事業承継税制(法人版)|特例措置は期限が決まっています
監修:天尾信之(税理士・登録番号 第136528号/税理士法人Ambitious 代表)
相続・事業承継の相談実績3,000件超。YouTube「まるごと安全相続ch-あまおう税理士」運営(登録者4.2万人)。
公開日:2026年9月19日 最終更新日:2026年9月19日
【結論】使うなら、計画の提出が令和9年9月30日までです
会社を継がせるとき、いちばんの壁は自社株の相続税です。
非上場の会社でも、利益を積み上げてきた会社なら株価は数千万円から数億円になります。
売れない株に、現金で税金を払わなければなりません。
これを猶予する制度が事業承継税制です。
特例措置なら、自社株にかかる相続税・贈与税の100%が猶予されます。
ただし、期限があります。
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 令和9年(2027年)9月30日 | 特例承継計画の提出期限 |
| 令和9年(2027年)12月31日 | 贈与・相続の実行期限 |
計画の提出が先に締め切られます。
「令和9年いっぱいまで考えよう」では間に合いません。
⚠️ 注意:以前は「令和8年3月31日まで」と案内されていましたが、延長されています。
古い記事やパンフレットにご注意ください。
何が猶予されるのか
猶予であって、免除ではありません。
後継者が亡くなるなど一定の事由が生じたときに、はじめて免除されます。
それまでは「払わなくてよい状態が続いている」だけです。
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | 非上場会社の株式(自社株) |
| 税目 | 相続税・贈与税 |
| 特例措置の猶予割合 | 100% |
| 対象株式数 | 全株式 |
| 後継者 | 最大3人まで |
現金を用意しなくても、会社を引き継げる。 これがこの制度の価値です。
特例措置と一般措置は、まったく違います
同じ「事業承継税制」でも、中身は別物です。
| 特例措置 | 一般措置 | |
|---|---|---|
| 計画の提出 | 必須 | 不要 |
| 対象株数 | 全株式 | 総株式数の最大3分の2まで |
| 猶予割合 | 100% | 相続は80%、贈与は100% |
| 後継者の数 | 最大3人 | 1人 |
| 雇用要件 | 弾力化 | 承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要 |
| 期限 | 令和9年12月31日まで | 期限なし |
特例措置のほうが、圧倒的に有利です。
とくに大きいのが雇用要件です。
一般措置では、5年間で平均8割の雇用を維持できないと猶予が打ち切られます。
中小企業にとって、5年先の人数を約束するのは重い条件です。
特例措置ではこれが弾力化され、要件を満たせなくなっても、理由を報告すれば猶予が続きます。
使うまでの流れ
手続きは税務署だけでは終わりません。 都道府県も関わります。
| 順 | やること | どこへ |
|---|---|---|
| 1 | 特例承継計画を作る(認定経営革新等支援機関の所見が必要) | — |
| 2 | 特例承継計画を提出する(令和9年9月30日まで) | 都道府県 |
| 3 | 贈与または相続を実行する(令和9年12月31日まで) | — |
| 4 | 認定を申請する | 都道府県 |
| 5 | 相続税・贈与税の申告をする(担保の提供が必要) | 税務署 |
| 6 | 年次報告(5年間)・継続届出(その後3年ごと) | 都道府県・税務署 |
6が、この制度でいちばん見落とされます。
申告して終わりではありません。報告を怠ると、猶予が打ち切られます。
【重要】打ち切られると、利息つきで払うことになります
猶予が取り消されると、猶予されていた税額に加えて利子税を納めることになります。
主に、こうした場合です。
| 起きること | 結果 |
|---|---|
| 後継者が代表者でなくなった | 打ち切り |
| 株式を譲渡した・手放した | 打ち切り(譲渡した割合に応じて) |
| 会社が資産保有型会社等に該当した | 打ち切り |
| 年次報告・継続届出を出さなかった | 打ち切り |
| 会社を解散した | 打ち切り |
10年後、20年後に効いてくる制度です。
後継者が体調を崩して代表を降りる、事業の形を変える、報告を忘れる。
そのすべてが、過去にさかのぼって納税につながります。
使うかどうかは、「いま得か」ではなく「20年続けられるか」で判断してください。
相続で使う場合と、贈与で使う場合
この制度は、相続でも贈与でも使えます。 ただし、性格がまったく違います。
| 贈与で使う | 相続で使う | |
|---|---|---|
| いつ動くか | 自分のタイミングで決められます | 亡くなってから |
| 株価 | 贈与する時点の株価で固定されます | 相続時の株価 |
| 後継者の準備 | 時間をかけて引き継げます | 突然になります |
| 特例措置の猶予割合 | 100% | 100% |
| 実行期限 | 令和9年12月31日まで | 同左(それまでに相続が起きた場合) |
贈与のほうが、圧倒的に設計しやすいというのが実務の感覚です。
株価が低いタイミングを選べますし、後継者に経営を任せながら見守る時間も取れます。
ただし、相続で使う場合は「期限までに相続が起きる」ことが前提です。
それを見込んで計画を立てることはできません。
期限内に確実に使いたいなら、贈与で実行することになります。
贈与で使った株は、相続のときにどうなるか
贈与で猶予を受けた株式は、贈与した人が亡くなったときに、
相続財産に加えて相続税を計算します。
そのうえで、一定の要件を満たせば、相続税の猶予に切り替えることができます。
「贈与して終わり」ではなく、次の相続まで続く制度だと理解してください。
担保の提供が必要です
猶予を受けるには、税務署に担保を提供しなければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何を担保にするか | 猶予の対象となる非上場株式の全部を担保に提供する方法が一般的です |
| 手続き | 相続税・贈与税の申告書と一緒に提出します |
| 注意 | 担保の手続きが漏れると、猶予が認められません |
申告期限までに、申告書の作成と担保の手続きを両方終える必要があります。
書類の量も多く、期限間際に始めて間に合う手続きではありません。
向いている会社・向いていない会社
| 状況 | |
|---|---|
| 向いています | 株価が高く、後継者がすでに決まっていて、事業を続ける意思が固い |
| 向いています | 納税資金がなく、他に手がない |
| 向いていません | 後継者が決まっていない、迷っている |
| 向いていません | 数年内に会社を売る(M&A)可能性がある |
| 向いていません | 株価を下げる対策で十分に足りる |
| 向いていません | 報告の体制を続けられる自信がない |
まず株価を計算してください。
対策をすれば猶予を使わずに済む会社も、実際にあります。
非上場株式(自社株)の相続税評価|3つの方式と、会社規模による分かれ方
相続税全体で見ると、注意点があります
① 他の相続人との公平が崩れます
自社株を後継者に集中させると、他のきょうだいの取り分が減ります。
自社株は会社の資産の大半を占めることが多く、
「会社は長男、あとは少し」という形になりがちです。
遺留分への配慮が欠かせません。
遺留分侵害額請求とは?1年の時効と、2019年の改正で変わったこと
なお、遺留分については民法特例(除外合意・固定合意)という別の仕組みもあります。
こちらも都道府県ではなく経済産業大臣の確認と、家庭裁判所の許可が必要です。
② 猶予されるのは自社株だけです
会社の株以外の財産(自宅、預貯金)には、普通に相続税がかかります。
猶予を使っても、現金の準備は必要です。
③ 小規模宅地等の特例との関係
会社に貸している土地があれば、特定同族会社事業用宅地等として
400㎡まで80%減額できる場合があります。こちらもあわせて検討してください。
使わずに済ませる道もあります
猶予制度は、20年以上続く拘束です。
使わずに済むなら、そのほうが身軽です。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 株価を下げてから渡す | 役員退職金、不良資産の処分などで評価額を下げます |
| 暦年贈与で少しずつ渡す | 年110万円の基礎控除を使い、長期間かけて移します |
| 相続時精算課税を使う | 株価が低いタイミングで固定できます |
| 納税資金を保険で作る | 猶予を使わず、現金で納める前提を整えます |
| 持株会社を作る | 資本構成を組み替えます(専門的な検討が必要です) |
どれも「株価を計算してから」でなければ判断できません。
「制度を使うべきか」という相談を受けたとき、
私たちがまず出すのは制度の説明ではなく、株価の数字です。
生前にできる相続対策一覧|効果と注意点を10種類まとめて比較
よくある誤解
①「申告すれば、それで終わり」
終わりません。 5年間の年次報告と、その後3年ごとの継続届出が続きます。
届出を忘れただけで猶予が打ち切られます。
②「税金がなくなる制度だ」
猶予です。 一定の事由が生じるまで、納税が先送りされているだけです。
③「後継者が決まっていなくても、計画だけ出せばいい」
特例承継計画には後継者を記載します。
白紙のまま出すことはできません。
④「会社を売るときも、そのまま引き継げる」
株式を譲渡すると打ち切りです。 M&Aの可能性があるなら、慎重に判断してください。
⑤「相続税の全部が猶予される」
猶予されるのは自社株にかかる分だけです。自宅や預貯金には普通に相続税がかかります。
【新宿区・中野区・世田谷区にお住まいの方へ】
新宿区には、中小企業のオーナーが多くいらっしゃいます。
そして、都心特有の事情があります。
| 事情 | 影響 |
|---|---|
| 会社名義または個人名義の不動産がある | 株価が土地の含み益で押し上げられます |
| 会社に土地を貸している | 無償返還の届出の有無で、評価がまったく変わります |
| 自宅と会社が近い/同じ建物 | 小規模宅地等の特例の適用区分が複雑になります |
| 後継者が決まっていない | まず株価の把握と、選択肢の整理から |
とくに会社に土地を貸している場合は、届出書の有無を先に確認してください。
借地権・底地の相続税評価|借りている土地にも相続税はかかります
当センターは相続税の申告と生前対策を扱っています。
まず自社株がいくらになるかを計算し、そのうえで制度を使うかどうかを判断しましょう。
計算しないまま「使うべきか」を議論しても、答えは出ません。
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目19-5 KYS西新宿ビル1階
東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩約5分/各線「新宿」駅から徒歩10分
受付時間 9:00〜19:00(土日祝も対応)
相談の順番
制度から入らないでください。 順番を間違えると、判断できません。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 自社株の評価額を計算する(直近3期分の申告書と決算書から) |
| 2 | 財産全体に占める自社株の割合を見る |
| 3 | 相続税の総額を試算する(自社株以外も含めて) |
| 4 | 納税資金が足りるかを確認する |
| 5 | 足りなければ、株価を下げる対策を検討する |
| 6 | それでも足りなければ、猶予制度を検討する |
| 7 | 遺留分への配慮(民法特例、生命保険など)を組み込む |
6にたどり着く会社は、思ったより多くありません。
株価を下げる対策と、納税資金の準備で足りる会社が相当数あります。
猶予制度は、20年以上の拘束と引き換えの手段です。
よくある質問
Q1. 特例措置は、いつまでに何をすればいいですか
特例承継計画の提出が令和9年9月30日まで、贈与・相続の実行が令和9年12月31日までです。
計画の提出が先に締め切られる点にご注意ください。
Q2. 「令和8年3月31日まで」と聞きました
古い情報です。 特例承継計画の提出期間は令和9年9月30日までに延長されています。
Q3. 猶予された税金は、いつ免除されますか
後継者が亡くなった場合など、一定の事由が生じたときです。
それまでは猶予が続くだけで、消えたわけではありません。
Q4. 途中でやめたらどうなりますか
猶予されていた税額に利子税を加えて納めることになります。
後継者が代表を退く、株式を手放す、報告を怠るなどが原因になります。
Q5. 一般措置とどちらがいいですか
期限内に間に合うなら、特例措置です。 全株式・100%猶予・後継者3人まで・雇用要件の弾力化と、条件が有利です。
Q6. 後継者が決まっていません
まず株価を計算してください。 対策で株価を下げれば、猶予を使わずに済む会社もあります。
決まっていない段階で計画だけ出すことは現実的ではありません。
Q7. 会社を売る可能性があります
向いていません。 株式を譲渡すると猶予は打ち切られ、利子税とともに納税することになります。
Q8. 手続きはどこへ出すのですか
特例承継計画と認定の申請は都道府県、相続税・贈与税の申告は税務署です。
その後も年次報告(5年間)と継続届出(3年ごと)が続きます。
まとめ
- 特例措置は平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間の制度です
- 特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日。実行期限より先に来ます
- 「令和8年3月31日まで」は古い情報です
- 特例措置は全株式・100%猶予・後継者最大3人・雇用要件は弾力化
- 一般措置は3分の2まで・後継者1人・5年間平均8割の雇用維持が必要
- 免除ではなく猶予です。報告を怠ると打ち切られ、利子税がかかります
- 会社を売る可能性があるなら、向いていません
- まず自社株の評価額を計算することから始めてください
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監修者
天尾 信之(あまお のぶゆき)
税理士/東京税理士会 登録番号 第136528号
税理士法人Ambitious 代表社員
相続・事業承継の相談実績3,000件超。
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出典
- 国税庁タックスアンサー No.4148「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4148.htm
- 国税庁「事業承継税制特集」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/index.htm
- 国税庁「法人版事業承継税制」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/houjin.htm

