相続した不動産を売ったときの確定申告|譲渡所得の計算と、使える特例の選び方

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.5万人)。

公開日:2026年11月2日


【結論】売った翌年の2月16日〜3月15日に申告します

相続した不動産を売ったら、売った年の翌年に確定申告が必要です。
期限は2月16日から3月15日。相続税の申告とは別の手続きで、提出先も時期も違います。

相続税の申告譲渡所得の確定申告
いつ相続を知った日の翌日から10か月売った年の翌年2月16日〜3月15日
誰が相続人売った人
どこへ亡くなった方の住所地の税務署売った人の住所地の税務署
何に対して相続した財産売って出た利益

いちばん多い行き違いが、ここです。
「相続税の申告は済ませたから、もう終わり」と思っていたら、翌年に税務署から問い合わせが来る。売却は法務局の登記情報から税務署に伝わるので、黙っていても分かります。

そしてもうひとつ。

利益が出ていなくても、特例を使うなら申告が必要です。
空き家の3,000万円控除も、取得費加算の特例も、申告して初めて使えます。「控除を引いたら0円だから出さなくていい」ではありません。出さなければ控除が適用されず、税額が確定してしまいます。


まず、申告が必要かを確かめます

判定は2段階です。

あてはまるもの申告
売って利益が出た必要です
利益は出たが、特例を使うと0円になる必要です
売って損が出た(相続した不動産)原則として不要です

3つ目について、ひとつ注意があります。
「損が出た」と思っている方の多くは、取得費が分からないまま概算で計算しています。実際には利益が出ているのに損だと誤解している、という例が少なくありません。この点はあとで詳しく書きます。


譲渡所得の計算

計算は1本の式です。

譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除

この取得費のところで、相続ならではの扱いが出てきます。

取得費は、亡くなった方のものを引き継ぎます

相続した不動産の取得費は、相続したときの価額ではありません。
亡くなった方が買ったときの金額を引き継ぎます。

相続や贈与によって取得した土地建物を売った場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。
── 国税庁 No.3270

相続税評価額ではありません。ここを取り違えると、税額が何百万円も変わります。

所有期間も引き継ぎます。亡くなった方が30年持っていた家なら、相続した翌月に売っても長期譲渡です。相続した日から数え直すわけではありません。

取得費が分からないとき ── ここで一番損をします

取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とみなします。これを概算取得費といいます。

5%です。つまり残り95%が利益として課税されます。

6,000万円で売った場合取得費が分かる(4,000万円)分からない(概算5%)
取得費4,000万円300万円
譲渡費用(仮に200万円)200万円200万円
譲渡所得1,800万円5,500万円
税額(長期20.315%)約365万円約1,117万円

差は約752万円です。

だから、売買契約書を探してください。
古い家ほど見つかりません。ですが、次のところに残っていることがあります。

  • 権利証(登記済証)と一緒に保管されている封筒
  • 仏壇の引き出し、金庫、貸金庫
  • 住宅ローンを組んだ金融機関の控え
  • 家を建てた工務店・ハウスメーカーの工事請負契約書
  • 通帳の振込記録(購入時期の大きな出金)
  • 購入時の仲介業者が保管している控え

契約書そのものがなくても、諦めないでください。購入時期と金額を示す資料があれば、取得費として認められる余地があります。何が使えるかは、お見せいただいてから判断します。

譲渡費用になるもの、ならないもの

「売るために直接かかった費用」だけです。持っている間の費用は入りません。

なるものならないもの
不動産会社への仲介手数料修繕費
印紙税(売主が負担したもの)固定資産税
借家人に支払った立退料その他、維持・管理のための費用
土地を売るための建物の取壊し費用と、その建物の損失額売った代金の取立てのための費用
有利な条件で売るために支払った違約金
借地権を売るときの名義書換料

空き家を売るために解体した費用は、譲渡費用になります。ここは見落とされがちです。領収書を取っておいてください。

税率は2つだけです

所有期間区分税率
売った年の1月1日時点で5年超長期譲渡20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
同じく5年以下短期譲渡39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)

判定は「売った日」ではなく「売った年の1月1日」です。2026年12月に売るか2027年1月に売るかで区分が変わることがあります。

ただし相続の場合は亡くなった方の所有期間を引き継ぐので、ほとんどが長期になります。短期になるのは、亡くなった方が買ってから5年経たずに相続が起き、さらにすぐ売った場合です。

給与や年金とは合算しません(分離課税)。給与が高いからといって譲渡所得の税率が上がることはありません。


使える特例は、主に3つです

特例効果主な条件
空き家の3,000万円特別控除譲渡所得から最高3,000万円昭和56年5月31日以前の建築、相続開始直前に被相続人が1人で住んでいた、譲渡対価1億円以下、令和9年12月31日まで
取得費加算の特例納めた相続税の一部を取得費に加算相続税を納めていること、相続開始から3年10か月以内に売ること
マイホームの3,000万円特別控除譲渡所得から最高3,000万円売った人自身が住んでいた家であること(No.3302)

3つ目を誤解している方が多いので、はっきり書きます。

親の家を相続しただけでは、マイホームの3,000万円控除は使えません。
この特例は「売った人自身が住んでいた家」が対象です。親が住んでいた家を相続して売る場合は、空き家の3,000万円控除のほうを検討します。名前が似ていますが、まったく別の制度です。

空き家控除と取得費加算は、どちらか一方だけです

この2つは選択適用です。両方は使えません。

空き家特例の条件に、はっきり書かれています。

売った家屋や敷地について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けていないこと。
── 国税庁 No.3306

どちらが有利かは、売った金額・取得費・納めた相続税の3つで変わります。

こういう場合有利なのは
相続税を納めていない(基礎控除以下だった)空き家控除しか選べません
相続税を納めたが、譲渡益が3,000万円以下多くの場合空き家控除
相続税を多く納めたうえ、譲渡益が大きい取得費加算が上回ることがあります
空き家特例の要件を満たさない(昭和56年6月以降の建築など)取得費加算だけです

売ってからでは選べません。どちらを使うかは申告で決めますが、空き家控除は売り方そのものに条件があります(解体の時期、1億円の判定、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限)。売る前に確かめてください。


相続時精算課税で生前にもらった不動産を売る場合

ここは扱いが分かれます。混同されやすいので、分けて書きます。

相続時精算課税を使って、親が生きているうちに不動産の贈与を受けていた。その親が亡くなったあとに、その不動産を売る。このときの扱いです。

項目扱い
取得費引き継ぎます(贈与者が買ったときの金額)
所有期間引き継ぎます(贈与者が取得した時から数えます)
空き家の3,000万円控除使えません
取得費加算の特例使えます
小規模宅地等の特例(相続税側)使えません

空き家控除が使えない理由は、取得の原因です。
この特例は「相続または遺贈(死因贈与を含みます)により取得した」家屋が対象です(No.3306)。相続時精算課税は贈与なので、ここから外れます。

一方、取得費加算は使えます。
相続時精算課税を使った贈与財産は、贈与者が亡くなったときに相続税の課税価格に含めて計算されます。相続税を納めている以上、取得費加算の対象になります。国税庁(東京国税局)のチェックシートにも、こう書かれています。

譲渡資産に相続時精算課税の適用を受けた贈与により取得した財産(中略)を含みます。
── 東京国税局「相続税額の取得費加算の特例チェックシート」

期限の起算点に注意してください。贈与を受けた日ではなく、贈与者が亡くなった日から数えて3年10か月です。

生前に不動産を精算課税で渡す前に、売る予定があるかを確かめてください。
将来売るつもりの空き家を生前贈与してしまうと、3,000万円の控除を自分から捨てることになります。渡してからでは戻せません。


申告に必要なもの

書類どこにあるか
売買契約書(売ったとき)手元の控え。仲介した不動産会社にも控えがあります
売買契約書(亡くなった方が買ったとき)これが最重要です。権利証と一緒に保管されていることが多いです
仲介手数料の領収書不動産会社
解体費用の領収書・請求書解体業者
登記事項証明書法務局(オンラインでも取得できます)
固定資産税の課税明細書市区町村から毎年届くもの
相続税の申告書の控え取得費加算を使う場合に必要です
被相続人の住民票の除票空き家控除を使う場合
被相続人居住用家屋等確認書空き家控除を使う場合。物件のある市区町村に申請して交付を受けます

最後のものだけ、時間がかかります。市区町村の窓口に申請して交付を受ける書類で、即日では出ません。空き家控除を使う予定なら、申告期限の直前ではなく、売却後すぐに動いてください。


翌年に効いてくるもの

不動産を売ると、所得税と住民税のほかにも影響が出ます。ここを知らずに売る方が多いところです。

何がいつ
住民税売った年の翌年6月から
国民健康保険料売った年の翌年度。譲渡所得は保険料の算定に入ります
後期高齢者医療保険料・介護保険料同上
医療費の窓口負担の割合1割だった方が2割・3割になることがあります

特別控除で所得税が0円になっても、保険料の判定では控除前の金額で見られる場合があります。自治体によって扱いが異なるため、金額が大きいときは事前に市区町村へご確認ください。


期限の一覧

期限何の期限か
相続を知った日の翌日から10か月相続税の申告・納付
相続開始から3年10か月取得費加算の特例(正確には、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで)
相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日空き家の3,000万円控除
令和9年(2027年)12月31日空き家の3,000万円控除の制度そのものの期限
譲渡した年の翌年2月15日空き家控除で、譲渡後に耐震改修または取壊しを行う場合の期限
譲渡した年の翌年2月16日〜3月15日譲渡所得の確定申告
2027年3月31日相続登記の義務化の経過措置の期限

相続登記が済んでいないと、そもそも売れません。登記は提携の司法書士が行い、窓口は当センターで承ります。


申告しなかったら、どうなるか

内容
無申告加算税本来の税額に15%〜30%が上乗せされます(税務署の調査を受けてからだと重くなります)
延滞税期限の翌日から、納付の日まで日数に応じてかかります
特例が使えなくなるこれが一番大きいです。空き家控除も取得費加算も、申告して初めて適用されます

3,000万円の控除を失うほうが、加算税より痛いです。期限内に出してください。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

この3区では、取得費の資料が残っていないケースが目立ちます。先代・先々代から持っている土地が多く、購入時の契約書が存在しないためです。

概算取得費(5%)で計算すると税額が跳ね上がりますが、購入時期と金額を示す別の資料で補えることがあります。通帳、ローンの記録、工事請負契約書、公図や旧土地台帳。諦める前に、一度お持ちください。

また、この地域は土地の価額が高いため、1億円の判定に引っかかりやすいという特徴もあります。空き家控除は譲渡対価1億円以下が条件で、分割して売った分や他の相続人が売った分も合算されます。売り方を決める前のご相談をおすすめします。


当センターでできること、できないこと

譲渡所得の確定申告165,000円から(税込)。物件の数、取得費の資料の有無、換価分割かどうかで変わります
どの特例が有利かの試算できます。売る前のご相談が一番効きます
取得費の資料さがしの助言できます
相続税の申告できます(料金表)
相続登記提携の司法書士が行います。窓口は当センターです
不動産の売却そのもの行いません。不動産会社をご紹介することはできます
被相続人居住用家屋等確認書の取得市区町村への申請はご本人の手続きですが、書き方はご案内します

売ったあとにご相談いただいても、計算はできます。ただ、選べたはずの特例が選べなくなっていることがあります。解体の時期、売る相手、売る順番、登記の名義。どれも売る前にしか決められません。


よくある質問

相続した不動産を売りました。相続税を払ったのに、また税金がかかるのですか。

かかります。相続税は「財産を受け取ったこと」に、譲渡所得税は「売って利益が出たこと」に対するもので、別の税金です。二重課税の調整として取得費加算の特例が用意されています。

売って損をしました。申告は必要ですか。

相続した不動産の場合、原則として不要です。ただし「損をした」という判断が、取得費を正しく計算した結果かどうかを確かめてください。概算取得費(5%)で計算すると、たいていは利益が出ます。

取得費が分かる資料が、どうしても見つかりません。

売った金額の5%を取得費とみなして計算します。ただし、契約書以外の資料で補える場合があります。通帳の記録、住宅ローンの書類、工事請負契約書など。何が使えるかは、お見せいただいてから判断します。

相続人3人で売って、代金を3等分しました。申告は誰がしますか。

3人それぞれが、自分の持分について申告します。ただし登記の名義によって扱いが変わります。代表者1人の名義で登記して売った場合は、贈与税の問題が生じることがあります。換価分割の記事をご覧ください。

空き家の3,000万円控除と取得費加算は、両方使えますか。

使えません。選択適用です。どちらが有利かは、売った金額・取得費・納めた相続税で変わります。

マイホームの3,000万円控除は使えませんか。

売った人自身が住んでいた家でなければ使えません。親が住んでいた家を相続して売る場合は、空き家の3,000万円控除のほうを検討します。

相続時精算課税でもらった家を売る場合、空き家控除は使えますか。

使えません。空き家控除は「相続または遺贈により取得した」家屋が対象で、相続時精算課税は贈与にあたるためです。取得費加算のほうは使えます。

相続登記をしていませんが、売れますか。

売れません。登記名義が亡くなった方のままでは、買主へ移転登記ができないためです。先に相続登記が必要です。

申告の期限を過ぎてしまいました。

すぐに申告してください。税務署の調査を受ける前に自主的に申告したほうが、加算税が軽くなります。ただし期限後の申告では使えなくなる特例があります。

売ると、翌年に何か起きますか。

国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料が上がります。医療費の窓口負担の割合の判定にも影響します。所得税が特別控除で0円になっても、保険料の算定では控除前で見られる場合があります。


まとめ

  • 売った年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告します。相続税の申告とは別です
  • 特例を使うなら、税額が0円でも申告が必要です
  • 取得費は亡くなった方が買ったときの金額を引き継ぎます。相続税評価額ではありません
  • 所有期間も引き継ぐので、ほとんどが長期譲渡(20.315%)になります
  • 取得費が分からないと、売った金額の5%しか引けません。契約書を探してください
  • 空き家の3,000万円控除と取得費加算は選択適用。両方は使えません
  • 親の家を相続しただけでは、マイホームの3,000万円控除は使えません
  • 相続時精算課税でもらった不動産は、空き家控除は使えず、取得費加算は使えます
  • 翌年の保険料と医療費の窓口負担が上がります
  • 売る前にご相談ください。解体の時期、売る順番、登記の名義は、あとから変えられません

ご相談のご案内

相続した不動産の売却は、売ったあとでは選択肢が減ります。 解体の時期、売る相手、売る順番、登記の名義。どれも先に決めてしまうもので、あとから戻せません。

当センターでは、譲渡所得の確定申告を165,000円からお受けしています。売る前の試算と、どの特例を使うべきかの判断からご相談いただけます。

📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
オンライン面談に対応しています。ご来所が難しい方は 全国対応のオンライン相談 をご覧ください。

依頼先の選び方は 相続手続きは誰に頼むべき?、料金は 料金表 をご覧ください。


監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者45,000人・動画329本(2026年10月時点)。


出典

※本ページの内容は2026年11月2日時点の情報です。制度は改正されることがあります。
※空き家の3,000万円特別控除は令和9年12月31日までの譲渡が対象の期限付きの制度です。使う前に、その時点の内容をご確認ください。

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