相続分の譲渡にかかる「3つの税金」4つのケースと課税条件

こんにちは。相続税理士の天尾です。
今回のテーマは、「相続分の譲渡と課税される税金」。

遺産を受け取らず、自分の相続分を譲ろうと検討している人もいるでしょう。
相続分の譲渡は、やり方次第で税金がかかります。

どんな譲渡にどんな税金がかかるのか?

思わぬ納税で慌てないよう、事前にチェックしておくと安心です。

「どんな税金が課税されるの?条件は?」
「借金があるけど譲渡しても大丈夫?」

こんな方はぜひ、読んでみて下さい。

また、相続分の譲渡の「メリット」「デメリット」、「相続放棄との違い」や「相続分の放棄」についても簡単に解説しています。

実はよく知らないまま譲渡しようと思っていた...こんな方は併せてチェックしてみましょう。

知識があれば思わぬトラブル防止や判断基準として役立ちます。
場合によっては、相続分の譲渡より別の方法が合っている可能性も...?

いずれも簡単にまとめています。
気になる内容があれば確認しておきましょう!

【4ケース】相続分の譲渡にかかる「3つの税金」

「相続分の譲渡」でかかる税金は3つ。
「相続税」「贈与税」「譲渡所得税」です。

譲渡した人は一見無関係のように思えますが、やり方次第では税金の課税対象となります。
「もらう側」「あげる側」、両サイドに課税の可能性があるため注意しましょう。

また、課税される税金の種類は、「譲渡する相手」と「対価の有無」で決まります。
以下ケース別に簡単にまとめましたので、チェックしてみて下さい。

Case.①「ほかの相続人」へ「無償」で譲渡

相続人同士で譲渡を行うケース。
自分の相続分を対価なし(タダ)で譲った場合に当てはまります。

★譲渡した人★譲渡された相続人
相続税

「譲渡した人」の課税対象

「課税なし」

「譲渡された相続人」の課税対象

「自分の相続分 + 譲渡された相続分」

Case.②「ほかの相続人」へ「有償」で譲渡

譲渡した相続人から対価をもらうケース。
現金やその他資産を、相手から入手した場合に当てはまります。

★譲渡した人★譲渡された相続人
相続税相続税

「譲渡した人」の課税対象

「受け取った対価」

「譲渡された相続人」の課税対象

「自分の相続分」+「譲渡された相続分」-「あげた対価」

Case.③「相続人以外の人」へ「無償」で譲渡

相続人ではない人へ対価を貰わずに譲るケース。
相続人以外の親族や、友人などの第三者への譲渡が当てはまります。

★譲渡した人★譲渡された相続人
相続税贈与税

「譲渡した人」の課税対象

「譲渡した相続分」

「譲渡された人」の課税対象

「もらった相続分」

Case.④「相続人以外の人」へ「有償」で譲渡

相続人ではない親族や友人へ譲渡し、対価を貰うケース。
「不動産」の譲渡は、2種類の税金が課税される点に注意です。

★譲渡した人★譲渡された相続人
相続税(+譲渡所得税)原則なし

「譲渡した人」の課税対象

「譲渡した相続分」
!不動産を譲渡した場合は、「譲渡所得税」も追加

「譲渡された人」の課税対象

「原則なし」
!差し出した対価が極端に安かった場合は、「贈与税」が課税される可能性あり。

★★・お役立ちmemo・★★
「非課税の範囲内なら税金はかからない」

課税対象額が一定額以内であれば、税金はかかりません。
必ずしも「相続分の譲渡 = 課税」となるわけではないことを覚えておきましょう。

「相続税」
【3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】まで非課税

「贈与税」
【110万円】まで非課税

「譲渡所得税」
受け取った対価が【取得費 + 譲渡費用 - 特別控除額】以内であれば非課税。
(※詳しくは、国税庁HP参照)

国税庁:「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」より

相続分の譲渡「メリット」&「デメリット」

相続分の譲渡をする前に、メリットとデメリットを確認しておきましょう。
安易な考えでの譲渡は、思わぬトラブルの原因となってしまうかもしれません。

それぞれ簡単にまとめましたので、チェックしてみて下さい。

Merit 相続分の譲渡「メリット」

  • 譲渡した人は、遺産分割協議や調停に参加しなくていい。
  • 遺産分割協議への参加者が減ることで進行がスムーズになる。
  • 譲渡する相手は誰でも自由に選べる。
  • 一部だけを譲渡することもできる。
  • 他の相続人の同意は不要であり、自分の意思だけで決められる。
  • 申請手続きなどは必要なく、即実行できる。
  • 売却までに時間がかかる不動産でも、譲渡すれば即現金化することもできる。

- FYI -(参考までに)

★「相続分の譲渡方法」★

相続分の譲渡に決まった手続き方法はありません。

互いの合意があれば口約束だけでも成立しますが、トラブル防止のため通常は「書面」にて譲渡を行います。

手順としては以下2つです。

「相続分譲渡証明書」を作成し、譲渡を行う

  • 必ず遺産分割成立「前」に作成し、譲渡すること。
  • ひな形を使って作成してもOK。
  • 調停にて遺産分割を進める場合は、家庭裁判所へ問い合わせしましょう。

「ひな形」参考サイト

「相続分譲渡通知書」を作成し、送付する

  • ほかの相続人へ譲渡した旨を書面で知らせます。
  • 必ず遺産分割成立「前」に作成し、通知すること。
  • ひな形を使って作成してもOK。
  • 「内容証明郵便」での送付がおすすめです。

「ひな形」参考サイト

Demerit 相続分の譲渡「デメリット」

  • 借金からは逃げられない。
  • 譲渡された第三者は、必ず遺産分割協議に参加しなければいけない。
  • 第三者が参加した場合、相続が荒れる可能性が高い。
  • プラス財産だけを譲渡することはできない。(借金も同じ割合で譲渡される。)

- Caution -(注意点)

!「借金の返済義務」

相続分の譲渡はあくまで「取り分」のやり取り。
譲渡したとしても、地位は「相続人」のままです。

債権者には、相続人に請求する権利があります。
「相続分を譲渡した」という理由では、支払いの義務を消すことはできません。

請求された場合は応じなければいけない点に注意しましょう。

!「全くの第三者が絡む遺産分割協議」

親族と全く関係のない赤の他人であっても、譲渡を受けた場合は遺産分割協議に参加しなければいけません。
第三者が交じった話し合いはトラブルになりがちであり、難航する可能性大。

なお、第三者を省いた遺産分割協議は「無効」となります。

!「相続分の取戻権」

ほかの相続人には、第三者から相続分を取り戻せる権利があります。
この権利が使われた場合、第三者は拒否することができません。

第三者への譲渡には、取り戻されるリスクがあることを覚えておきましょう。

「相続放棄との違い」と「相続分の放棄」

最後に、「相続分の譲渡」とよく似た2つの相続方法について簡単に解説します。
譲渡を検討中の人も、もしかしたら別の選択肢の方が合っているかもしれません。

主な内容をざっくりまとめましたので、チェックしてみましょう。

No.①「相続放棄との違い」

相続から離脱する方法として、「相続放棄」も挙げられます。
「相続分の譲渡」「相続放棄」、どちらを選ぶべきでしょうか?

主な違いは以下のとおり。
それぞれをよく理解し、判断してみましょう。

相続分の譲渡相続放棄
借金の支払い義務残る消える
手続き当事者のみで完結家庭裁判所へ申立て
期限遺産分割成立前まで相続を知った日から3ヶ月以内
後順位の相続人への影響なしあり
選択の自由
渡す相手や割合を選べる
×
全財産放棄

同じ順位の相続人が「全員相続放棄」をした場合、次の順位の相続人へ相続権が移ります。
(借金などの負債も移行)

「相続分の譲渡」が向いているケース

  • 親族と不仲であり、関わりたくない。
  • 相続そのものが面倒。早めに離脱したい。
  • 不動産より現金がほしい。
  • 相続分を譲り、多く継がせたい人がいる。
  • 故人に借金がなく、負担の心配がない。

「相続放棄」が向いているケース

  • 故人に借金があり、絶対に負担したくない。
  • 最初から遺産を受け取るつもりがない。
  • 後順位の相続人へ相続権が移っても、問題ない。

No.②もう一つの選択肢「相続分の放棄」

「相続分の放棄」とは、「相続人としての地位を保ちつつ、遺産を相続しない」という相続方法。

あまり馴染みのない相続形式ですが、「相続分を譲渡したい人がいない」場合などにおすすめです。

相続分の放棄
借金の支払い義務残る
手続き遺産分割協議で放棄の意思表示をし、ほかの相続人の合意を得る
期限遺産分割成立前まで
後順位の相続人への影響なし
選択の自由×
放棄した相続分は残りの相続人へ再配分
相続分の譲渡相続放棄
借金の支払い義務残る消える
手続き当事者のみで完結家庭裁判所へ申立て
期限遺産分割成立前まで相続を知った日から3ヶ月以内
後順位の相続人への影響なしあり
選択の自由
渡す相手や割合を選べる
×
全財産放棄

同じ順位の相続人が「全員相続放棄」をした場合、次の順位の相続人へ相続権が移ります。
(借金などの負債も移行)

- Merit -

  • 家庭裁判所での手続きなどが不要なため、手軽に実行できる。
  • 決められた期限がない。

- Demerit -

  • 借金からは逃げられない。
  • ほかの相続人の合意が必要であり、一人で完結できない。

Caution

!放棄する旨を伝えるため、一度は遺産分割協議に参加しなければいけない。

!放棄した相続分には一切関与できない。(ほかの相続人へ自動的に再配分)

「相続分の放棄」が向いているケース①(以下「すべてを満たす」場合におすすめです。)

  • 借金がない、または少額。
  • 遺産を相続する気がない。
  • 相続分を渡したい人がいない。

「相続分の放棄」が向いているケース②(以下「すべてを満たす」場合におすすめです。)

  • 借金がある。
  • 遺産を相続する気がない。
  • 相続分を渡したい人がいない。
  • 相続放棄することで、後順位の相続人へ借金を流したくない。

【最後に】この記事のまとめ

  • 相続分の譲渡でかかる税金は、「譲渡する相手」と「対価の有無」で決まる。
    • Case.①「ほかの相続人」へ「無償」で譲渡
      【譲渡した人】:課税なし
      【譲渡された相続人】:相続税
    • Case.②「ほかの相続人」へ「有償」で譲渡
      【譲渡した人】:相続税
      【譲渡された相続人】:相続税
    • Case.③「相続人以外の人」へ「無償」で譲渡
      【譲渡した人】:相続税
      【譲渡された人】:贈与税
    • Case.④「相続人以外の人」へ「有償」で譲渡
      【譲渡した人】:相続税(+譲渡所得税)
      【譲渡された人】:原則なし(贈与税)
  • 相続分の譲渡をしても、「非課税の範囲内」であれば税金はかからない。
  • 相続分の譲渡は「自由度が高め」だが、「借金」や「トラブル」には要注意。
  • 借金を絶対に背負いたくなければ、「相続放棄一択」。

相続分の譲渡は、やり方次第でかかる税金が変わってきます。
どんな税金が課税されるのか事前に把握しておけば、申告や納税も忘れずに行うことができ安心です。

また納税面の他、借金がある場合は要注意。
相続分の譲渡をすれば、借金も一緒に相手に渡ります。
譲った本人も法的な支払い義務からは逃げられないため、よく理解した上で譲渡を行いましょう。

  • 「相続分の譲渡をすべきか揺らいでいる。」
  • 「他にどんな方法があるのか知りたい。」
  • 「使える特例などは余さず使って、お得に完結させたい。」

理想的な相続を達成したいなら、やはり専門家の力を借りてしまうのが近道。

相続は期限付きです。
個人対策も不可能ではありますが、時間と労力を要します。
いかに効率よく確実に対策できるかで、満足度に差が出てくるでしょう。

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