寄与分の相場って? 相続の取り分UP条件と3つの注意点

こんにちは。相続税理士の天尾です。('ω')
今回のテーマは『寄与分』。
相続金額を多めに要求できる寄与分制度。
生前に故人のために身を削っている人にとっては、検討してみたい相続対策ですよね。
「亡くなった父の介護を頑張った」
「遺産相続は多めでもいいのでは?」
「ところで、寄与分の相場ってどのくらい?」
▼
このような方は、ぜひ読んでみて下さい。
生前の苦労や努力がお金となって戻ってくれば、報われた気持ちにもなります。
では、実際に増やせる金額は?
条件や注意点は?
この記事を参考に、対策をしていきましょう。
【相場】世の中の寄与分ってどのくらい?

ズバリお伝えしたいところですが、具体的な金額を答えることはできません。
寄与分をいくらにするかは、相続人同士で決めるものだからです。
「介護を頑張ってくれた長女に全財産を」
極端な話ですが、話し合いでみんなが納得できればこんな内容でも成立します。
寄与分の金額は十人十色。
みんなが納得できれば、いくらでもOKです。
★★・お役立ちmemo・★★
【話し合いで決まらなかった時】
話し合いで解決できない場合は、裁判所経由で決めることも出来ます。
ただし、根拠となる資料の準備が必要です。
詳しくは記事後半の、『【有効な証拠】裁判所で寄与分主張するなら』もチェックしてみて下さい。
STEP①【話し合い】
- まずは、相続人同士で話し合ってみます
- すでに話し合う余地がない場合は、最初から裁判所を通してもOK
STEP②【調停】
- 家庭裁判所へ調停の申立てをします
- 裁判所の調停委員を介し、話し合いを行います
STEP③【審判】
- 調停が不成立だった場合、自動的に審判へ移行
- 寄与分の金額は、裁判官の判断にゆだねられます
STEP④【即時抗告】
- 審判結果に不満があれば、高等裁判所へ申立てをします
- 申立ての期限は、『審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内』
【5つの条件】寄与分に値する貢献って?

寄与分は、単に故人のお世話をしただけでは認められません。
どの程度貢献したのか、どんなことで貢献したのか。
つまり、『質』と『中身』が重要になってくるのです。
ここでは寄与分の5つの条件について解説。
主張するには、『すべてクリア』していることが必要です。
当てはまるかどうか、まずは確認してみましょう。
◆・この先を読む前に・◆
- 裁判所で主張する際に必要な条件です。
- 相続人同士での話し合いには影響がなく、条件に当てはまっていない決定でも問題ありません。
【条件①】故人の財産の『維持』や『増加』に貢献していること
故人の財産があるのは、『相続人のおかげ』。
このように判断できる貢献でなくてはいけません。
寄与分に値する行為は5タイプ。
いずれかに当てはまっていれば、ここでの条件はクリアです。
| 貢献タイプ | 例えばこんなこと |
|---|---|
| 【事業従事】 |
|
| 【出資】 |
|
| 【療養看護】 |
|
| 【扶養】 |
|
| 【財産管理】 |
|
◆・認められない貢献行為・◆
◆:【こんな出資】はNG
- 故人が経営する会社への出資
◆:【こんな療養看護】はNG
- 入院している故人のお見舞い
- 要介護2以下
◆:【こんな扶養】はNG
- 故人と同居している状態での生活費負担
- 十分生活できる収入がある故人への生活費援助
【条件②】扶養義務を超えた『特別レベル』の貢献であること
寄与分を主張するならば、貢献レベルが高くなければいけません。
常識の範囲を超えていなければ、寄与分獲得は難しいでしょう。
◆・こんな貢献はNGかも・◆
◆:『夫婦として』故人の介護をした
◆:『親子として』故人の家業を手伝った
◆:『兄弟姉妹として』故人の生活費を援助した
身内であれば扶助義務や互助義務が発生します。
寄与分が認められる行為としては、弱い可能性が高いでしょう。
とは言え、明確な基準がないのが現状。
『義務の範囲外』に当てはまりそうであれば、主張してみましょう。
【条件③】『無償』または『ほぼ無償』で貢献していること
故人から、『対価』を得ている場合は認められません。
◆・こんな対価を貰っている時はNG・◆
◆:給与(ごく僅かな金額であればOK)
◆:報酬
◆:生活費
【条件④】『専業的』に『継続』して貢献していること
短期間やスキマ時間だけでの貢献は認められません。
明確な基準はありませんが、1年~3年以上で認められる事例が多いようです。
長年に渡って貢献してきた人にだけ与えられた権利と言えるでしょう。
◆・一時的な貢献はNG・◆
◆:1週間だけ、介護をした
◆:3日だけ、家業の手伝いをした
◆:仕事の休みの日だけ、マンションの管理をした
【条件⑤】『相続人』であること
寄与分主張は、相続人だけが認められる制度。
相続人の妻がいくら貢献していたとしても、主張することはできません。
◆・相続人以外の人が請求できる別の制度・◆
令和から取り入れられた『特別寄与料制度』。
『相続人ではない故人の親族』が、相続人に対して請求できる制度です。
条件は基本的に寄与分と同じ。
ちがう点は以下2つです。
①:【相続人でない親族であること】
親族とは、『6親等内の血族』、『配偶者』、『3親等内の姻族』のこと。
例えば、以下のような人たちです。
- 故人の両親
- 故人の祖父母
- 故人の兄弟姉妹
- 故人の甥&姪
- 故人の孫
- 故人の子どもの配偶者
- 故人の兄弟の配偶者
- 故人の甥&姪の配偶者
- 故人の配偶者の両親
- 故人の配偶者の祖父母
- 故人の配偶者の兄弟姉妹
- 故人の配偶者の甥&姪
②:【『療養看護』または『その他の労務』をしていること】
生活費や資金の援助による貢献は認められません。
【3つの注意点】寄与分を要求するその前に

ここでは3つの注意点を簡単に解説。
思い込みや勘違いによるトラブルを防ぎましょう。
【主張】しなければ始まらない
貢献したかどうかは当事者でしか分かりません。
何もしなければ、通常の流れで相続手続きが完了して終わりです。
遺産の取り分に寄与分を上乗せしたい場合は、自分から主張しましょう。
寄与分は【遺言】で指定できない
・遺言書・
「長男には寄与分として500万円を」
遺言書に寄与分が指定されていても、効力はありません。
寄与分の決定は、あくまで話し合いか裁判のみ。
寄与分を100%確定させる方法は存在しないのです。
◆・ただし、【遺贈】扱いになることはある・◆
・遺言書・
「長男には財産の半分と、寄与分として財産の2割を」
『割合』の指定があるものは、遺贈として有効になる可能性があります。
遺言書自体が無条件で無効になるわけではないので、覚えておきましょう。
【遺贈が優先】される
例えば以下のような遺言書が見つかった場合、寄与分はどうなるのでしょう。
・遺言書・
【相続財産】5,000万円
以下のとおり、財産を分けるものとする。
- 妻へ50%(2,500万円)
- 長男25%(1,250万円)
- 次男25%(1,250万円)
ずばり、寄与分は0。
遺贈だけで全財産が無くなってしまい、寄与分の枠が残らないためです。
ただし、遺言書に書かれていない財産については寄与分を主張できます。
寄与分は遺贈を省いた範囲でのみ有効。
他の相続人から請求することもできないので、注意しましょう。
◆・【遺留分】より優先されることもない・◆
遺留分と寄与分の優先順位については、決められていません。
しかし裁判の実例を見ても、寄与分が優先的に考慮されることは無いでしょう。
まずは遺留分、第二に寄与分。
あくまで寄与分は、最後に残った財産内で考慮されるのです。
【有効な証拠】裁判所で寄与分主張するなら

裁判で寄与分を主張するなら、貢献事実について証明しなければいけません。
つまり、証拠となる資料が必須となるのです。
また、話し合いの場においても証拠は有効。
他の相続人への説得力が増し、納得してもらえるかもしれません。
そこで5つの貢献タイプ別に、有効な資料を簡単にまとめてみました。
寄与分成立を目指し、しっかり準備しておきましょう。
【有効な証拠】
【事業従事】を証明
ポイント
◆:勤怠状況や給与について分かる資料
- 勤怠記録
- タイムカード
- 故人の確定申告書
- 事業用の通帳
- 貢献した相続人の給与明細書
- 取引先とのメール
etc.
【出資】を証明
ポイント
◆:財産の動きが分かる資料
- 故人の通帳
- 不動産売却契約書
- 登記簿
- 相続人の通帳や振込通知書
etc.
【療養看護】を証明
ポイント
◆:故人の介護の必要性が分かる資料
◆:1日の介護時間や介護内容が分かる資料
- 診断書
- カルテ
- 要介護認定通知書
- 介護ノート
- 介護日記
etc.
【扶養】を証明
ポイント
◆:資金援助していたことが分かる資料
- 故人の通帳
- 相続人の通帳
- カードの利用明細書
- 家計簿
etc.
【財産管理】を証明
ポイント
◆:財産の維持・発展・処分などの事実が分かる資料
- 財産の推移記録
- 交渉のやり取りが分かるメールや書類
etc.
【最後に】この記事のまとめ

- 寄与分は【自由に設定】できるため、相場として表現するのは難しい
- 条件①:【質の高い無償行為】により、故人の財産が【維持・増加】されていること
- 条件②:【一時的】、【片手間】な貢献ではないこと
- 寄与分の条件は、相続人同士での話し合いには不要
- 寄与分は遺贈や遺留分の邪魔はできず、自己主張しなければ適用されない
故人に尽くした人のための寄与分。
少しでも優遇された遺産分割ができれば、頑張りが認められた気持ちになれるかもしれません。
しかし、話し合いで円満に解決できるケースは決して多くはありません。
寄与分を認めてしまうと、他の相続人の財産の取り分が少なくなってしまうからです。
お金が絡む分、なかなかうまくはいかないでしょう。
- 「寄与分を主張したいけど不安」
- 「裁判沙汰にするのは、何だか気が引ける」
相続での悩み、アドバイスが必要な方は一度専門家へ相談してみましょう。
相続対策は、何も寄与分が全てではありません。
寄与分主張を頑張るよりも、別の方法が得策な場合だってあります。
視野を広げ、最善な対策を見つけてみてはいかがでしょうか?
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