地積規模の大きな宅地の評価|500㎡以上でも、新宿区では使えないことがあります

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日


【結論】面積を満たしても、容積率で外れることがあります

「土地が500㎡以上あるから、大きく減額できるはずだ」

そう聞いて期待される方は多いのですが、新宿区では外れることがよくあります。

東京都の特別区では、指定容積率が300%以上の地域にある宅地は、対象外です。

新宿区は、容積率300%以上の地域が広く指定されています。
面積の条件だけを見て「使える」と判断すると、後で計算が合わなくなります。

逆に、住宅地で容積率が200%程度の地域なら、使える可能性があります。
落合、中井、西落合、下落合のあたりには、そうした区域が残っています。

まず容積率を確認する。 これがこの制度の出発点です。


どんな制度か

面積の大きな宅地は、そのままでは使いにくいという考え方に基づく減額です。

大きな土地を宅地として分譲するには、道路を通したり、公園用地を提供したりしなければなりません。
その分だけ、実際に売れる面積は減ります。

そこで、規模格差補正率という係数をかけて評価額を下げます。

なお、この制度は平成30年1月1日以後の相続・贈与から適用されています。
それ以前の「広大地の評価」とは別の制度です。古い情報にご注意ください。


使うための条件は4つ

条件1 面積

地域必要な面積
三大都市圏500㎡以上
それ以外の地域1,000㎡以上

東京都は三大都市圏に含まれます。 新宿区なら500㎡以上が条件です。

条件2 地区区分

路線価地域では、次の2つに限られます。

  • 普通商業・併用住宅地区
  • 普通住宅地区

ビル街地区、高度商業地区、繁華街地区、中小工場地区、大工場地区は対象外です。

地区区分は路線価図に記号で示されています。見方はこちらをご覧ください。

東京の路線価と相続税評価額|見方と、毎年7月の更新

条件3 除外される地域に入っていないこと

次に当てはまる宅地は、面積を満たしていても対象外です。

除外されるもの内容
市街化調整区域一定の開発ができる区域を除きます
工業専用地域都市計画法上の用途地域
指定容積率400%以上東京都の特別区では300%以上
大規模工場用地

3つ目が、新宿区でいちばん引っかかる条件です。

条件4 倍率地域の場合

倍率地域では、地区区分の条件はありません。 面積などの条件を満たせば対象になります。
ただし新宿区に倍率地域はほとんどありません。


指定容積率は、どこで調べるのか

新宿区の都市計画情報で確認できます。

  • 新宿区の都市計画図(区役所の窓口、または区のウェブサイト)
  • 用途地域と容積率が色分けで示されています

おおまかな傾向は次のとおりです。

地域の性格指定容積率のめやす制度が使えるか
新宿駅周辺・西新宿の高層地区400〜800%以上使えません
幹線道路沿い300〜400%使えません(300%以上のため)
住宅地(落合・中井・西落合など)150〜200%使える可能性があります

注意:「実際に使っている容積率」ではなく「指定容積率」で判定します。
建物が小さくても、指定容積率が300%以上なら対象外です。

ここは自己判断が危険な部分です。 必ず都市計画図でご確認ください。


判定は、この順番で行います

条件が多いので、上から順に見ていくのが確実です。
1つでも外れたら、そこで終わりです。

見るもの外れたら
1面積は500㎡以上か(三大都市圏)対象外
2路線価地域か、倍率地域か倍率地域なら3・4を飛ばします
3地区区分は普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区対象外
4市街化調整区域ではないか原則として対象外
5工業専用地域ではないか対象外
6指定容積率は300%未満か(東京都の特別区)対象外
7大規模工場用地ではないか対象外
8評価単位は正しく取れているか分け方で結論が変わります

新宿区では、6でほとんどが止まります。

容積率の調べ方(新宿区の場合)

  1. 新宿区の都市計画情報を開く(区役所窓口、または区のウェブサイト)
  2. 対象の土地の場所を探す
  3. 用途地域指定容積率を読み取る
  4. 1つの土地が2つの区域にまたがっている場合は、加重平均で判定します

またがっている場合の判定は複雑です。
「一部が200%、一部が400%」といった土地は、必ず専門家に確認してください。


減額はどのくらいになるのか

条件を満たすと、規模格差補正率をかけて評価額を下げます。

規模格差補正率 =(Ⓐ × Ⓑ + Ⓒ)÷ Ⓐ × 0.8
        Ⓐ = その宅地の地積

ⒷとⒸは、地積の区分ごとに定められています。三大都市圏の場合は次のとおりです。

地積
500㎡以上 1,000㎡未満0.9525
1,000㎡以上 3,000㎡未満0.9075
3,000㎡以上 5,000㎡未満0.85225
5,000㎡以上0.80475

計算してみます

新宿区の普通住宅地区にある600㎡の土地(条件をすべて満たすとします)。

手順計算
Ⓐ(地積)600㎡
Ⓑ・Ⓒ0.95・25
(600 × 0.95 + 25)÷ 600= 0.99166…
× 0.80.79(小数点以下第2位未満切捨て)

規模格差補正率は0.79。約21%の減額です。

路線価による評価額が1億円だった土地なら、7,900万円になります。
2,100万円の差です。

地積が大きくなるほど補正率は下がり、減額の幅は大きくなります。


ほかの補正と重ねて使えます

規模格差補正率は、他の補正を行ったあとの価額にかけます。

つまり、次のようなものと重ねて使えます

重ねられるもの内容
奥行価格補正奥行が長い・短い
不整形地補正形がいびつ
間口狭小・奥行長大補正細長い
セットバック幅4m未満の道路に接している
がけ地補正傾斜地を含む

大きな土地ほど、形もいびつなことが多いものです。両方を見てください。

不整形地の相続税評価|使いにくい土地は、その分だけ安くなります

さらに、小規模宅地等の特例とも併用できます。

自宅の敷地が600㎡なら、
規模格差補正で評価を下げたうえで、330㎡までを80%減額できます。

小規模宅地等の特例とは?330㎡まで80%減額の条件


見落とされやすいところ

① 「1つの土地」として判定します

判定は評価単位ごとに行います。

  • 登記簿上は3筆でも、一体として使っていれば合計で判定します
  • 逆に、1筆でも自宅部分と貸地部分に分かれていれば、別々に判定します

「筆の数」ではなく「使い方」で分けます。

② マンションの敷地でも使えることがあります

分譲マンションの敷地全体が条件を満たしていれば、
持分に応じて適用できる場合があります。

ただし、令和6年1月1日以後に取得した「居住用の区分所有財産」には、
別の評価ルール(いわゆるマンション評価の見直し)が入っています。判断が複雑です。

③ 「広大地の評価」とは別の制度です

平成29年12月31日以前は「広大地の評価」という制度がありました。
平成30年1月1日から、この地積規模の大きな宅地の評価に変わっています。

インターネット上には、いまだに広大地の情報が残っています。
「開発想定図が必要」「意見書が要る」といった説明は、旧制度のものです。

④ 使えるのに使っていない申告があります

条件が細かいため、判定そのものをしていない申告書を見かけます。

すでに申告済みでも、申告期限から原則5年以内なら更正の請求で取り戻せます。

相続税を払いすぎた?更正の請求で還付を受ける方法と期限


判定に必要な資料

集めるものは、それほど多くありません。

資料どこで何が分かるか
固定資産税の課税明細毎年4〜6月に届きます地積、筆の数
登記事項証明書法務局正確な地積、所有者
公図法務局土地の位置、隣接関係
路線価図国税庁のサイト路線価、地区区分、借地権割合
都市計画図新宿区用途地域、指定容積率

このうち、路線価図と都市計画図の2つで結論のほとんどが決まります。

なお、地積は登記簿の面積と実測が違うことがあります。
実測のほうが大きければ、実測で判定します。500㎡を少し下回っているように見えても、あきらめないでください。


適用できたときの、もう一段の減額

規模格差補正は他の補正のあとにかけるため、次のように積み上がります。

新宿区・普通住宅地区・600㎡・路線価による評価額1億円の土地で、
不整形地補正が0.94、規模格差補正率が0.79だった場合。

手順計算評価額
路線価による評価1億円
不整形地補正× 0.949,400万円
規模格差補正× 0.797,426万円
小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減)330㎡分を80%減額さらに大きく下がります

※ 補正率の数値は説明のための仮のものです。実際の補正率は、土地ごとに計算します。

1つひとつは数%でも、掛け合わせると大きな差になります。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

この制度は、新宿区では「使えるかどうかの判定」が最大の論点になります。

傾向
新宿区容積率300%以上の地域が広く、面積を満たしても外れることが多い
中野区住宅地が中心で、容積率200%以下の区域が比較的多く残っています
世田谷区低層住居専用地域が広く、500㎡以上の敷地も残っています

世田谷区のお客様では、実際に適用できるケースがあります。
新宿区でも、落合・中井のあたりの住宅地なら可能性があります。

当センターは土地の評価による報酬の加算を設けていません。
判定に手間がかかる土地でも、料金は変わりません。

新宿区の相続税|土地評価が難しい街で損をしないために

〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)


よくある誤解

①「広い土地だから、当然安くなる」

なりません。 面積は入口の条件にすぎません。
地区区分・用途地域・容積率のすべてを満たして、初めて使えます。

②「実際に建っている建物が小さいから大丈夫」

関係ありません。 判定に使うのは指定容積率です。
更地でも、平屋が建っていても、指定容積率が300%以上なら対象外です。

③「隣の土地も合わせれば500㎡になる」

使い方が一体でなければ合算できません。
自宅と、別に貸している土地は、別々に判定します。

④「マンションだから関係ない」

敷地全体で判定します。 分譲マンションの敷地が条件を満たしていれば、
持分に応じて適用できる場合があります。ただし令和6年からの評価見直しとの関係で判断は複雑です。

⑤「開発想定図や不動産鑑定士の意見書が要る」

それは旧制度(広大地の評価)の話です。
現在の制度は、面積・地区区分・用途地域・容積率という形式的な条件で判定します。
判定さえ間違えなければ、計算そのものは単純です。


よくある質問

Q1. 500㎡あれば必ず使えますか

いいえ。 地区区分・用途地域・指定容積率の条件をすべて満たす必要があります。
東京都の特別区では、指定容積率が300%以上だと対象外です。

Q2. 容積率はどこで調べますか

新宿区の都市計画図で確認できます。区役所の窓口、または区のウェブサイトで見られます。
実際の建物の容積率ではなく、指定容積率で判定します。

Q3. 土地が2筆に分かれています。合計で判定できますか

使い方によります。 一体として利用していれば合計で判定します。
自宅部分と貸地部分に分かれていれば、それぞれ別に判定します。

Q4. マンションの敷地でも使えますか

敷地全体が条件を満たしていれば、持分に応じて適用できる場合があります。
ただし令和6年1月1日以後に取得した分譲マンションには別の評価ルールがあり、判断が複雑です。

Q5. 小規模宅地等の特例と両方使えますか

使えます。 規模格差補正で評価額を下げたうえで、特例で最大80%減額できます。

Q6. 広大地の評価とは違うのですか

別の制度です。 広大地の評価は平成29年12月31日で終わり、平成30年1月1日からこの制度になりました。
ネット上の古い情報にご注意ください。

Q7. どのくらい安くなりますか

地積によりますが、500〜1,000㎡未満でおよそ2割前後の減額になります。
地積が大きいほど、減額の幅は大きくなります。

Q8. すでに申告してしまいましたが、使えたかもしれません

更正の請求で取り戻せる可能性があります。 期限は原則として申告期限から5年です。
申告書と土地の資料をお持ちいただければ、判定します。


まとめ

  • 三大都市圏では500㎡以上、それ以外では1,000㎡以上が面積の条件
  • 路線価地域では普通商業・併用住宅地区/普通住宅地区に限られます
  • 東京都の特別区では、指定容積率300%以上の地域は対象外
  • 新宿区は容積率300%以上の地域が広く、面積を満たしても外れることが多い
  • 規模格差補正率 =(Ⓐ × Ⓑ + Ⓒ)÷ Ⓐ × 0.8
  • 500〜1,000㎡未満なら、およそ2割前後の減額
  • 不整形地補正や小規模宅地等の特例と重ねて使えます
  • 「広大地の評価」は平成29年で終わった旧制度です

監修者

天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員

相続・事業承継の相談実績3,000件超。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」(登録者4.2万人)で、相続の実務を発信しています。


出典

  • 国税庁タックスアンサー No.4609「地積規模の大きな宅地の評価」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4609.htm

  • 国税庁 質疑応答事例「地積規模の大きな宅地の評価−計算例⑥(不整形地の場合)」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/20/13.htm

  • 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」

https://www.rosenka.nta.go.jp/


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