養子縁組で相続税は減るのか|5つのデメリットと、基礎控除に入れられる人数

監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.5万人)。

公開日:2026年10月2日 最終更新日:2026年10月2日


【結論】養子は何人でも、基礎控除は増えません

養子縁組で相続税が減るのは、法定相続人の数が増えるからです。

基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続人が1人増えれば、基礎控除が600万円増えます。
生命保険金・退職手当金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)も増えます。

ただし、数えられる養子の人数には上限があります。

基礎控除の計算に入れられる養子
実子がいる場合1人まで
実子がいない場合2人まで

孫3人を養子にしても、増えるのは1人分(実子がいる場合)だけです。
相続税法15条2項で決まっています。

この制限を受けない養子もいます。
・特別養子縁組による養子
・配偶者の実子で、あなたの養子になった人(いわゆる連れ子養子)
・代襲相続人である養子
これらは実子とみなされ、人数制限の対象外です。


養子縁組の5つのデメリット

「相続税が減る」という面だけを見て決めると、あとで困ることがあります。

① 孫を養子にすると、相続税が2割増しになります

相続税額の2割加算という決まりがあります。

被相続人の一親等の血族(子・父母)と配偶者以外が財産を取得すると、
その人の相続税額に2割が上乗せされます。

孫を養子にした場合、この2割加算の対象になります。
(その孫が代襲相続人である場合を除きます)

2割加算
子(実子・普通の養子)かかりません
孫を養子にした場合かかります
孫が代襲相続人の場合かかりません
兄弟姉妹・甥姪かかります

基礎控除が600万円増えても、2割加算で消えることがあります。
どちらが大きいかは、財産の額と家族構成で変わります。

→ 相続税額の2割加算

② ほかの相続人の取り分が減ります

養子は、実子と同じ相続分を持ちます。

子が2人のところに養子が1人入れば、1人あたりの法定相続分は
2分の1から3分の1になります。

ここが、いちばん揉めるところです。
「親が勝手に孫を養子にしていた」と、相続が始まってから知るケースがあります。

→ 法定相続分とは

③ 遺留分も分け合うことになります

養子にも遺留分があります。
「養子には財産を渡さない」という遺言を書いても、遺留分までは奪えません。

→ 遺留分とは

④ 「不当に相続税を減少させる」と見られると、認められません

相続税法63条という規定があります。

養子の数を法定相続人の数に含めることが、
相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、
税務署長はその養子を法定相続人の数に含めないことができる。

節税だけが目的で、実態の伴わない縁組は、否認されることがあります。
亡くなる直前の縁組はとくに見られます。

⑤ 簡単にはやめられません

養子縁組の解消(離縁)には、当事者の同意が必要です。
同意が得られなければ、裁判になります。

「とりあえず縁組して、だめならやめる」はできません。


普通養子縁組と特別養子縁組の違い

普通養子縁組特別養子縁組
実親との関係続きます終了します
実親の相続権残ります(両方から相続できます)なくなります
基礎控除の人数制限受けます(1人または2人まで)受けません(実子とみなされます)
成立当事者の届出家庭裁判所の審判
解消当事者の同意または裁判原則としてできません

相続対策で使われるのは、ほぼ普通養子縁組です。

普通養子縁組では、実親からも養親からも相続できます。
これは有利に見えますが、実親側の相続でも相続人になるということです。
実親側に借金があれば、そちらも関わってきます。


「叔父の養子になる」場合に気をつけること

子のいない叔父・叔母の養子になるというご相談があります。

どうなるか
相続順位第1順位の子になります。叔父の兄弟姉妹より優先します
2割加算かかりません(養子は一親等の血族です)
基礎控除叔父に実子がいなければ、2人まで数えられます
実親との関係続きます(普通養子縁組の場合)。実親からも相続できます
扶養の義務生じます。相続だけの関係ではありません

相続のためだけに考える話ではありません。
縁組をすると、扶養の義務も生じます。介護が必要になったときに関わることになります。

また、叔父の兄弟姉妹(あなたの親を含む)は相続人から外れます。
親族の理解を得ずに進めると、関係が壊れます。


孫を養子にするかどうかの判断

「一代飛ばし」として知られる方法です。

子ではなく孫に直接渡せば、相続が1回分減ります。
子の相続(一次)と子から孫への相続(二次)で2回かかるところが、1回で済みます。

効果代償
基礎控除+600万円—
保険の非課税枠+500万円—
相続を1回飛ばせる大きい—
2割加算—その孫の税額が1.2倍
ほかの相続人の取り分—減ります

財産が大きいほど「1回飛ばせる」効果が効き、2割加算の負担を上回ります。
財産が基礎控除の前後なら、2割加算のほうが重くなることがあります。

どちらに転ぶかは、財産の額と家族構成で変わります。
→ 相続税の計算シミュレーション で、まず概算を出してください。


養子縁組より先に検討したいこと

養子縁組は、取り消しにくい選択です。
同じ目的なら、先にこちらを検討してもいいと思います。

目的ほかの手
孫に渡したい遺贈(遺言で渡す。ただし2割加算はかかります)
孫に渡したい生前贈与(教育資金・住宅取得等資金の非課税制度)
基礎控除を増やしたい(増やす方法は、法定相続人を増やすことだけです)
二次相続まで含めて減らしたい一次相続の分け方の見直し

とくに二次相続まで含めた試算は、養子縁組より先にやるべきです。
分け方を変えるだけで、合計が変わることがあります。

→ 二次相続対策


手続き

内容
届出先市区町村の窓口
必要なもの養子縁組届、戸籍謄本、本人確認書類など(自治体にご確認ください)
養子が未成年の場合原則として家庭裁判所の許可が必要(自己または配偶者の直系卑属を養子にする場合を除く)
養親の条件成年に達していること
配偶者がいる場合配偶者の同意が必要な場合があります

届出の要件は、お住まいの市区町村でご確認ください。


よくある質問

Q1. 養子を何人にしても、基礎控除は増えますか

増えません。
基礎控除の計算に入れられる養子は、実子がいる場合は1人、いない場合は2人までです。
相続税法15条2項で決まっています。

Q2. 孫を養子にすると、相続税は増えますか減りますか

両方が起きます。
基礎控除が600万円増える一方、その孫の相続税額に2割が加算されます。
財産が大きいほど「相続を1回飛ばせる」効果が勝ち、
基礎控除の前後の財産なら2割加算が重くなることがあります。

Q3. 2割加算がかからない養子はいますか

代襲相続人である孫は、2割加算の対象外です。
また、子を養子にした場合(連れ子養子など)は一親等の血族なので、かかりません。

Q4. 叔父の養子になると、2割加算はかかりますか

かかりません。養子は一親等の血族として扱われます。

Q5. 叔父の養子になると、実の親からは相続できなくなりますか

普通養子縁組なら、実親からも相続できます。
実親との親子関係は続くためです。
特別養子縁組の場合は、実親との親族関係が終了します。

Q6. 節税目的の養子縁組は否認されますか

「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合」は、
その養子を法定相続人の数に含めないことができる
とされています(相続税法63条)。
亡くなる直前の縁組はとくに見られます。

Q7. 養子縁組は後からやめられますか

簡単にはやめられません。
離縁には当事者の同意が必要で、得られなければ裁判になります。
「だめならやめる」はできないとお考えください。

Q8. ほかの子に知らせずに養子縁組できますか

手続き上は可能です。ただし相続が始まれば戸籍で分かります。
何も知らされていなかった側は、まず納得しません。
実務では、ここがいちばん揉めます。

Q9. 養子にも遺留分はありますか

あります。養子は実子と同じ相続分を持ち、遺留分も同じです。

Q10. 養子縁組を考えています。誰に相談すればいいですか

税額への影響は税理士、縁組そのものの手続きは市区町村の窓口です。
親族間の調整が必要な場合は、弁護士が入ることもあります。
当センターでは、縁組した場合としない場合の税額を並べてご説明しています。


まとめ

  • 基礎控除に入れられる養子は、実子がいれば1人、いなければ2人まで
  • 特別養子・連れ子養子・代襲相続人である養子は、この制限を受けません
  • 孫を養子にすると、相続税額の2割加算がかかります(代襲相続人を除く)
  • 養子が増えると、ほかの相続人の取り分が減ります。ここがいちばん揉めます
  • 節税だけが目的の縁組は、相続税法63条で否認されることがあります
  • 離縁は簡単ではありません。取り消しにくい選択です
  • 叔父の養子になる場合は、扶養の義務も生じます

「相続税が減るから」だけで決める話ではありません。
相続税の計算シミュレーション で、縁組した場合としない場合を
並べて見てから判断してください。


監修者

天尾信之(あまお のぶゆき)
税理士(登録番号 第136528号/東京税理士会)
税理士法人Ambitious 代表/新宿相続・生前贈与相談センター

相続・事業承継の相談実績3,000件超。手がけた相続税申告のうち、税務調査に至った割合は1%未満。
YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」を運営し、
登録者45,000人・動画329本(2026年10月時点)。


出典

※本ページの内容は2026年10月2日時点の情報です。制度は改正されることがあります。

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