【家族信託のはじめ方】手続&流れ ⑧STEPで準備完了!

こんにちは。相続税理士の天尾です。('ω')
今回のテーマは、『家族信託の手続き』。

認知症への備えとして、家族信託を利用したいと思っている方は多いでしょう。
また、自由度が高い財産渡しプランも可能なため人気がある相続対策の一つです。

しかし家族信託を始めるためには、一体何をすれば良いのでしょうか?

「家族信託を始めたいけど、どうしたらいいの?」
「専門家に頼むと高い?」

こんな方はぜひ、読んでみて下さい。

この記事では、家族信託開始までの手続きを【8つのSTEP】に分けて解説。
一つずつクリアしていけば、家族信託を始める準備ができるでしょう。

先に申し上げておきますと、家族信託の手続きは決して簡単ではありません。
専門家でも慎重になる内容であり、自己手続きするなら手間と忍耐が必要になることは理解しておきましょう。

また、自己手続きは費用が安くできる分、デメリットやリスクも生じます。

◆:メリット

  • 低コストで手続きできる(専門家への報酬が不要)
  • 身内の話したくないことを公開しなくていい

◆:デメリット&リスク

  • 対策不足によるトラブル発生
  • 知識付けと手間が必要
  • 不慣れにより、信託開始まで時間がかかる
  • 認知症になった後で問題が発覚し、修正不可になる

プラス面とマイナス面があることを、まずは理解しておきましょう。
その上でやるべきことを把握し、「自分で出来そう!」と思ったら、ぜひチャレンジしてみて下さい。

また、専門家へ依頼した時の【目安費用】もご紹介。
自分では難しいと思った方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

◆・この記事を読む前に・◆

  • すでに認知症になっている場合、家族信託を始めることはできません
  • 『遺言信託』『自己信託(信託宣言)』についての内容は、記載していません
  • 信託開始まで、3ヶ月ほどかかる場合もあります
  • この記事を読み、難しいと感じた場合は専門家へ相談することを強くおすすめします

【⑧STEP】家族信託開始までの手続き&流れ

家族信託を始めるため、準備をしていきましょう。
ここでは、やるべきことを8つに分け解説していきます。

また、家族ぐるみでの話し合いが大前提条件です。
一部だけで話を進めるのはNG。

後で揉める原因となり、家族信託が難航する可能性があるためです。
家族信託は、みんなが納得できなければ成功しません。

家族や関係者、全員で信託を進めて行きましょう。

STEP①【目的】【理由】をしっかり固める

『なぜ家族信託を行いたいのか?』

なんとなく、ふんわりとした理由では家族信託の成功は難しいでしょう。
あくまで家族信託は、目的達成のための手段に過ぎないためです。

芯がブレたままだと最適な対策はできません。
まずは理由や目的をハッキリさせましょう。

なぜ家族信託?

  • 自分が認知症になった時のために備えておきたい
  • 思い描く財産渡しルートがある
  • 障害を持っている家族のために対策しておきたい
  • 不動産の共有名義を避けたい
  • 配偶者側の親族に財産を渡したくない etc.

STEP②【信託財産】を決める

『どの財産を家族に任せるか?』

管理や運用をお願いしたい財産を決めましょう。
なお、全財産を信託財産にする必要はなく、一部だけでもOKです。

補足

  • 【現金】を信託するなら
    →『信託する金額まで明確に』
  • 【不動産】を信託するなら
    →『登記簿証明書と一致させ、確実に分かるように記載』
  • 【株式】を信託するなら
    →『信託ができるかどうか、証券会社などに事前に確認しておくこと』

STEP③【ポジション】を決める

家族信託に必要不可欠な、3つの役割を誰にするか決めましょう。
必要に応じて追加できる役割もあります。

必須ポジション

1 委託者

信託財産の持ち主で、管理をお願いする人。
『受益者』と兼任することも出来ます。

2 受託者

任せられた信託財産を、契約内容どおりに管理する人。
契約で指定されていなければ、信託財産を勝手に処分したり使うことはできません。
また、信託財産から出た利益を受け取ることもできません。

『受益者』との兼任は原則NG。

3 受益者

信託財産からの利益を受け取る人。
賃貸不動産からの家賃収入などが当てはまります。

『委託者』との兼任OK。

追加ポジション

4 信託管理人

◆・こんな時に追加しよう・◆

【受益者が『まだ』存在しない時】

『将来生まれてくる子ども』を受益者に指定している時などが当てはまります。
受益者が現れるまでの間、代理として役目を務めます。

ただし、以下のような人は指定できません。

  • 受託者
  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
5 信託監督人

◆・こんな時に追加しよう・◆

【受託者が契約どおりに財産を管理してくれるか不安】
【現金の使い込みや管理トラブルを防止したい】

契約中の不安要素を取り除きたい時に効果的です。

ちなみに、監督できる権利は『受益者』にもあります。
何かしらの理由で受益者が監督できない場合、別の人を置くことができます。

6 受益者代理人

◆・こんな時に追加しよう・◆

【受益者の判断能力が低下している】
【受益者が幼い】
【受益者が利益を受け取ることだけに興味があり、手続きなどを放棄しそうな時】

設定推奨ポジション

最後に、おすすめポジションをご紹介。
想定される状況に応じ設定しておくことで、質の高い家族信託が行えます。

7 第2受託者

何らかの条件が発生した時のために、次の受託者を事前に指定しておきます。

◆:例えばこんな時

  • 契約中に受託者が死亡してしまった時
  • 受託者が契約解除を申し出た時 etc.
8 第2受益者

何らかの条件が発生した時のために、次の受益者を事前に指定しておきます。

◆:例えばこんな時

  • 契約中に受益者が死亡してしまった時 etc.

受益者の指定をうまく行えば、遺言書代わりとしても活用できます。
(詳しくは、後述している『お役立ちmemo』もCheck!)

9 帰属権利者

帰属権利者とは、信託が終了した時に『残っている信託財産』を受け取る人。
あらかじめ指定しておけば、ムダなく財産を望みの人へ渡すことが出来ます。
契約の段階で決めることが難しい場合、【信託終了時に協議する】という内容を書いておくのもアリ。

ただし、信託財産も遺留分に関わってきます。
あまりにも額が大きい場合、相続時に請求される可能性があることは覚えておきましょう。

なお、『指定していない時』や『帰属権利者がすでに死亡している時』の受取人は以下のとおりです。

  • 『委託者』、または『委託者の相続人』
  • 委託者や相続人がいない時は、『受託者』

★★・お役立ちmemo・★★

『委託者の死亡』を条件とした受益者を指定しておけば、遺言書代わりとしても機能します。

また、生前中と死亡後とで財産の渡し先を分けたい時にも効果的です。
細かい設定をし、うまく活用してみましょう。

★:例えば①

  • 第1受益者:Aさん
  • 第2受益者:Aさん(引き続き)

★:例えば②

  • 第1受益者:Aさん(委託者の生前中)
  • 第2受益者:Bさん(委託者の死亡を条件に変更)

STEP④【管理方法】【条件】を詳しく設定する

受託者がしっかり役目を果たせるよう、管理方法や条件を設定しましょう。

◆:設定すべき基本内容

  • 受託者の義務や権限
  • 信託が終了する条件や期間
  • 委託者の地位権利について

その他、付け加えたい条件があれば追加していきます。
あいまいな契約内容はトラブルの元。

とにかく具体的な表現で詳しく設定していきましょう。

受託者の義務や権限

  • 受託者がやるべきことは何か
  • 受託者が財産の処分や運用できる範囲はどこまでか
  • どんな時に財産の使用ができるか etc.

信託が終了する条件や期間

【例】

  • 『委託者が死亡』したら信託終了
  • 『委託者が死亡』⇒『契約継続』⇒『配偶者が死亡』したら信託終了
  • 自分たちで決めた『期間満了』で信託終了

なお、家族信託は永久的に継続することはできません。
いわゆる【30年ルール】と呼ばれるものが存在し、『信託開始から30年経過後に受益者が死亡』すると強制終了になります。

委託者の地位権利について

委託者としての地位や権利は相続されます。
つまり、信託進行中に『委託者が死亡』した場合、相続人が委託者に。

スムーズな家族信託が難しくなるため、基本的に相続は避けた方が良いでしょう。

◆・相続によるデメリット・◆

  • 相続人が複数いる場合、全員が委託者となってしまいややこしくなる
  • 家族信託に関与していない人が混じり、トラブルになる可能性がある

★★・お役立ちmemo・★★

  • 委託者の地位は、相続によって承継しない
  • 委託者の地位は、受益者の地位と共に移動する

この条件により委託者の地位は相続されず、常に『委託者』=『受益者』に。
信託財産が【不動産】の場合、取得時にかかる登録免許税が安くなります。

◆・例えば・◆

【委託者】Aさん
【受託者】Bさん
【受益者】Aさん
【第2受益者】Cさん
【第3受益者】Dさん

【信託財産】

  • 賃貸マンション

【信託終了の条件】

  • 『Dさん』が受益者となった時点で終了

【委託者の地位権利について】

  • 委託者の地位は、相続によって承継しない
  • 委託者の地位は、受益者の地位と共に移動する

◆:『Aさん』死亡後の流れ

  • 【委託者】=『Cさん』=【受益者】
  • 『Cさん』死亡
  • 【委託者】=『Dさん』=【受益者】
  • 信託終了
  • 不動産は、受託者である『Bさん』から委託者である『Dさん』へ
  • 登録免許税の減税対象

STEP⑤【信託契約書】を作成する

STEP①~④で決めた内容の『契約書』を作成しましょう。

実は、契約書の作成は必須ではありません。
極端な話、口頭でも成立してしまうのです。

しかし、トラブル原因となることは明白であり、基本的にNG。
家族と言えどしっかり『書面化』し、しっかり信託を行えるようにしておきましょう。

書面は『公正証書』にしよう

公正証書とは、法的行為の事実があったことを証明できる文書。
公的資格を持った専門家により作成され、有効で安全な契約書づくりに最適です。

◆・公正証書のメリット・◆

  • 契約内容を取り消されることがない
  • 改ざんされる心配もない
  • 契約書作成時に、判断能力があったことを証明できる

※(認知症などで判断能力が低下している状態での契約は、『無効』。)

公正証書は【公証役場】で作ることができます。
自作の契約書でも効力はありますが、トラブル防止のため基本的に『公正証書一択』。

また、『信託口口座の開設』にも公正証書が必要な時があります。(詳しくは後述しているこちら)
契約内容をまとめ、公証役場で作成してもらいましょう。

【公証役場】を検索してみる

STEP⑥【名義変更】委託者から受託者へ

名義が『委託者』のままでは、『受託者』は管理できません。
名義が関わる財産を信託財産にする場合、変更手続きが必要となります。

◆:例えばこんな財産

  • 不動産
  • 株式
  • 賃貸マンション
  • 貸付駐車場

STEP⑦現金を信託する時は【専用口座の開設】【送金】

現金を信託財産とする場合、口座そのものを信託することはできません。

口座にある現金を振り込むことで、信託することが出来ます。

また、信託財産は分けて管理する必要があります。
受託者がすでに持っている口座は使えず、信託専用の口座を新しく作らなければいけません。

【信託口口座】の開設

金融機関によっては、信託専用の【信託口口座】の開設ができます。
対応していない金融機関もあるため、事前に問い合わせ確認しておきましょう。

◆・信託開始までの流れ・◆

  • Step1. 金融機関に問い合わせ
  • Step2. 信託契約後、口座開設
  • Step3. 委託者は信託する現金を送金
  • Step4. 受託者は送金された現金を使って管理、運用開始

◆:【信託口口座】に対応していない時

『受託者名義』の普通預金口座を新たに開設しましょう。
信託契約書に口座番号を書き、信託専用口座であることも記載しておきます。

◆・信託開始までの流れ・◆

  • Step1. 受託者名義の口座開設
  • Step2. 契約書に記載
  • Step3. 委託者は信託する現金を送金
  • Step4. 受託者は送金された現金を使って管理、運用開始

STEP⑧【その他】手続き

  • 火災保険の契約者変更
  • 賃料振込用の口座変更
  • 株主名簿の変更
  • 水道光熱費の引落し口座の変更 etc.

READY☆家族信託【Start!】

契約内容に沿って、信託を進めていきましょう。
なお、信託進行中でも契約の【変更】や【追加】ができます。

ただし、認知症など判断能力が低下していない場合に限ります。

【専門家に依頼】家族信託の手続きいくらで出来る?

「自分たちで手続きするのは大変そう」
「どんな契約内容にすればいいか分からない」

家族信託に必要な手続きは、専門家へ依頼することもできます。
最適なアドバイスを受けることができるため、質の高い家族信託を望む人にもおすすめです。

しかし、依頼すればもちろん報酬が発生。
どのくらい費用がかかるのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

そこで、手続きにかかる費用を簡単にまとめてみました。
【目安費用】として、参考にしてみて下さい。

【目安】家族信託の手続きにかかる費用

専門家への報酬

相談料(30分)無料 ~ 5,000円
家族信託の設計・コンサルティング料30万円 ~ 150万円
信託契約書作成手数料10万円 ~ 30万円
(★:コンサルティング料に含まれていることもあり)
不動産の登記手数料(1件あたり)10万円
受益者代理人・信託監督人(月額)1万円 ~ 2万円

公証役場へ支払う手数料

公正証書の作成手数料5,000円 ~ 25万円
(★:詳しくは、日本公証人連合会【証書作成の基本手数料】を参照)

日本公証人連合会HP

登録免許税(不動産がある時のみ発生)

固定資産税評価額の0.4%円
(★:土地は2023年3月31日まで0.3%)

◆・費用例・◆

信託財産

【現金】2,500万円
【賃貸マンション】1件:評価額3,000万円

受益者代理人・信託監督人の依頼

なし

相談時間

2時間

◆:専門家への報酬

  • 【相談】無料 ~ 2万円
  • 【コンサルティング料】30万円 ~ 150万円
  • 【信託契約書作成手数料】10万円 ~ 30万円
  • 【不動産の登記手数料】10万円

◆:公証役場へ支払う手数料

  • 4万3,000円

◆:登録免許税

  • 12万円

66万3,000円 ~ 208万3,000円

!強化対策でクオリティUP

「家族信託さえやっていれば大丈夫!」

家族信託はとっても優秀で魅力的な制度ですが、万能ではありません。
対策できない部分があり、備えとして不十分である可能性もあるのです。

しかし、相続対策は家族信託だけではありません。
他の制度と併用し、補強してあげればOK。
より効果的で安心な備えとなるため、積極的に取り入れましょう。

ここでは代表的な2つの対策をご紹介。
ワンランク上を目指したい方は参考にしてみて下さい。

【遺言書】で強化

◆:信託していない財産への対策

全財産を信託対象としている場合は別ですが、そうでないケースが多いでしょう。

信託していない財産の遺し方は、遺言書で指定し対策できます。

◆・例・◆

財産内訳

  • 不動産A
  • 不動産B
  • 現金:5,000万円

信託する財産

  • 不動産A
  • 現金:3,000万円

★★・【不動産B】【現金:2,000万円】は、遺言書で対策!・★★

◆:『残った信託財産』への対策

信託終了後の『残った信託財産』は、相続財産の対象。
相続人が複数いる時は注意しましょう。

『不公平』が原因で、一部の相続人が遺留分を請求される可能性があります。
財産の配分を遺言書で調整し、対策してあげると安心です。

◆・例・◆

信託財産

  • 不動産:5,000万円

信託していない財産

  • 現金:5,000万円

信託契約

  • 不動産を長男に信託(受託者:長男)
  • 委託者の死亡で信託終了
  • 不動産は『長男』が取得

相続人

  • 長男
  • 次男

対策しない時の遺産分割

長男:【不動産】【現金2,500万円】
次男:【現金2,500万円】

★★・【現金】はすべて次男にするなどして遺言書で調整!・★★

【生命保険】で強化

◆:遺留分への備え

不公平を承知の上で、財産渡しをしたい人もいるでしょう。

遺留分が請求される可能性がある人を、生命保険金の受取人に。
支払い用の現金確保に役立ちます。

ただし、契約内容によってかかる税金が変わってきます。
設定時や見直しをする際は、よく理解しておきましょう。

【生命保険で発生する税金について】
こちらの記事もCheck!

◆:相続税納付への備え

相続は財産分けをして終わりではありません。
財産を受け取った相続人は、その後に相続税を納める必要があります。

相続税の納付は、基本的に『現金一括払い』。

不動産が多い場合など、資金調達が困難な時に役立ちます。

【現金納付できない時の対処法について】
こちらの記事もCheck!

【最後に】この記事のまとめ

  • 手続きポイント①:まずは家族信託をしたい【理由】【目的】をはっきりさせる
  • 手続きポイント②:【信託財産】は何か、【役割】は誰にするかを決める
  • 手続きポイント③:【条件】を設定し、公証役場で【信託契約書】を作成する
  • 手続きポイント④:信託財産に合わせ、【名義変更】【口座開設】をする
  • 他の制度と組み合わせれば、【質の高い相続対策】ができる

家族信託を始めるために何をすべきか、何となく理解できたでしょうか?

家族信託の最大の強みは、【自由度の高さ】。
本来の相続では不可能な財産渡しプランも実現できるため、ぜひ取り入れたい対策の一つです。

しかし、家族信託にもデメリットがあります。

  • 認知症になった『後』には信託契約できない
  • 遺留分は無視できない(請求される人は『委託者』と『受託者』)
  • 身上監護はできない
  • 『受託者』に負担がかかる
  • 家族と言えど、他の目的に使用されない保証はない
  • そもそも信頼できる家族がいなければ難しい

相続対策は、みなさんの事情に合わせて行うべきもの。
家族信託はあくまで対策の一つに過ぎず、他にも選択肢はあります。

将来に不安のある方、少しでもお得な相続を達成したい方。
無料相談などを利用し、一度専門家へ相談してみましょう。

みんなが納得できる、ぴったりの方法が見つかるかもしれません。

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