【税へらす】取得費加算の特例とは?基礎はたったの3つだけ!

こんにちは。相続税理士の天尾です。('ω')

今回のテーマは、『取得費加算の特例』。
相続で家や土地をもらい、売って現金化する人は少なくはありません。

しかし、不動産売却による収入にはさらに税金がかかることをご存知でしたでしょうか?

「相続税を払っているのにさらに税金だなんて、そんなのアリ?」
「相続した不動産を売りたいけど、税まみれはイヤ!」

こんな方はぜひ、読んでみて下さい。

残念ながら課税そのものを回避することはできません。
しかし、特例により【軽減】することは可能です。

手元に残るお金が増えるお得な制度。
知っておいて損はありません。

この記事では、そんな節税効果を得られる『取得費加算の特例の基礎』について解説。
基礎だけ知りたい人は3つのポイントだけチェック!

もう少しだけ理解を深めたい人は、ぜひ他の項目も読んでみて下さいね。

取得費加算の特例とは?ざっくり理解の3カ条

まずはどんな特例なのか、ザックリ全体像を把握しておきましょう。
3つのポイントを簡単解説。

これが分かれば基礎部分はOK!
ざっと目を通してみましょう。

【その1】ずばり!こんな特例です

取得費加算の特例とは、『支払った相続税を基準に』税金を軽減できる特例。
つまり、相続税を支払っていることが大前提です。

相続税が発生せず支払いをしていない場合、特例を使うことはできません。

【その2】軽減できる税金は2種類

特例で減らせる税金は、【所得税】と【住民税】。

相続税のほかに課税される、重複税金の負担を軽減できます。
課税される税金は以下のとおり。

  1. 譲渡所得税
  2. 復興特別所得税(2013年~2037年まで課税)
  3. 住民税

【その3】特例を使うための条件

相続した不動産がすべて特例の対象とはなりません。

特例を使うための条件は全部で4つ。
すべてクリアしていることが大前提です。

条件

条件①:
【相続】【遺贈】【死因贈与】のどれかの方法で不動産を取得していること

条件②:
【個人】が取得していること(法人はNG)

条件③:
不動産を取得した人が【相続税を納めている】こと

条件④:
相続開始日の翌日から【3年10ヶ月以内に売却】していること

なお、特例を使うためには給与所得とは別に【確定申告】が必要です。
申告期間は、『売却した次の年の2月16日~3月15日』。

何もしなければ適用されませんので注意しましょう。

売却収入から外せる2つの控除対象

利益が出た収入すべてが課税対象となるわけではありません。
収入から引くことができる、いわゆる控除対象となるものは2つ。

  • 【控除①】売却までにかかった費用
  • 【控除②】支払った相続税を基準にした控除額

収入額が減れば、税金額も減少。
なお、差し引いた後の金額が『プラスにならなかった時』は税金はかかりません。

それぞれの詳細については以下のとおり。

【控除①】売却までにかかった費用

購入価格&購入費用

【取得費】といわれるもの。
不動産を購入したときの金額と、その際にかかった費用は控除することができます。

  • 購入代金
  • 建築代金
  • 登録免許税などの税金
  • 仲介手数料

売却時の費用

【譲渡費用】といわれるもの。
売却する際にかかった手数料なども控除できます。

  • 印紙代
  • 仲介手数料
  • 測量費用
  • 立退料
  • 解体費用

★・お役立ちmemo・★
購入価格などの取得費が分からないときは?

先祖代々の土地など、いくらで買ったか不明な時もあるでしょう。

その場合、『売った金額の5%』の控除が可能。
実際の取得費が『売った金額の5%を下回る』時も適用できるので覚えておきましょう。

なお、取得費の証明には【売買契約書】や【領収書】が必要となります。

【控除②】支払った相続税を基準にした控除額

支払った相続税のうち、一部を『取得費として』控除可能。

相続税の申告書に記載している金額を使えば、自分で控除額を割り出すことも出来ます。

気になる人は計算してみましょう。

計算式

【支払った相続税額】×【売却した不動産の課税価格】/【相続財産の課税価格】+【債務控除額】

【支払った相続税額】

  • 売却した不動産を『もらった人』が支払った金額

【売却した不動産の課税価格】

  • 相続税の計算時に算出された不動産の価格
  • 売却していない不動産の金額は含まれないので注意

【相続財産の課税価格】

  • 売却した不動産を含めた『すべての財産』に対する課税対象の価格
  • 基礎控除額などを引いた『税金がかかる金額』のこと

【債務控除額】

  • 借金や葬式費用の合計金額

かんたん計算例

【相続財産の課税価格】6,000万円
【売却した不動産の課税価格】5,000万円
【債務控除額】400万円
【支払った相続税】1,100万円

= 1,100万円 × 5,000万円 / (6,000万円 + 400万円)
= 1,100万円 × 5,000万円 / 6,400万円

【取得費として控除できる金額】= 859万3,750円

【特例ありなし比較】支払う税金の差額はどのくらい?

「特例を使って節税できるのはわかったけど、どのくらい安くなるの?」

たしかに、控除額だけ分かってもイマイチしっくり来ませんよね。
実際に税金額を計算し、『お得度合い』を確認してみましょう。

ここでは、特例を使わなかった時の税金と使った時の税金を比較。
以下の条件で計算しています。

不動産の売買情報
【売却金額】4,000万円
【購入金額】2,500万円
【購入時にかかった費用】120万円
【売却時にかかった費用】150万円

相続税の計算情報
【売却した不動産の課税価格】3,000万円
【債務&葬式費用】200万円
【相続財産の課税価格】2,000万円
【支払った相続税】220万円

所有期間譲渡所得税復興特別所得税住民税total
5年以下30%0.63%9%39.63%
5年超15%0.315%5%20.315%

×・特例なし・×

step①:売却金額から費用を控除
= 4,000万円 - 2,500万円 - 120万円 - 150万円
= 1,230万円

step②:税率をかける
【所有期間:5年以下】
= 1,230万円 × 39.63%
= 487万4,490円

【所有期間:5年超】
= 1,230万円 × 20.315%
= 249万8,745円

★・特例あり・★

step①:売却金額から費用を引く
= 4,000万円 - 2,500万円 - 120万円 - 150万円
= 1,230万円

step②:支払った相続税を基準にした控除額をさらに引く
= 220万円 × 3,000万円 / 2,000万円 + 200万円
= 220万円 × 3,000万円 / 2,200万円
= 300万円

1,230万円 - 300万円 = 930万円

step③:税率をかける
【所有期間:5年以下】
= 930万円 × 39.63%
= 368万5,590円

【所有期間:5年超】
= 930万円 × 20.315%
= 188万9,295円

【差額】検証結果

【所有期間:5年以下】118万8,900円
【所有期間:5年超】 60万9,450円

【ミニコラム】補足知識2選

最後に補足知識を2つご紹介。
知っておけばさらに理解度がUPします。

併せてチェックしておきましょう。

利益がなければ税金不要

買った値段より安く売れた、いわゆる『損をした』場合は税金が課されません。

つまり、所得税も住民税も納付する必要がないのです。
ただし、申告は必要なので忘れずにしましょう。

★・お役立ちmemo・★
買った時の価格より高く売れることってあるの?

利便性が向上したことで【土地の価値】が上がったり、【物価の変動】により高く売れることがあります。
例えば、以下のようなケースです。

  • 新幹線などの駅ができた
  • 高速道路のインターができた
  • かなり昔に買った土地で、当時は安かったが今は価格が上がった

所有期間の落とし穴

所有期間で変化する税率。
【不動産を買った日から売却した日までの期間】のことですが、じつは注意が必要です。

※・所有期間・※
【購入日】~【売却した年の1月1日時点でカウント】

「もう少し待って5年を超えてから売ろう!」

と思いきや、実は必要日数に達していないなんてことも。
くれぐれも注意しましょう。

例えば

  • 【購入日】2021年7月1日
  • 【売却日】2026年8月1日

【×誤】2026年8月1日時点:5年超(税率:20.315%)
【○正】2026年1月1日時点:5年以下(税率:39.63%)

【最後に】この記事のまとめ

  • 取得費加算の特例とは、【所得税】&【住民税】を軽減できる制度
  • 適用条件は、【個人への相続不動産】【相続税の納付】【期限内の売却】
  • 費用などの控除額を引いた額が【ゼロ】または【儲けがない】ときは非課税
  • 税率は【所有期間5年を境に】決まる

相続税を支払った人には、ぜひとも使ってもらいたい特例。
使いたい!と思った人もいるのではないでしょうか。

しかし、この記事でお伝えしたことはあくまで超基礎的な部分。
実際にはいろんな状況から判断しなければいけないため、条件が変わってしまうこともあります。

  • 遺産分割協議が申告期限までに間に合わない
  • 複数の不動産を売りたい
  • 空き家を売却しようと思っている
  • 遺産分割を『代償金』で進める予定
  • 『小規模宅地等の特例』も使いたい

こんな人は一度、相続専門の税理士へ相談しましょう。
それぞれの事情に合った対策が必要となり、また個人での判断が非常に難しいためです。

ぜひ一番お得な方法を見つけ、納得できる相続を完了させましょう。

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