【3種の違い】相続放棄・相続分の放棄・相続分の譲渡

こんにちは。相続税理士の天尾です。('ω')
今回のテーマは、『相続放棄&相続分の放棄&相続分の譲渡のちがい』。
3つはすべて、遺産の引き継ぎ方法ですが一体何がどう違うのでしょうか?
「違いがよく分からない」
「知識を付けて、相続方法を選べるようにしたい」
▼
こんな方はぜひ、読んでみて下さい。
相続のスタイルは人それぞれ。
複数の相続方法を知っておけば選択肢が広がり、より賢い相続が実現できるでしょう。
自分に合った相続探しのツールの一つとして、この記事を参考下さい。
【違いを知る①】基本データ

まずは基本的な知識を理解し、それぞれの違いを全体的に把握しましょう。
- どんな効果があるのか?
- メリットやデメリットは?
- 注意点は?
ここでは、それぞれ要点を簡単にまとめています。
ざっくり読んでみましょう。
相続放棄
◆:【相続放棄】って?
『すべての相続財産』を拒否する選択肢。
相続権そのものを放棄し、最初から相続人ではなかったことになります。
最大の特徴は、借金などのマイナス財産も引き継がずに済むこと。
相続することにメリットが無い時に選ばれる方法です。
手続きについて
家庭裁判所に申立てをし、受理されれば成立。
遺産分割協議などの話し合いでは相続放棄できません。
◆:メリット
- 相続そのものから解放される
- マイナス財産を引き継がなくていい
【マイナス財産例】
- 借金
- 住宅ローン
- 未払い家賃
- クレジットカード利用料金
- 未払いの税金
- 連帯保証人としての支払い義務 etc.
◆:デメリット
- 後順位の相続人へ相続権が移るため、トラブルの原因となる
- プラス財産も一切受け取れない
【プラス財産例】
- 現金
- 預貯金
- 家
- 土地
- 株式
- 車
- 貴金属
- 骨董品
- 他の人に貸しているお金 etc.
◆・注意点・◆
※『相続を知ったときから3ヶ月以内』に放棄しなければいけない
※一度受理されると、原則取り消しできない
※遺産を勝手に使ったり処分すると相続放棄できなくなる
相続分の放棄
◆:【相続分の放棄】って?
『プラス財産のみ』を拒否する選択肢。
相続権そのものを放棄するわけではないため、借金などのマイナス財産は相続しなければいけません。
放棄されたプラス財産は、他の相続人へ振り分けられます。
渡す相手は選べず、基本的に全員。
放棄した人以外の相続財産がUPします。
手続きについて
放棄する『意思表示』をし、他の相続人全員が同意すればOK。
遺産分割協議書に、署名と捺印をするだけで成立します。
家庭裁判所への申立ては必要なく、自分たちだけで完結できます。
◆:メリット
- 相続権は移らないため、後順位の相続人に影響がない
- 相続分の放棄が成立すれば、遺産分割協議に参加しなくていい
- 比較的手軽に相続から撤退できる
- 期限に指定がなく、遺産分割前であればいつでも放棄できる
◆:デメリット
- 借金や未払い金は放棄できない
- 独断で進められず、必ず他の相続人と話し合わなければいけない
◆・注意点・◆
※『後で借金の事実』が発覚した場合、相続放棄ではないため引き継がなくてはいけない
相続分の譲渡
◆:【相続分の譲渡】って?
自分の相続財産の取り分を、渡したい相手に譲る選択肢。
プラス財産のみを渡すことはできず、マイナス財産もすべてひっくるめた取り分を渡します。
譲る側と受け取る側との契約行為であり、当事者以外の同意は不要です。
譲る相手は、複数人や第三者でもOK。
渡す相続財産の配分も決めることができ、全部または一部のみでも可能です。
対価をもらう『有償』譲渡、またはタダで譲る『無償』譲渡を選ぶことができます。
手続きについて
とくに決められた手続きはありません。
法的には口頭でも成立しますが、トラブル防止のため【相続分譲渡証明書】を作成し、書面で契約を交わします。
証明書のサンプルを参考に作成してみましょう。
なお、家庭裁判所での調停で遺産分割を進める場合は、専用のフォーマットがあります。
指示に従い提出しましょう。
【相続分譲渡証明書】サンプル
【裁判所提出用】参考
◆:メリット
- 渡したい相手を自由に選べる
- 遺産争いから抜け出せる
- 家庭裁判所での手続き不要
- ほかの相続人からの同意不要
- 自分の遺産取り分をすべて譲渡した場合、遺産分割協議への参加不要
◆:デメリット
- 譲渡した相手が他の相続人と疎遠な間柄の場合、トラブルになる可能性がある
- 借金などのマイナス財産も相手に渡る
◆・注意点・◆
※『遺産分割後』には譲渡はできない
※借金などのマイナス財産も相手に渡るが、根本的な支払い義務は消えない
※債権者への効力はなく、返済を求められたら応じなければいけない
※受け取った相手は、将来の相続で『特別受益』扱いされる可能性がある
★★・お役立ちmemo・★★
◆・他の相続人には【取戻権】がある・◆
取戻権とは、第三者に譲渡された取り分を買い戻す権利。
本来の相続人に取り分が戻り、遺産分けから除外することができます。
身内問題に関わらせたくない時に有効な方法のため、覚えておきましょう。
・【取戻権】のポイント・
- 取戻権の有効期限は、『譲渡されてから1ヶ月以内』
- 『無償』で行われた譲渡でも、『費用の支払いが必要』
- 取戻権を行使した場合、『相手は拒否できない』
【違いを知る②】発生する税金

それぞれ発生する税金は以下のとおり。
とくに【相続分の譲渡】は条件により変わってくるため、注意しましょう。
相続放棄
【相続放棄した人】に発生する税金
課税される税金はありません。
ただし、相続放棄にかかる費用は発生します。
【他の相続人】に発生する税金
通常どおり相続税が課税。
相続財産が増えるため、本来より相続税額がUPします。
【相続放棄にかかる費用っていくら?】
こちらの記事もCheck!
相続分の放棄
【放棄した人】に発生する税金
課税される税金はありません。
【他の相続人】に発生する税金
通常どおり相続税が課税。
相続財産が増えるため、本来より相続税額がUPします。
相続分の譲渡
譲渡した相手、対価の有無で発生する税金が変わります。
【譲渡した人】に発生する税金
| 【他の相続人】へ譲渡 | 【第三者】へ譲渡 | |
|---|---|---|
| 無償 | なし | ①:相続税 |
| 有償 | ②:相続税 | ③:相続税(+ 譲渡所得税) |
◆・補足・◆
【①】相続税
一旦相続したとみなされ、譲渡した相続分に対し相続税がかかります。
【②】相続税
もらった対価に対し相続税がかかります。
【③】相続税(+ 譲渡所得税)
一旦相続したとみなされ、譲渡した相続分に対し相続税がかかります。
不動産を譲渡し対価を受け取った場合、譲渡所得税も追加課税されます。
【受け取った人】に発生する税金
| 【他の相続人】 | 【第三者】 | |
|---|---|---|
| 無償 | ①:相続税 | 贈与税 |
| 有償 | ②:相続税 | ③:基本なし |
◆・補足・◆
【①】相続税
譲渡された分の相続税が増えます。
【②】相続税
支払った対価分、相続税が減ります。
【③】基本なし
著しく低い金額で譲り受けた場合、贈与税が発生する可能性があります。
【違いを知る③】相続税と取得できる遺産額

次に解説する内容は、他の相続人への影響。
『相続税の金額』と『取得できる遺産額』をそれぞれ計算してみました。
今回は、【相続放棄】と【相続分の放棄】を比較。
【相続分の譲渡】は条件を自由に設定できるため、省いています。
計算条件と計算結果は以下のとおりです。
詳しい計算内容が気になる人は、以降もチェックしてみて下さい。
◆・【条件】・◆
【相続人】
- 妻
- 子A
- 子B
- 子C
【遺産額】
- 1億2,000万円
【補足】
- 『子C』が相続放棄、または相続分の放棄をするものとする
- 借金はないものとする
◆・【計算結果】・◆
| 【相続放棄】 | 【相続分の放棄】 | |||
|---|---|---|---|---|
| 相続税 | 取得遺産額 | 相続税 | 取得遺産額 | |
| 妻 | 0円~460万円 | 5,540万円~6,000万円 | 0円~592万円 | 6,608万円~7,200万円 |
| 子A | 197万5,000円 | 2,802万5,000円 | 148万円 | 2,252万円 |
| 子B | 197万5,000円 | 2,802万5,000円 | 148万円 | 2,252万円 |
計算詳細は飛ばして次へ
【相続放棄】計算詳細
★:計算ポイント
- 基礎控除額は『相続放棄した人も人数に入れる』
- 配偶者控除を適用させれば、『妻は1憶6,000万円まで相続税はかからない』
【相続税】
◆・STEP①:【基礎控除額】・◆
3,000万円 + 600万円 × 4人 = 5,400万円
◆・STEP②:【課税対象】・◆
1億2,000万円 - 5,400万円 = 6,600万円
◆・STEP③:【相続税】・◆
【 妻 】
6,600万円 × 1/2 = 3,300万円
3,300万円 × 20% - 200万円 = 460万円(『配偶者控除』を適用させれば0円)
【子A】
6,600万円 × 1/4 = 1,650万円
1,650万円 × 15% - 50万円 = 197万5,000円
【子B】
6,600万円 × 1/4 = 1,650万円
1,650万円 × 15% - 50万円 = 197万5,000円
【取得金額】
◆・STEP①:【相続分】・◆
【 妻 】:1/2
【子A】:1/2 ÷ 2人 = 1/4
【子B】:1/2 ÷ 2人 = 1/4
◆・STEP②:【遺産の分配額】・◆
(遺産額に相続分を掛ける)
【妻】
1億2,000万円 × 1/2 = 6,000万円
【子A】
1億2,000万円 × 1/4 = 3,000万円
【子B】
1億2,000万円 × 1/4 = 3,000万円
◆・STEP③:【取得金額】・◆
(相続税を引く)
【妻】
6,000万円 - (460万円~0円)= 5,540万円~6,000万円
【子A】
3,000万円 - 197万5,000円 = 2,802万5,000円
【子B】
3,000万円 - 197万5,000円 = 2,802万5,000円
【相続分の放棄】計算詳細
★:計算ポイント
- 基礎控除額は『相続放棄した人も人数に入れる』
- 放棄した人の相続分を『他の相続人の相続分にプラス』する
- プラスする相続分は、元々の相続分の『比率に合わせ分配』する

◆:【相続税】
◆・STEP①:【基礎控除額】・◆
3,000万円 + 600万円 × 4人 = 5,400万円
◆・STEP②:【課税対象】・◆
1億2,000万円 - 5,400万円 = 6,600万円
◆・STEP③:【相続税】・◆
【妻】
6,600万円 × 3/5 = 3,960万円
3,960万円 × 20% - 200万円 = 592万円(『配偶者控除』を適用させれば0円)
【子A】
6,600万円 × 1/5 = 1,320万円
1,320万円 × 15% - 50万円 = 148万円
【子B】
6,600万円 × 1/5 = 1,320万円
1,320万円 × 15% - 50万円 = 148万円

◆:【取得金額】
◆・STEP①:【元々の法定相続分】・◆
【妻】:1/2
【子A】:1/2 ÷ 3人 = 1/6
【子B】:1/2 ÷ 3人 = 1/6
【子C】:1/2 ÷ 3人 = 1/6
◆・STEP②:【再分配された相続分】・◆
◆:元々の相続分の比率
妻:子A:子B = 1/2:1/6:1/6 = 3:1:1
◆:子Cの相続分『1/6』を『3:1:1』で再配分しプラス
【妻】
1/2 + 3/30 = 3/5
【子A】
1/6 + 1/30 = 1/5
【子B】
1/6 + 1/30 = 1/5
◆・STEP③:【遺産の分配額】・◆
(遺産額に相続分を掛ける)
【妻】
1億2,000万円 × 3/5 = 7,200万円
【子A】
1億2,000万円 × 1/5 = 2,400万円
【子B】
1億2,000万円 × 1/5 = 2,400万円
◆・STEP④:【取得金額】・◆
(相続税を引く)
【妻】
7,200万円 -(592万円~0円)= 6,608万円~7,200万円
【子A】
2,400万円 - 148万円 = 2,252万円
【子B】
2,400万円 - 148万円 = 2,252万円
ぴったりな方法はどれ?選択する判断基準

「結局どれを選ぶべき??」
違いは分かったけれど、どの方法が良いのか迷う人もいるでしょう。
最後に、ぴったりの選択肢を見つけるのに役立つ【判断基準】をご紹介。
ポイントとしては4つ。
- 借金の有無
- 遺産額を増やしたい相手の有無
- 他の相続人との関係
- 相続への意欲
相続の方向を決める目安として、参考にしてみて下さい。
こんな人は【相続放棄】がいいかも

- 借金は絶対に背負いたくない
- 連帯保証人としての義務を引き継ぎたくない
- プラス財産よりマイナス財産が多いことが明確で、相続するメリットがない
- 他の相続人と連絡を取りたくない
- 相続権が移ることに問題がない、または気にしない
- 相続そのものが面倒で離脱したい
- 遺産全体を把握しきれず、借金がどのくらいあるか不明確
こんな人は【相続分の放棄】がいいかも

借金がない
- 借金はあるが、相続しても問題ない
- 他の相続人との仲が悪くない、話し合いが可能である
- 他の相続人が取得できる遺産額を、平等に増やしたい
- とくに遺産額を増やしたい相手もいなく、とにかく離脱したい
- 穏便に遺産分けから離脱したい
- 遺産争いに巻き込まれたくない
こんな人は【相続分の譲渡】がいいかも

- 借金がない
- 借金はあるが、相続しても問題ない
- 譲渡したい相手がいる
- 一部だけ譲渡したい
- 譲渡したい相手が第三者
- 複数の人に譲渡したい
- 仲の悪い相続人には渡したくない
- 遺産分けから離脱したい
★★・お役立ちmemo・★★
◆・現金が欲しい時にも有効・◆
例えば、遺産に不動産が含まれているとき。
『有償』で譲渡すれば、現金を手に入れられます。
状況をうまく利用すれば、自分にぴったりの相続が達成できるかもしれません。
【最後に】この記事のまとめ

【相続放棄】
- 主な目的【借金回避】
- 注意事項【後順位の相続人への影響】
- 手続き 【家庭裁判所へ申立て】
【相続分の放棄】
- 主な目的【穏便な相続離脱】
- 注意事項【支払い義務の残存】
- 手続き 【意思表示&遺産分割協議書への署名・捺印】
【相続分の譲渡】
- 主な目的【特定の人への遺産分与】
- 注意事項【支払い義務の残存・各種税金発生】
- 手続き 【相続分譲渡証書での契約】
相続対策は、今回お伝えしたこと以外にもたくさんあります。
相続人の事情は十人十色。
状況を見極め、オーダーメイド式でベストな方法を見つけるのが理想的です。
- 他にどんな方法があるのか知りたい
- トラブルが起きたときの対策を知りたい、対処してほしい
- 不仲な親族との交渉を任せたい
- 節税も視野に入れたい
相続での悩み、アドバイスが必要な方は一度専門家へ相談してみましょう。
おすすめは、あらゆる専門家と連携が取れる『ワンストップサービス』を利用できるところ。
相談内容に合わせあちこち歩き回る必要がないため、ストレスなく進められます。
まずは無料相談を利用し、様子を見てみるのも一つの手。
信頼できそうであれば正式に依頼し、対策していきましょう。
【Pick up!】こちらの記事もCheck!


