タワーマンションの相続税評価が2024年に変わりました|計算方法と影響

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。

公開日:2026年8月9日 最終更新日:2026年9月1日


【結論】2024年から、分譲マンションの相続税評価に補正が入りました

令和6年(2024年)1月1日以後の相続・遺贈・贈与から、分譲マンションの相続税評価に「区分所有補正率」が適用されるようになりました。実際の市場価格と相続税評価額の開きが大きい物件ほど、評価額が引き上げられます。高層階・築浅・敷地持分が小さい物件ほど影響が大きく、いわゆるタワーマンションがこれに当たります。ただし対象外となる物件もあり、逆に評価が下がる場合もあります。

ポイント内容
適用開始令和6年(2024年)1月1日以後の相続・遺贈・贈与
対象居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)
何が変わったか従来の評価額に区分所有補正率を掛けるようになりました
影響が大きい物件築浅・高層階・総階数が高い・敷地持分が小さい
対象外事業用テナント、区分登記のない一棟所有、総階数2以下、専有部分3室以下の二世帯住宅など
評価が下がることもあります(評価水準が1を超える場合)

「タワマン節税が禁止された」という表現をよく見かけますが、正確ではありません。 禁止されたのではなく、評価額が実勢に近づけられたというのが実際のところです。


📺 この内容を動画でも解説しています

【要注意】その不動産相続対策、もう使えません|マンション節税にストッパーがかかった理由
マンションの相続税評価がなぜ見直されたのか、その背景を解説しています。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」/2,286回再生


なぜ見直されたのか

相続税では、建物は固定資産税評価額、土地は路線価をもとに評価します。この方法だと、タワーマンションの高層階は、実際の売買価格に対して相続税評価額がかなり低くなるという現象が起きていました。

理由は単純です。

  • 固定資産税評価額は、階数による差がほとんどつきません(同じ床面積なら3階も40階も近い金額になります)
  • ところが市場価格は、高層階ほど高くなります
  • 土地の持分は、戸数が多いほど1戸あたり小さくなります

結果として、市場価格1億円のマンションが、相続税評価では2,000万円台というようなことが起きていました。これを利用した対策が「タワマン節税」と呼ばれていたものです。

この開きを埋めるために導入されたのが、今回の補正です。


計算方法

国税庁の通達では、次の順で計算します。

1. 評価乖離率を求める

評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
記号内容係数
A一棟の建物の築年数(1年未満は1年に切上げ)× △0.033
B総階数指数(総階数÷33。1を超える場合は1。地階は含めません)× 0.239
Cその部屋の所在階(地階の場合は0)× 0.018
D敷地持分狭小度(敷地利用権の面積 ÷ 専有部分の床面積)× △1.195

築年数が古いほど評価乖離率は下がり、高層階・高層建物ほど上がります。 また敷地の持分が小さいほど(=戸数の多い高層マンションほど)、Dがマイナスに働く度合いが小さくなり、乖離率が上がります。

2. 評価水準を求める

評価水準 = 1 ÷ 評価乖離率

3. 区分所有補正率を決める

評価水準区分所有補正率結果
0.6未満評価乖離率 × 0.6評価額が上がります
0.6以上1以下補正なし従来どおり
1超評価乖離率評価額が下がります

4. 評価額を計算する

評価額 = 区分所有権の価額(建物) + 敷地利用権の価額(土地)

 区分所有権の価額 = 固定資産税評価額 × 1.0 × 区分所有補正率
 敷地利用権の価額 = 路線価等による敷地全体の価額 × 敷地権の割合 × 区分所有補正率

国税庁が計算明細書を用意しています。 「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」を使えば、上の計算を順に埋めていくだけで補正率が出ます。


対象にならないマンションもあります

すべての分譲マンションが対象ではありません。 次のものには、この通達は適用されません。

#対象外となるもの
1構造上、主に居住用でないもの(事業用のテナント物件など)
2区分建物の登記がされていないもの(一棟所有の賃貸マンションなど)
3地階を除く総階数が2以下のもの(低層の集合住宅など)
4専有部分が3室以下で、そのすべてを区分所有者またはその親族が居住用に使っているもの(いわゆる二世帯住宅など)
5たな卸商品等に該当するもの

2階建てのマンションや、区分登記していない一棟所有の賃貸マンションは、従来どおりの評価です。 「マンションだから評価が上がる」わけではありません。


評価が下がる場合もあります

見落とされがちですが、評価水準が1を超える場合は、評価額が下がります。

評価水準が1を超えるのは、評価乖離率が1未満のとき、つまり相続税評価額が市場価格を上回っている状態です。築年数が経過した低層のマンションでは、こうしたケースが起こり得ます。

この通達は「評価を上げるための仕組み」ではなく、「実勢に近づけるための仕組み」です。 上がる物件も下がる物件もあります。

なお、評価乖離率が0または負数になる場合は、評価額を0とすることとされています。


貸している場合・特例を使う場合

貸家・貸家建付地としての評価や、小規模宅地等の特例は、これまでどおり使えます。

ただし計算の順番が変わります。 まず区分所有補正率を適用した価額を出し、その価額をもとに貸家建付地の評価や特例の適用を行います。

借地権付分譲マンション、定期借地権付分譲マンションの場合も、補正後の敷地利用権の価額をもとに評価します。

小規模宅地等の特例とは?330㎡まで80%減額の条件


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

タワーマンションは東京に集中しています。 新宿区にも、西新宿の超高層住宅をはじめ、対象となる物件が数多くあります。

そして東京の相続では、マンションだけを持っているケースは、むしろ少数です。

  • 実家の戸建て(土地の評価に補正が必要)
  • 賃貸に出しているマンション(貸家建付地)
  • 相続した空き家
  • 借地・私道

これらが混ざったときに、どう評価し、どう分けるかが本番です。 マンションの評価が変わったことで、分け方のシミュレーションもやり直しが必要になっている方は少なくありません。

新宿区の土地の評価については 新宿区の相続税|土地評価が難しい街で損をしないために をご覧ください。


いま何を確認すべきか

すでに対策として購入された方

2024年より前に「相続税対策」としてマンションを購入された方は、前提が変わっています。

購入時に受けた試算は、旧ルールでの評価額である可能性があります。現在の評価額を計算し直したうえで、対策として成立しているかを確認してください。

評価額が上がっても、なお対策として有効な場合もあります。 ただし「買った時の説明のまま」で放置するのは危険です。

これから検討される方

相続税の評価額が下がることだけを理由に購入するのは、おすすめしません。

  • 空室のリスク
  • 修繕積立金の値上がり
  • 金利
  • 売却時の価格

相続税は下がっても、ご家族が扱いに困る財産になることがあります。 生前対策のページもあわせてご覧ください。

すでに申告を終えた方

2024年1月1日より前に発生した相続については、この通達は適用されません。 従来の評価方法のままです。

ただし土地の評価に見落としがあった場合は、法定申告期限から5年以内であれば更正の請求ができます。

相続税を払いすぎた?更正の請求で還付を受ける方法と期限


よくある質問

Q1. タワマン節税はできなくなったのですか。

A. 禁止されたわけではありません。 相続税評価額が実勢価格に近づけられたため、以前ほどの開きが出なくなった、というのが正確なところです。市場価格と評価額の差が縮まった分、対策としての効果は小さくなりました。ただし物件によって影響の大きさは異なりますので、一律に「使えない」とは言えません。

Q2. いつからの相続に適用されますか。

A. 令和6年(2024年)1月1日以後に相続、遺贈または贈与で取得した場合に適用されます。それより前に発生した相続については、従来の評価方法のままです。すでに申告を終えられた分を、さかのぼって修正する必要はありません。

Q3. うちのマンションは対象になりますか。

A. 居住用の分譲マンション(区分所有登記されているもの)であれば、原則として対象です。 ただし、地階を除く総階数が2以下のもの、区分登記のない一棟所有のもの、事業用テナント、専有部分が3室以下で親族のみが居住しているものは対象外です。低層マンションや二世帯住宅は、従来どおりの評価になります。

Q4. 評価額はどのくらい上がりますか。

A. 物件によってまったく異なります。 築年数、総階数、所在階、敷地の持分によって評価乖離率が変わるためです。一般的には築浅・高層階・戸数の多い高層物件ほど上がり幅が大きくなります。実際の数字は、固定資産税の課税明細書と登記簿があれば計算できます。

Q5. 評価が下がることもあるのですか。

A. あります。 評価水準が1を超える場合、つまり従来の相続税評価額が市場価格を上回っている場合は、評価額が引き下げられます。築年数の経過した低層のマンションでは起こり得ます。この通達は評価を上げるためのものではなく、実勢に近づけるためのものです。

Q6. 賃貸に出しているマンションはどうなりますか。

A. 貸家・貸家建付地としての評価は、これまでどおり使えます。 ただし計算の順番が変わり、まず区分所有補正率を適用した価額を出し、その価額をもとに貸家建付地の評価を行います。小規模宅地等の特例についても同様です。

Q7. 対策としてマンションを買ったのですが、どうすればよいですか。

A. 現在の評価額で計算し直してください。 購入時に受けた試算は旧ルールのものである可能性があります。評価額が上がっても、なお対策として成立している場合もありますが、前提が変わっている以上、一度確認されることをおすすめします。当センターではセカンドオピニオンとして、実行済みの対策を客観的に試算しています。

Q8. 自分で計算できますか。

A. 計算自体はできます。 国税庁が「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」を用意しており、固定資産税の課税明細書と登記簿があれば数値を埋めていけます。ただし敷地利用権の面積の把握や、貸家建付地・小規模宅地等の特例との組み合わせは判断が必要です。


まとめ

  • 令和6年(2024年)1月1日以後の相続・遺贈・贈与から、分譲マンションに区分所有補正率が適用されます
  • 評価乖離率は 築年数・総階数・所在階・敷地持分 の4要素で決まります
  • 評価水準が0.6未満なら評価額が上がり、1を超えるなら下がります
  • 総階数2以下、区分登記なし、事業用、専有部分3室以下の二世帯住宅などは対象外です
  • 貸家建付地の評価や小規模宅地等の特例は、これまでどおり使えます(計算の順番が変わります)
  • 2024年より前に「対策」として購入された方は、前提が変わっています。試算のやり直しをおすすめします
  • 「禁止された」のではなく、評価が実勢に近づけられたというのが正確です

ご相談のご案内

固定資産税の課税明細書と登記簿をお手元にご用意のうえ、ご連絡ください。 現在の評価額を計算し、対策として成立しているかをお伝えします。

📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
オンライン面談に対応しています。


監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者42,000人・累計729万回再生(2026年8月時点)。


出典

※本記事の内容は2026年9月時点の法令に基づいています。実際の判断は個別の事情により異なりますので、必ず税理士にご相談ください。



【2027年〜】賃貸不動産の評価に「5年ルール」が入ります

令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日 閣議決定)に、賃貸不動産の相続税評価を見直す改正が盛り込まれました。

被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
ただし課税上の弊害がない限り、取得価額をもとに地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができる。

適用は令和9年(2027年)1月1日以後に相続等により取得する財産からとされています。

  • 基準になるのは、取得した日ではなく相続が発生した日です。2027年以降に相続が起き、その時点で取得から5年以内であれば対象になり得ます
  • 5年より前から所有している賃貸不動産は、従来どおりの評価が見込まれます
  • 不動産小口化商品(不動産特定共同事業契約・信託受益権に係る一定のもの)は、取得時期にかかわらず対象とされています

「アパートを建てて相続税対策」という手法は、前提が変わります。すでに実行された対策も、購入時の試算のままでは実態と合わなくなる可能性があります。

※これは税制改正の大綱に示された内容です。実際の適用範囲は今後の通達で定められます。現時点で断定的な判断はできません。

賃貸不動産の相続税評価|2027年から「5年ルール」が始まります

出典:財務省 令和8年度税制改正の大綱

menu