【相続税+税】代償分割で税金重複?発生条件&10の補助知識

こんにちは。相続税理士の天尾です。('ω')
今回のテーマは、『代償分割で上乗せされる税金』。
代償分割とは、土地や建物などの『モノ』を貰い、他の相続人へ『代償』を払って成立させる分割法。
不動産が絡む人の中には、検討している方も多くいるかと思います。
しかし、相続税の他にも『別の税金』が課税される可能性があるのです。
「一体全体、どんな税金が関わってくるの?」
「税金は絶対かかるの?条件は?」
こんな方はぜひ、読んでみて下さい。
また、『何となく』代償分割を理解している方は、もう少しだけ知識レベルを上げてみましょう。
メリットやデメリット、対策面などを押さえておけばより効果的な選択ができるためです。
落とし込みやすくなるよう、この記事ではなるべく簡略化してお伝えしていきます。
ざっくりと目を通し、後悔しない選択のヒントとしてお役立て下さい。
【相続税+税】代償分割で上乗せされる税金

代償分割に関係する税金は、相続税だけではありません。 やり方次第では、『相続税以外の税金』が追加される場合も。
つまり、多重課税により税金の負担額が増加してしまうのです。
「気が付いたら税金まみれに!」なんて事にならぬよう、しっかり確認しておきましょう。
上乗せの可能性がある税金は2パターン。
- 【譲渡所得税】&【住民税】
- 【贈与税】
どちらも追加されなければ、『相続税のみ』課税。
なお、代償分割を行った場合、相続税の『課税範囲』が調整されます。
気になる人は後半部分にある、『【相続税】の課税範囲』もチェックしてみて下さいね。
①【譲渡所得税】&【住民税】
発生条件
条件は2つ。
『すべての条件』を満たしている場合、譲渡所得税と住民税が追加課税されます。
【条件①】
現金以外の『モノ』を代償として差し出している
【条件②】
あげた時の価格(時価)が取得した価格より高い
譲渡所得税とは、資産を売って得た収入に対し課税される税金。
一般的には、土地や家などの不動産売却に関わってくる内容です。
代償の支払いで実際に収入が発生しているわけではありませんが、同等の扱いを受けてしまいます。
課税される人

- 代償を差し出した人
- (※不動産を代償とした場合、受け取った側に別の税金が発生)
【代償を差し出した人】に関係する税金
- 相続税
- 譲渡所得税
- 住民税
【代償を受け取った人】に関係する税金
- 相続税
- 不動産取得税(不動産をもらったとき)
- 登録免許税(不動産をもらったとき)
◆・【補足①】こんな『モノ』が対象・◆
- 土地
- 建物
- 株式
- 宝石
- 書画
- 骨董品
- 著作権 etc.
◆・【補足②】課税される範囲・◆
代償のモノ:土地
取得価格:2,500万円
差し出した時の価格:3,500万円
差額1,000万円に対し、【譲渡所得税】&【住民税】が課税
②【贈与税】
発生条件
条件は2つ。
『どちらかの条件』を満たしている場合、贈与税が追加課税されます。
【条件①】
遺産分割協議書に代償分割で分けたことを記載していない
【条件②】
代償金の額が、代償分割で相続する財産の価格より多い
代償分割は『贈与行為』ではないため、基本的に贈与税は発生しません。
『予想外な税金』の発生だけは回避しましょう。
また、贈与税に設けられている『110万円の非課税枠』に収まれば税金不要。
とは言え、代償分割をする場合はたいてい高額になります。
非課税になることはほぼ無いと考えて良いでしょう。
課税される人

- 代償を受け取った人
【代償を差し出した人】に関係する税金
- 相続税
【代償を受け取った人】に関係する税金
- 相続税
- 贈与税
◆・【補足】課税される範囲・◆
代償分割により相続する財産:3,500万円の土地
代償金:4,000万円
相続財産額より多い500万円に対し、【贈与税】が課税
【相続税】の課税範囲

- 代償を『現金で』差し出している
- 代償金の額が、代償分割で相続する財産の価格以内
この2つの条件を満たしていれば、他の税金は追加なし。
相続税の課税対象は以下のとおりです。
課税範囲
代償を差し出した人
【取得した財産額】-【代償金額】
代償を受け取った人
【取得した財産額】+【代償金額】
◆・【例題】・◆
相続人:・故人の子A ・故人の子B
代償金を支払った人:子A
代償金:4,000万円
【子A】の取得財産:・5,000万円の土地 ・4,000万円の家
【子B】の取得財産:・2,000万円の現金
◆:相続税の基礎控除額
= 3,000万円 + 600万円 × 相続人の数
= 4,200万円
◆:『代償金を支払った子A』の課税対象
【取得した財産額】-【代償金】
=(5,000万円 + 4,000万円)- 4,000万円
= 5,000万円 - 4,200万円
◆:『代償金を受け取った子B』の課税対象
【取得した財産額】+【代償金】
= 2,000万円 + 4,000万円
= 6,000万円 - 4,200万円
【子A】800万円に対し相続税が課税
【子B】1,800万円に対し相続税が課税
【7コラム】代償分割のメリット&デメリット

「何がなんでも代償分割がいい!」
もし代償分割のことを『ふんわり程度』で理解している方は、もう少しだけ知識付けしておきましょう。
メリットはもちろん、デメリットも超重要。
後悔しない選択のための判断材料となるためです。
ここでは、4つのメリットと3つのデメリットをご紹介。
理解を深めた後、もう一度しっかり考えてみましょう。
メリット①遺産分割がスムーズになる
分けづらく、価値もマチマチなモノは『偏り』が生じがち。
不満の原因となり、遺産分けがなかなか円滑に進まないものです。
代償分割をすれば、『差』を埋めることで公平性が生まれます。
難航が予想される話し合いも、一気にまとまりやすくなるでしょう。
メリット②建物や土地を売らなくていい

- 故人と同居していて、引き続きその家に住みたい人
- 故人の事業を引き継ぐ予定の人
代償分割をすれば、そのままの『カタチ』で相続することができます。
売って現金化し、その後に遺産分けする方法もありますが、それでは住む場所や事業を失なってしまいます。
さらに、売って得た収入は譲渡所得税や住民税が発生する可能性も。
売らないことで、みんなが『win-win』になれる理想の相続が達成できるかもしれません。
メリット③共有名義から逃げれる
土地や建物は、複数の相続人を名義にし相続することもできます。
一見、何の問題もないように思えますが実はトラブルの原因を秘めています。
トラブル原因
- 売却や利用方法は、他の相続人の同意がなければいけない
- 共有している相続人が死亡した場合、権利は相続される
つまり、自分一人では自由に決めれず、よく知らない親族にどんどん引き継がれていく可能性があるのです。
代償分割を実行すれば、このような『面倒ごと』とは一切無縁。
将来安泰を見据えた優秀な対策と言えるでしょう。
メリット④大節税の可能性がある
一度は聞いたことがあるかもしれない、『小規模宅地等の特例』。
『土地』に限られますが、相続税を『最大80%カット』できる超エリートな特例です。
現金化をすれば、譲渡所得税や住民税が課税される点を考えると、お得感満載。
代償分割は、賢い節税対策の一つとも言えるでしょう。
デメリット①それなりの資金力がないと出来ない
代償分割には『代償』が必要不可欠。
代償を支払うことができなければ、そもそも実行することが出来ません。
ただし、生前対策で解決できる場合もあります。
デメリット②代償金の『金額』で揉める恐れあり
支払う方はなるべく安く、もらう方はなるべく高く。
お互いが納得する代償金額を決めるのは、なかなか難しいかもしれません。
円滑に分割するハズが、かえって長丁場になる可能性も。
逆効果を与えるリスクがある点も理解しておきましょう。
デメリット③相続税の支払いが厳しくなる
相続税の納付は、『現金一括』が基本。
代償金に加え、相続税の資金も用意しないといけないため支払いが困難になるリスクがあります。
相続財産の『モノ率』が高くなる程、ハードルが高くなっていくでしょう。
【3つの突破口】大金ないけど代償分割したい人は

「どうしても代償分割で相続を完了させたい」
「けど、そんな大金ない」
資金面を理由に、代償分割を諦めてしまう方も多くいるかもしれません。
しかし、まだチャンスは残っています。
ここでは、代償金のお悩み解決に役立つ『突破口3つ』をご紹介。
意外とすんなり、代償分割への突破口を見つけられるかもしれません。
ぜひチェックしてみて下さい。
◆・先にご確認ください・◆
裁判所での遺産分割を検討している場合、以下のような注意点があります。
- 分割方法は裁判所判断になるため、代償分割が必ず実現する保証はない
- 支払い能力がなければ、代償分割が採用されることはない
- 『調停』で解決できなかった場合は、『審判』へ自動で移行されるため途中で止めることができない
生命保険金でカバーする
故人が契約している生命保険の受取人になる方法。
保険金は一度に大金を入手できるため、かなりオススメです。
注意すべき点としては3つ。
注意点
- 『代償金を支払う相続人』を受取人にしなければ意味がない
- 生前に対策しておかなければいけない
- 財産を遺す人(故人)の理解や同意が必要
分割を提案してみる
代償金の支払いは、同意があれば『分割払い』でもOK。
まとまった大金が用意できなくても、代償分割が実現できるかもしれません。
ただし、相手にとっては支払いの保証が無いのも事実。
実際にはあまり合意されないケースが多く、可能性としては低いことも覚えておきましょう。
【遺言書】&【生命保険金】で強行突破
保険金を『代償金用』ではなく、『遺留分の支払い金用』として活用する方法。
代償分割による遺産分けではありませんが、思い描く相続が実現するかもしれません。
遺留分とは、相続人それぞれが持っている『法的な遺産の取り分』のこと。
遺言書で『極端な』遺産分けがあった場合、取り分が少ない相続人は多い相続人に対し、請求することができます。
つまり、遺留分の性質を逆手に取り、望みの財産を手に入れようというやり方です。
◆・イメージ・◆
相続人:故人の子:A、B、C
遺産:家&土地
遺言書の内容:すべての遺産を『A』に遺す
step1.BとCはAに対し、遺留分を請求
step2.Aは生命保険金を使って支払いをする
また、遺留分は計算により金額の算出が可能。
話し合いで決まる代償金とは違い、事前に金策できる点も魅力的でしょう。
ただし、以下のような注意点やデメリットもあります。
注意点&デメリット
- 財産を遺す人(故人)の理解と同意が必要
- 生前に対策しておかなければいけない
- 生命保険金の受取人を『遺留分を支払う人』にしなければ意味がない
- 資金が全くない人は、遺留分を支払えるだけの保険金額が必要
- 確実に『有効な』遺言書を遺さなければいけない
- 相続人が考えた文面を模写することなどは出来るが、『強制的に』書かせたものは無効
- 遺留分を熟知し、しっかり反映させた遺言書でなければいけない
- 親族との関係が悪化する可能性がある
- 正確な遺留分の計算は難しいため、個人で行うのはハイリスク
とても有効な方法の一つですが攻撃性が高く、確実性も求められるため難易度はかなり高め。
注意点もかなり多く、慎重に実行すべきことが一目瞭然でしょう。
興味のある方や検討したい方は、『相続専門の税理士』へ相談することを強くオススメします。
◆・『感情』が邪魔していることもある・◆
金銭が絡む相続問題は、当事者同士だけでの解決は難しいもの。
意地や不仲が原因で、話し合いそのものが冷静にできていない可能性もあるでしょう。
そんな時には『専門家』を交えての遺産分けがおすすめ。
第三者が混じることで感情的になりづらく、話にも説得力が付きます。
聞く耳を持たせ『代償分割の良さ』を伝えることが出来れば、意外とあっさり実現できるかもしれません。
ぜひ、『冷静な話し合い』も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
【最後に】この記事のまとめ

- 代償分割では、【譲渡所得税】【住民税】【贈与税】が追加される可能性がある
- 代償が【過度の領域を超えない現金】であれば、【相続税のみ】
- 代償分割は、【自宅に住み続けたい人】や【事業を引き継ぐ人】にぴったり
- 代償用の【現金】や【財産】が無ければ、代償分割は成立しない
- 資金が無い人は、【生命保険金】や【分割】を検討してみるのもアリ
『モノ』の遺産を引き継ぎたい人にとって、代償分割は超有効。
ほかの相続人と揉めてしまっても、代償で解決する道が与えれるため相続の幅が広がります。
しかし、必ず思い通りにいく保証はありません。
資金問題や税金、事前準備など考えなければいけないことは山ほど。
個人で抱え込んでしまうと、精神的にも参ってしまうでしょう。
- 代償分割を考えているけど、何をどうしたらいいか分からない
- いろいろ調べてみたけど、やっぱり不安
こんな方は一度、『相続専門の税理士』へ相談してみましょう。
それぞれの事情にぴったりの、オーダーメイド製のアドバイスを受けることが出来るためです。
また、相続は代償分割が全てではありません。
場合によっては別の方法で攻めた方が『よりお得』で、『より賢く』対策できることもあるでしょう。
相続の可能性を広げ、ベストな選択肢を見つけてみて下さい。

