デジタル遺産の相続|暗号資産・電子マネー・ネット証券はどうなるか
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月12日 最終更新日:2026年9月12日
【結論】見つからないと、探せません。そして暗号資産は課税されます
デジタル遺産とは、ネット銀行・ネット証券・暗号資産・電子マネー・ポイント・サブスクなど、形のない財産や契約のことです。最大の問題は「存在に気づけない」ことにあります。通帳も郵便物も届かないため、ご家族が把握する手がかりがありません。そして暗号資産には、特有の重い問題があります。相続税の課税対象であり、しかも相続開始時の時価で評価されます。その後に暴落しても、納める相続税は下がりません。さらに秘密鍵やパスワードが分からず引き出せない場合でも、課税される可能性があります。「取り出せないのに税金だけかかる」という事態が現実に起こり得ます。
| 種類 | 相続の扱い | 相続税 |
|---|---|---|
| ネット銀行・ネット証券 | 通常の預貯金・有価証券と同じ | 課税 |
| 暗号資産 | 相続の対象。相続開始時の時価で評価 | 課税 |
| 電子マネー・ポイント | 規約によって分かれます(相続不可のものも多数) | 相続できるものは課税 |
| サブスク | 解約が必要(放置すると課金が続きます) | — |
| SNS・写真・メール | 財産ではありませんが、削除・引継ぎの手続きが必要 | — |
| アフィリエイト・ネット広告収入 | 相続の対象になり得ます | 課税 |
最大の問題は「存在に気づけない」こと
紙の通帳や郵便物がありません。
| 従来の財産 | デジタル遺産 |
|---|---|
| 通帳が引き出しにある | スマホの中にしかありません |
| 取引残高報告書が郵送で届く | メールで届きます(受信箱を見なければ分かりません) |
| 金融機関の粗品・カレンダーがある | 手がかりがありません |
| 印鑑・カードがある | パスワードだけです |
そして、スマートフォンにロックがかかっていると、何も確認できません。
探す手がかり
| 手がかり | 具体的に見るもの |
|---|---|
| スマートフォン・パソコン | アプリの一覧、ブラウザのブックマーク、保存されたパスワード |
| メール | 「取引報告書」「ご利用明細」「入金のお知らせ」で検索 |
| クレジットカードの明細 | 毎月の引き落としからサブスクや取引所が分かります |
| 銀行口座の入出金 | 取引所や証券会社への振込履歴 |
| 確定申告書の控え | 暗号資産の所得を申告していれば記載があります |
| 郵便物 | 本人確認書類の送付など、まれに届きます |
確定申告書の控えは、特に有力です。
暗号資産で20万円を超える利益が出ていれば、申告しているはずだからです。
預貯金の相続手続き|口座凍結から払い戻しまでの流れと必要書類
暗号資産 — 最も注意が必要です
相続税の課税対象です
暗号資産は相続財産であり、相続税がかかります。
評価は、相続開始時(亡くなった日)の時価です。
活発な市場が存在する暗号資産であれば、取引所が公表する課税時期の取引価格によります。
【重要】値下がりしても、税額は下がりません
ここが最も深刻な問題です。
【例】 相続開始時に3,000万円相当のビットコインを相続した場合
| 時点 | 評価額 |
|---|---|
| 相続開始時(課税される金額) | 3,000万円 |
| 3か月後に暴落 | 1,000万円 |
| 納める相続税 | 3,000万円を前提に計算 |
相続税は相続開始時の時価で計算されます。
その後どれだけ値下がりしても、税額は変わりません。
価格変動の大きい資産では、納税資金が足りなくなることがあります。
現金化のタイミングも含めて、早めの判断が必要です。
秘密鍵が分からなくても、課税される可能性があります
取引所に預けている場合(カストディ型)は、相続人が所定の手続きをすれば
引き継げることが一般的です。
問題は、ご本人が自分で管理していた場合(ハードウェアウォレット、
ペーパーウォレットなど)です。
秘密鍵・リカバリーフレーズが分からなければ、誰も取り出せません。
それでも、暗号資産の存在が確認できれば課税の対象になり得ます。
取り出せないのに税金だけかかる——これが現実に起こり得ます。
お持ちの方へ。
秘密鍵・リカバリーフレーズの保管場所を、必ずご家族に伝えられる形にしてください。
エンディングノートに直接書くのは危険です。「どこにあるか」だけを書き、
現物は貸金庫や耐火金庫に保管するといった方法が現実的です。
相続した暗号資産を売却したときの税金
相続後に売却すると、譲渡益は原則として雑所得(総合課税)になります。
株式のような申告分離課税(20.315%)ではありません。
所得が大きいと、住民税と合わせて最高55%の税率になります。
さらに、相続開始から3年10か月以内に売却した場合は、
支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度があります。
相続税と所得税の両方がかかるため、売却のタイミングは慎重にご検討ください。
電子マネー・ポイント — 規約によって分かれます
「相続できるかどうか」は、各社の利用規約で決まります。
| 傾向 | 例 |
|---|---|
| 相続できないと定めているもの | 多くのポイントプログラム、一部のプリペイド型電子マネー |
| 相続の手続きを設けているもの | 一部の電子マネー、残高の払戻しに応じるもの |
| 個別の対応になるもの | サービスにより判断が分かれます |
「LINE Payは相続できるか」といった個別の可否は、
本記事では断定しません。 規約は改定されるためです。
各サービスの利用規約、またはサポート窓口でご確認ください。
相続できるものは、相続税の課税対象になります。
残高が大きい場合は、財産の一覧に入れてください。
サブスクは、解約しないと課金が続きます
亡くなった後も、クレジットカードや口座から引き落とされ続けます。
| よくあるもの |
|---|
| 動画・音楽の配信サービス |
| クラウドストレージ |
| 新聞・雑誌の電子版 |
| ソフトウェアの年間ライセンス |
| 携帯電話・通信回線 |
| ウォーターサーバー、定期購入 |
クレジットカードの明細を、最低でも1年分確認してください。
年払いのものは、1か月分の明細では見つかりません。
なお、カードを解約すると引き落としは止まりますが、
契約自体は残り、未払金が発生することがあります。
サービス側の解約手続きまで行ってください。
SNS・写真・メールの扱い
財産ではありませんが、手続きが必要です。
| サービス | できること(一般的な傾向) |
|---|---|
| SNS各社 | 追悼アカウントへの移行、または削除申請 |
| クラウドストレージ | 一定の手続きでデータの取得や削除に応じる場合があります |
| メール | サービスにより対応が分かれます |
各社の手続きは変わることがあります。 公式のヘルプでご確認ください。
写真や動画は、ご家族にとって財産以上の意味を持つことがあります。
生前にバックアップを取り、保存場所をご家族に伝えておくことをおすすめします。
税務調査では、デジタル資産も見られます
「ネット上の資産だから分からないだろう」は通用しません。
税務署は、金融機関への照会権限を持っています。
暗号資産交換業者も照会の対象です。
令和6事務年度の相続税の実地調査は9,512件。そのうち82.3%で
申告漏れなどが見つかっています。
申告漏れが見つかった財産のうち、資産の種類として特定できるものでは
現金・預貯金等が最も多く、有価証券がこれに続きます。
意図的に隠せば、重加算税(35%または40%)の対象になります。
相続税の税務調査はどのくらい来る?令和6事務年度のデータと指摘されやすい5項目
生前にやっておくべきこと
デジタル遺産は、生前の準備で9割が解決します。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 一覧を作る | サービス名・ID・残高の目安を書き出す |
| パスワードの保管場所を決める | 一覧に直接書かず、保管場所だけを伝える |
| スマートフォンのロック解除方法 | 信頼できる方に伝える、または保管場所を決めておく |
| 使っていないサービスを解約する | 最も効果的です。 減らすだけでご家族の負担が減ります |
| 暗号資産の秘密鍵・リカバリーフレーズ | 保管場所を必ず共有できる形に |
| 不要なサブスクを整理する | 亡くなった後の解約の手間が減ります |
エンディングノートに書く場合は、書き方にご注意ください。
| ❌ 危険 | ✅ 安全 |
|---|---|
| パスワードをそのまま書く | 「パスワードは自宅の金庫に」と場所だけ書く |
| リカバリーフレーズを書く | 同上 |
エンディングノートは施錠されていないことが多く、
そのまま書くと盗難・紛失時のリスクが大きくなります。
エンディングノートと遺言書の違い|法的効力があるのはどちらか
おひとりさまが生前に準備すべき5つの契約【チェックリスト付き】
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
この3区では、デジタル遺産の問題が特に起こりやすくなります。
理由1 ネット銀行・ネット証券の利用率が高い
都心では、店舗を持たない金融機関のみを使っている方が珍しくありません。
通帳も郵便物もなく、ご家族が存在に気づけません。
理由2 単身世帯が多い
新宿区・中野区は単身世帯の割合が高い地域です。
同居のご家族がいなければ、スマートフォンを開く人すらいません。
理由3 資産規模が大きく、申告漏れの影響が大きい
自宅の評価額が高いため、すでに相続税がかかる水準にあるご家庭が多くあります。
そこにデジタル資産の申告漏れが重なると、追徴税額が大きくなります。
実際のご相談で、こういう形があります。
「父の部屋からハードウェアウォレットらしきものが出てきた。
中身も、パスワードも分からない」
この段階では、もう手の打ちようがないことがほとんどです。
お持ちの方は、いま保管場所を決めてご家族に伝えてください。
それだけで、この問題は防げます。
よくある質問
Q1. 暗号資産に相続税はかかりますか。
A. かかります。 相続財産として、相続開始時(亡くなった日)の時価で評価されます。
活発な市場が存在するものは、取引所が公表する課税時期の取引価格によります。
Q2. 相続した後に暴落しました。相続税は下がりますか。
A. 下がりません。 相続税は相続開始時の時価で計算されるためです。
3,000万円で評価されたものが1,000万円になっても、
3,000万円を前提に納税することになります。価格変動の大きい資産では、
納税資金の確保を早めにご検討ください。
Q3. パスワードが分からず、引き出せません。相続税はかかりますか。
A. 存在が確認できれば、課税の対象になり得ます。 「取り出せないのに
税金だけかかる」という事態が現実に起こります。取引所に預けている場合は、
相続人が所定の手続きをすれば引き継げることが一般的ですので、
まず取引所へお問い合わせください。
Q4. 相続した暗号資産を売ったら、税金はどうなりますか。
A. 譲渡益は原則として雑所得(総合課税)になります。株式のような申告分離課税
(20.315%)ではなく、所得が大きいと住民税と合わせて最高55%です。
相続開始から3年10か月以内の売却なら、支払った相続税の一部を取得費に加算できます。
Q5. 電子マネーやポイントは相続できますか。
A. 各社の利用規約によって分かれます。 相続できないと定めているものも多く、
一律には言えません。 規約は改定されるため、各サービスの規約または
サポート窓口でご確認ください。 相続できるものは相続税の課税対象です。
Q6. サブスクはどうすればよいですか。
A. クレジットカードの明細を最低1年分確認してください。年払いのものは
1か月分では見つかりません。カードを解約しても契約は残り、未払金が発生する
ことがありますので、サービス側の解約手続きまで行ってください。
Q7. パスワードをエンディングノートに書いてもよいですか。
A. おすすめしません。 エンディングノートは施錠されていないことが多く、
盗難・紛失時のリスクが大きくなります。「どこに保管しているか」だけを書き、
現物は金庫や貸金庫にというのが現実的です。
Q8. 税務署にネット上の資産は分かりますか。
A. 分かります。 税務署は金融機関への照会権限を持ち、暗号資産交換業者も対象です。
令和6事務年度の実地調査9,512件のうち、82.3%で申告漏れ等が見つかっています。
意図的に隠せば重加算税(35%または40%)の対象です。
まとめ
- デジタル遺産の最大の問題は、存在に気づけないことです
- 手がかりは、スマホのアプリ・メール・クレジットカードの明細・確定申告書の控え
- 暗号資産は相続税の課税対象。相続開始時の時価で評価されます
- その後値下がりしても、税額は下がりません
- 秘密鍵が分からず引き出せなくても、課税される可能性があります
- 相続後に売却すると、譲渡益は原則として雑所得(総合課税)です
- 3年10か月以内の売却なら、相続税の一部を取得費に加算できます
- 電子マネー・ポイントは規約によって分かれます。 一律には言えません
- サブスクは解約しないと課金が続きます。 カード明細を1年分確認してください
- 税務署はネット上の資産も把握できます
- 生前の準備で9割が解決します。 使っていないサービスを解約するだけでも効果があります
- パスワードはエンディングノートに直接書かず、保管場所だけを伝えてください
ご相談のご案内
「デジタル資産をどう申告すればよいか分からない」というご相談が増えています。
暗号資産の評価、取引所からの残高証明の取り方、売却時の税金まで対応します。
お持ちの方の生前のご相談も承ります。
一覧の作り方と、ご家族への伝え方をご案内します。ここを整えておくだけで、
残されたご家族の負担がまったく違います。
📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
監修者
天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター
相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。
出典
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について
- 国税庁 No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係
- 国税庁 No.1525 暗号資産交換業者から暗号資産を借り入れた場合の課税関係
- 国税庁 財産評価基本通達
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況
- 金融庁 暗号資産の利用者のみなさまへ
※本記事の内容は2026年9月時点の法令・各社の一般的な取扱いに基づいています。
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