質問

Q1. 相続税の税務調査は、どのくらいの割合で来ますか。

A. 国税庁は「調査割合」を公表していません。 令和6事務年度の実地調査は9,512件、簡易な接触は21,969件で、これに対して申告書の提出にかかる被相続人数は近年おおむね15万人台です。当センターの概算では、実地調査は数%台、簡易な接触を含めると2割前後という規模になります。注目すべきは、調査に入られた場合の非違割合が82.3%である点です。

Q2. いつ頃来ますか。

A. 申告の翌年から翌々年の秋(8月〜11月)が最も多い時期です。税務署の事務年度が7月始まりのため、新しい事務年度に入ってから本格化します。更正・決定の期間制限は原則5年(偽りその他不正の行為があった場合は7年)です。

Q3. 税理士に頼めば調査は来ませんか。

A. 来ないとは言えません。 ただし書面添付制度を利用すれば、税務署は調査の前に税理士へ意見を聴取します。この段階で疑問が解消されれば、実地調査に至らないことがあります。確実ではありませんが、有効な手段です。

Q4. 調査では何を聞かれますか。

A. 被相続人の経歴・趣味・資産形成の経緯から始まり、通帳の大きな出金の使途、貸金庫の中身、家族名義の預金の管理状況などです。世間話のように見えて、すべて確認事項です。 分からないことは「分かりません」「確認します」で構いません。推測で答えないでください。

Q5. 申告漏れに気づいたら、どうすればよいですか。

A. 調査を受ける前に、自主的に修正申告をしてください。 加算税が軽減されます。逆に、調査の通知を受けた後では軽減幅が小さくなり、指摘を受けてからではさらに重くなります。 気づいた時点でご相談ください。

Q6. 重加算税はどんなときに課されますか。

A. 仮装・隠蔽があった場合です。「うっかり忘れた」では課されません。帳簿の改ざん、財産の隠匿、虚偽の答弁などが該当します。令和6事務年度は、非違件数7,826件のうち1,065件(13.6%)に課されています。

Q7. 相続税がかからなかった場合も、調査は来ますか。

A. 来ることがあります。 令和6事務年度には、無申告事案に対する実地調査が650件行われ、86.5%で非違が見つかっています。 1件あたりの申告漏れ課税価格は1億1,517万円と、通常の調査より大きくなっています。「申告していないから対象外」ではありません。

Q8. 逆に、払いすぎていた場合はどうなりますか。

A. 更正の請求により、還付を受けられることがあります。 期限は申告期限から原則5年です。土地の評価は判断が分かれる部分が大きく、見直しで税額が下がることは珍しくありません。 調査は「取られる」場面だけではありません。


まとめ

  • 令和6事務年度の実地調査は9,512件。そのうち82.3%で申告漏れ等が見つかっています
  • 1件あたりの申告漏れ課税価格は3,093万円、追徴税額は867万円
  • 簡易な接触は21,969件。 文書・電話でも是正が行われています
  • 重加算税は1,065件(非違件数の13.6%)
  • 調査が多いのは申告の翌年〜翌々年の秋
  • 指摘されやすいのは①名義預金 ②手元現金 ③生前贈与 ④生命保険 ⑤土地の評価
  • 申告漏れ財産で最も多いのは「その他」43.3%、次いで現金・預貯金等29.1%不動産より金融資産です
  • 調査を来なくすることはできません。 来ても指摘されない申告にしておくことが対策です
  • 書面添付制度を使うと、調査前に税理士への意見聴取が行われます
  • 払いすぎていた場合は、申告期限から原則5年以内なら更正の請求ができます

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監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
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出典

※本記事の数値は、国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表)に基づいています。調査割合は当センターによる概算であり、国税庁の公表値ではありません。



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