空き家の3,000万円特別控除|要件と、使えなくなる7つのケース

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.5万人)。

公開日:2026年11月2日


【結論】要件が多く、1つでも外れると0円です

相続した空き家を売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける制度があります。
正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。

効果は大きいです。税額で600万円以上変わることもあります。

ただし、この特例は要件がとても多いです。家屋の建築時期、相続開始直前の居住状況、売った相手、売った金額、売るまでの使い方、解体の時期。どれか1つでも外れると、控除額は0円になります。

そして厄介なのは、外れる原因の多くが「売る前の行動」にあることです。

  • 空けておくのがもったいないので貸した → 使えません
  • 更地にして駐車場にしていた → 使えません
  • 親族に売った → 使えません
  • 生前に相続時精算課税で贈与を受けていた → 使えません

どれも、あとから戻せません。売る前に確かめてください。


期限が2つあります。近いほうが先に来ます

この制度には、期限が二重にかかっています。

どの期限かいつまで
あなたの相続の期限相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
制度そのものの期限令和9年(2027年)12月31日までの譲渡

両方を満たす必要があります。短いほうが実際の期限です。

いつ亡くなった方が対象になるか

相続開始(亡くなった日)3年ルールの期限実際の期限
2023年中2026年12月31日2026年12月31日 残りわずかです
2024年中2027年12月31日2027年12月31日
2025年中2028年12月31日2027年12月31日 制度の期限が先に来ます
2026年中2029年12月31日2027年12月31日 制度の期限が先に来ます

2025年以降に相続が起きた方は、制度の期限のほうが先に来ます。
2025年に亡くなった方の家なら、本来は2028年末まで時間があるはずが、実際には2027年末までしかありません。1年以上短くなります。

制度が延長されるかどうかは、現時点では分かりません。延長を前提に予定を組まないでください。


要件を、順に確かめます

① 家屋のこと

要件内容
建築時期昭和56年5月31日以前に建築されたこと
構造区分所有建物登記がされている建物でないこと
どの建物か主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物

昭和56年5月31日という日付は、新耐震基準が適用される前の日です。この制度が「古い空き家を市場に出す」ことを目的にしているためです。昭和56年6月1日以降に建った家は、この特例を使えません。

「区分所有建物登記がされている建物でないこと」は、実質的にマンションを除く条件です。分譲マンションの一室を相続して売る場合、この特例は使えません。二世帯住宅でも、区分所有登記をしていると使えません。登記事項証明書でご確認ください。

母屋と離れがある場合は、土地を按分します。用途上不可分な複数の建築物があるときは、床面積の割合で按分した部分だけが対象になります。

② 亡くなった方の住み方

要件内容
相続開始の直前被相続人が1人で住んでいたこと(被相続人以外に居住していた人がいなかったこと)

ここで落ちる方が、かなりいます。

亡くなる直前まで配偶者や子が同居していた場合、この特例は使えません。「介護のために一時的に泊まり込んでいた」程度なら居住とは見ませんが、住民票を移して同居していたなら、まず使えません。

③ 老人ホームに入っていた場合

施設に入居していた方も、条件を満たせば使えます。平成31年4月1日以後の譲渡から認められるようになりました。

要件内容
認定の時期家屋が居住の用に供されなくなる直前において、要介護認定・要支援認定等を受けていたこと
施設の範囲特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、認知症対応型共同生活住居、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅など
空き家の使い方入居した時から相続開始の直前まで、被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと
してはいけないこと入居した時から相続開始の直前まで、事業の用・貸付けの用・被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと
生活の本拠入居した時から相続開始の直前まで、被相続人が主として居住していたと認められる家屋がその老人ホーム等であること

「要介護認定を受けていたか」の判定時点に注意してください。
亡くなったときではなく、家を出たときです。認定を受けないまま施設に入り、あとから認定を受けた場合は、この要件を満たしません。

「物品の保管その他の用に供されていた」も見落とされます。家財を全部処分して完全に空にしてしまうと、この要件から外れるおそれがあります。片づける前にご相談ください。

④ 売り方

売り方は3つの型があります。どれかに当てはまる必要があります。

型内容必要なこと
イ家屋ごと売る(敷地とともに売る場合を含む)譲渡の時に、一定の耐震基準を満たしていること
ロ家屋を取り壊してから敷地を売る取壊しの時から譲渡の時まで、建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと
ハ売ったあとに、買主が耐震改修または取壊しを行う譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに行うこと(令和6年1月1日以後の譲渡)

ハの型は、令和6年に加わった新しい選択肢です。以前は売主が先に解体するしかなく、解体費用を負担したうえで売れ残るリスクがありました。いまは買主に解体してもらう形でも使えます。

ただし翌年2月15日という期限があります。12月に売ると、買主に2か月しか猶予がありません。売買契約に「いつまでに解体するか」を書いておいてください。買主が動かないと、控除が消えます。

ロの型の「建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと」は、具体的には駐車場です。
解体したあと、売れるまでコインパーキングにした。これで使えなくなった例があります。更地のまま置いておいてください。

⑤ 相続の時から売る時まで

要件内容
使い方相続の時から譲渡の時まで、事業の用・貸付けの用・居住の用に供されていたことがないこと

「空けておくのはもったいないから貸す」が、一番多い失敗です。
1か月でも貸したら使えません。家賃数万円のために、3,000万円の控除を失います。

相続人が住むのもだめです。「居住の用に供されていたことがないこと」という条件なので、自分が住んでも外れます。

⑥ 売った相手

要件内容
譲渡先親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものでないこと

特別の関係がある人には、生計を一にする親族、売却後にその家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人が含まれます。

「兄弟に買い取ってもらう」は、この特例とは両立しません。

⑦ 売った金額

要件内容
譲渡対価1億円以下であること

この1億円の判定が、思っているより厳しいです。

自分が売った金額だけではありません。

  • 他の相続人が売った分も合算します
  • 3年以内に分割して売った分も合算します
  • 特例を受けた部分だけでなく、残りを後から売った分も合算します

あとから1億円を超えた場合は、その売却の日から4か月以内に修正申告と納税が必要です。
一度受けた控除が取り消されます。「先に自分の持分だけ売って、残りはあとで」という進め方は危険です。

新宿区・中野区・世田谷区では、ここに引っかかる物件が実際にあります。土地の価額が高いためです。

⑧ 他の特例との関係

要件内容
他の特例売った家屋や敷地について、取得費加算の特例や収用等の場合の特別控除などの適用を受けていないこと
同一の被相続人同一の被相続人から取得したものについて、この特例を既に受けていないこと

取得費加算とは、どちらか一方しか選べません。


相続時精算課税で生前にもらった家は、対象外です

これは知られていない落とし穴です。

この特例は「相続または遺贈(死因贈与を含みます)により取得した」家屋が対象です。相続時精算課税を使って生前に贈与を受けていた場合、取得の原因は贈与なので、ここから外れます。

生前に精算課税で実家をもらっていた場合
空き家の3,000万円控除使えません
取得費加算の特例使えます(贈与者が亡くなった日から3年10か月以内)
小規模宅地等の特例使えません

将来売るつもりの空き家を、精算課税で生前にもらってはいけません。
「どうせ相続するのだから、先にもらっておこう」という判断で、3,000万円の控除を自分から捨てることになります。渡してからでは戻せません。


実例|9,000万円で売った場合

昭和50年築の木造一戸建て。父が1人で住んでいて、2025年に死去。相続人は子2人。取得費の資料はありません。解体して2026年中に9,000万円で売却。解体費用200万円、仲介手数料約300万円。

控除あり控除なし
売った金額9,000万円9,000万円
取得費(概算5%)450万円450万円
譲渡費用(解体+仲介)500万円500万円
譲渡所得8,050万円8,050万円
空き家の特別控除▲6,000万円(2人×3,000万円)0円
課税される譲渡所得2,050万円8,050万円
税額(長期20.315%)約416万円約1,635万円

差は約1,219万円です。

ここで大事なのは「2人×3,000万円」のところです。
控除は譲渡した相続人ごとに判定します。2人で共有登記してから売れば、2人ともこの特例を使えます。

ただし、代表者1人の名義で登記して売ると、話が変わります。人数分使えるかどうかは実務で見解が分かれるところです。詳しくは 換価分割の記事 をご覧ください。登記の名義は、売る前に決めてください。

相続人が3人以上の場合は、1人2,000万円になります

令和6年1月1日以後の譲渡から、相続人の数が3人以上の場合は、控除の上限が1人2,000万円に引き下げられました。

相続人の数1人あたりの控除上限合計
1人3,000万円3,000万円
2人3,000万円6,000万円
3人2,000万円6,000万円
4人2,000万円8,000万円

被相続人居住用家屋等確認書を忘れないでください

この特例を使うには、物件のある市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。

税務署ではなく、市区町村に申請します。即日では出ません。自治体によっては2週間ほどかかります。

申請に添える主なもの
被相続人の住民票の除票相続開始の直前に、その家に住んでいたことを示します
家屋の登記事項証明書建築時期と、区分所有でないことを示します
電気・ガス・水道の閉栓証明など相続後、空き家だったことを示します
売買契約書の写し譲渡対価を示します
老人ホーム入居の場合は介護保険の被保険者証など要介護認定を受けていた時期を示します

必要書類は自治体によって違います。売却が決まった段階で、物件のある市区町村にご確認ください。申告期限の直前に動くと間に合いません。


使えなくなる7つのケース

こうすると結果
①相続後に貸した(1か月でも)使えません
②解体後、駐車場にした使えません
③亡くなる直前に家族が同居していた使えません
④区分所有登記がされている(分譲マンション、一部の二世帯住宅)使えません
⑤昭和56年6月1日以降の建築使えません
⑥親族に売った使えません
⑦相続時精算課税で生前にもらっていた使えません

①②③⑥は、売る前の行動で決まります。知らずにやってしまってからでは戻せません。


【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】

この3区では、2つの壁にぶつかりやすいです。

1つは1億円の壁です。土地の価額が高いため、延床の小さな戸建てでも1億円に届くことがあります。とくに世田谷区の低層住居専用地域で敷地の広い物件、新宿区の商業地に近い物件。売り出す前に、1億円を超えるかどうかを確かめてください。超えるなら、この特例は使えません。取得費加算のほうに切り替えます。

もう1つは区分所有登記です。中野区・新宿区には二世帯住宅や併用住宅が多く、区分所有登記になっているものがあります。登記事項証明書を見れば分かります。記憶ではなく、書面で確かめてください。

当センターは西新宿駅から徒歩約5分です。この3区を中心に、東京23区全域とZoomで全国に対応しています。


当センターでできること、できないこと

使えるかどうかの判定できます。売る前が一番効きます
取得費加算とどちらが有利かの試算できます
譲渡所得の確定申告165,000円から(税込)
被相続人居住用家屋等確認書の取得市区町村への申請はご本人の手続きです。書き方はご案内します
相続登記提携の司法書士が行います。窓口は当センターです
不動産の売却そのもの行いません。不動産会社をご紹介することはできます
耐震改修の手配行いません

よくある質問

空き家の3,000万円控除は、いくらまで引けますか。

譲渡所得から最高3,000万円です。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人の数が3人以上の場合は、1人2,000万円が上限になります。

いつまでに売る必要がありますか。

相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。加えて、制度そのものが令和9年12月31日までの譲渡で終わります。2025年以降に相続が起きた方は、制度の期限のほうが先に来ます。

マンションでも使えますか。

使えません。「区分所有建物登記がされている建物でないこと」が条件です。分譲マンションの一室は対象外です。

父が亡くなるまで、母と同居していました。使えますか。

使えません。相続開始の直前に、被相続人以外に居住していた人がいなかったことが条件です。

父は老人ホームに入っていました。使えますか。

条件を満たせば使えます。家を出る直前に要介護認定等を受けていたこと、家を出てから相続開始まで物品の保管などに使われていたこと、その間に貸したり他の人が住んだりしていないことが必要です。

売れるまで空き家にしておくのはもったいないので、貸してもよいですか。

貸してはいけません。相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないことが条件です。一度貸すと使えません。

解体したあと、売れるまで駐車場にしてもよいですか。

いけません。取壊しの時から譲渡の時まで、建物または構築物の敷地の用に供されていないことが条件です。更地のままにしてください。

買主に解体してもらう形でも使えますか。

令和6年1月1日以後の譲渡なら使えます。ただし譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを終える必要があります。売買契約に期限を書いておいてください。

兄に買い取ってもらう場合も使えますか。

使えません。親子や夫婦など特別の関係がある人への譲渡は対象外です。

相続時精算課税で生前にもらった実家を売る場合は使えますか。

使えません。この特例は相続または遺贈により取得した家屋が対象で、相続時精算課税は贈与にあたるためです。取得費加算の特例のほうは使えます。

取得費加算の特例と、両方使えますか。

使えません。選択適用です。売った金額・取得費・納めた相続税で、どちらが有利かが変わります。


まとめ

  • 相続した空き家を売ると、譲渡所得から最高3,000万円を引けます
  • 期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日。加えて制度自体が令和9年12月31日まで
  • 2025年以降に相続が起きた方は、制度の期限のほうが先に来ます
  • 家屋は昭和56年5月31日以前の建築で、区分所有登記されていないこと
  • 相続開始の直前に、被相続人が1人で住んでいたこと
  • 老人ホーム入居でも使えますが、認定の時期は「家を出た直前」で判定します
  • 相続後に貸した・駐車場にした・親族に売ったは、いずれも使えません
  • 譲渡対価1億円以下。他の相続人の分も合算します
  • 相続人3人以上なら1人2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡)
  • 相続時精算課税で生前にもらった家は対象外です
  • 取得費加算とは選択適用。両方は使えません
  • 被相続人居住用家屋等確認書を市区町村から取る必要があります。時間がかかります

ご相談のご案内

この特例は、売る前にしか守れません。 貸す、駐車場にする、親族に売る、片づけて完全に空にする。どれも良かれと思ってやったことで、3,000万円の控除が消えます。

当センターでは、使えるかどうかの判定と、取得費加算とどちらが有利かの試算からご相談をお受けしています。譲渡所得の確定申告は165,000円からです。

📞 0120-75-1234(9:00〜19:00/平日・土曜・日祝も受付)
💻 24時間WEB相談予約はこちら
オンライン面談に対応しています。ご来所が難しい方は 全国対応のオンライン相談 をご覧ください。

料金は 料金表 をご覧ください。


監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者45,000人・動画329本(2026年10月時点)。


出典

※本ページの内容は2026年11月2日時点の情報です。制度は改正されることがあります。
※この特例は令和9年12月31日までの譲渡が対象の期限付きの制度です。延長されるかどうかは現時点では分かりません。

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